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朝日慰安婦誤報取り消し1年 海外、誤解なお根強く

産経新聞 8月4日(火)7時55分配信
 朝日新聞が自社の慰安婦報道に関する記事の一部の誤報を認め、関連記事を取り消してから5日で1年となる。慰安婦問題をめぐる国内の議論にとっては大きな節目となったが、海外では「旧日本軍が20万人の女性を強制連行し、性奴隷にした」などの誤解がなお根強く残っている。この1年で何が変わり、変わっていないのか内外の動きを追った。また、初期の朝日の慰安婦報道に関わった植村隆元記者(北星学園大非常勤講師)が、初めて産経新聞のインタビューに応じた。

 朝日新聞が一部とはいえ誤りを認めたことで、慰安婦問題をめぐり国内外で新たな動きが出始めた。

 自民党は7月28日、「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(中曽根弘文委員長)が朝日の一連の誤報や、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年8月の河野談話発表時の河野洋平官房長官の言動について、「事実に反する認識を韓国をはじめ国際社会に広めた大きな原因になった」と指摘する提言をまとめ、安倍晋三首相に手渡した。

 河野氏は、談話発表後の質疑で「強制連行があったという認識なのか」と聞かれ、根拠を示さず「そういう事実があったと。けっこうです」と答えた。これについて提言は「重大な問題」だと指摘した。

 地方議会では、朝日の徹底検証や国際社会の誤解解消などを求める動きが広がった。これまでに京都府、千葉県、埼玉県、大阪市、北九州市など30を超える地方議会がこうした趣旨の意見書や決議、陳情を可決・採択した。

 海外ではどうか。

 「日本軍は14〜20歳の約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に募集、徴用した」

 米国の米大手教育出版社マグロウヒルの高校世界史教科書に、こうした事実誤認が書かれていることが昨年11月に判明した。外務省が出版元に訂正を求めたところ、米歴史学者19人が今年2月、「教科書の記述は正しく、学問や言論の自由への侵害である」との声明を発表した。

 だが、この声明の中心メンバーを含む欧米などの学者ら187人が5月、新たに発表した慰安婦問題に関する声明はこれまでのような「20万人強制連行」には言及していない。

 米ワシントン・ポスト紙は今年3月18日、現代史家の秦郁彦氏ら19人の日本の学者らがマグロウヒル社教科書に訂正要求を出したことを淡々と報じた。

 海外の一部議論は、慰安婦強制連行の証拠が見つからないことを受けて朝日が、物理的な暴力などはなくても心理的な圧迫や強制はあったとする「広義の強制性」を主張し始めたころの状況と様相が似ている。

                   ◇

 ■「数々の虚偽」謝罪なく

 朝日新聞は昨年8月5日付の特集記事で、「韓国女性を強制連行して慰安婦にした」と証言した唯一の日本側証人、自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏の証言を虚偽だと判断し、関連記事16本を取り消した(後に2本追加)。国家総動員法に基づき工場などで働いた「女子挺身(ていしん)隊」と「慰安婦」を混同した報道を繰り返したことも認めた。だが、謝罪はしなかった。

 特集記事は、元韓国人慰安婦の女性について「女子挺身隊の名で戦場に連行」と事実と異なる報道をした元朝日新聞記者、植村隆氏の記事については、「意図的な事実のねじ曲げなどはありません」と結論付けた。

 こうした姿勢に、朝日が設置した第三者委員会(中込秀樹委員長)も、昨年12月公表の報告書で朝日の検証記事について「自己弁護の姿勢が目立ち、謙虚な反省の態度も示されず、何を言わんとするのか分かりにくい」と厳しく批判した。

 この朝日新聞の第三者委による報告書も、批判の対象となった。

 朝日の慰安婦報道を独自検証した「独立検証委員会」(中西輝政委員長)は今年2月、朝日の第三者委報告書についてこう問題点を突いた。

 「国際社会に与えた影響を分析する部分では見解をまとめられず不十分」

 その上で独立検証委は、平成3〜4年の吉田虚偽証言、女子挺身隊の誤用、あやふやな元慰安婦証言、20万人強制連行説を広めた軍関与を示す文書発見と続く一連の朝日報道を次のように結論づけた。

 「数々の虚偽報道を行い、結果として、『日本軍が女子挺身隊の名で朝鮮人女性を慰安婦にするために強制連行した』という事実無根のプロパガンダを内外に拡散した」

 朝日が、宮沢喜一首相(当時)の訪韓直前の4年1月11日、朝刊1面トップで「慰安所 軍関与示す資料」の見出しで掲載した記事は、朝日の第三者委も「慰安婦問題が政治課題となるよう企図して記事としたことは明らか」と分析。独立検証委は、「韓国紙が慰安婦問題を集中的に取り上げるのは、4年1月からだ」と指摘した。

 ◆「責任認め検証を」

 独立検証委の副委員長を務めた西岡力・東京基督教大教授はこう断言する。

 「虚偽の加害者(吉田氏)証言に加えて、虚偽の被害者証言も書き立てた。それによって『女子挺身隊として強制連行』という虚構が作り上げられ、国際社会に広まった。その責任を朝日が認め、検証しない限り、反省したとは到底言えない」
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最終更新:8月4日(火)9時46分
産経新聞
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