金子元希 須藤龍也 小林太一、高野遼
2015年8月4日08時18分
他人から情報を奪うインターネットソフトを開発し、各国政府に販売していたイタリア企業「ハッキングチーム」(HT)。内部情報が流出し、知られざる情報ビジネスの一端が明らかに。日本の公安調査庁が接触していた実態も浮き彫りになった。
「私は日本の公安調査庁で働いています。イベントでの説明に感謝します。上司も御社のソフトがとても印象に残っています」
HTから流出した情報には、公安庁の職員が同社側に送信したとみられる複数のメールも含まれていた。
「イベント」とは、2014年10月に東京ビッグサイトで開かれた「テロ対策特殊装備展」とみられる。イベントのホームページによれば、治安関係者や自治体職員らに限って入場できる「国内唯一のテロ対策展」。公安調査庁のほか外務省や警察庁も後援する。HTも出展していた。
公安庁職員からとみられる10月末のメールは「御社のソフトについてもっと話せる機会があれば」と結ばれていた。これを受け、HT側が再び来日して実演することを持ちかけた。
当初は、今年2月下旬の実施を提案されたが、公安庁側が「中東のために時間に追われている」として断った。1月、過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人の人質事件がシリアで発生していた。
3月になり、HT側が4月下旬に日本に行きたいと再提案すると、公安庁側も応じ、実施に向けた調整が始まった。メールで頻繁にやりとりがあり、東京駅近くの貸会議室を公安庁が手配。パソコンなども用意して、4月28日午後に実演を行うことが決まった。
流出した同社の「活動報告書」によると、当日は日本側は23人が参加。HT側が端末を遠隔操作して情報を抜き出してみせ、「彼らは間違いなく感銘を受ける」とあった。終了後に公安庁側が「こうした能力が不足しており、この技術は不可欠だ」と強調した、と報告されている。
公安庁関係者は取材に対し、実演が行われたことは認めたうえで、「サイバー攻撃の手口の分析や動向のチェックも我々の目的だ。HTの思惑はともかく、我々がHTのソフトを使う意図はまったくない」と話している。(金子元希)
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