(中村)何でこんなことしたんすか加賀美警視。
(加賀美)私はもう警視ではありません。
(加賀美)私のような者が警官となったときからこの結末は決まっていたのかもしれません。
(時子)おめでとう!
(加賀美)
両親を失った後私は大学に通いながらアルバイトをして妹の時子と2人で寄り添うように暮らしてきました
キャリア組で警察官なんてこれで兄さんは安泰だ。
(加賀美)ああ。
うちの生活も楽になるしお前の夢を応援してやれるな。
(時子)兄さん…。
生活とか私のことじゃなくてもっと自分のことを喜ばなきゃ。
はい。
(加賀美)うん?兄さんの就職祝い。
大事に使ってね。
(加賀美)おっ。
おお…。
ありがとな。
フフフ。
(加賀美)本日より捜査一課に配属となりました加賀美敬介です。
よろしくお願いします。
(中村)いいよいいよ。
そんなに硬くならなくって。
君のデスクはここね〜。
・
(刑事)警部殺しです!
(刑事)分かった。
現場は?
(刑事)区役所通りの交差点です。
事件ですか?
(中村)ああ。
初日っから殺人事件とは加賀美ちゃんも運が悪いなぁ。
加賀美ちゃん?私のことですか?
(中村)他に誰がいるんだい?
(加賀美)な…中村さん!
私はこの職場で警察官として人々を守るのだと強く誓っていました
・
(戸の開く音)・
(時子)兄さん帰ってたの?
(加賀美)ああ。
お前こそまだ起きてたのか?コンクールに出すデザインを考えてて。
兄さんこの頃ずっと帰るの遅いけど警察の仕事そんなに大変なの?う〜ん…そうだな…。
(時子)無理してない?
(加賀美)なあ時子。
世の中には悲しい事件があふれている。
刑事になってそれがよく分かった。
誰かが悲しむのを少しでも減らしたいんだ。
(時子)でもそれで兄さんが体を壊したりしたら私は悲しくなるよ。
心配性だな。
家族のこと心配するのは当然でしょ。
分かったら早く寝てください!
(加賀美)分かった分かった。
時子お前も無理するなよ。
(時子)は〜い。
強姦致死容疑で逮捕する!
(中村)お手柄だったね〜。
いえ。
これも中村さんの助けがあったおかげです!これが初検挙か。
もう加賀美ちゃんは卒業かな。
加賀美君。
(加賀美)えっ…。
はい!今後もいっそう努力…。
(バイブレーターの音)
(加賀美)あっ…失礼します。
(中村)おっ彼女か何か?
(加賀美)えっ?あっ…。
(中村)うん?
(加賀美)仕事中だぞ。
えっ?ああ…分かった。
うん。
うんそれじゃあ。
妹です。
今日は夕飯を作ってるから絶対に早く帰ってこいと。
仕方ないやつです。
なるほどね〜。
加賀美君の背後に見える女の影は妹さんだったか〜。
(加賀美)えっ?
(中村)じゃあ女子署員たちに加賀美君はフリーだって教えてあげっかな〜。
狙い目だぞってね。
(加賀美)ちょっ!中村さん…。
(加賀美)事件は日々起こり解決すべき問題は山のようにあった。
しかし私は人を守る仕事にやりがいを感じていました。
その意識に揺らぎが生じたのはあの日からでした。
無罪?ああ。
通り魔事件で加賀美君が逮捕したやつ。
あああと無罪じゃなくって不起訴ね。
まあどっちも同じか。
(加賀美)そんな…どうしてですか!?大量の飲酒による病的酩酊状態。
故に心神喪失で責任能力なしと考えられる。
簡単に言や酔って正常な状態じゃなかったから罪に問えないってことだ。
しかし裁判で心神喪失が認められる例は非常にまれなはず…。
(中村)裁判になればな。
起訴前の精神鑑定で心神喪失が疑われるときはそもそも起訴もしないんだよ。
(加賀美)えっ…。
(中村)無罪判決で負ける可能性がある裁判はわざわざしたくないってね。
裁判の勝ち負けは検事の出世に響くしなぁ。
まあ不起訴でも一応措置入院にはなるけどね。
措置入院など早ければ数カ月で退院です
そしてその男は再び殺人を犯しました
(キャスター)今回の事件は不起訴となって釈放された男の再犯ということですが。
(学者)このようなケースは決して少なくはありません。
刑法39条により心神喪失で責任能力のない犯罪者は罪に問えないんです。
(キャスター)しかしそれでは異常犯罪者が野放しになるのでは?あっ…どうしたの?暗い顔して。
あっ…。
ああ悪い。
ちょっと仕事で嫌なことがあったんだ。
まさか職場でいじめられてるとか!?兄さんって真面目過ぎるからからかいやすそうだし…。
もしそうだったら私が職場に文句言ってあげる!
(加賀美)違う違う!ハァ…。
世の中には裁かれない悪がいて自分のやっていることが少し疑問に思えてな。
大丈夫だよ!兄さんは正しく一生懸命頑張ってるもの!時子…。
(時子)むしろ私は駄目だなぁ。
この前のデザインも全然評価されなかったし。
妹が人一倍努力していることは誰よりも私が知っていました
毎日遊びにも行かず大学の課題を頑張っていることも
夜遅くまで新しいデザインを考えていることも
今に評価されるようになる。
絶対に。
ありがと兄さん。
こんなに…。
何やってんだ?
(加賀美)あっ…中村さん。
(中村)ほれ。
(加賀美)ありがとうございます。
犯罪者が不起訴になった事例を調べていたんです。
思った以上に多いんですね。
殺人事件に限っても起訴されるのは毎年5割前後。
殺人犯の半分は捕まってもすぐ野放しになっちまう。
私たちは何のために捜査をしているんですか?これが…正義ですか?まあそう思うよね〜。
二十面相って知ってんだろ?
(加賀美)ええ。
去年世間を騒がせた犯罪者ですよね?
(加賀美)法に寄らず悪を裁いたりしていたと…。
そいつもそんな思いに駆られたのかもなぁ。
まあ私は好きじゃないがね。
自分だけで悪を認定して裁くってのも傲慢だよ。
正義って言葉には気を付けろ。
それから程なくして彼に出会いました
うん?
(明智)加賀美敬介だな?探偵明智だ。
それは宮付きの…。
今後二十面相やその模倣犯に関する情報が入ったら全て俺にも伝えろ。
ああ。
公認の探偵なら情報の共有は許可されているが…。
なぜ私なんだ?そういう話なら上を通して…。
ここの刑事全員のプロフィルを見せてもらった。
お前が一番信用できそうだ。
だがお前のような人間こそ堕ちやすい。
のまれるな。
私は法の正義を信じていました
法を無視して悪を裁く二十面相という存在に心を動かされながらも自分の仕事の正しさを信じ込もうとしました
いつしか私は警視という地位に就いていました
・
(中村)これからは敬語を使わねばなりませんなぁ。
(加賀美)よしてくださいよ。
今までどおりでいいです。
上下関係を曖昧にしたら組織というものは立ち行かなくなります。
上の立場であることに慣れてください。
加賀美警視。
はあ…。
私は仕事にのめり込むことで胸に巣くう疑念から目をそらしていただけだったのです
(寝息)ハァ…おい時子。
こんな所で寝ると風邪ひくぞ。
(時子)う〜ん…次は…。
(加賀美)ん?
(時子)次は…絶対に…。
ああ。
これだけ努力してるんだ。
きっと報われる。
(加賀美)しかし人の心を持たぬ犯罪者はあまりに多く…。
ここまでだ須永!
(中村)あ〜疲れた…。
(加賀美)傷害致死容疑で逮捕する!
(須永)ぐっ…ハァ…。
ヘヘヘヘ…。
(加賀美)うん?
(須永)なあ俺は精神科へ入院してたことがあるんだよ。
ほらあれだ心神喪失ってやつで無罪になるんじゃねえか?安いもんだなえ?人の命ってよ。
なっ…須永!やめな。
お前が犯罪者になっちまうだろ。
(加賀美)すみません…。
(須永)ヘッ。
ヘヘヘヘ…。
(綿貫)僕を捕まえても意味ないんちゃうかな。
何?
(綿貫)僕心が病気やから責任能力はないんや。
前回もそれで不起訴になったしな。
法をなめるなよ…。
何度も刑を逃れられるほど甘くはないぞ!
(綿貫)でもあれやんなぁ。
心神耗弱とかで罪が軽ぅなるんや。
僕金持ちやから前科あっても生きてけるしな。
殴ったな君!
(加賀美)お前は…。
(中村)加賀美警視!落ち着いてください!
(綿貫)君頭おかしいんちゃうか!?・
(足音)
(中村)少しは落ち着きましたか?すみません軽率でした…。
ハァ…こんなときに間が悪いんすが須永の方は不起訴処分が決定しました。
えっ…。
(中村)今後は措置入院となるそうです。
(加賀美)そうですか…。
(中村)まあ気を落とさんでください。
中村さんは私よりももっとたくさんの理不尽を見てきたはずです。
どうして平気でいられたんですか?まあこう思うようにしたんです。
不起訴や無罪になる可能性があっても逮捕しないよりはした方が犯罪を減らせる。
根絶は無理でも。
フッ…私もこう見えて昔は熱血デカだったんすよ。
私はそこまで割り切ることはできなさそうです。
頑固っすね。
そのころにはもう自分の魂の先にある闇が見えていたような気がします
・
(戸の開く音)兄さん…帰ってきてたの?ああついさっきな。
(時子)電気もつけないで。
夕飯食べた?いや今日は…。
(時子)じゃあ今から作るね。
簡単なものだけど。
(時子)どう?おいしい?
(加賀美)ああうまいよ。
(時子)最近兄さんと一緒にご飯を食べることが少なくなってたから寂しかったんだ。
(加賀美)子供だな時子は。
むっ…自炊もできない兄さんに子供扱いされるなんて。
あっそうそう報告があるんだ。
(加賀美)何だ?フフッ。
何とこの間私が作ったデザインがコンクールで銀賞を取りました!やったじゃないか!
(時子)もう先生も他の人もみんな驚いてて。
よかったな…本当に。
うん。
(加賀美)よし!じゃああしたは早く帰ってお祝いしないとな。
ケーキでも買ってくるか。
兄さんが笑ってるの久しぶりに見た気がする。
(男性)う〜んちょっと覚えてないっすね…。
すみません。
(加賀美)そうですか。
どうも。
ハァ…遅くなったな。
はい加賀美です。
(中村)すいません至急連絡が…。
何かあったんですか?入院中の須永が脱走しました。
えっ!?病院の職員を1人殺して。
なっ!?それでね須永から警察に脅迫メールが届いたんす。
「俺を捕まえた復讐に加賀美敬介の家族を殺す」と。
えっ…。
妹さんとは今ご一緒ですか?あっ…いえ。
私は地取りをしていたのでまだ帰宅しておらず妹は今家に。
一刻も早く帰ってあげてください。
は…はい!
(呼び出し音)つながらない…。
時子…。
(加賀美)時子!
(中村)妹さん発見されました。
しかし…損壊が激しく…。
(加賀美)うっ…くっ…。
うわあああーっ!!うわあああーっ!!うっ…あっ…あっ…。
《無駄だったのだ…》《無意味だったのだ!》《法で人を守ることなどできない…!》《そんなものよりももっと…》《もっと強い抑止力が…》
(加賀美)長くせず捕まることは分かっていました。
警察と明智君の手が届く前に一人でも多く…。
私は不眠不休で断罪を続けました。
君が殺した人間の中に須永はいなかった。
殺さなかったのか?はい。
簡単に殺すわけがない。
(加賀美)四肢を溶かし両目をつぶし薬品漬けにしてわが家でじっくり殺してます。
妹の最期と同じ姿で。
(加賀美)これで話すことは全てです。
さあ私を極刑に。
罪人は罰せられるべきです。
ハァ…。
(ドアの開く音)
(中村)終了だ。
(警察官)はっ。
だが二十面相は死なない。
(ドアの閉まる音)バカ野郎が…。
お前は加賀美ちゃんのままでよかったんだよ。
(羽柴)加賀美さん…。
あれやなまた少女たちを…。
えっ!?うっ…!
(男性)よくも…娘を…。
(綿貫)えっ!?
(男性)よくも…さち子を…!
(さち子の父)断罪だ…断罪だ!2015/07/31(金) 01:55〜02:25
関西テレビ1
乱歩奇譚Game of Laplace[字]
第5話「芋虫」
かつて仮面の男たちは皆、法で裁けぬ犯罪者を追い、被害者の恨みを晴らしていました。今宵、仮面を脱いだ犯人から恐ろしい真相が語られるのです。
詳細情報
番組内容
「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと—」
没後50年となる日本を代表する作家・江戸川乱歩が綴った、「人間椅子」・「影男」・「怪人二十面相」・「パノラマ島」など心躍らされる、耽美かつ奇怪、そして幻想的な世界観を、数々の話題作を送り出したアニメ界の奇才チーム、監督:岸誠二、脚本:上江洲誠、制作:Lercheが、現代に蘇らせた完全新作アニメーション!!
番組内容2
「その日、初めて退屈じゃなくなった—」
とある中学校で起こった教師のバラバラ殺人事件。
この学校に通う少年・コバヤシは、事件の捜査に訪れた天才探偵・アケチと出会う。
異常犯罪ばかりを捜査するアケチに対して興味を持ったコバヤシは、友人のハシバの心配をよそに、自ら「助手」を志願する。
次々と起こる奇怪な事件の中で、コバヤシは退屈な日常を捨て置いていくのだった。
出演者
アケチ: 櫻井孝宏
コバヤシ: 高橋李依
ハシバ: 山下大輝
カガミ: 小西克幸
ナカムラ: チョー
黒蜥蜴: 日笠陽子
影男: 子安武人
ミナミ: 藤田咲
死体君: 山口勝平
ほか
スタッフ
【原案】
江戸川乱歩
【監督】
岸誠二
【シリーズ構成・脚本】
上江洲誠
【キャラクターデザイン】
森田和明
【総作画監督】
山形孝二
【プロップデザイン】
廣瀬智仁
【CGディレクター】
内山正文
【美術監督】
宮越歩
【美術設定】
曽野由大
【色彩設定】
加口大朗
【撮影監督】
三品雄介
【編集】
坂本雅紀
【音響監督】
飯田里樹
スタッフ2
【音楽】
横山克
【アニメーションプロデューサー】
比嘉勇二
鹿嶌舜
【アニメーション制作】
Lerche
【制作】
乱歩奇譚倶楽部
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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