【MLB】3球団13選手が絡むトレードの舞台裏 マーリンズに翻弄されたM.モース
ISM 8月4日(火)8時34分配信
7月30日の試合後、おそらく監督室に呼ばれた後、クラブハウスに戻って来たマイアミ・マーリンズのマイク・モースは顔色を失っていた。入り口にいたユーティリティのジェフ・ベーカーが、「どうした? 何かあったか?」と聞くと、モースはふと我に返り、やがて怒りが込み上げて来たのか、「ジョークだ!」と吐き捨てるように言った。
そのモースのロサンゼルス・ドジャースへのトレードがほぼ合意したと伝えられたのは、29日の午前のことである。試合前にクラブハウスに行くと、もうモースのロッカーにはネームプレートがなかった。私物も見当たらない。もうトレードが成立し、チームを離れたのだと思われた。
一緒にトレードされたと報じられたマット・レートスは、試合前の練習中に私服であらわれ、馴染みの警備員らと話していたが、その光景は別れを告げているようにしか見えなかった。
ところがその日、トレードは不成立。試合直前、モースはユニホーム姿でベンチに入っている。
30日はデーゲーム。試合前の段階では依然としてトレードが成立せず、13選手が絡む三角トレードに発展していたことから、調整に時間が掛かる、あるいは誰かにケガが発覚し、破談になるかもとさえ囁かれた。
モースは相変わらずクラブハウスにいない。レートスの姿は見掛けたが、気を使っているのか誰も話しかけない。遅くとも試合中には決まると思われたが、9回2死の場面でモースが代打に登場。記者席では誰もが顔を見合わせた。
その日の試合後、モースは取材に応じている。
「俺だって何が起こってるか分からないんだ」
必死に感情を押し殺していたが、口を衝いて出る言葉には苛立が混じった。
そんなやり取りの最中、メディアの輪の背後にレートスが近づくと、「俺たち呼ばれたぞ」とモースに声を掛けた。記者らに「悪いな途中で」と言いながらレートスと並んでクラブハウスを後にしたモース。10分ほどして帰って来たときには、冒頭で触れたように茫然としていた。
そのときはまだ、「ジョークだ!」と言ったことの意味が分からなかったが、その後にその理由が判明する。
モースはドジャースにトレードされた直後、戦力外通告を受けたのだ。おそらく呼ばれたとき、そこまで伝えられたのだろう。マーリンズはモースの処分を画策。ドジャースとの交渉では、「レートスが欲しいならモースも一緒に引き取ってくれ」とパッケージを条件とした。
モースとしても、ドジャースに請われていくならば受け入れられる。ところが実情は不良債権として扱われ、お金は払うからもう来なくてもいいと肩たたき。あまりにも残酷だった。
30日夜、レートスはドジャースに合流するためにすぐに空港へ向かった。モースは自宅へ帰った。大きく明暗が分かれた。
しかし、モースはその翌日(31日)に拾われることになる。ドジャースがウェーバーにかけると、ピッツバーグ・パイレーツが名乗りを上げてトレードが成立。モースは3日、パイレーツに合流した。パイレーツでも結果を残せなければどうなるか分からない身だが、ドジャースから自由契約となり、行き場を失うよりは、チャンスを与えられただけでもプラスに捉えるしかない。
それにしても、大リーグのトレードには様々な悲哀がつきものだが、ここまで翻弄されるとは。結果を残せなかった本人の責任でもあるが、そこにはメジャーというより、マーリンズというチームの非情さが滲んでいた。
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