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 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は5日に広島市内で集会を開き、「被爆70年 広島・長崎宣言」を発表した。宣言の全文は以下の通り。

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 今こそ核兵器のない世界を!

2015年8月5日

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)

 1945年8月6日と9日にアメリカが投下した2発の原爆は、広島と長崎を一瞬にして死の街に変えました。人類史上かつてない「この世の地獄」でした。

 原爆は多くの命を奪いました。あの年だけで21万人です。年齢、男女、職業を問わない無差別殺戮(さつりく)でした。あっという間もない、何が起こったのかわからない死。生きたまま焼かれた人たち。いまだに確認できない死もあります。私たちは、累々と重なった死体の山、血を吐き、苦しみ、死んでいった人たちを忘れることができません。原爆は今日にいたるまで、多くのいのちを奪い、からだとこころを傷つけてきました。

 被爆者は、自らの体験を通して、原爆が人間に何をもたらしたかを語り、原爆は破壊のみを目的にした悪魔の兵器、人類と共存できない兵器であることを訴えつづけてきました。被爆者の願いは、ふたたび私たちと同じような被爆者をつくらないことです。核戦争を起こさせないこと、核兵器をなくすこと、原爆被害への国の償いを実現することです。

 核兵器の廃絶、原爆被害に対する国の償いは、被爆から70年たった今日でも、いまだ実現していません。今なお1万6000発の核兵器が存在し、核爆発の危機は去っていません。

 それどころか、日本は今大変な時を迎えています。安倍首相は、国民の声を無視し、戦争する国づくり法案を衆議院で強行採決しました。日本国憲法の平和主義をかなぐり捨て、今を新たな戦前にしようとしています。戦争だけは起こしてほしくないという被爆者の思いと多くの国民の思いは一致しています。力を合わせ安倍首相の暴挙を阻みましょう。

 世界も動いています。核兵器の廃絶は大きな流れになっています。2012年以降、核兵器廃絶を求める各国政府による共同声明が6回発表され、核兵器の非人道的影響に関する会議は3回開かれました。声明と会議の核心は、核兵器の非人道性をあらゆる側面から解明し、「意図的であれ、偶然であれ、核兵器爆発が起これば、被害は国境を越えて広がり、どの国際機関、国家も救援の術を持たず」「いかなる状況の下でも核兵器を使用しないことが人類の利益」であり、「核兵器を使用しないことを保証するのは核兵器を廃絶する以外にない」ということです。市民社会の役割は決定的です。国際会議で究明された核兵器爆発が壊滅的な結果をもたらすことを世界で明らかにし、核兵器廃絶の世論を高めることです。

 もう一つ核問題の大きな課題を示した福島原発事故は、4年以上経過してなお収束のめども立っていません。制御できない原発は廃止以外にありません。

 人類の生存を脅かす核兵器も原発も地球上から一掃する術を人類はすでに見つけています。あとは、実行に移す勇気を発揮するだけです。

 被爆70年にあたり、被爆者は、人類が平和で安全な地球に生存できるよう命ある限り市民社会と連携して訴えつづけ、その実現に力をそそぐことを表明します。