
15年6月30日付・夕刊
(2)「廃部」を選んだ理由 経験者の子が野球離れ
昨秋、部員不足で休部状態のチームが増えた高知県内の少年野球。その中で思い切って「廃部」に踏み切ったのは南国市内のC小学校のチームだ。6年生5人が卒団し、残りは6人(うち5年生は3人)。C小学校の生徒は約330人もいた。春になれば入部があるかもしれないのになぜ、一気に廃部を選択したのか。
「僕の中では休部も廃部もさほど差はないんです」と元監督(40代後半)は打ち明ける。
どちらを選んでも、復活した時の県小学生野球連盟への登録費は1万円しか差がない。仕事の都合で練習も満足に見られなくなり、後継者も見つかりそうにない。中途半端に休部状態にして、大会のたびに連合相手を探して出場するよりは、最初から他チームへ移籍した方が、子どものためにもなると考えたのだ。
事情を聴くと、先に紹介した高知市のA小学校のチームとよく似ていた。4年前までは部員数が大会登録枠の20人を超え、一つの大会に2チーム出場させた時もあった。だが、3年前から13人、12人、11人と右肩下がり。保護者が募集のチラシを作って学校に配るなどしたが、3年間で入部は2人しかいなかった。
「もし、これから人数が集まっても、まともに戦えるのは数年先ですからねえ…」。監督自身も三十数年前、C小学校で野球をしていたのだが、部員不足でチームが解散。隣の小学校のチームへ移籍した体験があり、廃部への違和感はなかったという。
「進学先はどちらのチームでも公立中学校なら同じです。結局、一緒にやるわけだから」。監督歴は10年。「少子化でもないこの地域から野球部が消えるのは寂しいけれど、ちょうど10年。『これが区切りかな』というのもあったんです」
ちなみにC小学校のサッカー部員数は約80人。サッカー大盛況もA小学校と同じ。「休部」と「廃部」が違うだけだった。
◇ ◇
C小学校の元監督は高校まで野球を続け、今でも草野球チームで活躍している。その中で気掛かりなのは、草野球仲間の息子たちの野球離れだ。子どもの大半が野球をしていないという。なぜか。
「自分たちが嫌な思いをして野球をやらされてきたから、息子には無理強いをさせたくない。子どものやりたいことをやらせたい。そういう人もいました。時代が変わりましたよね」
そんな風潮の中で無理に野球部に入ってもらうのも気が引けて、元監督は勧誘に乗り出せなかったという。
彼の息子も中学までは野球をしたが、社会人になった今、野球に興味はない。むしろ、距離を置いている。少年野球の手伝いを頼んだところ、断られてしまったという。
父親が野球経験者なのに、その子どもが野球をしない家庭が増えている。事態は深刻だ。だが、それは「父親」だけの問題ではなかった。
【写真】68チーム、1000人余が集まった高知県小学生野球選手権の開会式。「第54回」とあるが途中で組織が分裂し、現名称では20回目(6月27日、高知市の春野球場)
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