なかなかメディアに姿を見せないロッテグループ創業者の辛格浩(シン・ギョクホ、日本名:重光武雄)ロッテホールディングス(HD、本社・東京)会長(92)が今月2日、テレビに登場した。長男・辛東主(シン・ドンジュ、日本名:重光宏之)元ロッテHD副会長(61)が父親に原稿を読ませ、これを録画してテレビ局に提供したものだ。この動画で格浩氏が韓国国民に伝えたメッセージは「申し訳ございませんが次男を許すことはできません」という簡単なものだった。
格浩氏は19歳の時、密航船に着の身着のままで乗り、玄界灘を渡って屈指の大企業を興した。誰が何と言おうと、日本で稼いだ金を祖国近代化のために投資した立志伝中の人だ。大韓民国が今日の地位を築くまで「企業報国」を率いた創業第1世代のうち、存命しているのは格浩氏しかいない。
その格浩氏が人生のたそがれに国民に対し送ったメッセージは、あまりにもお粗末で残念だ。「次男のことが許せなくて追い出すのだから、国民の皆さんには黙ってご理解いただきたい」というようなメッセージを同氏に期待していた韓国人は、同氏の長男以外にいないだろう。格浩氏は次男のことが許せないのかもしれないが、国民はロッテのこうした姿を許せない。
ロッテはほかの大手企業の中でも最も韓国人と共に思い出を作ってきた企業だ。「メキシコのチクル(チューインガムの原料)のようにやわらかく語る」というロッテガムをかんだことがない韓国人はいないし、三角帽子コーン(訳注:日本の『とんがりコーン』のようなスナック菓子の商品名)を指にはめて遊んだことのない韓国人もいないだろう。ロッテシネマで映画を見て、東洋最大の屋内テーマパークだったロッテワールドで家族の休日を過ごし、ロッテデパートやロッテマートで買い物をしたことがないという韓国人もほとんどいない。