岡本玄 国米あなんだ
2015年8月6日00時43分
広島に原爆が投下されてから70年になる今年も、本や証言集をまとめる動きがある。原爆で傷つきながらも生き抜いた樹木、今はなき街の記憶。「惨禍を風化させない」という被爆者らの強い思いがある。
■「木に会いに行く」映画化も
原爆の惨禍を生き抜いた被爆樹木。漫画「はだしのゲン」の作者の故・中沢啓治さんのドキュメンタリー映画を撮ったことがある石田優子さん(37)=東京=は、被爆樹木が発するメッセージや保存に関わった人の思いを「広島の木に会いにいく」(偕成社、税別1800円)にまとめた。
石田さんは慶応大生のとき、被爆者の故・沼田鈴子さんを通じて被爆樹木を知った。沼田さんは原爆で左足を失ったが、被爆したアオギリの芽吹きを見て生きる希望を見いだし、平和記念公園で語り部の活動を続けた。中沢さんは漫画「ユーカリの木の下で」で、被爆ユーカリの生命力に感動した主人公が息子に体験を語る物語を描いていた。
沼田さんと中沢さんは3年前までに亡くなった。「平和の大切さを訴え続けた2人に代わり、若い世代に伝えなければ」。石田さんは東京と広島を行き来し、樹木医の堀口力(ちから)さん(70)=広島市=のもとで研究者らを取材。広島市内の寺「報専坊(ほうせんぼう)」は1994年の本堂再建時、被爆樹木のイチョウを切らずに守っていくことを決めていた。
こうした動きを「木を大切にする思いが地域で共有されている」ととらえた石田さん。「広島の木に会いにいく」で被爆樹木がある場所を紹介し、被爆直後に樹木を調べた学生のインタビューも載せた。「被爆樹木に触れ、平和への想像力を働かせて」と話す石田さんは映画化に向けた撮影も進めている。(岡本玄)
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