封印された原子力行政の責任を明らかに
勝俣恒久元会長ら東京電力の元幹部3人が福島第一原子力発電所(F1)事故を巡る業務上過失致死傷罪容疑で強制起訴されることになった。
そもそも2012年6月に3人の元幹部を告発したのは、F1事故の被害者らが作る「福島原発告訴団」だ。“刑事事件のプロ”と言うべき東京地検は2度にわたって不起訴としたが、選ばれた有権者が構成する東京第5検察審査会が「起訴議決」(起訴すべきだとする議決)を行ったため、史上9件目となる強制起訴が実現した。
公判で大きな争点になるのは、10mを超すような巨大津波の襲来を予想できたのか、対策を講じていれば事故を防げたか――の2点。検察が不起訴にしたことを勘案すれば、立証のハードルは高い。
しかし、筆者が再三指摘してきたように、F1とは真逆の経過をたどった原発も実在する。福島と同等の巨大津波に襲われた東北電力の女川原子力発電所だ。
女川原発は、計画段階から巨大津波を予見して対策強化にカネと労力を惜しまなかったことが功を奏し、被害が軽微で、ピーク時に364人の周辺住民を受け入れる避難所の役割まで果たした。多数の住民の健康と生活を破壊し、現場の作業員らに過酷な除染・廃炉作業を強いているF1事故とは、あまりにも対照的と言ってよいだろう。
公判で技術的な問題に拘泥せず、別の電力会社や他の原発との対応の違いを踏まえた審理がなされれば、仮に3人に刑事責任を負わせることができなくても、①封印された形の原子力行政の責任や、②東京電力という企業の体質、③3人を含む歴代経営者の経営判断や能力、適性を明らかにできるはず。それらを解明する意義は大きいだけに、公判で検察官役を務める指定弁護士の奮闘に大いに期待したい。
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