今回の閣僚会合が重要だったのは、この時期を逃せば交渉そのものが漂流しかねないためだ。何よりも、来年秋には米大統領選が控えている。米日は年内に各国政府が交渉文に署名し、来年2月に議会の承認手続きに入るというシナリオを描いていた。そうすれば、オバマ大統領の任期が終わる来年末までにTPPを発効させることができる。逆に合意が遅れれば米議会の承認が大統領選の最中に行われ、次の政権で発効することになる。
共和党の候補らは総じてTPPを支持しているが、難しい立場に立たされているのは民主党最有力候補のクリントン前国務長官だ。ニューヨーク・タイムズは「クリントン氏はこれまで、TPPに対する立場を明確にしていなかったが、いつまでもそういうわけにはいかない」と指摘する。クリントン氏は2012年、オーストラリアでTPPについて「貿易のゴールド・スタンダード(黄金律)」と評したが、先週には「(国務長官として)TPPに取り組むことはなかった」と一歩引いた姿勢を見せた。
NHKなど日本メディアの報道には「閣僚会合で米国が参加国を十分に掌握できなかった」という焦りがにじむ。NHKは、甘利氏が会合で「決着に向けた今の機運を逃せば交渉が漂流しかねない」として次回の日程を決めようとしたものの、議長国の米国が慎重な設定が必要だと判断し、具体的な日程を決めるには至らなかったと伝えた。安倍晋三首相は1日に記者団に対し「『あと1回、会議を開けばまとまるところまできた』と報告を受けている。最終的に合意するまで全力を尽くしたい」と述べた。