ちょっと引っかかる言い分を目にしたので自分なりのルパン三世への考察を置いておく。
宮崎駿監督のルパン三世の劇場版2作目「カリオストロの城」についての話。
確かに「カリ城」は未だ愛されている作品だ。
銭型といえば「奴は大変なものを盗んで行きました。あなたの心です」の名言を浮かべる人も少なくないだろう。
「カリ城」は「ルパン三世」にとって重要な一作だが、カリ城がルパン三世の全てではない。
どちらかといえば「カリ城」は、宮崎駿アニメとして認知されてるように感じる。
金ローでカリ城やったら「あの宮崎駿監督の~」というナウシカとかラピュタとか魔女宅とか千と千尋とかでやたら聞く言い回しで紹介されている。
極めつけはこれだ。
このBDのルパンとクラリスのシルエットのジャケット絵。
劇中のメインキャラのシルエットを見せるのはジブリで出してるBDのジャケット絵に近い。
↑参考
少なくとも2015年現在の「カリオストロの城」は、あくまで「宮崎駿作品の一つ」「ナウシカ以前に宮崎駿監督が手がけたルパン」としての側面を全面に推している事がわかる。
かといってカリ城の実質的な前作である「ルパンVS複製人間」も金ローで放映される事もある。ジブリ補正はないもののルパン映画の名作としては大事にされている。
当時の興行収入だと複製人間が9.15億円。カリ城が6.1億円。
当時ネットがあったら変な煽りを受けていた事は容易に想像がつく。
「前作をしのげないのなら 2作目を作る意味がない」が当時のキャッチコピーらしい。
だがカリ城は前作をしのげていない。もはや黒歴史である。伯爵もぶっちゃけムスカよりは強そうだがマモーよりは弱そう。
でも「宮崎アニメの分かりやすい絶対悪」としてはムスカと一緒に引き合いにされるような悪役キャラではあると思う>伯爵
複製人間もカリ城も違った作風だが、どちらもルパン三世。作る人によって変わる作風の違いが魅力として出ている。
(ちなみに興行収入が前作に比べて落ちているのは押井監督のうる星やつらビューティフルドリーマーにも言える)
世界観的にも「色んなルパン達が居る」と言わんばかりの雰囲気は「カリ城」より「複製人間」の方が土台にある世界観に思える。
良くも悪くも原作のルパン一味は銭型に殺されて幕を閉じている。
これは予想だがモンキー・パンチ氏と宮崎駿監督の両方が仮に亡くなられてもルパン三世のアニメシリーズは作られ続けるのではないかと思っている。
同時に宮崎監督がルパン三世を再び手がける事も恐らくあるまい。
何故なら宮崎アニメはオリジナルで成功しているから。
「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」「もののけ姫」「千と千尋」あたりなんかは実際の所、世界観作りの天才的な部分も感じる。
むしろ原作モノをやってた時期よりも、自分で一から世界観作って来てから大成してきている。ナウシカはある意味、セルフ原作レイプだが当時は連載序盤で116分に詰め込むために仕方なかった部分もある。
原作だとクシャナ様がナウシカと同盟組んでるようなもんで、「真の主人公」「ナウシカより感情移入出来る」「イケメン」「フッ、殺すしかないようだな」と扱いが違うけれども、まぁセルフ原作レイプだから。
興業的に黒字が出るようになった初の宮崎アニメは魔女の宅急便。
これは原作ありだが、あれも「原作のその後」にそこまで拒絶反応が出るような作りにはなってなさそう。そもそも「ナウシカ」だって
2009年まで連載が続いていたらしく、最終キキは30代後半の子持ちママになっている。
「原作のその後」が決して嫌がられるわけでなく、興味のある人に受け止めてもらえるあたり幸せな作品だと思う。
ジジの言葉を最後まで聞こえなくなっちゃったりもしてる劇場版だけれども、あのエンドロールの後にちょっとしたらもう一度聞こえるようになってるかもしれない。
ルパンも、結局、カリ城は「宮崎監督の手がけた一作」として今後も定期的に引っ張り出されるだろうけど、宮崎監督が関わってなくてもルパンのアニメは作られ続けるだろう。
ルパンがダーディなアンチヒーローからマイルドな三枚目ヒーローになるためにカリ城の与えた影響は少なくないだろうけど、それも結局は時代性と規制とテレビ局が要求するヒーロー像の問題も大きい。
でも色んなルパンや次元や五右衛門や不二子や銭型が居るのは、ただの複製人間なだけかもしれない。そうした自由もある。
ただ宮崎駿は多分「その後」の存在を否定していないんじゃないんだろうか。
少女をいつまでもその時に留めておきたい欲求もあるけど、母親の強さも同時に認めている。
だからナウシカやキキにはその後があったっていい。そういう自由がある。
ルパンも同様。
宮崎駿の思想性はあんまり好きになれないけれども、あの辺の世界観作りとか寛容さみたいなものはやっぱり才能ですね。
カリ城も原作レイプしたから成功したわけではなく、あくまで一つのルパン像として多大な影響を与え続けつつも生き続ける。
もはやルパンとは概念なのかもしれない。