ロシア:原爆投下を非難…円卓会議「米は裁かれるべきだ」

毎日新聞 2015年08月05日 21時20分(最終更新 08月05日 22時34分)

 【モスクワ真野森作】広島と長崎の原爆忌を控え、ロシアのナルイシキン下院議長と日本専門家らは5日、原爆をテーマにした円卓会議をモスクワで開催した。ウクライナ危機を契機に米欧と対立を深める中、70年前に日本へ原爆を落とした米国の「非人道性」をアピールし、日米の連携にくさびを打つ狙いとみられる。国営テレビが原爆投下に関する番組の予告編を繰り返し報じるなど、国家的なキャンペーンの様相を呈している。

 プーチン大統領側近のナルイシキン氏は「原爆投下はナチス・ドイツや日本の軍国主義者による悪事と同様の重要性を持つ」「人道への罪に時効はない」と主張。冷戦後の国際情勢にも触れて、このような欧米諸国の姿勢が旧ユーゴスラビアやイラクへの軍事攻撃につながり、多大の犠牲をもたらしてきたとも批判した。

 円卓会議にはパノフ元駐日大使や国際法の専門家も参加し、「原爆投下の軍事的な必要性はなかった」「米国は裁かれるべきだ」などと米批判を展開した。

 ロシア国内では原爆投下を「米国の悪行」と断じる動きが強まっている。タス通信によると、退役軍人組織の一つは近く、米国を裁く国際軍事法廷の設置に動くよう露外務省へ要請する。また、プーチン政権の政策形成に一定の影響力を持つ保守派の識者集団「イズボルスク・クラブ」が被爆地を訪問したほか、ビリチェフスキー駐日代理大使も6日に広島での平和祈念式典に出席する予定。「原爆」をキーワードにして、日本に対して米国批判を呼びかける狙いと見られる。

 一方で、プーチン大統領が今年に入り、ウクライナ南部クリミア半島を一方的に編入した際に核兵器の使用準備をしていたと発言するなど、核兵器の力で周辺国を威嚇する姿勢も鮮明にしている。このため、被爆者側からは「ロシアが核廃絶に力を入れているとは思えない」(日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳事務局長)と懐疑的な見方が強い。

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