【萬物相】快適な刑務所暮らしを提供する「監獄ブローカー」

【萬物相】快適な刑務所暮らしを提供する「監獄ブローカー」

 10年くらい前、検察の公的資金不正調査班が大企業役員2人に対して拘束令状を請求した。それから半日たって裁判所の結論が出た。1人は拘束、もう1人は棄却だった。明暗が分かれたのだ。「自由の身」となった人は突然立ち上がったかと思うとどこかに電話をかけた。顔が広いと評判の役員だった。「私が(拘置所側に)みんな話しておいたから、あまり心配しないでくださいよ。不便のないようにするから…」。彼は拘置所に行く同僚の肩をさすり、着ていたコートを脱がせた。

 金大中(キム・デジュン)政権時の不正事件「李容湖(イ・ヨンホ)ゲート」の李容湖被告=当時=は拘置所暮らしながらやることは全部やった。「企業ハンター」ばりに携帯電話3台で外部と頻繁に通話し、携帯用株取引端末(PNS)を操作した。数カ月間に2万回以上も株取引をしてコスダック(新興企業向け市場)上場企業5社を買収した。李被告にとって拘置所は「会長室」と同じだった。2億ウォン(約2100万円)受け取った弁護士がひっきりなしに拘置所に出入りして助けたおかげだった。

 刑務所にも「生活の質」の違いはある。あらゆるコネを動員して日当たりのいい監房や「私生活が保障されている」独房に入ろうとしたりする。「トラの毛」(裕福で知的水準が高い受刑者)や「イヌの毛」(カネもなく面会者もいない受刑者)という隠語があるゆえんだ。家族・知人が面会に来やすくて自宅に近い刑務所が人気だ。同じ房に入る顔ぶれに恵まれるかどうかもある。先日、高い地位にあった人が同じ房の人々の暴言に悩まされ、身辺保護を要請したそうだ。そういうこともあって看守の不正も後を絶たない。暴力団団長にタバコを買ってきたり、連続殺人犯にアダルト雑誌を差し入れたりする看守もいた。

 刑務所で行われる闇取引を仕事にする「監獄ブローカー」も誕生した。貨客船「セウォル号」沈没で拘束された清海鎮海運社員の家族に近づき、カネを巻き上げたケースもある。刑務所よりは自由がある拘置所に長くいられるよう虚偽の告訴をするブローカー、刑の執行停止や仮釈放を勝ち取ってやるというブローカーもいる。持ち込み禁止の物を差し入れたり、受刑者のお使いを本業にしたりする「執事弁護士」も増えている。有力者たちの刑務所の出入りが激しくなっていることから、元刑務官を特別採用した法律事務所もあった。

 いわゆる「ナッツ・リターン」事件で物議を醸した大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョンア)前副社長の刑務所生活で便宜を図る代わりに事業利権を手にした「監獄ブローカー」が検察に摘発された。1997年の大韓航空機グアム墜落事故の時、遺族対策委員長をして大韓航空側から金銭を受け取って拘束された人物だという。誰がロビー活動を受けたのか、検察が見極めなければならない。これを機に「監獄ブローカー」の一斉取り締まりを実施し、こうしたことを根絶してほしい。犯罪者を生まれ変わらせて社会に送り出す刑務所で、違法や不正がまかり通ってはならない。

李明振(イ・ミョンジン)論説委員
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