被爆70年:広島で韓国人原爆犠牲者悼む慰霊祭
毎日新聞 2015年08月05日 11時56分(最終更新 08月05日 12時58分)
広島での被爆70年を前に、広島市の平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑で5日、慰霊祭が営まれた。被爆者や在日韓国人ら約250人が参列し、今年新たに亡くなった韓国人被爆者22人を加えた2711人の死没者名簿を碑に奉納。チマ・チョゴリ姿の女性たちが慰霊歌をささげ、冥福を祈った。
在日本大韓民国民団広島県地方本部が主催。式典で徐張恩(・ソジャンウン)・駐広島韓国総領事は「原爆犠牲者の子孫たちは韓国を再建し、広島でも地域社会の一員となった。生まれた国を失って抱かざるを得なかった恨みは心から下ろして、永眠してください」などとあいさつ。3歳の時、広島市内で被爆した文松子(ムン・ソンジャ)さん(73)=広島県府中町=は「あっという間の70年だった。慰霊祭が開けるのは平和な証拠。あのような悲惨な出来事が二度と起こらないよう祈り続けたい」と話した。
式典に合わせ、慰霊碑の脇にはマツ科のチョウセンゴヨウ(高さ約1メートル)が再び植樹された。2011年8月に日韓学生交流ツアーに参加した学生らが、両国の平和や友好などを願って植樹したが、昨年4月に何者かに引き抜かれていた。被爆70年の節目に、両国の友好と慰霊を願う気持ちを改めて示すことにした。【田中将隆】
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広島市・長崎市原爆災害誌編集委員会が1979年に編集した「広島・長崎の原爆災害」(岩波書店)によると、朝鮮半島出身の被爆者は広島で約3万人、長崎で約1万人と推計される。国は調査をしていない。
厚生労働省によると、海外在住で被爆者健康手帳を持つ「在外被爆者」は今年3月時点で約4280人で、うち約7割の約3000人が韓国に在住している。北朝鮮で暮らす被爆者の数は不明。
在外被爆者の医療費については、国は被爆者援護法の対象外とし、同法とは別枠で年30万円を上限に助成している。上限を超えた分は、書類提出と審査のうえ、国内の被爆者と同程度を支払うよう定めている。