(谷垣泰治)人を憎む暇があったら仕事せい!仕事!
(望月友也)てめえが何を教えてくれた!掃除ばっかさせやがって!仕事は目で見て覚えるもんや。
(鑑識課員)この暑さから考えて死後1か月程度。
頭蓋骨の骨折が致命傷だと思います。
(佐々部健太)発見された場所がここ…。
という事は山を歩いていてあそこから転落したんですかね?
(成増清剛)所持品も持たずにこんな革靴で山歩きはしねえだろ。
(佐々部)事故ではないという事ですか?まずは身元の確認だ。
(鶴丸りん)おはよう…。
(鶴丸あや)おはよう。
(ため息)ちょっと何よ?朝っぱらからため息なんかついて。
(りん)今日の1限目のクラス授業態度がよくなくって。
全然私の話聞いてくれないの。
もうなんだか憂鬱。
ちょっとちょっと。
教師がそんな事言ってどうするの。
ビシって言ってやればいいじゃないの。
うるさい!静かにしろ!ってさ。
そんな事言ったらうざがられるよ…。
あのねりん教師なんていうのはねうざがられるぐらいがちょうどいいのよ。
ね?そんな通り一遍の付き合いだったらさもう生徒だってついてこれないじゃないの。
黙って俺について来い!俺の屍を越えていけ!よね。
教師もやっぱ職人気質じゃないと。
ん〜はい!本日の訓示終わり!ごちそうさまでした。
後片付けよろしく〜。
いいわよね〜迷いのない人は。
うらやましい。
(池内弘二)ガイシャの話じゃこっちに逃げたはずなんだがな。
(平林雅彦)右京北署は白骨遺体でてんてこまいなのにこっちはただの引ったくり犯。
なんだかめげちゃいますよね〜。
(物音)シッ…!ちょっと消せ。
(池内)あんたそこで何やってんだ?おい…。
(平林)あっ!ちょっと…待て!
(平林)おい待つんだ!おい!
(池内)はいはいダメダメ…。
(友也)離せよ!
(池内)「望月友也」。
盗品らしき物は持ってないみたいです。
こんな時間に何やってたんだ?
(平林)ちゃんと答えろ!
(友也)ああっ!あなたには黙秘権があります。
自分の意思に反して供述する必要はありません。
その前に聞きたい事があるんだけど。
なんでしょう?あんたら俺に偏見持ってるよね?偏見?傷害と暴行で少年院出たり入ったりのクズ。
池内だっけ?あいつがちゃんと調べてんだろ。
だから引ったくり犯じゃないってわかっても住居侵入罪とかいちゃもんつけて強引に逮捕したわけだ。
無断で他人の庭に入り込むのは立派な住居侵入罪ですよ。
非行歴とは関係ありません。
それにあなたの供述には疑問があります。
へえ〜。
どこが?あなたは警察でこう供述してますよね。
「たまたま近くを通りかかったら腹痛を覚え谷垣泰治さんの家でトイレを借りようとした」。
別におかしくねえだろ。
谷垣泰治さんは現在あなたが勤務している京都サンセイ製作所を去年67歳で退職している。
あなたと一緒に働いてたのは3年間。
その間あなたは谷垣さんから口の利き方や態度仕事について再三注意を受けていた。
注意なんてもんじゃねえよ。
人の事怒鳴りまくってよ。
半人前がいっぱしな口利くな!仕事を覚えて自分を変えるんや!当分は工場の掃除や。
顔を見るのもウンザリだったよ。
そんな谷垣さんによくトイレを借りる気になりましたね。
こっちは腹が痛くて死にそうだったんだよ!それとも何だ?嫌いなじじいには便所も借りんなって法律でもあんのか?
(井森幸三郎)その言葉遣いなんとかなりませんか?は?あんまりにも聞き苦しい!じゃあ出てけば?俺は検事のおばちゃんとしゃべってるんだよ。
おっさんもデブも必要ねえから。
出てけよ!
(川喜多夏帆)ちょっと…!いい加減にしなさいよ!川喜多。
事務官がいなければ取り調べは出来ません。
あなたがきちんと話が出来るようになるまであなたの身柄を拘留します。
なんだとコラ…!退出させてください。
おいふざけんな!おとなしくしなさい。
おい離せ!離せよコラ!あ〜!もうあのクソガキ!何が「トイレを借りに行った」よ。
谷垣さんの留守を狙ってお金を盗もうとしたに決まってる!ちょっと!2人とも聞いてます?ねえ井森さん。
望月友也1人暮らしよね?はいそうですが…。
それが何か?いや…さっきの乱暴な態度と裏腹に彼が犯行時に使ってた軍手使い古しではあるんだけど妙にきれいなのよ。
名前まで書いて…。
これ自分で洗濯してるのかしらね…。
それよりこの庭に侵入された谷垣泰治さん。
連絡まだ取れないのよね?はい。
いまだに留守のようで。
谷垣さんの事気になるわねえ。
私も悪い予感がいたします。
谷垣さんもまた1人暮らしです。
川喜多!京都サンセイ製作所行くわよ。
えー!でももうすぐ昼休み…。
それが何か?お昼は抜き!ええーそんなぁ…。
お願いします。
行ってきます。
京都地検の井森ですが…はいこんにちは。
12時きっかりにうな重一人前お願いします。
肝吸い付きで。
これがへら絞りですか。
(岡村)ええ。
職人が棍棒のようなもん握っとるでしょ?はい。
(岡村)あれがへら。
あのへら1本で金属をどんな形にも変えられる。
へえ〜!今作っとるのは街路灯パーツです。
谷垣のおっちゃんは飛行機のヘッドカバーやロケットのパーツまで作っとりました。
すごーい!
(腹の鳴る音)日本の最先端技術は職人さんたちに支えられてるんですね。
へらは谷垣のおっちゃんの体の一部やった。
あ…けど左手が痺れるようになって…。
(岡村)退職の日におっちゃんそのへらをどうしても持って帰りたい言うて…。
おっちゃんにとってへらは勲章やったのかもしれません。
友也がここに来たのは4年前。
ここに金を盗みに入ったところ谷垣のおっちゃんに見つかったんですわ。
それで…。
コラ!お前何しとんねん!
(谷垣)おいおい…ほら…ほら離せほら。
わかった。
よしじゃあもう…。
はいご苦労はん。
離せ!おとなしいせえおとなしい!コラ!金がほしいんやったらなここで働け!寮もあるし飯もついとる!いやそんなアホな…。
いやいやまあまあちょっと待てや。
あのなあ…コラ!半年間給料なしや!それが嫌やったら警察に突き出す!
(岡村)おっちゃんなんであんなの雇うたのか。
いただきます。
あ…よかったら何か取りまひょか?どうぞお構いなく。
ほな失礼して。
でも少しだけ望月友也の事を見直しました。
4年間辞めなかったって事は根性はあったって事ですよね?他に行き場がなかっただけでっしゃろ。
友也には身元保証人もおらんかった。
親おらんのやないですかね。
食い物と寝る場所さえあればってわけや。
けどおっちゃんの事はほんま心配やなあ。
新聞はたまってないそうなんで旅行という事も…。
それはおかしい。
おっちゃん旅行嫌いや。
死んだ奥さんがなんぼせがんでも絶対腰上げんかった。
おっちゃん子供も付き合いのある親戚もおらん。
他に泊まりにいくようなとこもないはずや。
池内さん。
谷垣さんの事何かわかった?その事なんですが望月友也やっぱりただの住居侵入じゃなさそうですね。
こちらこの近くのアパートに住んでらっしゃる会社員の方なんですけど先月7月5日の夜谷垣さんの家を若い男がうかがってるのを見たそうなんです。
近所に聞き込みをしたところその日以来谷垣さんの姿を誰も見かけてないそうなんですよ。
誰もって…。
え…7月5日からならもう1か月以上も経ってますよね?それでその若い男がこの男に間違いないんですよね?
(高橋春美)はい。
それだけじゃないんです。
新聞販売所に確認したところ翌朝谷垣って名乗る若い男の声で今日から湯治に行くからしばらく新聞を止めてほしいって電話があったそうなんですよ。
そこまでわかっててなんでここでつっ立ってるのよ!我々もさっき覗いてみましたが争った跡はありません。
第一中にもし遺体があったら異臭がするはずですよ。
覗いただけで何がわかるの!すぐに捜査令状取りなさい!
(花岡)あれはいつやったかなあ…そや。
丹波に杉板運んだ帰りやから7月5日や。
夜中近くにな北嵯峨の山道を男がリヤカーを押しとってその上に青いビニールシートでくるんだもんが載っとったんですわ。
男の顔見ました?いや。
けどリヤカーには京都サンセイ製作所って書いてありました。
京都サンセイ製作所…。
(佐々部)ご存じなんですか?梅滝町にあるへら絞りの会社だ。
あ…ありがとうございました。
成増さん…!ルミノール反応がありました。
このリヤカーは誰が?よく使っとったのは友也かな?友也…?ええ。
ちょっと今すぐ呼んでください。
今三条署に捕まっとります。
1年前までうちの職人やってた谷垣っておっちゃんの家に忍び込もうとして。
そのおっちゃんと今も連絡がつかんのですよ。
この服に見覚えは?谷垣のおっちゃんがよう着てたもんや!
(佐々部)成増さん…!まさか…。
やっと令状が下りたんですよ!なのに谷垣さんの家の捜査を待てとはどういう事なんでしょうか?
(高原純之介)谷垣さんの自宅は今成増君たちが調べてるよ。
どうして成増さんたちが?北嵯峨で見つかった白骨遺体の事は知ってるね?はい。
ですがそれが今回の事件とどういう…?京都サンセイ製作所のリヤカーからその白骨遺体と同じAB型の血痕が見つかってね。
年格好など全ての情報が谷垣泰治さんと合致するそうだ。
じゃあDNA鑑定のために谷垣さんの家を?鑑定の結果遺体が谷垣さんだと断定された場合成増君は望月友也を事情聴取したいと言ってきてる。
つまり望月友也が谷垣さんを殺害したと…。
まあ全ての状況を考えるとそういう事に。
部長失礼します。
ちょっとあやちゃんどこへ?もちろん谷垣さんの家へ。
だから今成増君たちが捜査を…。
令状が下りている以上私にも捜査の権限はあります!私にも部下の暴走を止める権限があるんだけどなあ…。
(ため息)
(鑑識課員)出ました。
ここが殺害現場という事ですね。
で毛髪のほうは?ダメです。
指紋も検出されませんし…。
犯人は相当念入りに証拠を隠滅しているようです。
ああよしわかった。
よろしく頼む。
谷垣泰治さんの兄貴が浜松にいる事がわかった。
その兄貴と白骨遺体のDNAを調べて兄弟だとわかれば遺体は谷垣泰治さんの可能性が高い。
これで望月友也引っ張れますね。
んーまだ推測だけどな。
多分友也は4年間うっぷんをためていた。
それを晴らすために1か月前の7月5日谷垣さんを殺害。
念入りに証拠を隠滅し遺体を北嵯峨の山中に遺棄した。
そう決めつけるのはまだ早いわ!だとしたら住居侵入罪で池内さんに逮捕された夜望月友也はここで一体何をしてたの?谷垣さんのサイフと通帳がタンスの引き出しの中に入ってた。
だけどなぜか何も取らずに逃げてんだ。
谷垣さんの遺体が発見されないのをいい事に改めて金を盗みに来たって事ですか?どうして2人ともそう望月友也を犯人にしたいの?そっちこそさ友也をかばう根拠はこれなんなのよ?軍手よ!えっ?使い込んだ軍手に名前まで書いてきれいに洗って大切に使うような人が殺人を犯すなんてとても思えない!これ主婦の勘!軍手か…。
ちょっとちょっと!逃げる気?ちょっと表で話そう。
ちょっと…。
状況証拠だけでなぜそこまで決め付けるの?望月友也に非行歴があるから?成増さんらしくもない!あんたねえ友也の何知ってんだよ。
そっちこそ!俺はなあ友也が16の時からの付き合いなんだよ。
えっ!そうなの?ああ。
父親は友也が生まれてすぐに水商売の女と蒸発した。
母親にも男がいてな友也はその男を…。
(由美子)あんた!しっかりして!
(由美子)この子です!この子がやったんです!あんたなんかもううんざり!あんたなんか産まなきゃよかった!友也が少年院から出てきた時には母親はアパートから消えていた。
別の男と一緒にな。
望月友也…母親にも捨てられたのね。
だから誰にでも牙をむくようになっていった。
(男)やめて…ああっ!文句があんならさっさとどこでもぶち込めよ。
何やけになってんだよ!お前そんな自暴自棄になるんじゃないよ。
(成増の声)何を言ってもあいつの耳には届かなかった。
それでもな俺も一度は安心した事もあったんだよ。
あいつが京都サンセイ製作所に就職したって聞いて様子を見に行った時に…。
(友也)何すんだよ!じじいこの野郎!洗濯機に放り込んだって汚れは落ちへん!ええか?こうやって…洗濯板使うて1枚1枚…気入れてこうやって洗うねん。
どーせまた汚れんだろうがよ!軍手もこれ大事に出来んようなら職人にはなられへんなあ。
当分は工場の掃除や。
はい。
なかなか手ごわそうなじいさんだな。
けど辛抱しろよ。
辛抱すりゃお前人間なんとかなるんだから。
わざわざ説教しに来たのか?そんな暇じゃねえよ。
ちょっと通りかかっただけだよ。
じゃあな。
俺がぶっ殺してえやつ教えてやろっか。
あん?あんたとあのクソじじいだよ。
そんな牙をむいたって無駄だぞ。
あのじいさんには通用しねえよ。
俺を甘く見んなよ。
軍手ちゃんと洗えよ!ほらこうやって。
あのおっちゃんがついてりゃ大丈夫だってな。
それが谷垣さん…。
うん。
でも甘かったよ…。
あの時俺が気抜いたせいでさもう谷垣さんは…。
いやまだ殺されたと決まったわけじゃないわよ!それに望月友也少なくとも4年間はひとつの仕事を続けて頑張ったのよ!そのうちの3年間は谷垣さんに厳しく叱られながらも頑張った!そんな彼が殺人なんて…!友也はねそういうやつなんだよ…。
ちょっと成増さん…!ねえちょっと…ちょっと!
(鑑識課員)すいません。
あ…あ…!それ証拠品?はい。
室内に落ちてました。
ランプの笠みたいね…。
へこんでる。
これって…!
(岡村)へら絞りでこさえたもんやがうちの製品やないなあ。
(堀内)谷垣のおっちゃんにしては出来が悪いしなあ…。
ひょっとして友也が作ったんやないかなあ?あいついつも遅うまで工場に残ってたんで。
やっぱり…。
望月友也これを使って谷垣さんの言いつけを守り軍手を1枚1枚丁寧に洗ってたんだわ。
ねえちょっとこれ見て!これ全部へら絞りの技術よ。
これ谷垣さんからこの技術を盗もうとしてたんだわ。
「おっさんのように」…。
あいつ本気で職人になる気だったんだな。
望月友也地に足をつけてきちんと生活してた。
彼は成増さんが知ってた頃の彼じゃない。
4年間で変わったのよ。
なら…誰が殺したんだ?谷垣泰治さんを。
この笠からあなたの指紋が検出されました。
これはあなたが作ったものですよね?この笠がなぜ谷垣さんの家にあったのか…。
もしかしたらひと月前の7月5日の夜あなたは自分が作ったこの笠を谷垣さんに見せに行ったんじゃないですか?あなた谷垣さんのへら絞りの技術を必死に書きとめた。
谷垣さんの言いつけを守り洗濯板で丁寧に軍手を洗い大切に使った。
いつかは谷垣さんのような立派な職人になろうと思って。
やっぱりそうなのね?あなた谷垣さんにほめてもらいたくて…。
そうだよ。
ちょっとは俺の事見直す気になるかなと思ってさ。
北嵯峨で白骨遺体が見つかったんだって?あれ谷垣のじいさんかもな。
俺キレると何すっかわかんねえから。
(電話)はい。
お世話になります。
あそうですか…。
わかりました。
右京北署からです。
谷垣泰治さんのお兄さんと白骨遺体のY染色体が一致したそうです。
男兄弟は父親のY染色体をそのまま受け継ぐ…。
白骨遺体は谷垣泰治さんとみて間違いないわ。
そういう事になります。
(友也の笑い声)ほらだから言っただろ?
(笑い声)友也が自供したって?まだほのめかした段階なんですが。
今回ばっかりは主婦の勘も大外れですね。
そうか…。
あっそういえば成増さん浜松署から連絡ありました?いや。
実は…谷垣さんの甥も行方不明らしいんですよ。
(漆原さやか)うわぁ〜こんなぎょうさん!
(桜井麗子)そうなのよ。
本当男ってやつは物持ちがいいっていうかなんていうかもう…。
ねえあやさん!あやさんってば!
(吉川香織)ちょっとどないしたん?今日ずっと変やで。
心ここにあらずって感じやで。
ごめんごめん。
え…なんだっけ?
(麗子)だからうちの旦那がねキャバクラの名刺を隠し持ってたのよ!しかもこんなきれいにファイリングなんかしちゃって。
総数なんと108枚。
(柿野たまこ)まさに煩悩の塊。
(さやか)ほんまにひどいよね。
しかもこれをずーっと屋根裏に隠してたんやって。
あらららら…。
後ろめたかったんでしょうね。
な〜んか時々不自然に天井なんかチラ見しちゃって。
もうバレバレだっつーの!やっぱり犯行現場が気になるんですかね。
あやさんも気ぃつけたほうがええよ。
章ちゃんなんてもうなんでも隠したい放題よ。
章ちゃんに限ってそんな事はないわ。
男なんて単純だからね。
怪しい時は屋根裏か床下調べりゃいいのよ。
主婦の勘。
わぁ〜!えいっ!えい!ああ〜!もっといけ!もっといけ!
(携帯電話)
(携帯電話)あっ…。
(携帯電話)成増さん?おうおうなんだよ?この爽やかな格好は。
買い物の途中だったの。
何?ちょっとな気になる男がいるんだ。
えっ誰?谷垣泰治さんの甥っ子で名前は谷垣正雄。
50過ぎてもブラブラしてて75歳になる親に金をせびってたそうだ。
だがこいつがこの1か月一度も浜松の実家に姿を現してない。
住んでるアパートにも戻ってねえんだ。
それに7月5日以前に何度か泰治さんの自宅付近での目撃情報もある。
まさかこの谷垣正雄さんが叔父の泰治さんにお金を借りに行って…。
もめたあげく泰治さんを正雄が殺害。
でそのまま逃亡した可能性もある。
かあるいは…。
あるいは何?白骨遺体は本当に谷垣泰治さんなのか…?だってそれはちゃんとDNA鑑定で…。
調べたのはあのえーっと…。
何?Y…Yなんとか体なんだよ…。
何Y…。
何?なんだっけ?池内。
Y染色体です。
あそうそう。
Y染色体は確かに直系男子にそのまま受け継がれていきます。
だとすると正雄は自分の父親とその弟である泰治さんと同じY染色体を持ってるはずなんです。
じゃあ白骨遺体は谷垣泰治さんではなく甥の正雄さんかもしれないって事?今平林が正雄のアパートから採取した毛髪を科捜研で調べてもらってます。
(携帯電話)池内だ。
(平林)谷垣正雄さんのDNAと白骨遺体のDNAとが完全に一致しました。
谷垣泰治さんの自宅及びリヤカーから採取された血痕も谷垣正雄さんのものでした。
そうかわかった。
ビンゴです。
じゃあ谷垣泰治さんの自宅で殺害され北嵯峨に遺棄されたのは甥の谷垣正雄さん…。
でもだとすると…。
谷垣泰治さんは一体どこへ消えちまったんだ?おいちょっとどこ行くんだ?谷垣泰治さんの家よ!何か見落としてるような気がするの!ないわ。
やっぱりない!押収品リストにもない!谷垣さんが工場を退職した時大切に持ち帰ったはずのへらがどこにもない!おい池内。
お前友也を見つけた時あいつどこいたんだよ?確か…。
ここに潜んでいて我々が声をかけたらあそこから逃走しようとしました。
怪しい時は屋根裏か床下…。
まんざら嘘でもないかも…。
あれ?緩んでる。
ねえここ開けて!ん?あったよ。
こっちこっちここここ…。
なんで谷垣さんのへらを友也はあんなところに…。
(池内)これがもし凶器だとすると…。
えっ…?正雄を殺害したのはやっぱり友也か…?だとしたらこんなふうに大事にタオルで包んで隠す必要なんてないわ。
どっかに捨てればいいだけなんだから。
どういう事だ…。
これ…!?彼は守りたかったんだわ…。
北嵯峨で発見された白骨遺体は谷垣泰治さんではなく甥の谷垣正雄さんである事が判明しました。
だったらなんだよ?川喜多。
はい。
谷垣泰治さんが使っていたへらです。
正雄さんの遺体の頭蓋骨の陥没痕と形状が一致。
凶器と断定されました。
全部わかっちゃったんだ。
全て話してくれますね?つまりこういう事。
1か月前じいさんちに行ったら知らねえ男が1人で酒飲んでてよ…。
俺が持ってったランプの笠にケチつけてきて。
あげくに蹴っ飛ばしやがってよ。
だからそのへらでぶっ殺してやったわけ。
(井森)それが谷垣さんの甥の正雄さんだった。
それからどうしたの?へらを通風口に隠して遺体を北嵯峨に捨てた。
んでじいさんちに戻って掃除機をかけ指紋を拭いた。
そんなに念入りに証拠を隠そうとしたのに凶器のへらは捨てずになぜ通風口に隠したりしたの?夢中だったんだよ!指紋のついたランプの笠を置きっぱなしにしたのも夢中だったから?疑問はまだあるのよ。
正雄さんの遺体には泰治さんの衣服が着せられていた。
着替えさせたのはあなたですよね?一体どうしてそんな事をしたの?答えられなければ私が言いましょう。
あなたにはどうしても正雄さんを泰治さんだと思わせる必要があった。
それしか泰治さんを守る方法がなかったから。
なんで俺があのクソじじい守んなきゃなんねえんだ。
あなたにとって谷垣泰治さんはそれほど大事な人だった。
てめえ!ぶっ殺されてぇのかよ。
わしを殺しても世の中なんも変わらんぞ。
お前が刑務所で一生を棒に振るだけの話やで。
世の中なんかどうだっていいんだよ!俺は大人たち全員ぶっ殺してぇだけなんだよ。
人を憎む暇があったら仕事せい!仕事!仕事を覚えて自分を変えるんや!てめえが何教えてくれた!掃除ばっかさせやがって!仕事は目で見て覚えるもんや。
(泰治)人を殺すのはアホや。
人を憎むのもつまらん。
つまらん事はせんこっちゃ。
あなたはどんな大人も信じられなかった。
だから全ての大人に牙をむいてきた。
でも谷垣さんと会ってあなたは変わった。
(友也)おはようっす…。
聞こえんな。
年寄りは耳が遠いんや。
おはようっす!おう。
あなたは初めて大人を信じようとした。
いい加減にしてくれよ!頭に血が上ってじいさんちにいた男をぶっ殺した!俺はなんも変わっちゃいねえんだよ!あなたの供述が事実なら一体谷垣泰治さんはどこにいるの?なぜ姿を現さないの?知らねえっつーの!あんなクソじじいの事なんか。
(電話)はい。
検事に代わります。
成増刑事です。
はい鶴丸。
やっぱりそうだよ。
姿を現さなかったんじゃなくて現せなかったんだ。
わかった。
すぐ行く。
望月友也を連れて…。
どこへ行くかはわかってるわね。
検事…望月友也を連れて行くというのは?まさかこいつをここから連れ出す気じゃないでしょうね?いやそれは絶対いけません!いいから言うとおりにして。
責任は私が取ります。
脳梗塞の手術のあとやっと意識が戻ったがまだ言葉が出ない。
体も動かせないそうだ。
谷垣さん京都地検の鶴丸です。
望月友也さんを連れてきましたよ。
ああ…。
なんですか…?なんですか?谷垣さん。
私が殺しました…。
(泰治)甥の…正雄を…私が…。
何寝ぼけた事言ってんだよ!ふざけた事言うとぶっ殺すぞ!クソじじい。
あなたわかってるんでしょ?知ってたでしょ?谷垣さんの気持ち。
見たでしょうこのへら。
知ってたんでしょ?谷垣さんの名前の横に新たに彫られたあなたの名前。
見たでしょう?谷垣さんにとってあなたは息子だったのよ!自分の勲章であるこのへらを託せるたった1人の息子。
そのあなたに自分の罪をかぶせて谷垣さんが喜ぶとでも思ってるの?そんな事をしたら一番苦しむのは谷垣さんなのよ!全部話せ。
な?それが谷垣さんのためなんだよ。
おっさん…。
(友也の声)おっさんが辞めてからも俺の耳にはいつもおっさんの声が響いてた…。
(友也)人を憎む暇あったら仕事せい。
仕事を覚えて自分を変えるんや…。
(友也)1年かかってやっと思うようなものが出来ておっさんに見せに行った。
けどなんつっていいかわかんなくてさ…。
(ため息)なんだよ…。
(谷垣正雄)これぽっちの金で帰れるか!
(正雄)そっちは年金ガッポリ。
けどなこっちはお先真っ暗なんだよ!
(友也)おい!
(友也)何やってんだよ!なんだてめえは!てめえ…。
なんだ?こりゃ。
(友也)触るな!おっさんも俺もそのへら絞りに命懸けてんだよ。
なんだこんなもんただのガラクタじゃねえか!な?この野郎!やめろ!友也!ぶっ殺してやるよ。
うああー!
(殴る音)ああ…。
おっさん…。
死んでる。
警察へ電話せい。
ええから…電話せい…。
(友也)おっさん…?おいおっさん!おい!おいおっさん!おい!どうしたんだよ?おっさん!おい!大丈夫かよ!
(友也の声)頭の中が真っ白で…。
けど遺体をどうにかしなきゃって思って。
どうしても…どうしてもおっさんを殺人犯にしたくなかった。
でも遺体をどこかに捨てたところでいつかは発見される。
遺体の身元がわかったら足取りを調べられ谷垣のおっさんが疑われる。
(友也の声)だから遺体を谷垣のおっさんと思わせようとした。
そのためには白骨化する前に見つかってはまずい。
だから北嵯峨の山中に遺棄したのか?
(友也の声)おっさんち戻って夢中で証拠を消しました。
ランプの笠をそのままにしたのは万が一捜査の手が谷垣さんに及んだ時あなたがその罪をかぶるつもりで…。
でも2人の名前の彫られたへらだけは捨てられなかった。
白骨遺体が見つかったってニュースで聞いて…。
へらだけは絶対に誰にも渡したくなかった。
(池内)あんたそこで何やってるんだ!
(池内)おい!おっさんは人殺しになんかなっちゃダメなんだよ。
人殺しは俺のほうが似合ってるんだよ!バカ言うんじゃない!谷垣さんはなお前を人殺しにしないために自分でやったんだよ。
谷垣さんは50年間へら絞り一筋に生きてきた。
あのへらは谷垣さんにとって勲章だったんだ。
そんな大事なへらを凶器に変えてまでお前を守りたかったんだよ。
俺は…どうすれば…。
笠を。
はい。
おっさん…。
まだまだや…。
褒めてもらうまでにはあと10年はかかりそうだな。
住居侵入容疑については不起訴。
死体遺棄と証拠隠滅容疑であなたを起訴します。
しっかりと裁判を受けてください。
はい。
でもあなたには未来がある。
谷垣さんが守ってくれた長い未来があるのよ。
あいつこれからは大人を信じる事が出来ますね。
うん。
きっとまっすぐ歩いていってくれるわ。
うぅっ…でも私は信じられなくなりました。
ん?今度の事件の最初の取り調べの日検事と私お昼抜きで捜査に行きましたよね?う…うん。
帰ってきたらくずかごの中にこれが入っていたんです。
百々楽って…これうなぎの老舗じゃないの!検事と私が炎天下のもと走り回ってる間に井森さん1人でうな重取って食べてたんですよ。
嘘!?検事外は蒸しますよ。
ちょっと井森さん!ねえ説明して!私たちがお昼抜きで働いてる間…。
うな重食べたんですよね?ねえ肝吸い付きだったの?松?竹?梅?いくらの?
(井森)3800円…。
(2人)高ぇ〜!2015/07/31(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
京都地検の女8[再][字]
「死体なき殺人の謎!!DNA不一致の罠…」
詳細情報
◇番組内容
名取裕子主演▽“主婦の勘”を武器に難事件に立ち向かう女性検事・鶴丸あやの活躍を描く検察ミステリー第8弾!心に響く深い人間ドラマを京都情緒たっぷりにお届けします!
◇出演者
名取裕子、寺島進 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:33259(0x81EB)