「雲の墓標」「山本五十六」など戦争を題材にした小説や記録文学、軽妙で辛口のエッセーでも知られる作家で文化勲章受章者の阿川弘之(あがわ・ひろゆき)さんが3日午後10時33分、老衰のため東京都内の病院で死去した。94歳。広島市出身。葬儀・告別式は近親者で行い、後日お別れの会を開く予定。

 東大を繰り上げ卒業して海軍に入り、中国へ渡って諜報(ちょうほう)活動に従事。復員後、志賀直哉に師事して文芸誌などに小説を発表した。遠藤周作さんや安岡章太郎さんらとともに「第三の新人」と呼ばれた。

 戦時下の若者の苦悩を描いた1952年の「春の城」で読売文学賞。さらに、広島の被爆者に取材した「魔の遺産」、特攻隊員の心境を描いた「雲の墓標」など、戦争の悲しみと悔恨を端正な文章でつづり、独自の文学的立場を切り開いた。また乗り物や食べ物など幅広いテーマのエッセーでも人気を博した。絵本「きかんしゃ やえもん」はロングセラーになった。

 日本芸術院会員。99年に文化勲章、2007年に菊池寛賞を受けた。

 法学者で慶応大教授の阿川尚之さんは長男。エッセイストの阿川佐和子さんは長女。