今回の事態に関し、どうしても国籍をめぐる論争をするのであれば、二人の後継者の文化的、社会的背景に伴う経営スタイルの違いを論じてほしいと思います。例えば、東主氏はこれまで主に日本で生活しながら経営活動を行ってきたため、総括会長になれば韓国事業になかなか適応できないでしょう。また、日本のロッテは製菓事業とプロ野球チームのオーナー事業を主体としているため、東主氏が総括会長になれば韓国ロッテの主力事業である流通業を縮小させかねません。
私は国籍の問題よりも、総括会長の一言で経営方針や人事が変わるロッテの「皇帝経営」こそがより大きな問題だと思います。ロッテは韓国で、デパート、スーパー、製菓、化学、建設と多岐にわたる事業を展開する国内第5位の財閥です。ロッテグループの従業員は10万人、協力会社まで含めると18万人に達します。
しかし今回、ロッテグループでは取締役会の決定よりも格浩氏の職印が押された指示書や同氏の映像の方が大きな力を発揮しました。また、グループの支配構造は徹底してベールに包まれています。オーナーの一言でひっくり返る不安定な後継構図は、韓国経済の重大なリスクになりかねません。
実際に、東主氏の暴露により、東彬氏が中国事業で1兆ウォン(約1060億円)程度の損失を出していたことが初めて公表されました。グローバル金融市場ではこれをめぐり、韓国企業の閉鎖性を懸念する声も出ています。
今回の事態が、韓国経済の構造的な問題点を是正する契機となるよう願っています。財閥オーナー一家の後継者をめぐる争いが韓国経済の成長の足を引っ張るようなことがあってはなりません。韓国企業をグローバル企業に育てようと声高に叫んでいながら、経営の継承プログラムが小さな商店レベルにとどまっていても良いのでしょうか。