2NHK高校講座 世界史「グローバル・ヒストリーの中の人と暮らし」 2015.07.31


戦国時代は城下町港町門前町など現在にもつながる都市が各地で発展していった。

(眞鍋)マジカル・ヒストリー倶楽部にようこそ!今回のミッションは「暮らしの中のグローバル・ヒストリー」。
文太君はどんなプランを作ってきてくれたのかな?はい。
今回は私たちの暮らし特に食にスポットを当てて旅のプランにまとめてみました。
ほう。
そしてこの中にはそのテーマになる料理が入っています。
こちらです。
あっカレーライス。
そうです。
カレーは世界中で食べられているだけでなくこの一皿の中に世界の歴史が凝縮されているんです。
これこそまさに暮らしの中のグローバル・ヒストリーといえるでしょう。
え〜まあ確かに欧風カレーとかインドカレーとかあるけどグローバル・ヒストリーっていうのはちょっと大きく出過ぎたんじゃない?いやいやそれが大げさじゃないんですよ。
早速カレーライスを巡る旅に行ってみたいと思います。
まずは今回の見どころです。
いざ3つのビューポイント!日本人はカレーが大好き。
ある調査によると週に一度はカレーを食べているとか。
最も一般的な家庭のカレーは玉ネギニンジンジャガイモと肉をカレールーと一緒に煮たものですが…。
実はこれ明治維新のころ外国から伝わりその後…今回はその歴史をたどっていきましょう。
訪れる最初の場所はインド。
豊富な香辛料を使ったインドのカレー。
最後の決め手はコロンブスによってもたらされました。
そして南米ペルーのアンデス山脈。
カレーライス具材の定番ジャガイモの原産地です。
ジャガイモがたどった数奇な運命とは?さあカレーライスの歴史をたどるマジカル・ヒストリー・ツアーに出かけましょう。
カレーってひと言に言ってもインドとかペルーとかいろんな国名が出てくるしコロンブスっていう名前を聞くと世界史っぽくなってきたね。
なってきましたよね。
でもそれだけじゃないんです。
日本のカレーライスは更に多くの国との関わりの中で誕生したものなんです。
ほう。
カレーの歴史奥深そうだね。
はい。
それではカレー発祥の地インドからツアーに出かけてみましょう。
ファースト・ビューポイント!いざテイクオフ!テイクオフ!マジカル・ヒストリー・ツアー。
最初はインド西部の港町…ここはムンバイで1〜2を争う香辛料の小売市場…100mほどの通りに40軒以上の香辛料の専門店が軒を連ね色とりどりの香辛料が50種類以上も並べられています。
インドのカレーに欠かせないのが香辛料。
なぜインドにはこんなにもたくさんの香辛料があるのでしょうか?ここで時間を遡りましょう。
マジカル・ジャンプ!古くからインドはコショウターメリックジンジャーといった香辛料の産地でした。
14世紀以降にはクローブやナツメグなど東南アジア産の香辛料もインドに集められインド産の香辛料と共に中東経由でヨーロッパに運ばれました。
香辛料が集まるインドではたくさんの香辛料を使った料理が生まれていったのです。
香辛料を中東経由でヨーロッパに運んだのはムスリム商人です。
インドからの香辛料は高値で取り引きされていました。
ヨーロッパ人は香辛料をインドから直接仕入れようと考えインドへの航路を開拓しようとしました。
これが大航海時代へとつながります。
15世紀スペインの援助を受けインドを目指したのがコロンブスです。
ところが偶然にもコロンブスはアメリカに到達してしまいました。
ヨーロッパにとっての新しい大陸の発見です。
コロンブスはアメリカからさまざまな品物を持ち帰りました。
その中の一つが唐辛子です。
インドや東南アジアにはなかった新しい香辛料の登場です。
続いてヴァスコ・ダ・ガマがインドへの航路を開拓しました。
こうしてヨーロッパ人はアジア各地から直接香辛料を仕入れる事ができるようになります。
そしてアメリカから持ち帰った唐辛子をアジア各地に伝えたのです。
唐辛子を使った現在に伝わるインドのカレーはこのころ完成したのです。
そっか。
カレーは香辛料のグローバルな取り引きのおかげで成立した食べ物だったんだね。
そうですね。
私たちも今その大航海時代の恩恵を受けてるんだ。
そうですよ。
昔の人に感謝ですよ。
ありがたいね。
そして次に注目したいのが日本ではカレーの具材では定番となっているこちら。
おっ。
ジャン!ジャガイモです。
欠かせないよね。
ジャガイモと唐辛子は同じアメリカ原産ですがその伝来の中で…え〜どういう事だろう。
はい。
ここでセカンド・ビューポイント!いざテイクオフ!テイクオフ!マジカル・ヒストリー・ツアー。
続いては南米…ジャガイモの原産地アンデス山脈があります。
ジャガイモは小麦やトウモロコシなどが育たない標高4,000m近い高地に自生していました。
雨が少なく昼夜の温度差が激しい過酷な環境に適応したのです。
市場ではさまざまな種類のジャガイモが売られています。
このジャガイモが世界に進出したきっかけは15世紀の大航海時代に訪れました。
ここでその時代に…。
マジカル・ジャンプ!15世紀アンデスを治めていたのがインカ帝国です。
最盛期には1,600万もの人口を抱える巨大な帝国でした。
ジャガイモはインカ帝国を支える重要な食料でした。
このインカ帝国に危機が訪れます。
フランシスコ・ピサロ率いるスペイン軍の侵略です。
インカの豊富な黄金を奪うためでした。
数万人のインカ軍に対しスペイン軍は僅か200人足らず。
しかし南米にはいなかった馬や鉄砲などの鉄の兵器を使いインカ軍を圧倒します。
1533年インカ皇帝の処刑によってインカ帝国は滅亡しました。
スペイン人たちはその後金銀をはじめさまざまなものをヨーロッパに持ち帰ります。
ジャガイモも大西洋を渡る事になったのです。
ところがジャガイモは主に家畜の餌として用いられていました。
その転機は17世紀から18世紀に訪れます。
17世紀に始まった三十年戦争。
このころヨーロッパは宗教の対立からいくつもの国々が争う時代を迎えていたのです。
この時期は寒冷な気候が続き食料生産が不調でした。
そこに戦争が加わった事で飢饉が度々起きたのです。
この食糧危機を解消する方法としてプロイセン国王フリードリヒ2世によって出されたのがジャガイモ令でした。
ジャガイモの持つ利点に注目したのです。
アンデスの高地原産のジャガイモは寒さに強く地面の下で育つため戦争によって田畑を踏み荒らされても収穫する事ができたのです。
ジャガイモ令はプロイセンの国民を食糧難から救いました。
この成功を見たフランスやロシアも積極的に栽培に乗り出します。
ジャガイモがヨーロッパの食糧危機を救ったともいえるのです。
へ〜今やヨーロッパではいろんなジャガイモ料理があるもんね。
はい。
そうですね。
その飢饉を救ったっていうのがきっかけで定着したんだ。
そういう事です。
そっか。
でもそこから日本にジャガイモが入ってくるっていうのはどういう経緯だったのかな。
それはこちらをご覧下さい。
ジャガイモは15世紀から16世紀に南米からヨーロッパに渡りました。
そして16世紀末から17世紀初頭くらいの江戸時代にオランダとの貿易の中でジャカルタ経由で日本に伝来しました。
これがジャガイモの語源です。
語源?はい。
ジャカルタは当時ジャヤカルタと呼ばれていました。
これがなまって日本にはジャガトラと伝えられたんです。
最初ジャガトラだったんだ。
そうなんです。
リーダーも一緒に。
ちょっと何か無理があるような気もするけど言葉はそうやって変わっていったんだね。
そういう事です。
こうしてジャガイモは日本に伝来しましたが食料として普及したのは19世紀の明治維新の頃だったんです。
ちょうどそのころカレーも日本に伝わってきてここでカレーとジャガイモが出会うんです。
なるほど。
そこでカレーライスの誕生になる訳だ。
そういう事です。
誰がどういうふうにして組み合わせたのか気になるな〜。
じゃあ最後のサード・ビューポイントはいきなり歴史を遡ってジャンプしちゃいましょうか?いっちゃおっか。
はい。
せ〜の。
(2人)マジカル・ジャンプ!植民地となったインドからカレーはイギリスに伝わりました。
しかしたくさんの種類の香辛料を組み合わせて作るカレーはイギリス人には難しかったのです。
そのため考案されたのがカレー粉。
イギリス人の好みに合わせて香辛料を調合し1つの調味料にしてしまったのです。
更に小麦粉を加える事で刺激を抑え味をマイルドにしました。
カレー粉と小麦粉によってイギリス式のカレーが誕生したのです。
このイギリスカレーが明治時代の日本に伝来しました。
日本で初めて書かれたカレーのレシピです。
カレー粉で味付けし小麦粉でとろみを出すところがイギリス流です。
鶏肉のほかエビタイカキそして赤ガエルが記されています。
野菜はネギだけを使用しまだ玉ネギニンジンジャガイモなどは使われていなかったようです。
日本のカレーが大きく変化し一般の食卓にまで広がったきっかけは軍隊にありました。
明治政府は欧米列強に対抗していくため富国強兵政策をとりました。
徴兵制を敷き軍備の増強を進めます。
1904年日露戦争が勃発。
このころ軍隊食として採用されたのがカレーライスです。
栄養不足だった日本兵に野菜米肉を一度に食べさせる事ができ体格の改善が期待できたため軍隊食としては理想的だったのです。
海軍の料理参考書に記されたカレーのレシピには具材として肉ニンジン玉ネギそしてジャガイモが入っています。
日本のカレーライスの原型は明治時代末期に完成したといえるでしょう。
軍隊でカレーの作り方を覚えた人たちは故郷へ帰り家族にカレーを教えました。
こうして一般家庭でもカレーが作られるようになっていったのです。
そっか。
海軍カレーって有名だもんね。
有名ですね。
でももともとはインドからイギリスを経由して日本に入って軍隊のごはんの中でニンジン玉ネギジャガイモっていう定番の日本のカレーになったんだね。
はい。
そこで完成したんですね。
いや奥深いな。
カレーの歴史。
そうですね。
今日は江戸時代に日本に伝わったジャガイモは明治時代にカレーと出会う事で一般に広がっていったという事もお分かり頂けたと思います。
本当だね。
今やジャガイモはカレーのベストパートナーだもんね。
もうゴールデンコンビですよ。
ねえ。
やっぱりカレーライスグローバル・ヒストリーそのものだったね。
いや食べる度に思い出してみよう。
さあ水島先生今回の歴史に関する深いお話一体何でしょうか?はい。
今日はですね食べ物からグローバル・ヒストリー見てきましたね。
で実は背の高さでもグローバル・ヒストリーが読めるんです。
背の高さ?はい。
ちょっと見てみましょうね。
これは明治維新から1980年代ぐらいまでの日本人の成人男子の平均身長をグラフで示したものですね。
伸びてますね。
そうですね。
この辺り157センチしかないんですが1980年代になりますと170センチを超えるように。
ある意味では順調に伸びてますね。
これ理由は何ですか?どんなんだと思います?分かりました!食べ物。
そうですね。
恐らくカレーライスと直接結び付くかどうか分かりませんけど…。
でもちょうどこの辺でカレーが登場してるって事は一役買ってる可能性はありますね。
かもしれないって事ですね。
要するに…なるほど。
へ〜。
じゃあこの時期の日本人の背の高さを諸外国と比べてみますね。
日本はここです。
やっぱそれでもまだ低いですね。
本当に諸外国と比べて低いんですが全体としてはですねこの右上がりのグラフになっているという事で時代とともに背の高さは伸びてきたと。
先生このアメリカとかイギリスって何かグラフ的にはちょっとこう低くなってますよね。
実はそこに歴史の人が生きてきた環境ってのが非常に反映されてるんですね。
例えばアメリカでは都市化が進みます。
この時期。
それからイギリスも1800年以降都市化が進む…という事で背が低くなる。
都市化が進むと背は低くなるんですか?実は人類にとって都市というのはとても実は生きにくい場所だったんですね。
何か便利なのに何でですか?便利そうに思えるのは実は20世紀に入ってから。
いろんな設備が出来てきますと都市は住みやすくなるんですが実はそれ以前っていうのは都市ってのは非常に死亡率も高い。
なぜかといいますと人が集まって住みますので…という事で19世紀に都市化率が上がってきますと背の高さは実は縮んでってしまう。
そういう意味で身長からもグローバル・ヒストリーが実は見えるというお話です。
すっご。
面白いね。
面白いですね。
そうか。
時代とかやっぱり歴史で人体にも影響が表れるっていう事だね。
ここにまで影響があるんですね。
はい。
いや面白いお話でした。
先生どうも…。
(2人)ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
いや何かカレー食べたくなってきたな。
いっぱいカレー食べたくなりました。
今日はカレーだ。
2015/07/31(金) 14:20〜14:40
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 世界史「グローバル・ヒストリーの中の人と暮らし」[字]

歴史を知ると、旅はもっと楽しくなる! 世界各地の遺跡や観光地に隠された歴史の秘密を解き明かすマジカル・ヒストリー・ツアーに、みなさんも出かけましょう。

詳細情報
番組内容
歴史の秘密を解き明かすマジカル・ヒストリー・ツアー。今回は日本人が大好きなカレーライス誕生にまつわる世界史の舞台を旅する。14世紀、自国や東南アジアから豊富な香辛料が集まったインド。そのため香辛料を使った数多くの料理が生まれたが、カレー誕生には、コロンブスがアメリカから運んだあるモノが決め手となった。また南米アンデス山脈原産のジャガイモが日本に渡るまでの数奇な運命とは?【出演】眞鍋かをり、永松文太
出演者
【講師】東京大学教授…水島司,【司会】眞鍋かをり,永松文太,【語り】山田みほ

ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
バラエティ – その他
趣味/教育 – 大学生・受験

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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