古田織部美術館が違法状態 「住宅」で届け出、京都市調査
京都市北区に昨春、オープンした私設美術館「古田織部美術館」が、建築基準法で美術館を開設できない地域で市の手続きを経ずに営業していたことが3日、京都新聞社の取材で分かった。施設を「住宅」と届けており、1年以上にわたり、届け出と実態が合わない状況が続いている。同館は違法状態を解消するため「図書館」として新たな手続きを行うとしている。市は周辺住民らの指摘を受け、施設の実態を調査している。
同美術館は、生糸商の山荘跡を改修して、上京区の出版社が2014年4月に開設した。茶人で知られる戦国武将古田織部好みの茶道具を並べ、今年6月には庭園内に茶室を設けた。
施設が立地する一帯は、都市計画法の「第一種低層住居専用地域」に定められている。良好な住環境を保護するための規制で、建築基準法で「住宅」や「図書館その他これらに類するもの」しか建築できないと定められている。それ以外の場合、市建築審査会を経て許可を得る必要がある。
施設の情報が記された建築計画概要書には「一戸建ての住宅(茶室)」と記載しているが、常設展示で入館料を徴収し、定期的に企画展を開いている。
同美術館の館長は、住宅としては使っていないと認め、「行政から『図書館』として届けるよう指導を受けた。一時的に違法状態だとしても、市の手続きが通れば違法でなくなる」としている。
市建築安全推進課は「行政指導をしているかは答えられない。施設の用途や使用実態を調査して違反があれば、しかるべき指導を行う」としている。
周辺は閑静な住宅街で、来館者の車で生活道路が混雑することもある。近所の男性(75)は「美術館には不特定多数の人が訪れている。文化施設ならば違法でも許されるのか。市の姿勢に疑問を抱く」と話す。
同館は7月末にホームページを閉鎖している。
【 2015年08月04日 08時40分 】