NHKスペシャル フローズンプラネット 第2回「激変する氷の大自然」[SS] 2015.08.06


(波の音)凍てついた極限の地は地球上で最も過酷な世界。
限られた人々しか近づけなかった特別な場所だ。
そこには今なお未知の自然が秘められている。
ところが今壮大な氷の王国が急激に失われようとしている。
氷とともに生きる極地の動物たちにも異変が起き始めているのだ。
北極と南極。
2つの極地は地球に残る最後のフロンティアだ。
数百万年もの時をかけてつくり出されてきた氷の大自然。
2回目の今日は2つの極地で起きている変貌に迫る。
ここは北極海。
まだ一面の氷に覆われている。
(風の音)激しく吹きつける風。
気温は氷点下40℃。
オスのホッキョクグマだ。
獲物を探して冬の間ずっと氷の上をさまよっていた。
北極の春は遅い。
山の斜面から顔を出したのはメス。
子供もいる。
冬籠もりから目覚めたところだ。
兄弟は3匹。
冬の間に生まれ初めて外に出てきた。
母親の後を必死でついて行く。
一番後ろを歩く子供は少し体が小さい。
親子はこれから獲物を探しながら氷の海を旅していく。
ホッキョクグマは北極海とその周囲に2万頭余りが生息しています。
海の氷の上で暮らすため詳しい生態はまだよく分かっておらず現在各地で調査が続いています。
麻酔で眠らせて捕獲し手早く体重や体脂肪などを測定します。
近年クマの栄養状態が悪くなっている例が見つかるようになりました。
ホッキョクグマはその個体数が減っているのではないかと懸念され国際的に保護が進められています。
極地の生態系の頂点に立つホッキョクグマ。
環境の変化の影響を真っ先に受けるのではないかと考えられています。
ホッキョクグマの親子だ。
凍った海を旅してきた。
子供は2匹しかいない。
一番小さかった子供は厳しい寒さに耐えられなかったのだろうか。
母親は5か月に及ぶ冬籠もりの間何も食べていない。
子供たちにお乳をやるためにまず食べ物が必要だ。
獲物を探す母親。
狙うのはアザラシだ。
でも子供たちは…狩りをする母親の脇で遊び始めた。
アザラシは小さな振動も敏感に感じとって逃げてしまう。
これでは母親の狩りの邪魔になる。
しかし子供たちを置いて行くわけにもいかない。
オスに見つかれば襲われる危険がある。
子供たちはちっともおとなしくする気はない。
とうとう母親に叱られてしまった。
結局この日アザラシを捕まえる事はできなかった。
子供たちの食事の時間。
獲物が取れなくてもお乳を与えなくてはならない。
これから海の氷が解け始めると獲物のアザラシが去っていき狩りは難しくなる。
母親は春の間に十分に食べ脂肪を蓄えなくてはならない。
北極では私たち人間もまた氷と関わって生きてきた。
今も自然の恵みとともに暮らす人々がいる。
シベリア北東部チュコト半島に暮らすシベリア・エスキモーの人々だ。
氷の海で獲物を探す。
この時期一番の獲物はセイウチだ。
流氷の上で過ごしている。
(セイウチの鳴き声)セイウチを発見。
体重2トンにもなる巨大な獲物だ。
潜ってしまう前に素早くしとめなくてはならない。
慎重に狙いを定める。
(銛が刺さる音)狩りを終えたハンターたち。
セイウチの狩りをする事ができるのは沿岸に氷がある時期だけだ。
巨大な獲物を皆で分け合う。
皮で作った袋で肉を保存する。
無駄になる部分は一つもない。
脈々と受け継がれてきた昔ながらの暮らし。
そこにも今大きな変化が起きている。
(笑い声)アラスカ北端の町…夏の初めに行われる「ブランケット・トス」と呼ばれる地元の祭りです。
人々は昔からこうして氷の海での狩りの成功を祝ってきました。
ブランケットで高く上がると遠くまで見渡せてすごく爽快なんだ。
時には5〜6mも上がってそしてまたちゃんと受け止めてもらうんだよ。
I’mOK!
(笑い)30年ほど前この辺りの海は夏でも一面氷に覆われていたといいます。
ところが今沖合の氷は消えてしまいもう狩りはできません。
昔は今頃の時期いつも氷の海に出かけていたんだ。
でももう氷がないからそれができないんだよ。
1980年の夏の北極海の氷です。
バローの沿岸は氷に覆われています。
それから30年夏の氷の面積は3割も減少しバローの沖からも氷が消えました。
これは地球規模で進む温暖化の影響と考えられています。
氷が消えたバローの周辺。
人々が獲物としていたセイウチにも異変が起きています。
浜辺に上陸したセイウチの大群。
多い時には2万頭にもなります。
これまで見られなかった異常な集団です。
セイウチはもともと春から夏氷の上で子育てをしていました。
ところが氷が消えて行き場を失ってしまったのです。
北極海の氷は春早い時期に解け始めしかも秋は遅くまで凍らなくなりました。
氷の上で狩りをするホッキョクグマにとって深刻な事態です。
狩りができない時期が場所によってひと月近くも延びているのです。
この変化がクマたちの栄養状態を悪化させていると考えられています。
更に表面からは見えない所で氷に大きな異変が起きていました。
そのデータは思いがけない所からもたらされました。
潜水艦です。
北極海は北米とロシアが向き合う軍事的に重要な場所。
1950年代後半から各国の潜水艦が偵察を行っていました。
潜水艦は浮上できる場所を探すため氷の厚さを測定していたのです。
このデータが公開された時科学者たちに衝撃が走りました。
北極海の氷の厚さはここ30年の間になんと半分ほどにまで薄くなっていたのです。
氷の厚さを表した図です。
白が濃いほど氷が厚い場所です。
カナダ沿岸の氷は厚く4〜5mありますがそれ以外大半の氷は僅か1〜2mほどにすぎません。
北極海の氷は薄く壊れやすくなっているのです。
このまま温暖化が続くとどうなるのでしょうか。
地球の平均気温が今世紀末までに4℃上昇すると仮定した場合のシミュレーションです。
冬に凍りつく海の面積はあまり変わりませんが夏に残る氷は減っていきます。
およそ50年後から夏の氷は急速に小さくなり2080年代に入ると夏北極海から氷が消えてしまうと予測されています。
夏。
ホッキョクグマの親子はどうしているだろうか。
僅かに残った氷の上で獲物を探していた。
母親が海に入る。
でも子供たちはまだ泳ぐ事に慣れていないようだ。
ホッキョクグマは本来泳ぎが得意だ。
一度に数百キロ泳ぐ事もある。
母親は海に残る氷を探そうとしている。
だが子供たちにとって長い距離を泳ぐ事は危険も多い。
母親は海で過ごす事を諦め陸地へ上がる事に決めたようだ。
しかしここには獲物のアザラシはいない。
この時期海辺では渡り鳥たちが子育てを行っている。
これはキョクアジサシ。
はるばる南極から子育てのためにやって来た。
そこに現れたホッキョクグマ。
卵やヒナを狙っているのだ。
(キョクアジサシの鳴き声)親鳥が飛び立つ。
繰り返し急降下。
鋭いクチバシで攻撃する。
我が子を守ろうと必死だ。
(ホッキョクグマの鳴き声)空からの攻撃はクマも防ぎようがない。
鼻の頭は血だらけだ。
たまらず退散する。
夏の間ほとんど何も食べられないクマたち。
春に蓄えた脂肪で乗り切らなくてはならない。
海の氷がない夏がこの先も延びていくと特に子供たちの生存率が下がるのではないかと危惧されている。
長い時をかけて氷とともに進化してきた王者ホッキョクグマ。
今急激な変化に直面している。
この親子は無事夏を乗り切る事ができるだろうか。
北極では陸の氷にも驚くべき変化が起きています。
日本の5倍もの面積が最大で3,000mもの厚い氷に覆われています。
氷の上に現れた青く輝く湖。
氷の表面が解けて水がたまったものです。
気温が上がるとたった数日で出来上がります。
現在グリーンランドではこうした氷の上の湖が増えています。
湖からあふれ出した水は周りの氷を解かしながら網の目のように流れていきます。
そして突然深い穴へと吸い込まれるのです。
氷が大きくひび割れ陥没しています。
実はここに1週間前まで青い湖がありました。
直径4km深さ10mもあった湖からたった数時間で水が抜けてしまったといいます。
水が抜け落ちた巨大な穴で調査が行われています。
表面に水はありませんが音が聞こえます。
はるか深い場所に水が流れているんです。
ハバード博士はこの水が氷河にどのような作用を及ぼしているのか解き明かそうとしています。
(ハバード)湖の水が抜けた時膨大な量が一気にこの氷の底まで流れ落ちました。
そしてその時の水圧でこの辺りの氷は1mも持ち上がったんです。
水が氷河の下の岩盤にまで達し氷を浮き上がらせたのです。
衛星画像で見ると内陸から海へ向かって延びる氷河の上流に湖があります。
湖から流れ込んだ水は氷河の下を網の目のように流れます。
それが潤滑剤のような働きをして氷を滑りやすくさせ氷河の流れを加速していると考えられているのです。
この映像は4年間かけて撮影された氷河の動きです。
氷は速いものでは一日に40mも移動しています。
氷河の流れは20年前に比べて2倍のスピードになっているのです。
氷河は海へと向かう。
表面に巨大なクレバスが口を開ける。
氷はついに終点まで来た。
氷を支える陸地はもうない。
(氷の崩落音)小さな崩壊が次々と広がりやがて巨大な氷の壁が崩れ始める。
(氷の崩落音)幅数百メートル。
流れ出した氷の塊が巨大な氷山となる。
グリーンランドの氷河からは毎年数万個の氷山が生まれている。
陸から海へ流れ出す氷の量は10年で2倍以上に増えた。
その氷が海水面を押し上げる。
このまま温暖化が続くと今世紀の末にはグリーンランドの氷だけで地球の海水面は50cmほども上昇するという予測もあるのだ。
北極に迫る異変は遠く離れた出来事ではありません。
グリーンランドの沖合では冷やされて重くなった海水が毎秒1,000万トンも深海に沈み込んでいます。
地球にはその流れを原動力とする大きな海流があります。
北極から南極更にインド洋や太平洋へ。
海を巡るこの流れが熱を運び地球全体の気候を穏やかに保っているのです。
極地の異変はそのバランスを崩す可能性があると心配されています。
地球の南の果て南極大陸だ。
私たち人類が南極点に到達したのは今から僅か100年ほど前の事。
当時探検家たちは南極点を目指して激しいレースを繰り広げた。
彼らの飽くなき探求心は今科学者たちに受け継がれている。
南極大陸の面積は日本の37倍。
氷の厚さは最大4,000mにも達する。
ここは未知の氷の世界なのだ。
南極大陸で僅か1%しか存在しない雪も氷もない場所だ。
この谷には雪さえ蒸発するほどの乾燥した風が吹きすさぶ。
この石は風に削られて薄い殻のようになってしまった。
氷の世界にそびえる火山。
その火口で科学者たちは地球内部の様子を探ろうとしている。
足元僅か100mには摂氏1,000℃以上もの溶岩が迫る。
このエレバス山で世にも不思議な地底の世界が見つかった。
火山の蒸気が氷を削ってつくり上げた洞窟だ。
変化に富んだ氷の結晶が洞窟中を埋め尽くしている。
こんな光景は世界中探しても他にはないだろう。
更に氷に生息する特殊なバクテリアも発見された。
氷の洞窟はまだ多くの謎に満ちている。
極地に異変が忍び寄る中私たちは今ようやく南極の自然の一端を知り始めたにすぎない。
内陸の氷の世界とは対照的に南極の海は地球上で最も豊かな場所の一つだ。
夏。
海の氷が解けると生き物たちであふれかえる。
南極周辺に1,000万頭以上が暮らしている。
体長7mほどの…時に数百頭の群れを成す事もある。
彼らの狙いはオキアミだ。
夏南極の周りの海ではオキアミが急激に増える。
その量は1億トン以上。
こちらは体長15mにもなる…水面にオキアミを追い上げて海水ごと大きな口へ流し込む。
そして口の中のくし状のヒゲを使って海水からオキアミだけをこし取って食べるのだ。
数千キロを泳いで南極に戻ってきた。
アデリーペンギンもオキアミを頼りに子育てを行う。
南極大陸全体で500万羽が繁殖している。
ヒナは2羽。
危険は突然空からやって来る。
(アデリーペンギンの鳴き声)子育て中のアデリーペンギンにとって一番の敵だ。
一瞬の隙にヒナがさらわれた。
もう親鳥にはヒナを救うすべはない。
ヒナが成長するまでには多くの試練が待ち受けている。
アデリーペンギンのヒナは巣立つまでにおよそ30kgものオキアミを食べる。
(ヒナの鳴き声)ヒナは海から戻ってきた親鳥の後を必死で追いかける。
しかし親鳥はなかなか食べ物を与えない。
実は親鳥が持ち帰る食べ物は2羽を満足させる量はない。
ヒナの間には厳しい競争がある。
オキアミが豊かな年でなければ2羽が共に生き延びる事は難しいのだ。
このアデリーペンギンの数が急激に減っている場所がある。
南極大陸から尻尾のように延びる南極半島。
ここは半島中部の島。
かつてアデリーペンギンの繁殖地があった場所です。
私がいる場所はかつてアデリーペンギンの繁殖地だった所です。
もともとこの繁殖地には数百のつがいがいましたが今は全くいなくなってしまいました。
この周辺の地域では30年ほどの間に3万羽いたペンギンが1/3以下にまで減ってしまいました。
その原因は南極半島周辺で海の氷が減少した事ではないかと考えられています。
アデリーペンギンにとって海の氷は重要なんです。
彼らが食べるオキアミは氷の下で育つアイスアルジーを食べて増殖します。
オキアミが食べるアイスアルジーと呼ばれる藻類は氷の下で育ちます。
南極半島周辺ではこの50年で冬の平均気温が5℃も上昇し氷の面積が3割近く減りました。
その影響でオキアミが減っているのです。
温暖化の影響が南極にまで及び始めています。
南極に迫る温暖化。
その証拠をかつての南極探検の記録から知る事ができる。
イギリスの探検家…1916年シャクルトン隊は南極大陸の横断を目指す途中で遭難。
救助を求め南極海に浮かぶサウスジョージア島に向かった。
そこでシャクルトン隊が当時の氷河の様子を撮影していた。
そして現在。
氷河の先端が大きく後退している。
サウスジョージア島では特にこの30年ほどの間に急激に氷河の減少が進んでいる。
こうした異変は今南極のさまざまな場所に広がっている。
(爆破音)準備完了!点火!南極大陸で最も温暖化の危機にさらされている氷がある。
これは1kgのペントライト爆弾です。
これで衝撃波を作り出して氷の下から跳ね返ってくる波を記録するんです。
氷の厚さやその下の地形を調べている。
スミス博士が調査しているのは「棚氷」と呼ばれる場所だ。
陸地から氷が押し出され海に張り出して浮いている。
海に浮かぶ棚氷は海水の温度の変化に敏感だ。
南極半島の周辺ではこの30年の間に海水温が1℃上昇し棚氷に深刻な異変が次々と起きている。
その一つ南極半島の先端ラルセンBと呼ばれる棚氷。
2002年東京都のおよそ1.5倍もの面積の氷が割れた。
更にそれまでこの棚氷がせき止めていた奥の氷河が6倍もの速さで海に流れ出したのだ。
異変は止まらない。
更に大型の棚氷が壊れ始めている。
この山を越えるとウィルキンス棚氷です。
氷が崩壊している現場はすぐそこです。
ウィルキンス棚氷は南極半島の付け根に位置する。
氷の変化は次第に南極の奥へと広がっているのだ。
崩壊の現場だ。
ここはかつて一続きの氷だった。
数千年もの間安定していた巨大な一枚の氷が崩れ始めている。
これはものすごい。
驚きました。
棚氷のへりが崩壊しているんです。
割れた氷は長さ1km以上の巨大なものもあります。
まるで爆発をスローモーションで見るように氷が一斉に外へ押し出されています。
温暖化の影響が南極大陸の内陸部へ及んでいるかどうかはまだよく分かっていない。
しかし南極半島から確実に変化が押し寄せている。
地球に残された最後の未踏の大自然南極と北極。
私たちは今かけがえのない地球の宝物をその全てを目にする前に失おうとしているのだ。
(風の音)夏が過ぎ再び凍りついた北極海。
ホッキョクグマの親子だ。
何とか夏を乗り越えた。
氷の海へと歩みだす。
氷とともに繰り返されてきた命の営み。
しかし今その未来が危ぶまれている。
今から100年後いや10年後あるいは次の夏彼らはどうしているのだろうか?2015/08/06(木) 02:15〜03:05
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル フローズンプラネット 第2回「激変する氷の大自然」[SS][字][再]

北極と南極、2つの極地の大自然を圧倒的な映像美とスペクタクルで描く。第2回は極地に迫る危機。氷山大崩壊、北極グマ母子の試練。語り:大沢たかお/国際共同制作BBC

詳細情報
番組内容
北極と南極、2つの極地を3年にわたって撮影。圧倒的な映像美とスペクタクルで描く大型自然ドキュメンタリー。プラネットアースに続くBBCとの国際共同制作。第2回は、氷河の大崩壊、ホッキョクグマ母子の試練、そして南極の火山で発見された氷の洞窟まで、かけがえのない極地の自然と、そこに急激に迫る危機を伝える。語りは、大沢たかお。番組HP:「NHK自然」http://www.nhk.or.jp/nature
出演者
【語り】大沢たかお,守本奈実

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 報道特番

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 3/2+LFEモード(3/2.1モード)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:28687(0x700F)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: