脳梗塞の新しい治療法「ステントリトリーバー療法」の効果とは?
196名の脳梗塞患者を調査

from The New England journal of medicine


写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 (C) olly - Fotolia.com


脳梗塞は、寝たきりの主な原因と言われています。
前方循環系の主幹動脈(脳の前方にある太い血管)が閉塞した患者に、通常のt-PA治療だけ行った場合、自立した生活に戻れる確率は40%未満と言われています。
米国の研究チームは、t-PA治療に加えてステントリトリーバーを使用した治療が、t-PA治療のみ行った場合と比較して、90日後に介助なく生活できるまで回復した割合をより改善させたと報告しました。


◆t-PA治療とステントリトリーバー療法とは?

・t-PA治療とは?

脳梗塞に対する効果的な治療法ですが、脳内出血を起こすリスクが高くなるため、日本では脳梗塞発症後4.5時間以内しか使用することが許可されていません。

・ステントリトリーバー療法とは?

通常はt-PA静注治療で効果の得られない患者さんに対して行われます。 カテーテル(血管の中に入れる細い管)を使ってステントリトリーバーという血栓を回収する機器を血管が詰まった場所に送り込み、血栓を回収する方法です。 日本では、発症から8時間以内の脳梗塞患者に使用することが許可されています。

 

◆196名の脳梗塞患者を調査

研究チームは、研究に参加した39の施設を受診して脳梗塞発症後にt-PA治療を受けた患者のうち、前方循環系の主幹動脈の閉塞もしくは広い虚血中心部の損傷が認められない患者196名を、ランダムに98人ずつ、介入群と対象群の2つのグループに振り分けました。 介入群には発症してから6時間以内にステントリトリーバー療法を行い、対象群には引き続きt-PA治療だけを行いました。 治療してから90日後に、障害の程度を0(症状なし)から6(死亡)の7段階で評価し、その結果を両群で比較しました。

 

◆ステントリトリーバーで、障害の程度を有意に改善

介入群のうち88%において、閉塞していた血管が半分程度から完全に再開通しており、治療開始後90日の障害の程度が対照群よりも改善していました。 治療開始後90日で介助なく生活できていた割合が60%、対照群では35%でした。 また、治療開始後90日の死亡率と症状のある一過性脳出血の発症率は両群に差がありませんでした。

研究チームは「前方循環系の主幹動脈の梗塞でt-PA治療を受けた患者に対して、発症してから6時間以内のステントリトリーバー療法は、治療開始後90日の身体的機能を改善させる。」と述べています。

 

ステントリトリーバー療法は近年、日本においても保険認可された治療法です。 今後の治療技術の進歩に伴い、急性期の脳梗塞において有用な方法の1つになるかもしれません。


◆参照文献

Stent-Retriever Thrombectomy after Intravenous t-PA vs. t-PA Alone in Stroke.

N Engl J Med. 2015 Apr 17

[PMID: 25882376 ]


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*この記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。




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