藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-08-25 藤子・F・不二雄大全集第2回配本 このエントリーを含むブックマーク

 本日25日(火)は、藤子・F・不二雄大全集の第2回配本『ドラえもん』第2巻、『キテレツ大百科』第1巻、『エスパー魔美』第1巻の発売日です。発売日が近づくとわくわく感が高まります。今後も数年間は、毎月のように25日あたりになるとF全集の新刊が発売されるわけで、このわくわく感がまだまだ持続すると思うと、さらにテンションが上がってきます。


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『ドラえもん』第2巻は、「小学一年生」1970年1月号で『ドラえもん』第1話に遭遇してから「小学六年生」1975年3月号までのお付き合いだった世代が読んだ全63話が収録されています。1962年度生まれの人が小学生のあいだに読んだ『ドラえもん』が順番に読めるわけです。この「世代別学年繰り上がり方式」という収録方法は、想像以上に素晴らしいと実感しています。当時の読者がリアルタイムで読んだ順番を追体験できるということ自体がまず貴重ですし、1話完結型の話でありながらそれを続けて読んでいると前月/今月/来月といった前後関係のつながりを感じさせてくれる部分があって、そういうところがわかりやすく把握できるのもありがたいです。(前月の話をはっきりと意識した描写もあるし、キャラクターの造形的・性格的つながりや、季節感の移ろい、画風の連続性、といったことも感じられる)


 この『ドラえもん』第2巻には、単行本初収録作品が6話あります。なかでも特筆すべきは、「小学二年生」1970年5月号初出の「ロボットのガチャ子」でしょう。ガチャ子は、『ドラえもん』の連載初期に5回だけ登場して忽然と消えてしまった幻のキャラクターでした。

 完全に埋もれてしまっていたキャラクターだったガチャ子が、“幻のキャラクター”として認知されるようになったのは、小学館文庫『ドラ・カルト 〜ドラえもん通の本〜』(1998年1月初版)において図版付きで紹介されたことが大きなきっかけだったと思います。

 では、なぜガチャ子は幻のキャラクターになってしまったのか……。それは作者の藤子F先生が自らの手で「いなかった」ことにしてしまったからです。F先生は、ガチャ子について次のように述べていました。

ガチャコというあひる型ロボットを出したことがあります。ライバルがいたほうが良かろうという軽い思い付きでした。ちっとも良くなかった。焦点が分裂して全く違った性格の漫画になってしまうのです。ガチャコはなかったことにしました。(てんとう虫コミックスアニメ版『映画2112年ドラえもん誕生』小学館、1995年)

 このように、作品のポイントが分裂して別ものになってしまうとの理由から、作者であるF先生の手でいなかったことにされてしまったキャラクターがガチャ子だったのです。ですからガチャ子が登場するエピソードは、これまで単行本に収録されることはありませんでした。

 それがこのたび、「全作品網羅を標榜する大全集」の刊行によって、ついに単行本に収録されることになったのです。これは記念すべきことだと思います。(F先生の意向に反していると言えばそうなんですが…)


 アヒル型ロボットのガチャ子は、ドラえもんの頼りなさを補うためのび太の面倒を見るという役回りです。ガチャ子が何かやりはじめるとドラえもんは対抗心を剥き出しにするのですが、両者ともなんだかズレたことばかりするため、周囲の迷惑を顧みないハチャメチャな結果を招くことになります。

 ガチャ子が登場する話は、今回F全集『ドラえもん』第2巻に収録された「小学二年生」1970年5月号発表分のほか、「小学一年生」1970年5月号、6月号、7月号、11月号で発表された4話が存在します。これら「小学一年生」で発表された4話は、10月発売の『ドラえもん』第3巻に収録される予定です。

 このうち「小学一年生」11月号で発表された話は、問題作「クルパーでんぱのまき」ですね(笑) 「クルパーでんぱのまき」でガチャ子が使う“クルパーでんぱ”は、ガチャ子の説明によれば「あたまもからだもよわくなるでんぱ」という恐ろしいシロモノです。この電波を浴びた友達も先生も両親も、みんな目が互い違いになって鼻水をたらしっぱなしになります。そんな内容ですから、F全集刊行の報を受ける前までは「クルパーでんぱのまき」が単行本に収録される可能性はかなり低いと思っていたのですが、それがいよいよ10月発売の第3巻に収録されることになるのです。


 ちなみにガチャ子は、日本テレビ版のアニメ『ドラえもん』(1973年)では放送の途中からレギュラーキャラになっていて、けっこう活躍していたようです。日テレドラのガチャ子は、しずかちゃんの家に居候していました。

 それから時を経て2006年6月2日、今度はテレビ朝日版の『ドラえもん』(水田わさび版)に、ガチャ子が登場したのです。そのときは、まさかガチャ子が出てくるとは思っていなかったので驚きました。「クリスチーネ剛田大先生! ジャイ子の新作マンガ」という話だったのですが、その話のなかでドラえもんとのび太が観ているテレビ番組にガチャ子がちらりと映ったのです。(原作ではオバQでした)

『ドラえもん』第2巻の特別資料室には、「ツチノコ見つけた!」雑誌初出版のラストページが収録されていて、単行本版のオチの続きにもうひと展開あったことがわかります。いい資料ですね。

 

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 F全集『キテレツ大百科』第1巻は、『キテレツ大百科』自体に単行本未収録話がないため「単行本初収録」という売りはありませんが、既存の『キテレツ大百科』の単行本で最も多く売れたであろう「てんとう虫コミックス」全3巻(小学館)では読めない話が、F全集第1巻に4話収録されているので、サブタイトルだけ紹介しておきます。

「聞き耳ずきん」

「公園の恐竜」

「冥府刀」

「一寸ガードマン」

の4話です。

 また、「てんとう虫コミックス」の収録内容に準拠した「コロコロ文庫」全2巻(小学館)では、「てんとう虫コミックス」に収録されていた「地震の作り方」という話が未収録となりましたが、今回の全集ではちゃんと「地震の作り方」も収録されています。「地震の作り方」が「コロコロ文庫」で未収録となったのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災への配慮からだった、と言われています。「コロコロ文庫」全2巻だけで『キテレツ大百科』を読んできた方は、今回のF全集『キテレツ大百科』第1巻で合計5話を初めて読めることになります。(「藤子不二雄ランド」全4巻では全話読めます)

 特別資料室に、『キテレツ大百科』連載予告のためにF先生が描き下ろしたイラストが載っています。主人公の木手英一くんやコロ助のキャラデザインが、実際に連載が始まったときのものとずいぶん違っていて面白いです。コロ助が団子を持っているのが、とぼけていて愉快です^^

 

 巻末の解説ページでは、F先生のアシスタントだったこともある漫画家・田中道明さんが、『キテレツ大百科』の話を例にとってF作品の構造分析を試みています。物語から構造を抽出するという方法論は、ロシアフォルマリズムから構造主義へとつながっていったものですが、私もかねてから直観的に「藤子Fマンガは構造的な要素が強いな」と感じていたので、今回の解説文はとても興味深く読めました。もちろんF作品の場合、構造だけではなく、その構造に肉付けされた部分や物語を組み立てる前の発想に才気や個性が見られるわけですが、F先生がこれほど大量に安定したレベルの作品を描きつづけられたのは、物語の構造への分析的なまなざしがあったからなのだと私も思います。


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 F全集『エスパー魔美』第1巻も、『エスパー魔美』に単行本未収録話がないため「単行本未収録だった話が読める!」という訴求力はありませんが、F全集のチラシなどで告知されていたように、2色カラー画稿を完全再現するというのがセールスポイントになっています。初出雑誌で『エスパー魔美』を読んでいた人以外の目に触れることがなかった魔美のカラーページの色合いが、いよいよ単行本で見られることになったのです。

 本当なら『エスパー魔美』以外の作品も、カラーページはカラーで再現してほしかったのですが、すでにそれは無理だとわかっているので、せめて幼年向けマンガなど作品の大半がカラーページで描かれた作品だけでもカラー単行本として刊行してほしいところです。

 巻末のアニメ監督・原恵一さんの解説文がいいです。藤子Fファンだったアマチュア時代の思い出やアニメーターとしてアニメ『エスパー魔美』の携わった経験を踏まえつつ、的確でわかりやすい『エスパー魔美』論を書いておいでです。



 第3回配本は、『オバケのQ太郎』第2巻と『パーマン』第2巻の2冊です。9月25日発売。

hide3hide3 2009/08/25 23:36 はじめまして毎日一応チェックさせていただいてます
ついに第2回目も発売しましたね
うちは中・四国で5番目に大きく新幹線のぞみも止まるのに本の発売は基本1日遅れと相当つらいです(泣)
「世代別学年繰り上がり方式」ですが今日2chを見ていて気になることがあって読み直したんですがドラえもんの第1巻で「ドラえもんだらけ」でどら焼きにこりたドラが次の月の「のろのろ、じたばた」ではどら焼きを見るだけで「宿題ならダメ」とかいうのはこの方式でないと気にも止めなかったと思うとホントにいい収録方法だなと思います

koikesankoikesan 2009/08/25 23:54 >hide3さん

どうも、はじめまして。

hide3さんが第2回配本を読めるのは明日になるんですか。正規の発売日より一日待たされる分、思いっきり濃く味わってくださいね^^

「世代別学年繰り上がり方式」は、この収録方法だからこその気づきや面白みをもたらしてくれて、ありがたいです。hide3さんが事例を挙げられた「ドラえもんだらけ」→「のろのろ、じたばた」の流れも、まさにこの収録方式だから容易に意識できるもので、今後もこういう発見があるかも、と思うと嬉しくなってきますよね。
「ドラえもんだらけ」を読んですぐ次に「のろのろ、じたばた」を読むと、ドラえもんの「宿題なら、だめ」という短いセリフに込められた感情の背景がわかるので、なおさらこの場面が面白くなりますね。

domedome 2009/08/26 10:59 拙い解説を取り上げていただきありがとうございます。
ぼくも、koikesanのおっしゃる通りだと思います。
大全集、大変好調みたいですね。
2年くらい前、大全集の発行人の方に
構造のことを伝えたのが徹底した全集にすることの
一助になったかも、、、しれません。(理論も大切ですから)
いつもだと「選集」程度で終わってしまいますからね。

のび太郎のび太郎 2009/08/26 15:55 「キテレツ大百科」は以前、単行本(コロコロ文庫)版を買って読んでいました。過去に、「国際子ども図書館」で初出かFFランド版で未収録作品8話が読もうと思っていました。全集が出るときに古本屋に売ってしまいましたが、今回のF大全集で全話が読めてよかったです。次回(10月)には、「枢破天狗」「仙境水」「唐倶利武者」が読めるので、楽しみです。

koikesankoikesan 2009/08/26 18:13 >domeさん

私も物語の構造論にちょっと興味を持っていまして、その関係の本で買いやすいものを買って読んだりしています。(いま手元にある本だと、ジャン=ミシェル・アダン『物語論―プロップからエーコまで』、大塚英志『物語論で読む村上春樹と宮崎駿―構造しかない日本』など) そういう本で書かれているふうに藤子マンガの構造を分析してみたいなという思いは漠然とあるのですが、実際にやるとなると自分に足りないものがありすぎて何もできていません^^ ですから、domeさんがF全集巻末の解説コーナーという文字数の限定された場所で、わかりやすく簡潔にF作品の構造を抽出してみせてくださったことにたいへん示唆を受けています。

藤子・F・不二雄大全集刊行の第一報を受けたときは、ついに本格的な全集が出るんだ!という喜びのなかに、「選集」程度の規模になるんじゃないかという疑いのような気持ちも若干あったのは確かです。でも、全集に関する情報が新たに発表されるたびに、これは本気だ! これはやってくれる! という確信が深まっていきました。F全集の刊行はまだ始まったばかりの段階ですが、今後もどこまで徹底してやってくれるか、全集をつくっている方々の仕事に期待しております。


>のび太郎さん

「キテレツ大百科」は藤子不二雄ランドで全話読むことができましたが、それもずいぶん前に絶版となり古書価格が結構高くなって入手が簡単ではなくなっていました。今回の全集で、コロコロ文庫やてんとう虫コミックスで読めなかった話が容易に読めるようになってよかったと思います。第2巻では、のび太郎さんがおっしゃるように、コロコロ文庫およびてんとう虫コミックスに未収録の話が3作あって、これも未読の方には大きな楽しみですよね。

のび太郎のび太郎 2009/08/27 11:17 「キテレツ大百科」で、今までの小学館の単行本で読めない部分がありました。「如意光でひっこし」で、1ページ割愛されてる部分がありました。

koikesankoikesan 2009/08/27 19:10 >のび太郎さん

藤子不二雄ランドではその1ページも収録されたのですが、小学館版の単行本はずっと割愛されたままでしたね。大全集第2巻では、その割愛されたページも収録されることになりそうです。

和歌ドラ和歌ドラ 2009/08/29 19:23 koikesanさん、皆さん、こんにちは。

大全集・ドラえもん?Aで気になった一コマがありまして…
「たねのない手品」の158ページのラスト、
この女性は誰なんでしょうか…?

koikesankoikesan 2009/08/29 21:04 >和歌ドラさん

たしかに、この女性は誰だろう?と思いますよね^^
確定的な真相はわかりませんが、作品の脈絡から見て、おそらく、F先生はのび太のママのつもりで描かれたんじゃないでしょうか。顔を描き間違える、というミスだったんだと思います。

ルチャ・ティグレルチャ・ティグレ 2009/09/01 06:20 お世話になります。
第2回配本、キテレツだけ、てんコミ全3巻とFFL全4巻と比較しながら読み終わりました。
97ページなどの年は、初出時に戻したということでしょうか?

てんコミでは、チョーチンおばけの回から、コロ助の胸のボタンが
1個になります。
今回とFFLでは、コロ助の胸のボタンは、2つで統一されていますが、
このことは、初出掲載リストに一言書いておいて欲しかったですね。
冥府刀と一寸ガードマンは、てんコミに収録されていないため分かりませんが、
この頃にすでに1個になっていたのでしょうかねえ?
今回のキテレツは、吹き出しが、極力漢字になっていたので読みやすかったです。
ドラは、ひらがなが多いので読みづらいですね。
表紙のキテレツの帽子の色とかが、てんコミの時と違うのはどうしてでしょうか?
コロ助の顔は、スクリーントーンを貼っていない方がいいですね。
ちょっと文章がまとまってなくてスイマセン。

koikesankoikesan 2009/09/01 08:11 >ルチャ・ティグレさん

全集の「キテレツ大百科」第1巻と、てんとう虫コミックス、藤子不二雄ランドを読み比べられたんですね。ファンとしては楽しく興味深い作業ではありますが、半面、細かくてエネルギーの要る作業でもあって、こういう作業が得意な方もいらっしゃいますが、私は比較的苦手なタイプなので、こうして報告をいただけると参考になります。ありがとうございます。

全集では、作中に出てきた年代をできるかぎり初出時の数字に戻すようなので、97ページの年代も初出時のものにしたようですね。
コロ助の胸のボタンは、藤子不二雄ランド収録時に2個に統一されたということでしょうね。原稿がすべて2個に修正されているような印象です。「冥府刀」と「一寸ガードマン」については、初出誌が気になるところですね^^

全集は、F先生の原稿の再現にこだわっているので、フキダシの中の漢字と仮名の加減も、原稿に書かれたF先生の文字表記に従った、ということでしょうかね。

コロ助やドラえもんの顔・体に網点がないのが今回の全集の特徴ですよね! 従来の単行本ではコロ助やドラえもんの顔・体に網点がほどこされているのですが、これは原稿に直接スクリーントーンが貼られたものではなく、原稿の青鉛筆で指示された箇所に印刷段階で網掛け処理がほどこされたものなので、全集ではF先生の原稿を重んじるという考えから、網掛け処理をほどこしていないようです。全集の「ドラえもん」で時おり網点が見られる回もありますが、これは原稿に直接スクリーントーンが貼られているからみたいです。
表紙などのイラストの色合いがてんとう虫コミックスと違うのも、原画の色合いを尊重したからだと思います。てんとう虫コミックスでは、たぶん、印刷の段階で原稿の色より濃くなるような処理がほどこされているんだと私は推測します。

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