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15年7月2日付・夕刊
(3)古豪「江陽」の苦戦 母親はサッカー支持
高知市中心部にある江陽小学校は昔から少年スポーツが盛んだ。150人強が総合型地域スポーツクラブ「江陽ファミリークラブ」(旧江陽体育会)に所属。サッカー、野球など4競技をしている。だが、ここでも野球は苦戦していた。
江陽ファミリークラブのスポーツ少年団本部長であり、バドミントン部監督でもある男性(75)=スポーツ店経営=は30年余り関わってきているが、こう断言する。「子どものスポーツはお母さんの意見が大きく左右するんですわ。今のお母さんは、『サッカーは明るい。野球はださい』というんですかねえ…」
江陽小学校の野球部は創部約50年といわれ県内古参組。OBにはプロ野球・巨人の元投手もいる。45年前から開催する「江陽大会」(8月末)も県内では最長の歴史。新チームの腕試しの場となっている。
だが、その大会参加数は3年前まで50台だったのが、昨年は37。その衰退の流れの中で、ホストチームの地元スポ少チームも昨年、部員不足となり、近隣小学校との連合で何とか出場、面目を保った。
今春以降の入部は3人。6月末に待望の9人目が入り、ようやくチームの形ができた。一方、サッカーは昭和小学校と合同チームで、今春も10人ほど入り合計約70人。「対照的ですわ。両方が競い合ってほしいんですが」と本部長は、野球の落ち込みを心配する。そして、衰退の理由を三つ挙げた。
@野球は難しいA野球は親の人気がないBサッカーの魅力は圧倒的。
まず、@について。野球は投げて、打って、サイン通りに動けるのに時間がかかり、低学年には難しい。「サッカーは1年生同士の試合もあります。1点取ったら本人も家族も大喜び。野球は低学年を軽んじてきたツケが回ってきたのかもしれません」
Aの「親の不人気」。野球は親の負担が大きいという。練習では母親にお茶当番、父親には試合の審判がある。サッカーはそれがほとんどない。練習を見に来る母親も少ない。審判は資格を持った指導者らがする。ユニホームの洗濯も、サッカーはペラペラのシャツとパンツで簡単だ。
さらに野球が不評なのは練習時間の長さ。サッカーは2〜3時間だが、野球は部員数が多いと丸1日になる。
まだある。指導者の罵声だ。野球は試合でも「どうしよらあ」「振らんがやったらベンチ要員じゃ」ときつい言葉が飛ぶ。「お母さんは、指導者の怒鳴り声にゾッとするそうです。よその大人に厳しい言葉を浴びせられるなんて耐えられんと。愛のムチだけど、今は通用しません」
Bの「サッカーの魅力」。本部長は言う。「子どもにとったら『野球とサッカー、どっちがえい?』という話ではないんです。『野球? 何の話』って。興味なし。野球部OBの子どもですら、サッカーです。聞いてみたら、父親は野球をやらせたかったのに、子どもと奥さんが『サッカー』だって」
本部長の孫が通う保育園へも、サッカー教室の誘いがある。「やっぱりヒヨコの時から育てないと、ということなんでしょう」
【写真】試合に出る日を目指して練習を続ける江陽小学校の野球部。6月末に待望の9人目が入った(高知市江陽町)
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