劇団「文学座」代表・加藤武さん、ジムのサウナで倒れ急死

2015年8月2日6時0分  スポーツ報知
  • 今年2月26日、「第22回読売演劇大賞」授賞式に出席した加藤武さん

 劇団「文学座」の代表で、映画、テレビでも脇役として活躍した俳優の加藤武さんが7月31日に急死したことが文学座から1日、発表された。享年86。加藤さんはスポーツジムのサウナで倒れ、搬送先の都内の病院で死亡が確認された。死因は不明。葬儀・告別式は親族で行う。後日、劇団でお別れ会を行う予定。

 映画「金田一耕助シリーズ」で早合点の刑事役などで知られた加藤武さんが急死した。文学座によると、31日夕方にスポーツジムのサウナで倒れ、その後、病院で死亡が確認された。この日は加藤さんは休みで、「ジムは1人だったようです。持病など細かいことは分かりませんが、健康ではありました」と説明する。

 7月19日に東京・お江戸日本橋亭で行った「加藤武 語りの世界」で「牛若みちのく送り(新平家物語より)」「八代目市川中車の大島奇譚」を披露したのが観客の前に立った最後の仕事となった。その後、同22日に、TBSラジオ・特番「永六輔の誰かとどこかで 2015年夏場所」の収録にゲスト出演。今月9日午後8時から放送予定という。

 加藤さんは1951年、早大文学部英文科卒業後に1年間、中学の英語教諭を務めたが、俳優への思いをあきらめきれず、52年4月に文学座入り。12年に死去した俳優でエッセイストの小沢昭一さんは麻布中学の同級生で、74~80年に文学座を退座し小沢さん主宰の期間限定劇団「芸能座」に参加した。こわもての風貌と愛嬌(あいきょう)のある演技で、悪役や個性の強い役どころを務め、北村和夫さんとともに文学座の中核俳優として活躍した。

 56年に銀幕デビューし、57年に黒澤明監督の「蜘蛛巣城」に警護の武士役で出演して以来、「隠し砦の三悪人」(58年)、「悪い奴ほどよく眠る」(60年)、「天国と地獄」(63年)など黒澤作品に続けて出演し、硬軟自在な演技で作品に厚みを加えた。「豚と軍艦」(61年)など大学時代の同期だった今村昌平監督の作品でも重要な役割を担った。

 市川崑監督の「犬神家の一族」(76年)、「悪魔の手毬唄」(77年)を始め、シリーズで演じた手をポンと打って発する、「よーし、分かった」の決めぜりふで作品に欠かせない存在だった。深作欣二監督の「仁義なき戦い」や「釣りバカ日誌」などの人気シリーズや、NHK大河「風林火山」(07年)でも印象的な脇役を演じた。

 14年の公演「夏の盛りの蝉のように」で葛飾北斎を演じ、第22回読売演劇大賞「優秀男優賞」などを受賞、演劇界への長年の貢献から「芸術栄誉賞」も受賞し、同作が文学座での最後の舞台となった。文学座では「劇団にとって重要な俳優でしたから。おそらく開かないことはないと思います」と後日、お別れの会を開くことになりそうだ。

 ◆加藤 武(かとう・たけし)1929年5月24日、東京都生まれ。51年に早大文学部を卒業後の52年に文学座研究所に入所。同年、「狐憑」で初舞台を踏み、59年に文学座の座員に。以降、同劇団の舞台を中心に俳優として活動のほか、演出も務める。映画では「蜘蛛巣城」「隠し砦の三悪人」など黒澤明監督の作品で名脇役として注目され、テレビも含め映像では脇役として活躍。74年に小沢昭一さんらと芸能座を結成するために退座も、80年に復帰。2010年、戌井市郎氏の死去に伴い、代表代行に。今年5月、正式に代表に就任していた。

 【高齢者のサウナ】心臓に負担をかけ、血圧が急激に変化するため、時間を短縮したり、低温サウナが望ましいとされる。高齢者は血管の柔軟性が失われ、70歳過ぎて初めてサウナに入る場合は特に注意が必要。サウナ後の冷水浴が脳梗塞、心筋梗塞、不整脈の引き金になることもある。

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