米兵生体解剖の資料展 福岡市、医師の東野さん収集品
第2次世界大戦末期に九州帝国大医学部で起きた米国人捕虜8人に対する生体解剖事件の資料展が19日、福岡市中央区草香江の東野産婦人科で始まった。事件に関わった唯一の生存者である医師の東野利夫さん(89)が日米で収集した約50点を「平和への道が逆行している今こそ、過去に学んでほしい」と公開した。
会場は医院の2階ラウンジで、解剖実習室や実習台の写真、軍事裁判記録、獄中自殺した教授の遺書の写しなどを展示した。大型爆撃機B29の搭乗員が捕虜となった経緯や、「血液を海水で代用できるか」といった実験手術の目的をパネルで説明している。
東野さんは1945年5~6月に4回行われた実験手術と解剖のうち、2回に偶然立ち会った。戦後、教授ら14人と軍人9人が死刑(後に減刑)を含む有罪判決を受けたが、自身は罪に問われなかった。それでも罪悪感にさいなまれ、40歳を過ぎてから調査を始め、出版もした。東野さんは「人間だから過ちはある。改めないことが最大の過ち。戦争は悲惨と愚劣しか残らないことを知ってほしい」と来場者に訴えていた。
展示は8月15日まで。入場無料。
=2015/07/20付 西日本新聞朝刊=