《4日に公開された平成24年11月15日開催の国立競技場将来構想有識者会議(第3回) デザイン競技審査関係の議事録要旨(抜粋)の後編》

 佐藤氏「安藤座長、ありがとうございました。

 ただいまの審査の講評にもございましたけれども、審査の過程で多くのご議論もございましたようですし、また、実現に向けて幾つかの課題を克服する必要もあろうかと存じます。ただ、わが国のテクノロジーを駆使したチャレンジになるということで、国家プロジェクトとしてふさわしい選定になったようには思ってございます。

 それでは、ただいまの安藤座長のお話がございましたけれども、委員の皆様から少しずつご意見をいただきたいと存じますが、まず、審査委員会に参加をしていただきました、スポーツ利活用の小倉座長からまず一言お願いをいたします」

 小倉純二委員(スポーツグループ座長)「小倉でございます。今、安藤審査委員長がご説明されたとおりでして、委員会として非常に真剣な議論が行われ、その中で最終的には日本を元気づけるデザインはこれしかないというふうな結論になったわけです。

 スポーツのほうの側としては、いろいろな競技団体のご意見も伺って、この中で生かせるというふうな結論になっておりまして、ただ、これから基本設計並びに実施設計の段階で、芝の管理であるとか、問題についてはこれからよく詰めていくということになっております。いわゆる最終案は審査員みんなの共通の最優秀であったかと思います」

 佐藤氏「ありがとうございました。続きまして、文化の利活用の座長、都倉先生からお願いいたします」

 都倉俊一委員(文化グループ座長)「小倉座長とあまり変わった意見ではないのですけれども、私個人としてこの建物に票を入れたのは、やはり何といってもこの圧倒的な存在感と、そして神宮の森にそびえ立ったときのこの美しさというものが、やはりこの国立競技場は今の国立競技場と同じように50年間、100年間、使っていかなければいけない建物でございます。ある意味では日本のシンボルみたいな建物になるのではなかろうかということでございます。

 ただ、小倉座長もおっしゃっていたように、これからが機能性という意味では、この建物、巨大な建物をスポーツと文化と両面でどういうふうに使っていくかと。使う上でどういう機能性を持たせるかということは、細部にこれから詰めていかなければいけない、技術的にも問題がいろいろあるのではなかろうかと思いますが、安藤委員長の専門的なご意見でそれは可能であると。特に芝の育成、そしてコンサートとか催しものをするときに、その芝をいかに養生し、また大切に、それも経済的にできるかと、こういう問題がこれから検討材料としては残っておりますが、全体的にこのデザインに関して、この美しさに関しては審査委員会一致で選ばせていただいたというふうに思っております。

 ありがとうございました」

 佐藤氏「どうもありがとうございました。では、引き続き、委員の皆様方から一言ずつご意見を頂戴したいと存じております。

 はい。それでは、日本体育協会の張会長、お願いをいたします。ご意見もございましたら」

 張富士夫委員「これ、見た目にはすばらしいので、こういうものが本当にできたらすごいなと、こういうふうに第一印象感じましたが、先ほどのご説明で、これ、日本の建築技術とか土木技術じゃなきゃできないよと、こういうことでございますので、それだったらぜひ、この絵に近いものをつくり上げていただきたいと。さっきのお話にも出ましたように、50年、100年、次の世代、次の次の世代の人たちが存分に利活用できるようになるっていうのは、これはすばらしいなと思います。

 芝や何かのことは、私、もちろん専門ではございませんけれども、私どもの地元の豊田スタジアム、芝は何回も何回も研究しまして、今、相当いいものができましたので、やはり芝生も研究して、いろいろトライしてみるとやりようがあるんだなという、詳しいことはわかりませんが、そういうことを感じていますから、いろいろなところにある知恵っていうんでしょうか、経験を集めれば、うんといいものができてくるんじゃないかと、こんなふうに思っております。ぜひ頑張っていただきたいと思います」

 佐藤氏「ありがとうございました。では、続きまして、オリンピック招致の観点から竹田会長、お願いいたします」

 竹田恒和委員「まず、この46の作品を精査されてここまでまとめてこられたJSC、そして安藤先生はじめ関係者の皆様のご苦労に心から敬意を表したいと思います。

 私も46の作品を見せていただいた中で、印象に残っていたものは幾つかあるのですが、やはり最優秀賞というのは、その中でも本当に躍動感があって、斬新なデザイン、また、インパクトが非常に強かったことを覚えておりました。

 2020年、東京オリンピック招致がもし決まって、このスタジアムがメーンスタジアムとして世界に発信できたら、本当にこのオリンピックのシンボルとしてすばらしいものになる。

 それから、安藤先生のお話を伺って、これをつくり上げる技術がまさに日本の土木あるいは建築の技術でなければできないということをお伺いして、また、まさに最優秀賞を現実的にできたらすばらしいなということを感じました。

 また、優秀賞、そして入選もすばらしいデザインだと思いますが、この最優秀賞はこの中でも飛び抜けているなという印象をいただきました。

 どうもありがとうございます」

 佐藤氏「ありがとうございます。続きまして、アンチ・ドーピング機構の鈴木会長、お願いいたします」

 鈴木秀典委員「まず初めに、この大変すばらしいご選考をいただきましたことに感謝申し上げます。個人的でございますけれども、46、私も実際に拝見させていただきまして、やはりこれが一番印象に残っておりまして、まさにそれと一致して、すばらしいなというふうに感じた次第でございます。

 先ほど、スポーツの躍動感、それから新たな技術の挑戦ということがございました。この新しい施設ということでございますので、ぜひともわれわれのアンチ・ドーピングのような新しい分野、これらも含めた新しい施設をつくっていっていただければと思います。ありがとうございました」

 佐藤氏「ありがとうございます。次にラグビーの観点も含めまして、前日本体育協会会長、森先生からご意見を頂戴したいと存じます」

 森喜朗委員「全体としては、皆さんのおっしゃるとおりです。ただ、この全体像46点見たときもそうですが、これもそうですが、正直言うと、神宮のところに宇宙から何かがおりてきたっていう感じなのです。これ、本当にマッチするのかなという。これはその次の入選作、SANAA(事務所)+Nikken(日建設計)、これもそうなんで、これ見ていると、神宮の森にカキフライのフライのないカキか、生ガキがいるっていう感じがして、私は専門家じゃないからわからないので、極めて庶民的な感覚で、これ、合うかなっていう感じをちょっと持ちました。これは色とか何とかでカバーするのか。ならわかるのだけど、こっちは宇宙から来た何かで、こっちはカキフライのフライになる前の感じで、このあたりがちょっと違和感を、正直に言えといえばそうなります。

 それから、これは小倉さんも同じだろうと思うんだが、この1番の方、最優秀もそうだし、その次の方も、この絵、両方見ていると、せっかく臨場感あふれるサッカーやラグビーにぐっと近づけてみるという、この可動式であるけれど、それにしては随分遊びが多いなと。フィールドの周り、ものすごく遊びが多いでしょう。これだったらあんまり、臨場感がないのではないかと」

 小倉氏「その横、図面から、広い面、長い面は完全に可動の仕組みがおりるように設計されているのです。で、ゴール裏のところだけがまだ、完成していないのです」

 森氏「じゃあ、これはもっと近くなるっていうことですね」

 小倉氏「そういうことですね。ですから、今、この中で意見が出ましたのは、ゴール裏の可動部分が十分計算されていないので、基本設計の段階でここの部分に可動席を入れるというふうな形で臨場感を出すということになっています」

 森氏「これはこれから設計でされるのだろうと思いますが、せっかくここをなさるんですから、僕らにとって一番関心のあるところは実はここなのです。目の前で見えるというのが一番いいのでね、これはぜひ。だから、そういう意味じゃ、このコックスさんの、絵だけ見ればコックスのほうがぐっと近づいているという感じはいたしますので、その点だけであります。

 以下、本当にたくさんの中からよくお選びになって、私も全部見ましたけど、どうやって選ぶんだろうと思って、頭を痛めてみておりましたが、そのことについてご労苦に感謝をします」

 佐藤氏「貴重なご意見は記録をさせていただきまして、ご注意を今後の参考にさせていただきたいと存じます。今日は代理のご出席でございますが、知事の代理の秋山様、お願いいたします」

 秋山氏「私は代理でございますので、直接、委員である石原慎太郎に確認をいたしましたところ、審査委員長の安藤先生に一任をしたいということで意思決定をいただいております。よろしくお願いいたします」

 佐藤氏「では、河野先生の代理の尾懸様」

 河野洋平委員代理(尾懸貢氏)「同様でございまして、河野会長から一任をあずかってまいりました。感想としましては、本当にオリジナリティーが高く、流れるようなフォルムで、記録を後押ししてくれるような気がいたします。以上でごさいます」

 佐藤氏「ありがとうございました。それでは、伍藤副会長」

 鳥原光憲委員代理(伍藤忠春氏)「素人ですが、この躍動感と同時に、この最優秀作、女性的というか、優美で、優しそうな感じも受けますが、私どもパラリンピックの側からいたしますと、ロンドンで高まったパラリンピックの存在をさらに強める、非常にアクセシブルというか、みんなを受け入れやすいような施設に、これから中身を検討していただければありがたいなと思っております」

 佐藤氏「ありがとうございます。奥田様」

 鈴木寛委員代理(奥田氏)「ご一任ということの伝言を預かっておりますので、よろしくどうぞ」

 佐藤氏「ありがとうございました。一通りご意見を出していただきましたが、ほかにこの際、ご意見はございませんでしょうか。

 よろしければ、審議事項の1につきまして、本会議として審査委員会の審査結果どおりに最優秀賞はザハ・ハディド・アーキテクト、優秀賞はコックス・アーキテクチャー ピーティーワイ エルティディ、入選は有限会社SANAA事務所+株式会社日建設計ということで本会議として決定をするということでよろしゅうございますか」

 (「異議なし」の声あり)

 佐藤氏「ありがとうございました。それでは、そのように決定をさせていただきます」(後段略。了)