[ロンドン 5日 ロイター] - 「インフレ率ゼロの状況でなぜ利上げをしようとするのか」──ほぼ10年ぶりの利上げに備える英、米両国民は困惑している。米連邦準備理事会(FRB)と英イングランド銀行(中央銀行、BOE)は、間もなくほぼ10年ぶりに政策金利を引き上げると表明している。
実際には数カ月先になるかもしれないが、未だに重い債務負担を抱える家計に両国が送るメッセージは明らかで、「警戒せよ」というものだ。
経済の状況を手短に診断すれば、ゼロ近傍の政策金利を「正常化」すべき理由は容易に見つかる。
金融危機後、何年にも及ぶ経済の低迷を経て、両国は2─3%の強い成長率を記録している。失業率は長期平均に近い6%弱となり、不動産や金融資産の価格はここ数年で上昇した。
問題なのは、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が英国でゼロ、米国でも0.1%にとどまっており、各々が何らかの政策指針の形でコミットしている目標の2%をはるかに下回っているという点だ。
FRBが物価指標として好んで用いる個人消費支出(PCE)物価指数の前年同月比の上昇率も0.3%にとどまる。
政策担当者が今年お題目のように唱え続けているのは、昨年後半に起きたエネルギーおよび原材料価格の急落で、CPIの総合指数が人為的に押し下げられているという説明だ。彼らの想定によれば、今年の春に実際に起きたのと同様にこれらの価格がひとたび落ち着けば、CPIに対するベース効果は剥落し、総合指数よりずっと上昇率が高く、主に国内要因で動く「コア」指数に後押しされる形で、総合指数も物価目標に向けて上昇していくだろう。
言い換えれば、双方の中央銀行は総合指数の下落を一時的なものとして目をそむけ、コアの物価動向に焦点を当て何としても利上げの引き金を引きたいと考えているのだ。
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