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【質問】いわゆる「経済的徴兵制」。~経済的理由で自衛官になること

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毎度毎度言わなくていいことかもしれませんが、今回もとっても長いです。
一気に読んでしまおうとせずに、ちょこちょこどうぞ。

いやでもね、長いのはみなさんのご質問やご意見に丁寧にお答えしようとしてるからなんですよ。
できるだけ分かりやすく丁寧に書こうとしたらこうなっちゃうんですよ。
長くなるのは私のせいじゃなくてみなさんのせいなんですよ。

あーあ、とうとう人のせいにし始めたよ。
最低だなぁ。

最低な岡田さんがお答えする今回のご質問は、いわゆる「経済的徴兵制」についてです。

前々回の
「徴兵されないか不安なみなさんへ。」
http://okadamari.blog112.fc2.com/blog-entry-254.html

前回の
「【質問】大戦中の日本や現代の他国のように、今の日本が徴兵をすることはないの?」
http://okadamari.blog112.fc2.com/blog-entry-255.html

の続きモノですので、まず上記2本からお読みください。
(でないと、意味が分からない所が多々あると思います)

前々回、前回ともたくさんのコメントをありがとうございます。
一つひとつすべてにお答えしたいのですが、仕事を優先しなければならず、手が回らずに申し訳ありません。
すべて読んで、「ふむふむ」「なるほど!」「了解!」とか一人で言ってます。
頂いたご質問と合わせ、少しずつ回答していきますので、時間がかかりますが気長にお待ちください。
……で現状、お許しください。
わざわざお時間作って書いてくださってるのに、こんなで本当にすみません。

このコラムをお読みくださる方は、ぜひコメント欄も目を通してみてください。
そして、ご自身のお考えを持つ上での、参考にしてください。

応援メッセージをくださった方も、お気に掛けて頂いて本当にありがとうございます。
若い方からのメッセージで、新しい視点を持つこともできました。
ご自身の思いや夢を送ってくださる方もいらっしゃって、とても嬉しいです。
どうか、みなさんの目指す道を、真っ直ぐに歩いて行ってください。
本当に、本当に、ありがとうございます。

あと、某大学生さん、お誕生日おめでとうございます!

さて、本題。
「徴兵されないか不安なみなさんへ。」のコメント欄で、いわゆる「経済的徴兵制」についてのご質問(ご意見?)を頂きました。
今回は、その中のお二つを元にお話をします。

まずはひとつ目から。


【質問】
志願したくて志願する人ばかりではないと思う。志願せざるを得ない状況を今つくりだそうとしている。

特集ワイド:狙われる?貧困層の若者 「経済的徴兵制」への懸念
http://mainichi.jp/shimen/news/20150723dde012010004000c.html
(毎日新聞)


※リンクまで貼ってくださってありがとうございます。
一度、リンク先を読んでから続きをどうぞ。


【回答】
私も毎日、「経済的強制労働」をしています。
以上。

……では解決しないでしょうか。

「徴兵」とは自ら進んでやるものではありません。

「お金がないけど勉強したいから防衛大学校に行く」
「お金がないから貸費学生になる」

これらは、「徴兵制」ではありません。
「経済的」をつけても「徴兵制」ではありません。
防衛大学校も貸費学生も、「志願」するものです。
自分で志願して初めて、その試験を受けることができます。

「経済的理由で自衛隊に入らざるを得ない。だからこれは『経済的徴兵制』だ」
という論法のお気持ちは分からないでもないのですが、正しくは
「経済的志願」
です。

ちなみに「徴兵」という言葉。
三省堂「大辞林」には
「国家が国民を強制的に兵役につかせること」
とあります。
「強制的に」です。

せめて
「経済的徴兵」
という言葉であれば、
「ああ、経済的理由で嫌々自衛隊に入るということを言ってるのかなぁ」
と想像できますが、
「経済的徴兵制」
と、「制」まで付けたらまったく意味が通じません。

「徴兵制」は、徴兵の制度を指します。
国家が
「年収○円以下の人、貯金○円以下の人を全員、徴兵する」
という制度を作れば、「経済的徴兵制」という単語もなんとか成り立つのかもしれませんが、そんな制度はありません。
そんな制度は古今東西、どの時代にもどの国にもありません。
(古代から現代まであらゆる「国家」や「社会」をしらみ潰しに調べたワケではないので分かりませんが。あります?)

「徴兵」とは、国家が国民に対し、強制的に課す「義務」です。
そこに国民個人の経済的事情は関係ありません。
(ここでは、台湾や北朝鮮が「国家」というものなのかどうか的なお話は省きます)

不正が横行している国で、いわゆる「袖の下」で徴兵を逃れるという事例はあるかもしれませんが。
でもこれは「不正」が行われているだけですからね。
「制度」ではないですからね。

なので、
「経済的理由で自衛官になる」
は、
「経済的志願」
です。

なんらかの目的があって、「徴兵」というものの不安を煽りたい方は、「経済的志願」ではなく、「経済的徴兵制」という言葉をわざわざ使いたいんだろうなぁというのは分かるのですが、「経済的徴兵制」ではなくて、「経済的志願」です。

そして、不安を煽りたいタイプの方々は手管がとても上手なので、その論調を耳にすると、なにか目的を持っているワケではない一般の方々まで不安になってしまいます。
勉強や仕事、家事や子育てなどで日々が忙しく、国防の知識を得る機会のない方は特に、不安を持って当たり前です。

そういう方々の不安を、少しでも解消するために、このコラムをお役立て頂けたらとても嬉しいです。

あと、「徴兵」というものを正しく理解せず、「経済的徴兵制」なんて言葉を使うのは、本当に徴兵制のある国の方々や、日本でも過去に徴兵された方々に、とても失礼だと思います。
「過去に若者が徴兵された悲劇を……」と、あの時代の若者を気遣うようなことを書きがちな新聞なんかが、「経済的徴兵制」なんて言葉を使っているのを見ると、当時の徴兵された方々をバカにされてるようでとても不快です。

現在も、お隣韓国には徴兵制がありますが、その徴兵(兵役)を免除される場合があります。
中でも、「スポーツの国際大会などでの成績によって、その代表選手が兵役を免除される」という話題は日本でも耳にしますよね。

もし「経済的徴兵制」という言葉が成り立つのなら、スポーツ代表選手に選ばれずに兵役を免除されない韓国の若者たちは「運動能力的徴兵制」ということになります。
これって、韓国の若者にすごく失礼じゃないですか?

もう一度言います。
「経済的理由で自衛官になる」
ことは、
「経済的徴兵制」
ではなく、
「経済的志願」
です。

……と、ここでこのお話は終わっても良さそうなもんですが、そしたら読者のみなさんも長文を読む必要はないのですが、せっかくなので「経済的志願=経済的理由で自衛官になること」を掘り下げてみましょう。

事実、経済的理由をきっかけとして高等工科学校や防衛大学校、防衛医科大学校、貸費学生を進路の選択として考え、そして志願し、自衛官になった方はたくさんいます。
「安全保障法制ガー」とか言う前に、もう既にたくさんいます。
毎日新聞さんの「特集ワイド:狙われる?貧困層の若者 「経済的徴兵制」への懸念」を書かれた小林祥晃さんが懸念しなくても、もう既にたくさんいます。
今さら懸念しなくても、バブル時代からたくさんいます。
彼らがどんな思いで防衛大学校を志願したかに誰も心を寄せなかったバブル時代からたくさんいます。
みなさん、立派にご勤務されています。

この記事を書かれた小林祥晃さん、「金がないから防大行くんだろ?可哀想に」みたいな言い方は辞めてください。
若者の心に寄り添うフリして若者の心を踏みにじるのは辞めてください。
あなたにそんなつもりはないかもしれませんが、実際に経済的な理由で心を痛めている若者がこの記事を読んでどう感じるかを考えてください。

まだ高校生なのに、家庭の事情と自分の将来を考え、覚悟を決めて防衛大学校を志願した人を侮辱するような物言いは辞めてください。
高等工科学校を志願した人は、それを中学生のときに決断してるんです。
まだ中学生なのに、親のこと、兄弟のこと、そして自分の将来をきちんと考えて決断した人を侮辱するのは辞めてください。

彼ら、彼女らも、そしてその親御さんもご兄弟も、心を持った人間です。
もう一度言います。
絶対に辞めてください。

貧困問題、ブラック問題は解決すべき事柄です。
でも、それは徴兵に結び付けることでしょうか?
自衛隊に絡めなきゃいけないことでしょうか?

この記事を書かれた小林祥晃さんがやるべきことは、「経済的徴兵制」なんて日本語を正しく使う業種の方とは思えないような言葉を操って若い人たちの不安をあおることではなく、貧困問題やブラック問題を正しく提起し、考察し、若い人たちの不安を少しでも取り除くことではないでしょうか。
この記事を書かれた小林祥晃さんが、自衛隊の募集方法を「お金のない若者を狙っている」ともし感じてしまったのであれば、若者に「安易にその道を選ぶのではなく、自衛官という仕事を正しく理解しましょう。志願するならちゃんと自衛隊を知り、自分で考えてからにしましょう」と伝えることではないでしょうか。
「自衛隊を知りたいなら毎年8月に富士総合火力演習やってるから見に行くといいですよ」とかそんなことまでは期待しませんが、若者の不安をあおるのではなく、正しく事実を伝えることではないでしょうか。

そして、若いみなさんへ。
学業に経済的な事情は、どうしても付いてきます。
将来に自衛官という選択肢があるのなら、高等工科学校や防衛大学校、防衛医科大学校、貸費学生を考えてみるのも良いと思います。

でも、自衛官になるのが嫌だったら、その道を選ばなくていいんですよ。
高等工科学校や防衛大学校、防衛医科大学校、貸費学生は、「自衛官になる」人が「志願」するものですから。
これらの進路を考えるのでも、同時に奨学金や奨学生、特待生、そして学ぶためのお金を作る方法もできるだけ熟慮してください。
いろんな人に相談してください。
できるだけ可能な選択肢を、まず知ってください。

自衛官という道を選ぶなら、その知識を得てください。
そのためにだったら、私も少しはお役に立てることがあるかもしれません。
もしなにかあれば、なんでも相談してください。

そして、自分でよく考えてください。
それから、あなたの決断をしてください。

「経済的な理由のみ」で、「やりたくもない自衛官をやる」。
私も、反対です。
その点に関しては、この記事を書かれた小林祥晃さんと同意見です。

あ、一応念のため。
経済的理由じゃなくて高等工科学校や防衛大学校、防衛医科大学校に進む人もたくさんいますからね。
当たり前ですが。

あ、あとこれらの学校、全部人気です。
倍率すごいです。
最終試験に合格して採用されるの、なかなか難しいです。
受験を考えている方は、その辺もがんばってくださいね!

私の友人・知人には、これらの学校出身の自衛官がたくさんいます。
お互いの学生時代なんかの話もフツーにしますので、「なんで防大行ったの?」と聞くこともあります。
すると
「だって、防大は学費かからないし」
「うち、金なかったからさ」
という返答はよくあることです。

防衛大学校、防衛医科大学校の、一般の大学との大きな違いは
・将来、幹部自衛官となる人が学ぶ学校である
・学費がかからず、手当がもらえる
の2点です。
(防衛大学校は「大学」ではありません。学生の身分は特別職国家公務員です。学業や訓練は「業務」なので手当ても出ますし、また受験料もありません)

なので、「なんで防大行ったの?」に、「だって、防大は学費かからないし」「うち、金なかったからさ」と返ってくるのはよくあることです。

ここまで聞くと、「ほらやっぱり!経済的な理由で可哀想に」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、彼らはそれだけでその進路を選んでません。

「なんで防大行ったの?」
「だって、防大は学費かからないし」
「でもさ、いくら学費がタダだっつっても訓練とか勉強とか厳しいでしょ?全寮制だし。防大は嫌だって思わなかった?」
「そりゃ厳しいけど、自衛官になるのに全部必要なことだから」

たいがい、こんな会話です。
彼ら、ちゃんと分かって進路を選んでるんです。
厳しいことも、辛いことも、それがなんのためにあるのかを分かった上で決断してるんです。
そして、今も自衛官をやってるんです。

めっちゃ厳しいですからね。
防衛大学校も防衛医科大学校も高等工科学校も。
経済的理由「だけ」で入ったら、続かないです。
「意思」がないと続かないです。
経済的理由のあるなしに関わらず、覚悟を決めて入校した人でも、辞める人はいます。
そんなところに、経済的理由「だけ」で入校したら、続かないです。
試験に合格して入校はできても、自衛官にはなれないです。

あ、めっちゃ厳しい防衛大学校、防衛医科大学校、高等工科学校ですが、卒業生から当時の思い出話を聞くとすんげー楽しそうです。
それだけ充実してたんでしょうね。

そして余談。

防衛大学校を卒業して自衛官になると、幹部自衛官として勤務をします。
自衛官は、階級で「曹士」、「幹部」とざっくり二つに分けられますが、このうち「曹士」は部隊で任務を実行する人たち、「幹部」は部隊を指揮する人たち……とこれまたざっくりですが、こんな感じです。

防衛大学校の学生は、高校卒業後に4年間、幹部自衛官となるための授業や訓練を受けます。
若い時代から専門的な教育を受けているので、将来は高い階級まで進みます。
(どのくらの高さまで行くのかは、人それぞれです)

この「高い階級」。
外国軍の場合、国によっては、この階級になることを許されているのは「それなりの家柄の人」だけだったりします。
よその国のことなので国名までは書かないでおきますが、みなさん当たり前に知ってる先進国も含まれます。
国によっては、「高い階級」になれるのは、生まれながらの、いわゆる「ええとこの子」だけだったりするんです。

しかし、日本の自衛隊は違います。
防衛大学校には、どんな家の人でも入校できます。
防衛大学校だけじゃなく、どんな学校も、そして学校だけじゃなく普通の入隊も同じです。
裕福だろうが、経済的に困ってようが、どんな家に生まれた人でも、試験で採用が決まります。
そして、生まれ育ちに関係なく、正当に昇進します。

これ、良いことじゃないですか?

私の知人では、中卒でフラフラした後18歳で自衛官になり(防衛大学校ではなく、曹士の「士」で入隊)、昇進し続けて2佐になった人もいます。
2佐は外国軍で言うと「中佐」。
「ムスカ大佐」と「シャア少佐」の間です。

自衛隊では、学歴も家柄も貧富も関係ありません。
努力と実力次第です。

ちなみに、「ええとこの子」しか高い階級になれない国の軍人と自衛官の、同じ階級の人同士で話していると、自衛官はよく
「え?あなたは○○屋の息子なの?」
とかで驚かれたりするそうです。

この「○○」はフツーのお店屋さんです。
八百屋さんでも魚屋さんでもおもちゃ屋さんでも散髪屋さんでもクリーニング屋さんでも、なんでも好きなお店を思い浮かべてください。
日本じゃ別に「え?なんでそれで驚くの?」ってことですよね。
でも、その国の軍人さんは「日本は○○屋の息子でもこの階級になれるのか」って驚くそうです。

その国にはその国のやり方があるでしょうから、そのことを別にどうこう思いません。
でも、「どんな家の子でも何にでもなれる」、「そのチャンスがある」って良いことだと思いませんか?

あ、だからってなりたくもないのになろうとしなくていいんですよ。
やりたい人だけ、チャレンジしてみてください。

……と、世界各国にいろんな軍はあるけど、それぞれ違うよ、外国の某国軍が家柄的なんたらの経済的どうたらのってあっても自衛隊は違うよ、そして自衛隊はこんな面もあるよ、というお話でした。
(まあ、「某国軍で経済的徴兵制が……」っての、その国でもそういうことを言ってる方は、やっぱり日本と同じくちゃんと理解できてない方だったりするんですけどね。まあ、よその国のことはあまり言わないでおきます。文化もそれぞれ違いますし)

では、次のご質問。


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