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なべやかん 師匠のビートたけしが激怒した恐怖の経験語る

NEWS ポストセブン 8月8日(土)7時6分配信

“替え玉事件”で世間から集中的なバッシングを受ける中、ビートたけし率いるたけし軍団に加入したなべやかん(44才)。たけしの付き人時代や、軍団の理不尽な“かわいがり”の中で身につけていった芸人魂など、貴重で笑えるエピソードを披露してもらった。

――やかんさんは“替え玉事件”の渦中でたけし軍団に加入されたわけですよね。

なべ:マスコミがすごく来るんですよ。軍団に入ると、まずはたけしさんの付き人をしたんですけど、たけしさんは「俺が防波堤になるから」って言ってくれたんです。マスコミになにか言われても、「なんで俺が、わざわざ弟子のことを語らなきゃならねえんだ」って追っ払って。「大丈夫だから」って言ってくれました。

――頼もしいですね!

なべ:2年半付き人をして、四六時中一緒にいたんです。テレビ局だったら、たけしさんより先に楽屋に入って、お茶や新聞や週刊誌の用意をしたり。たけしさんは、そこから時事ネタとか拾うんですね。あとは着替えを畳んだり掛けたり、煙草を吸うので、煙草や灰皿準備をしたり、ドラマなら台本を用意したりしました。

――付き人をされて、それまでのたけしさん像と違いはありましたか?

なべ:印象の違いは、そんなになかったですね。たけしさんより軍団に対する不安のほうが大きかったです。ろくでもない人も中にはいるんですよ。

――どんなことがあったんですか?

なべ:たとえば、初めて渋谷ビデオスタジオに行ったとき、とにかく怖かったんです。たけしさんと話さなきゃいけないし、軍団もいるし、テレビ局の仕事だし。どんな人たちなんだろうと思っていると、楽屋の隣のトイレから、たけしさんの怒鳴り声が聞こえてきたんです。

「うわっ、怖いな」って思いながら耳をすますと、「誰がウンコ流してないんだ!」って怒鳴っていたんです。「ラッシャーなのか井手なのか、誰なんだ! ウンコしたら流さなきゃダメだろ!」って。便所すら流せないやつらを先輩って呼ばなきゃいけないんだと、愕然としましたよ。そこからです、地獄の始まりは。

――ほかにどんな地獄が待ち構えていたんですか?

なべ:座っていると、先輩が肩を揉んでくるんです。緊張して「やめてください」と振り払おうとすると、「いいのいいの、ね」って肩を揉みながら、「お金貸してくれないかな?」。刑務所よりヒデエじゃねえかって。それは〆さばさんでしたね。無法地帯ですよ(笑い)。

――その猛者たちを、たけしさんが束ねているわけですよね。

なべ:たけしさんは絶対的なところがあります。ピラミッドの頂点がたけしさんで、本来はそこが怒る前に中間が怒るんです。それがガダルカナル・タカさんやダンカンさん、つまみ枝豆さんなんですけど、強烈なんです。理にかなっている怒りもあれば、全くそうじゃないときもあるんです。

 ダンカンさんでいえば、阪神が追い込まれていると危険です。9回裏、最後の攻撃で5-0で阪神が負けているとしましょう。「阪神は負けるのか?」って聞かれるわけです。「ここから連続ヒットが出て、ホームランで逆転ですよ!」と言うと、「野球をなめてんのか!」って殴られる。「今日はだめですね」と言うと、「そんなネガティブでいいのか!」って、やっぱり殴られるんです。理不尽な世界ですよ。でも、そこをどう切り抜けるかが、大切なんですよね。

――そこで身についたものはありますか?

なべ:たとえば先輩がピリピリしているときに、ラーメンを床に落とした若手がいるんです。「誰だ、うるせえな!」って言われた若手は、落ちた麺を拾って、はみ出しながら全部ポケットに入れて、「なにも落としてません!」って。場が爆笑に包まれて、それはそれでOKになったりするんです。

――ある意味、機転ですね。

なべ:頼まれた手紙を出し忘れて、「まだここにあるじゃねえか」とバレたときには、「まだ書き足すことがあるんじゃないですか?」って言えればOK。無理難題を押し付けられるんですが、その難題をどうクリアするかで、「芸人としてトークのエピソードになるでしょ」というところもあるんです。

――トップのたけしさんは滅多に怒らないという中で、たけしさんに怒られた思い出はありますか?

なべ:真剣に怒られたのは、若手がネタを作っていない、たるんでると指摘されたときです。たけしさんが怒ってしまって、それは狂気というか…。若手全員がネタ見せをすることになりました。たけしさんの楽屋に入って、ぼくらは正座をするんですけど、たけしさんはぼくらに背を向けたまま、テレビを見ているんです。「早くやれよ! 誰からなんだよ!」って。1人ずつ出ていって、「はい、どうも」ってやると「声ちいせえよ!」とか怒られました。ずっと背を向けたままですよ。

  何番目かの若手が、「はい、どうも…」って始めて。「声がちいせえよ」「はい、どうも」「ちいせえっつってんだよ!」「は、はい、どど、どうも…」「言ってる意味がわかんねえよ!」とやっているうちに、緊張のあまり若手が泡吹いて倒れそうになったんです。そうしたらたけしさんが慌てて振り向いて「おい、大丈夫かよ」って。そこからちょっと和んでいって(笑い)。「漫才ってのはよ、立ちかたがこうで、足の向きはこうで…」ってたけしさんが漫才の指導に入っていったんです。

――たけしさんの手ほどきは貴重ですね。個人的に怒られたこともありますか?

なべ:たけしさんって、賭け事をやらないんです。賭け事で当たる運もあれば、芸事の世界で当たる運もあって、運の量は決まっているから賭け事はやらないんだ、と言っていたのに、こっそり「馬券を買ってこい」って言われたんです。誰にも言うなよって。お金をもらって買いに行くときに、軍団の楽屋も通るので、「どこに行くんだ」と聞かれまして。「絶対に言うなと言われたんですけど、殿が馬券を買うんです」「どれどれ何番?」って。

 買ってきた馬券をたけしさんに渡したあと、たけしさんも含めて、軍団のいる楽屋で競馬中継を見ていたんです。みんな馬券を買ってるのはわかってるけど、黙ってるんです。テレビで、「それではゲートが開きます」って、馬が出た途端に、たけしさんが買った馬の騎手が落馬したんです。みんなが「あーっ!!」って指さして笑うから。ぼくがバラしたことがバレて、「おまえ、言うなって言っただろ!!」って。

――たけしさんに感謝していることはいっぱいあるでしょうね。去年のなべさんの結婚式では、たけしさんが祝辞を読んでいましたね。

なべ:『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の最終回でもやったような、「STAP細胞の実験をやめてここにやってきました」「ゴーストライターにお金を払っていないので、この先の文章はありません」「身長差のあるカップルというと、(矢口真里とかけて)不倫をしたカップルしか思い浮かびません」とか、そういう文章ですね(笑い)。妻はぼくより10cm身長が高いので。

――パワーリフティングで活躍したときにも、たけしさんは喜んだそうですね。

なべ:世界大会に行ったときの写真を見せたら、大喜びでした。というのは、ぼくは52キロ級のクラスなんですけど、52キロ級のチャンピオンクラスは、白雪姫の7 人の小人のような、猫ひろしのような身長なんです。ぼくが3位で表彰台に立つと、ぼくがいちばん高いんですよ。表彰台に立つ1位の人より、ぼくのほうが頭ひとつ出てるわけです。

 そんな選手ばっかりの写真を見せたら、そういうのがたけしさんは大好きなので、大喜びでした。「この写真を大きく焼いてくれ」って言われて、額に入れてプレゼントしました。それをスタジオ中走り回って、音声さんとか大道具さんとか、普段喋ったことがないスタッフにまで見せて回っていて、あんなたけしさんの姿は見たことがないですね(笑い)。

【なべやかん】
1970年8月22日生まれ。東京出身。1991年、父でタレントのなべおさみが、明治大学に替え玉受験で入学させようとして騒動に。父の芸名と明大二部(夜間)に引っかけた芸名で、たけし軍団に加入し、芸能界入り。元パワーリフティングの選手で、『全日本パワーリフティング選手権大会』2001年、2002年優勝。収集歴30年以上の特撮物キャラクターコレクターでもある。『なべやかんのJスマイルライフ』(エフエム茶笛)や『武蔵忍法伝 忍者烈風』(東京MX2)などにレビュラー出演中。

最終更新:8月8日(土)11時17分

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