序論
総論
注意
- ・・・各項目の数値は、多数の分析値の中から信頼できると思われるもののみを選び、総合的に整理して表示した。したがって数値の大きは、分析値そのままもしくは単なるその平均値ではない。・・・
- 従来の数値を整理するにあたり、また新たに分析を行なうに際し、各成分の定量法は当然比較検討されねばならない。数値は統一した定量法に基づくことが望ましいが、実際問題としては、食品によって定量法もある程度変えざるを得なかった。また、文献値にしても、その年代によって、分析方法が必ずしも完全には一致していない。各成分の定量法は、最近ますます進歩し、古い分析値のなかには、制度の劣るものも少なくない。
- 今回の改訂にあたり、この間の事情は十分に考慮して、数値の整理を行った。したがって、本表の成分値の精度は、改訂前のものに比べて大幅に高まったと信じているが、なお一部には十分でない面もあるだろう。たとえば、これらの数値を研究あるいは生産上の特定の目的などに使用する場合、そのおそれが少なくない。しかし、これは本表の目的からみて、やむをえないものと考えている。
(注)食品成分表の策定に当たっては、初版から今回改訂に至るまでのそれぞれの時点に おける最適な分析方法を用いて分析を行っている。よって、この間の技術の進歩等に より、分析の方法等に違いがある。また、分析に用いた試料についても、それぞれの 時点において一般に入手できるものを選定しているため、同一のものではなく、品種 等の違いもある。このため、食品名が同一であっても、各版の間における成分値の比 較は適当ではないことがある。
序
- ・・・従来わが国においても幾多の研究がなされ、一応のデータはえられているのであるが、新しいビタミンの発見や分析方法の進歩などによって新補再検討の必要にせまられたのである。
- 改訂 日本食品標準成分表について
- ・・・しかしながら、さきの成分表については、数値の再検討ならびに食品項目の増加など、幾多改訂されるべき点があったので、・・・
- この改訂食品標準成分表は、できるだけ食品成分値の妥当性と完ぺきとを目標として検討されたのであるが、もとより短時日のことであり、改訂の実をあげたとしても完全無欠とはいえない。・・・
ヒント
- 三訂日本食品標準成分表によれば、改訂版にはFAOが上梓した国際食品成分表の増補版の数値も採用したそうです。
ヒント
- 測定といっても、物質により、目的の物質だけを測定できるわけではありません。
- 選択性の高い分析方法ほど、目的外の物質が誤差に含まれることを避ける事が出来ます。
ビタミンA
- βカロテンがどの程度ビタミンAとして作用するか、昔から議論があるようです。その為、訂によって換算値が変更されていることがあります。
- 日本食品標準成分表2010では、下記のようになり、以前(1/6)の半分に減っています。
- レチノール当量(μg)= レチノール(μg)+1/12×β-カロテン当量(μg)
各論その1 鉄は減ったか?
| mg/100g | |||
|---|---|---|---|
| 日本食品標準成分表 | 1950年 | 13 | |
| 改訂日本食品標準成分表 | 1954年 | 3.3 | |
| 三訂日本食品標準成分表 | 1963年 | 3.3 | |
| 四訂日本食品標準成分表 | 1982年 | 3.7 | 生 |
| 五訂日本食品標準成分表 | 2000年 | 2.0 | 葉、生 |
各論その2 ビタミンCは減少した?
各論その3 ビタミンA
ビタミンAの値の比較は間違いの宝庫です。
| ほうれん草 | ビタミンA | βカロテン当量 | ||
|---|---|---|---|---|
| 改訂 | ビタミンA | 8,000IU | ||
| 三訂 | ビタミンA効力 | 2,600IU | カロチン | 8,000IU |
| 四訂 | ビタミンA効力 | 1,700IU | カロチン | 3,100μg |
| 五訂 | レチノール当量 | 700μg | カロテン | 4,200μg |
| 2010 | レチノール当量 | 350μg | βカロテン当量 | 4,200μg |
| にんじん | ビタミンA | βカロテン | ||
|---|---|---|---|---|
| 改訂 | ビタミンA | 13,500IU | ||
| 三訂 | ビタミンA効力 | 1,300IU | カロチン | 4,000IU |
| 四訂 | ビタミンA効力 | 4,100IU | カロチン | 7,300μg |
| 五訂 | レチノール当量 | 1,500μg | カロテン | 9,100μg |
| 2010 | レチノール当量 | 760μg | βカロテン当量 | 9,100μg |
実際のビタミンA効力等の計算式は、各訂で下記のように書かれています。
- 改訂(カロテンの効力は1/2で計算されています)
野菜 表記のビタミンAの値を半分にして使用
○植物性食品のみ、この訂のビタミンAは三訂でのカロチンの値に該当します。
単純に他の訂と比較するには三訂~五訂の場合は3で、2010のばあいは6で割る必要があります
動物性食品でカロテンを含むものはカロテンの値を半分にしてビタミンAを計算しています。 - 三訂(カロテンの効力は1/3で計算されています)
ビタミンA効力(IU)=ビタミンA(IU)+1/3×カロチン(IU) - 四訂
ビタミンA効力(IU)=1/0.3×レチノール(μg)+1/1.8×カロチン(μg) - 五訂
レチノール当量=レチノール(μg)+ 1/6×β-カロテン(μg) - 2010(カロテンの効力が以前の半分に計算されるようになりました)
レチノール当量=レチノール(μg)+ 1/12×β-カロテン当量(μg)
日本食品標準成分表の値を比較しやすいように表にしました。
| ほうれん草 | βカロテン | レチノール当量 | βカロテン A効力換算 | ビタミンA効力 当時の換算値 | ビタミンA効力 現在の換算値 |
| 単位 | μg | μg | IU | IU | IU |
| 改訂 | (4,800) | (1,200) | 8,000 | (4,000) | 1,333 |
| 三訂 | (4,800) | (780) | 8,000 | 2,600 | 1,300 |
| 四訂 | 3,100 | (510) | (5,167) | 1,700 | 850 |
| 五訂 | 4,200 | 700 | (7,000) | (2,333) | 1,167 |
| 2010 | 4,200 | 350 | (7,000) | (1,167) | 1,167 |
| 人参 | βカロテン | レチノール当量 | βカロテン A効力換算 | ビタミンA効力 当時の換算値 | ビタミンA効力 現在の換算値 |
| 単位 | μg | μg | IU | IU | IU |
| 改訂 | (8,100) | (2,025) | 13,500 | (6,750) | 2,250 |
| 三訂 | (2,400) | (390) | 4,000 | 1,300 | 650 |
| 三訂 (濃橙色) | (6,000) | (1,000) | 10,000 | (3,333) | 1,667 |
| 四訂 | 7,300 | (1,230) | (12,167) | 4,100 | 2,050 |
| 五訂 | 9,100 | 1,500 | (15,167) | (5,000) | 2,528 |
| 五訂 (きんとき) | 5,000 | 830 | (8,333) | (2,767) | 1,383 |
| 2010 | 9,100 | 760 | (15,167) | (2,533) | 2,533 |
| 2010 (きんとき) | 5,000 | 410 | (8,333) | (1,367) | 1,367 |
間違い例
- 初版、改訂版のビタミンAの値をそのまま現在のビタミンA効力の値と比較している
これらの訂の植物性食品のビタミンAは他の訂のカロテン(カロチン)に該当します。
単純に比較するには、三訂~五訂までは値を3分の1に、2010では値を6分の1にする必要がある。 - 単位が変わった事に気が付いていない
- 2010版ではβカロテンの効力が半分に減っている事に気が付いていない
- 改訂版では、植物性食品に関しては、素の数字を記載して、実際に栄養価を計算する際に値を半分にするように記載されています。つまり、この訂の植物性食品のビタミンAの値はは三訂でのカロチンの値に該当します。
動物性食品に関してはカロチンの値を半分にしてからビタミンAの値を計算しています。 - 三訂~五訂では実際の効力を1/3としています。
ビタミンA効力(I.U.)=1/0.3×レチノール(μg)+1/1.8×βカロテン(μg) - 2010では、更に少なく、実際の効力を1/6の値としています。
ビタミンA効力(I.U.)=1/0.3×レチノール(μg)+1/3.6×βカロテン(μg)