21世紀にふさわしい学力を目指す。その目標はうなずける。だが、今の学校や子どもの実情に目を向けなければ、絵に描いた餅になりかねない。

 2020年度にも小中高校で順にスタートする新しい「学習指導要領」の骨格案を、文部科学省が示した。

 目標にすえたのは、自ら問いを立て、様々な人々と対話しながら新しい価値を生み出す力を育てることだという。

 「ゆとり」か、「詰め込み」か。そんな学ぶ量の議論にとらわれがちだった考え方から脱皮し、知識をどう使い、社会とどうかかわるかを重視する。その方向性を支持したい。

 改革は大がかりとなる。高校で「公共」「歴史総合」などの科目をつくる。大学入試も見直す。国際的な情報化に応じ、考える力をしっかり育てたい。

 気になるのは、教室の現実をどこまでふまえているかだ。

 例えば、小学校高学年で英語を教科にし、週1コマを2コマにするという。だが、今でも時間割は他の教科でいっぱいだ。

 朝や昼休み後などの10~15分の利用も検討するというが、学校ではすでにその時間も「100ます計算」や「朝の読書」にあてている。詰め込むだけでなく、削る発想も必要だ。

 新たな指導要領では、知識の活用力をいっそう重視する。その方針を進めるうえで忘れてはならないのは、できるだけ平等を保つ取り組みだろう。

 全国学力調査の分析では、活用の問題の方が、基礎基本より格差が目立つ。家が豊かで親の学歴が高い子と、そうでない子の差が開く傾向がある。

 家庭環境による差を縮め、貧困の連鎖を断つのは公教育の使命だ。困難な状況にある子を放課後学習などで支えたい。そのためには教員やボランティアの拡充が求められる。

 文科省は、子どもが自ら考え、対話しながら課題を解決する「アクティブ・ラーニング」を普及させたいともいう。ただ国際調査では、少人数で話し合い、課題を解決する学習を頻繁にしていると答えた日本の教員の割合は参加国平均より低い。

 型だけ採り入れても、学力は育たない。教員養成や研修を変えることが欠かせない。

 「ゆとり教育」が批判を浴びた際、文科省は学校や保護者、社会との間に共通理解がなかったと総括した。今回、文科省は「社会に開かれた教育課程」を目指すとしている。

 ならば、指導要領をつくる過程から、学校で、地域で議論の場を広げてもらいたい。