上方落語の会 ▽「道具屋」桂歌之助、「皿屋敷」林家染二 2015.07.31


「上方落語の会」今日のゲストは浪曲師で演歌歌手のこの方です。
「上方落語の会」をご覧の皆々様よ〜菊地まどかです。
よろしくお願い致します。
すごい落差でんな。
お願い致します。
いや〜すばらしいです。
今来てるのがNHK大阪ホールなんですけどもこちらはNHKの浪曲大会もここでやってまんねやな。
お世話になっておりますが客席は初めてなんです。
そうですか。
客席から見ても遠いけど舞台から見たらどうです?舞台からも1,000人以上のたくさんのお客さんで席を埋められると圧巻ですよね。
なのでその視線を一身に浴びてるとめっちゃ緊張しますがでも逆にしっかりやらなあかんという思いで心も高ぶります。
結構でございますな。
いや今日は実はね一番弟子の人ばっかりが集まった回なんですよ。
まどかちゃんも一番弟子なんですね聞いたら。
京山小圓嬢の弟子で一番弟子です。
なので親子のように師匠にはして頂いて家族と同様同じですね。
でもよろしいやろな一番弟子いうんは。
自分が独り占めできるからよろしいな。
めっちゃ独り占めです。
いいな。
感謝しております。
いいですね。
今日はそういう師匠を独り占めした噺家さんがどんどん登場してまいります。
出し物は「道具屋」です。

(拍手)え〜桂歌之助でございます。
一席おつきあいを願いますが。
え〜私がですねこの世界入りまして人から一番よくされる質問というのが「なぜ落語家になったんですか?」と一番よく聞かれるんですね。
私の場合は答えは単純でございまして学生時代に落語研究会というねまあサークル一時はやりました落研というのにいてましてねその延長なんでございます。
もう忘れも致しません。
落研の初舞台というのがございまして大学近くの公民館を借りまして近所の方に集まって頂くと。
そこで私生まれて初めて人前で落語をやったんでございますがこんな事言うたら何でございますけどもめちゃめちゃウケたんでございます。
本当に。
お客さんがおなか抱えてこんなんなって笑てはったんですね。
ええ。
いまだにその壁が乗り越えられないという…。
本当に大変なんでございますがね。
ええ。
そんな事もありましてこの世界に入ってきたんでございますが。
あの〜最近はですね我々学校へ行ってですね落語する機会が増えてきましてね。
ええ小学校中学校高校へ我々の方から出向きましてですね。
子どものうちからこういった演芸に触れてもらって大人になってからまた落語会に足を運んでもらおうというねいわゆるこの仕込みをしに行く訳でございますわね。
お客さんの仕込みをね。
であの〜こないだ高校へ行ったんでございます。
ええ。
高校生なかなか生意気でね半分大人の気ぃでございますから扱いが難しいんでございますね。
で先生の方から「落語家体験をやらしてくれ」って言うんですね。
生徒さんに舞台上がってきてもらいましてね落語家になってもらう。
小噺なんかやってもらうんですよ。
「ハトが何か落としていったな」。
「フ〜ン」なんてね…。
あとうどんを食べるしぐさってよくありますでしょ?こうね。
(うどんを食べる音のまね)これも生徒さんにやってもらう。
で我々噺家は横にいてですねそれにちゃちゃを入れましてね笑いに変えるというねそれが我々の仕事なんですね。
例えばあれやってましたらねこっちばっかりこうねお箸の方に気が行きますからね左手がだんだんだんだんこうなってこうやってやってるんですね。
「あそれでは皿うどんになりますよそれね。
これお皿。
これ丼。
深さがあるでしょ」なんてちゃちゃを入れるんですね。
(うどんを食べる音のまね)「今目ぇから食べましたね〜」なんてねちゃちゃ入れてましたらね一番前に座ってた男の子が「うどんぐらい好きに食わしたれや〜」。
(笑い)と言うんでございます。
大変でございますこれね。
ええ。
で別の機会にはですね小学校へ行くんでございます。
低学年ね。
これもう落語の事全く分かりませんからねもう落語家体験どころではございません。
落語の聴き方というのを一から説明するんですね。
ええ。
「はい皆さんいいですか?落語というのは落語家一人でいろんな役やりますからね皆さんは落語を聴きながらこの人は今どんな役をやってるのかなというのを想像しながら聴いて下さいね。
いいですか?では想像の練習してみましょう。
どんな役やってるとこですか?皆さん考えてみて下さい」とこう言うんですね。
「『これ健坊早い事寝なさい』。
はいこれ何の役ですか?」。
「はいはいはいはいはいはい」。
手が挙がる。
「何の役ですか?」。
「男の人」。
「お父さん」。
「そうですねそれでいいんですよ。
ではこれはどうですか?『ヒロたん眠たい事ないねん』」。
「はいはいはいはい。
子ども」。
「そうですね〜。
ではこれはどうですか?『あんたこんな遅までどこへ行ってなはったんや?』」。
「はいはいはい。
オカマ」。
(笑い)「まあ男が女をやってるんでねオカマで間違いないんですけど見たまんまという事でね面白いですね。
ええ。
で落語聴いてもらいましてね。
「最後に落語家さんに何か質問ないですか?」。
「はいはいはい。
仕事何やってるんですか?」。
(笑い)仕事やってるように見えないというね…。
まあまあ私らねこれ気楽な仕事でございますからそう見えないのも無理はないんでございますが。
まあどんな仕事に致しましてもねその道の苦労あるもんでございますけれども。
「こんにちは」。
「おお誰かと思たらお前かいな。
まあまあこっち上がり。
聞きゃお前また遊んでるそうやがな。
いかんで。
年の24にもなって毎日のらくらのらくらしてるてな」。
「誰が24や?」「あ?ほな23か?」。
「もう6や」。
「そら余計いかんがなおい。
ええ?年の26にもなって毎日のらくら。
ろくなこっちゃない。
人間なんなとして働かんといかん。
どや?ひとつわしの商売を手伝う気はないか?まあまあ商売というても内職の方でおまはん知らんやろうけどもな」。
「知ってまっせおっさんの内職。
頭に『ど』の字の付く商売や」。
「ほう知ってたか」。
「知ってまんがな。
こないだここでおばはんとしゃべってたらあんた帰ってきなはった。
夜遅うに。
背中に大きな風呂敷包み背たろうてこっちの手に鉄瓶提げて裏口からそ〜っと」。
「は〜あれを見られたか」。
「あれを見られたんやがな。
いや儲かるか?泥棒の方は」。
「誰が泥棒やお前。
頭に『ど』の字が付くちゅうたかて泥棒やあれへん。
道具屋。
夜店の道具店を出してる。
まあ人さんに自慢できる商売やないがなやってみるとこれが割に面白いもんや。
どや?おまはんもやってみる気はないか?」。
「ええやらしてもらいます」。
「おおそうか。
いやわしもな今日行くつもりにしてたんやがちょっと体の具合が悪いさかい休もうと思てたとこや。
まあお前が代わりに行くというんやったらまずこの荷をあたっとかんといかんな。
あのなそこにある風呂敷包みそれをこっち持っといで。
で広げてみぃ。
どや?いろんなもんが入ってるやろ?」。
「何でやすかねこれでやすかね。
ええ?どれどれ?おっ!ほんにこれわ〜いろんなもんが入ってますなあええ!あっこのノコギリねこれ切れますか?」。
「そら分からん」。
「『分からん』てあんた自分で売ってて分かりまへんの?」。
「実はなそらな火事場の焼け跡から拾てきたんや。
まだいけると思たさかいな柄の焦げたんを付け替えてさび落として油を塗ってある。
そんなもんでも並べときゃにぎやかしや。
またどこぞのあほが買うていくてなもんや。
元手がかかってないさかいな10銭でも20銭でも売れたら売れただけの儲けになるやろ?うん。
あ〜これこれこれ!ノコギリと掛け物一緒にするやつがあるかいな。
ええ?掛け物にキズがつく」。
「え?化け物?」。
「いや化け物やあれへん。
掛け物掛け軸や。
知らんか?あの床の間に掛かってる」。
「あっあれがこれですか!へえ〜ほなちょっと見してもらおかな。
うんどれどれ?ほ〜う!これなかなかおもろい絵ですな」。
「おまはんに絵の事が分かるかいな」。
「分かりまんがな!これおもろい絵でっせ。
ボラがそうめん食ってるてな」。
「お前どういう絵の見方をしてんねやおい。
『ボラがそうめん』て。
そらお前鯉の滝登りや」。
「え?これ鯉の滝登り?いやいや違う。
これあんたボラが尾で立って口開けてるところへそうめんがザ〜」。
「何を言うてる。
そら鯉の滝登り。
昔からある有名な図柄や」。
「鯉ちゅうのは滝登りしますか?」。
「おお鯉というのはまことに勢いのええ魚でな川を上手へ上手へ登っていって滝は皆遡りに登ってしまうというぐらいなもんや」。
「へえ〜これがね。
ふ〜ん。
いやわたいね今鯉の捕まえ方っちゅうのを思いついた」。
「ほうどないすんねや?」。
「鯉のいてそうな川へ行ってね橋の上からバケツいっぱいの水を川へ向かってザ〜ッと流しまんねん。
と鯉がこれを滝と間違えて上手へ上手へ遡り登ってきてバケツの中へ飛び込む!」。
「お前やないと思いつかんなそら。
そこにな短い刀があるやろ?そら芝居や踊りで使う小道具や。
そら塗りが上等やさかい塗りのはげんようになうん。
あで言うとかんならんな。
そこに電気スタンドがあるやろ?ああそれがな3本脚やが脚が1本欠けて2本で立てへんのやわい。
でその花瓶それ横手に大きな穴が開いてある。
でそのお雛さんは首が抜けんねや」。
「ろくなもんおまへんなおい。
え?このお雛さんこれ首が抜けまんの?ええ?どれどれ?あっ。
ほんにこれわ〜おもろいなあ。
別売りにしとこ」。
「あほな事言う!頭別売りてなお雛さんがあるかいな。
まあそらな首が抜けるさかいキズもんやが着付けは皆上等の金襴で大体が値打ちもんのお雛さんや。
でパッチや足袋は着類でひとまとめにしてある。
でその横手にな帳面があるやろ?帳面。
そうそうそう。
それが元帳や。
それに元値が書いてある。
まあ「5銭」と書いてあるもんが10銭にでも20銭にでも元金さえうちへ入れてくれたらあとの儲けは皆おまはんのもんやさかいにな。
え〜今日は…おお上町にお店が出てある。
向こうへ行ったら本屋の善さんちゅう人がいてるさかいその人に『道具屋の佐兵衛の代わりに来ました』と言うたら場所割りから何からあんじょう教えてくれる。
荷物せったろうて行っといなはれ。
しっかりやってくんねやで!」。
「へえおおきありがとう!は〜親切な人や。
あ〜人がちょっと遊んでるてな事を聞いたらじきに仕事の世話をしてくれるねやな。
わ〜えらい人出やな〜。
うれしなってくるなほんまにもう。
どえらすんまへんお尋ねします」。
「はい」。
「本屋の善さんちゅうたらどの人です?」。
「あああんた善さん捜してなはんの?え〜っとねあああそこで立ち話してる人ねあれが本屋の善さんうん。
あのね頭の後ろここにハゲがあるんでじき分かりますわ」。
「さよか。
おおきありがとう。
ちょっとお尋ねします」。
「はい」。
「本屋の善さんちゅうたら…」。
「ああ私やが」。
「ほな善さんほんまに本屋の善さん?」。
「えらい疑り深い人が来たな」。
「わて疑り深〜い性分でんねや。
あの〜目印聞いてきてまんのでんなえらいすんまへんけどちょっと後ろ向いてもらえまへんやろか後ろ…。
あったあった〜。
善さん」。
「やかましなおい!どこ見て言うてんねやほんまにもう。
何しに来た?」。
「わたいね道具屋の佐兵衛の代わりに来ましてん」。
「あんた佐兵衛さんの代わり?もっとはよ来なあけへんがな。
もうこの時間になったら場所割ってしもたで。
あ〜あああそこが空いてるなあ。
ろくな場所やないがあんた行きなはるか?」。
「どこでんねん?」。
「公衆便所の隣や」。
「ほんにろくな場所やおまへんな。
まあまあ行かしてもらいます」。
「ああさよか。
ほなついといで。
ちょっとごめん」。
「はい」。
「この人な佐兵衛さんの代わりに来たんや。
素人さんでまだよう分からんようやさかいなあんた店の出し方から何からあんじょう教えてあげておくんなはれ」。
「分かりました。
ああんたか?ほなまずそこにあるゴザを持ってきてなここへ敷きなはれ敷きなはれ。
うん。
で品物の並べ方やけれどもなこまごました物とか値の張る物はね膝の周りへこう並べてねとられんように。
で大きいんはこう前の方へズラ〜ッと目立つようにな。
うん…。
あ〜その花瓶穴を向こう向けて置く人がおますかいな。
ちゃんと分からんようにこっち向けて。
そうそうそう。
ほんでその電気スタンドも。
それ横に寝かしといたらいかんで。
立たしなはれ」。
「これね3本脚の脚が1本欠けて2本で立てしまへんねや」。
「ろくな物持ってきてないな。
しゃあないな。
今とりあえず後ろの塀にでももたせかけて。
着類は着類でひとまとめにして。
で後はなお客さんが来んのを待っといたらええさかい」。
「あこれで座って待っといたらよろしいの?ああさよか。
よしほなひとつ景気付けに客寄せしまひょうかな。
さあいらっしゃいいらっしゃい。
本日開店の道具屋。
出来たての道具屋。
新しい道具屋」。
「あんた古道具屋やがなあんた。
何を言うてんねやおい」。
「おい道具屋」。
「へいいらっしゃい!ズ〜ッとお入り」。
「『ズ〜ッとお入り』てお前どこへ入んねん?」。
「まあお掛け」。
「掛けるとこあれへんがな」。
「まあおしゃがみ」。
「いや『おしゃがみ』てお前おもろい道具屋やなええ?ノコ見してみぃ」。
「え?」。
「ノコを見してみぃちゅうねん」。
「あ〜ノコにある?」。
「何を言うてん。
分からんやっちゃなお前。
ノコギリを見してみぃちゅうねや」。
「あノコギリですかいなあ。
あんたねノコギリやったら『ノコギリ』と皆言いなはれ。
『ノコ』て半分しか言わへんさかいこっちは分からへんねや。
人間ギリ
(義理)をなくしたらいかん」。
「何をしょうもない事言うてんねや。
う〜んこらちょっと甘いな」。
「なめた事ないさかい」。
「違うちゅうねん。
焼きが甘い。
生やなちゅうねん」。
「いやそんな事おまへん。
そらよう焼いてまっせ」。
「そうか?」。
「そうですがな。
何せそらおっさんが火事場の焼け跡から拾てきましたんや。
『まだいけるやろ』ちゅうて柄の焦げたんを付け替えてさびを落として油を塗ってある。
『そんなもんでも並べときゃにぎやかしや。
またどこぞのあほが買うていくやろ』ちゅうてね。
あんた買うか?」。
「誰が買うか!そんなもん」。
「ほ〜う怒って行てしまいましたな」。
「当たり前やであんた。
あんな事言うて誰が買うねやほんまに。
のっけからしょんべんされて」。
「え?どこぞにしょんべんを?」。
「違うがな。
冷やかすだけ冷やかして何も買わんと帰る客をしょんべんちゅうねや。
商売人の符丁や覚えときなはれ」。
「道具屋さん」。
「へいいらっしゃい」。
「その〜掛け軸を見して」。
「あ掛け軸ねえ。
それやったらわたいにも分かりまっせ。
一番手前のやついきまひょかな。
へえどうぞ」。
「うん。
いや〜あたしゃこういう物が至って好きでな。
う〜ん。
ほ〜うなるほどな。
粟穂に鶉『谷文晁』…谷文晁!?は〜この店で「文晁作」ちゅうのはちょっときついなあ。
うん。
道具屋さんこら偽物でしょ?」。
「へ?」。
「いやいやこら偽物でしょ?」。
「偽物です」。
(笑い)「間違いなしの偽物。
もう偽物やなかったら金返す」。
「お〜偽物て言われたんではしゃあないな。
見たところほかにろくな物もなさそうやし。
また来ます」。
「は〜またしょんべん」。
「あんたね偽物て何の事か知ってなはるか?偽物の事でっせ。
偽物を請け合う人がおますかいな」。
「そんな事言うたかてわたい知らんがなあ。
またあのおやじもおやじやで。
偽物やったら偽物てはっきり言うてくれたらええのに。
偽物だの英語使うて」。
「誰が英語じゃ。
あんじょう店番しなはれ」。
「道具屋その電気スタンド見して」。
「あっこれね3本脚の脚が1本欠けて2本で立てしまへんねや。
そやさかいに今これ後ろの塀にもたせかけてありまんねや。
これね買うてもらうんでしたらこの後ろの塀ごと買うてもらわんと」。
「塀の電気スタンド買えんなあ。
また来るわ」。
「またしょんべんや。
もう何でこんなしょんべんばっかり…。
するはずやわ。
隣公衆便所やお前」。
「道具屋短刀見して」。
「え?」。
「いや短刀。
その短い刀見してくれ」。
「あこれですかいな。
ええどうぞ」。
「うん。
おお!こらなかなか塗りが結構やなこらええ」。
「あ〜それ言うときます。
それあのね抜けしまへんで」。
「ほなさび付いて抜けんようになったもんに値打ちもんがあんねやこれな。
あら?おっ?ほんに固いな。
道具屋そっち持ってみぃ」。
「『持てぇ』ちゅうたら持たん事おまへんけどもね。
こらちょっと抜けまへんで」。
「う〜ん固いな〜!」。
「固うおまっしゃろ?」。
「何でこないに抜けへんねん?」。
「木刀です」。
「あほ!」。
(笑い)「木刀が抜ける訳ないがな」。
「そやさかいわたい初めから『そら抜けまへん』ちゅうてん」。
「ほな何でそっち引っ張ったりしたんや?」。
「あんたがあんまり機嫌よう抜いてなはるさかいねこらもう逆ろうたらいかんと思て。
またひょっと抜けたら中から何が出てくるやろと。
それを楽しみに…」。
「ばかにすなほんまにもう!なんぞ抜ける物はないんか?」。
「お雛さんの首が抜けますけど」。
「もうええわい!」。
「あら〜またしょんべんやで。
何でこない…。
よし今度から『しょんべんできまへん』と最初に断ったろ」。
「道具屋」。
「へいいらっしゃい」。
「あの〜パッチ見して」。
「へ?」。
「パッチ見して」。
「あ〜これね。
どうぞどうぞ。
しょんべんできまへんで」。
(笑い)「そのパッチしょんべんでけへんか?」。
「これだけはしょんべんでけまへん」。
「しょんべんのでけんパッチしゃあないなあ。
また来るわ」。
「あ〜そのしょんべんとしょんべんが違う。
何でこんなすかたんばっかり。
商売やめたろかしら」。
「道具屋」。
「客だけはよう来んねやほんまにもう。
あんたもしょんべんか?」。
「何の話やねんおい!違うがな。
この笛を見してくれちゅうねや」。
「あ笛ですかいな。
へえどうぞ」。
「うん。
あらまた汚い笛やなあ。
ええ!おらおらえらい埃やがなおい。
ええ!こういうもんはな口につけるもんやお前。
家出る時いっぺん掃除しとけちゅうねやほんまにもう。
ええ?おらおらおら綿くずが出てくるやろがな。
ええ?これなんぼでも出てくるでおい。
客にこんな事させなやほんまに。
頼むでおい」。
(笑い)「おっ道具屋!えらい事になった!」。
「どないしましてん?」。
「指が抜けんようになったおい。
おおちょっと金づちないか?」。
「むちゃ言いなはんな。
そら商売物でっせ。
割ってもうたらどんなりまへんねん。
もうわたいねえ商売やめて帰ろう思てまんねん。
嫌になってまんねん。
その笛も持って帰らないけまへん。
笛と一緒にあんたを連れて帰る訳にいきまへんのでな。
抜いとおくんなはれ」。
「『抜いとおくんなはれ』てこれが抜けへんやがなほんまに。
道具屋この笛なんぼや?」。
「え〜?買うておくんなはる?買うておくんなはるの。
タタタタ…待っとくんなはれない。
元帳調べますさかいね。
え〜っと笛笛笛笛笛笛笛。
『笛7銭』。
安い笛やなあ。
けどこれは元値やさかいにな。
え〜なんぼに言うたろ?まだ抜けまへんな?腹減ったさかいなあ帰りにトンカツでビールを1本キュ〜ッと飲んで。
あっおっさんに土産にすしなど買うて帰ってなうん。
そうか考えてみたら長い事嫁はんに着物もこしらえてやってないしな。
その前に家賃がみつきたまって…」。
「待て待ておい!恐ろしい事言いやがってお前。
人の足元を見るな」。
「いえいえ手元を見ております」。
(拍手)桂歌之助さんの「道具屋」でございました。
いかがでした?すごくあらすじは以前から知ってたんですけども物語が一つ一つがすごく分かりやすくて。
あの〜お人柄ですか…はい。
真面目というか。
私がちょっとずぼらな方なので細かく丁寧にされておられるのではないかなというふうにすごく勉強になりました。
落語家さんからこのアイデアとかヒント頂く事てあるんですか?はい。
以前に林家染丸師匠に私の持ちネタで新作浪曲の「嫁ぐ日」というのがあるんですけども。
たこ焼き屋さんが出てくる。
はい。
あ〜いい話ですね。
そのお話の最後のエンディングのところを染丸師匠にうまくこうアドバイスを頂いて浪曲の中に泣きと笑いと最後オチをつけて頂きました。
もう今でもたくさんの皆様に聴いて頂けてもう師匠には感謝しております。
いや〜あの師匠はねもう落語と浪曲以外でも文楽なども好きですからね。
大好きなんですよ。
今日はそのね…林家染二さんの「皿屋敷」です。

(拍手)どうもありがとうございます。
林家染二でございます。
どうぞよろしくお願いを申し上げます。
ありがとうございます。
もう気楽に笑ってもらうのが一番よろしい訳でございまして。
我々もいろんな所でおしゃべりを致しますとねさまざまなお客様がいらっしゃいまして今日のようにわっと笑って下さるお客様もいらっしゃればもう最初から最後まで全く笑わない方がいらっしゃる訳でございますね。
前もある所で独演会をやっておりましたら真正面にいらっしゃいます年配のご夫婦の方が最初から最後まで全くお笑いにならない訳でございます。
笑ってもらわないと我々お金がもらえない訳でございますから。
お見送りを致しましてね「何かお気に召しませんでしたか?」と言いましたら「いや笑っては失礼だと思いました」と言わはった訳でございますからね。
笑ってもらわんといかん訳でございまして。
まあまあ落語ん中には面白い話怖い話さまざまでございまして中には幽霊なんていうのもね出てくる訳でございますよ。
幽霊なんていうのも幽霊になれる権利というのがあるんだそうでございます。
どんな方かと申しますとまずは美しい女性なおかつ痩せている方だそうでございますね。
そらもう大阪でも太っててもきれいな方いらっしゃいますよね。
「なめたらあかん」言うてはる方なかなかきれいでございますから。
なぜかと申しますと幽霊というのは石灯籠の陰からちらちら見えるから怖い訳でございまして幽霊が石灯籠からはみ出てましたらですねこれ爆笑になってしまう訳でございますから。
え〜。
で美しくてなおかつ痩せている方でございますね。
それ以外の女性と男性はどうなるのかと申しますと全員化け物になるんだそうでございます。
今日は幽霊候補が多い訳でございますけれども。
まあまあいろんな所で我々も旅に行きますとね怖い目に遭う事がある訳でございます。
宿なんかホテルなんか泊まりますとまあいいホテルも多いんですけれどもああいうところはさまざまないわく因縁がある部屋もある訳ですから。
私は怖がりでございまして。
ある所へ行きましてね酔っ払ってフロントに行きましたらマネージャーがいまして横に若いスタッフがいて鍵を出したんですね。
古めのホテルでございまして鍵がついてて部屋に「501」という番号が書いてあるような古い部屋でございまして。
でマネージャーが出した時に若いスタッフがこの番号を見て「え?」っていう顔をしたんですよ。
「え?」っていう顔をしましてね。
この「え?というのは何なの?」とこう思う訳ですからね。
我々もお客様のお顔を見ながらやる商売でございますから案の定泊まってましたら金縛りに遭いましてここで女の人が「フフフフフフフフ」と笑う訳なんですよ。
もう怖くて眠れません。
朝5時に頭に来てフロント行ってマネージャーに「すいません」と言いましたらマネージャーが「あっ部屋替えましょうか?」。
知ってたんやないかいう訳でございますからね。
いろんな事がございまして。
怖い話は土地土地にある訳でございまして。
「おやっさんこんばんは」。
「こんばんは」。
「こんばんは」。
「こんばんは」。
「こんばんは」…。
「何じゃ何じゃ若い者が寄って。
何や松お前伊勢参りから帰ってきたんか?」。
「そうでんねやおやっさん。
松ちゃんがね伊勢参りから帰ってきましたんで皆が『土産話を聞こう』ちゅうて集まってましてん。
へえ。
松ちゃんお伊勢さん行った帰りね北へグ〜ッと回って帰りは伏見から京都大阪までこの船に乗って帰ってきましたんや。
船ん中退屈でっしゃろ。
『あんたどっから来たんですか?』所の尋ね合いになって松ちゃんが『播州の姫路ですねん』と言うたら『あ〜あんたそれやったら皿屋敷知ってまっしゃろ?』と言われてね松ちゃん何のこっちゃ分からえでえらい恥かいたちゅうんで。
わたいらも分かりまへんのでおやっさんにお尋ねに来ました」。
「何じゃお前ら姫路におって皿屋敷も知らんのか。
さあさあこっち上がれ上がれ。
皆上がれ上がれ。
松わしの一番前へ来い前へ来い。
このな姫路の城下を外れた所にあの大きな井戸がある古い屋敷跡があるやろ?」。
「ええあら車屋敷…」。
「そらあ地元の者は『車屋敷車屋敷』と呼んでいるけれどもあれが芝居や浄瑠璃で有名な皿屋敷。
そこに昔住んでたんが姫路の代官で青山鉄山。
そこの腰元でお菊。
こらもう家中お抱えの絵師も手ぇが震えて描けなんだというぐらい絶世の美女別嬪。
鉄山このお菊をなんとか我が物にしようと手を替え品を替えさまざまに口説くねんけれどもお菊には三平という許婚があるのでなんぼ言うても『うん』とは言わん。
そうなったらようあるやっちゃな。
『可愛さ余って憎さが百倍』。
鉄山なんとかこのお菊をひどい目に遭わしてやろうというので先祖代々伝わる10枚一組の葵の皿。
これを持ってきて『こりゃ菊。
これは身どもが先祖が将軍家より拝領つかまつった品。
万が一の事があれば鉄山我が身に代えてお詫びをせねばならぬ。
これをその方に預け置く。
必ず粗相のないように』と言われてお菊さん『何でこんな大事なものを腰元風情の私に』と思うたが主命は黙し難し。
『かしこまりました』と我が部屋へ直しておく。
そうしておいて鉄山お菊の留守にこの皿を1枚抜き取って隠した」。
「隠しました?」。
「そうしておいて『こりゃ菊先日預けおいた皿急に入り用じゃ。
これへ持ってまいれ。
数改めて受け取ろう』。
『かしこまりました』とお菊さんが持ってきたが1枚足らんやろ?」。
「ええ足りまへんな」。
「びっくりしたお菊さんが震える手先で1枚2枚3枚4枚5枚6枚7枚8枚9枚。
なんぼ数えても1枚足らん。
『こりゃどうした事』と泣き崩れているやつを冷ややかに見下ろした鉄山『こりゃ菊その方この青山の家にたたりをなさんとして皿を1枚かすめとったに相違あるまい。
誰に言われてどこへ隠した?』。
もとより身に覚えのないお菊さん知らぬ存ぜぬの一点張り。
『ええい強情な女め。
この上は痛い目に遭わしても白状さしてみせる。
こっちへ来い』。
髪の毛をつかんで井戸端へズルズルズルズルズルズルズルズル引っ張っていって荒縄で高手小手に縛り上げ頭から井戸の水をザブ〜ンザブ〜ン。
踏む蹴る殴るの責め折檻。
あまつさえ余った縄の先を井戸の繰巻にくくりつけてお菊の体を井戸ん中で上げたり下げたり下げたり上げたり。
半死半生になってるやつをば太い弓の折れでピシッピシッピシッ。
『ヒ〜ッ』」。
(笑い)「『たとえこの身は責め殺されても命はさらさら惜しゅうはござりませぬが盗みの汚名が悲しゅうござります。
どうぞいま一度皿の数をお改め下さりませ』。
と言うのも耳にもかけず『ええい強情な女め。
この上は家中への見せしめ成敗してくれる』。
刀をザッと抜いて肩先からズバッ!これからこれがザックリ切れた。
返す刀で縄の結び目をプツッ。
ドブ〜ン。
無残な最期じゃ。
え〜い腹の虫が癒えたわい。
鉄山我が部屋へ帰って寝酒をあおってゴロッと横になる。
腰元どもが後片づけて銘々の部屋へ下がる。
辺りがシ〜ンと静まろうがな」。
(笑い)「ヒヒヒ…ヒヒヒヒヒ」。
「おかしな声出すな。
時刻は丑三つ。
井戸の中から青〜い陰火が一つボ〜ッと飛んだかと思うとス〜ッと鉄山の部屋へ入る。
寝ていた鉄山あまりの寝苦しさにふっと目を覚ます。
枕元にお菊の姿。
『ええい迷うたな!』。
ズバッと斬ると姿がない。
『ハッ気の迷いであったか。
あっ下腹が痛い。
便所へ参ろう』。
便所を戸を開ける。
中にお菊の姿。
取って返す廊下の隅にお菊の影。
夢中で闇を切り裂く鉄山。
毎夜毎夜の苦しみにとうとう狂い死にに死んでしもうたんや。
どや?松分かったか?」。
「は〜死にました?」。
「そや死んだんや」。
「は〜やっぱり〜夏場は気ぃ付けんといけまへんな」。
「な…何が?」。
「なんぞ腐ったもん食うて腹壊して死にましたやろ?」。
「松ちゃん何を聞いてんねん!松ちゃん。
そ…そんな話と違うで。
鉄山がお菊さんに呪い殺されたっちゅう話」。
「そんな怖い話?」。
「お前聞いてへんかったんか?」。
「わい怖いさかいず〜っと耳押さえとって『便所』と『死んだ』は聞こえた」。
「何を言うてんねん。
おやっさんそらだいぶ前の話か?」。
「話は前のこっちゃけどな今でもお菊さんの幽霊は時刻たがえず出てきて皿の数を数える」。
「え?今でも出まんの?うわ〜お菊さん別嬪でっしゃろ?うわ〜見に行こ見に行こ」。
「あかんあかん」。
「何で?」。
「『何で』てな『9枚』というのが恨めしぃ出てきて皿の数を数えるけれども『9枚』という声を聞いた者はブルブル〜ッと震えついてあの世へ引っ張っていかれる。
『そんなあほな』と言うた者が何人も死んでる。
たたりを恐れて誰も口にせえへんだけや」。
「あさよか。
惜しいな〜。
お菊さん別嬪でっしゃろ?けど『9枚』の声聞いたら『ブルッあ〜』とこうなりまんの。
『9枚』の声で『ブルブルあ〜』とこうなりまんの。
へえ〜。
けどおやっさんね『9枚』で『ブルブルあ〜』やったら手前の7枚7枚で逃げて帰ってきたら何ともないんと違いますか?」。
「ふんふん。
そらまあそうかも分からん」。
「そうでっしゃろそうでっしゃろ。
松ちゃん行こ行こ」。
「何が?」。
「幽霊見に」。
「お前聞いてへんのんか?おやっさんの話を。
『9枚』の声で『ブルブルあ〜』とこう死ぬねんで」。
「お前も聞いてへん。
手前の7枚7枚で逃げて帰ってきたら何ともないねん」。
「あのねあのね相手は幽霊ですよ。
そないうまい事いくとは限らんで」。
「何で?」。
「『何で』てな皿の数を順番に数えていってくれたらええよ。
相手は幽霊やで。
ひょっと根性の悪い数え方したらどうする?」。
「『根性の悪い』て何や?」。
「え?7枚で逃げようと思ててもやで『5枚6枚…7枚8枚9枚』。
『あっ!』」。
「んなあほな事があるかいな」。
「おらやめとくわ」。
「ええ?お前らどうする?」。
「お前は行く?」。
「俺は行く」。
ちょうど人数が半分に分かれましてね行くと決まった者は夜中になったら集まってある。
皆が集まってお酒を飲んどりましてねぼちぼち時刻もよかろう。
ポイと表へ出ます。
昔の姫路でございますからね今とは随分違いまして城下を一歩外れますともううら寂しい事は言うまでもございません。
人家家の明かりなんかございませんな。
田んぼ畑竹藪そこを一本細い道がス〜ッと続いておりまして鼻をつまんでも分からんようなごくごく淡〜いおぼろ月夜ん中を皆が並んでとぼ〜とぼ。
(鐘の音)「せ…清やん清やん」。
「何や?竹」。
「向こうに車屋敷の塀が…見えてきたな」。
「当たり前や。
向こう向こうて歩いてんねん」。
「だんだんだんだん塀が近づいてくるで」。
「当たり前やないかい。
だんだん遠なったらいつまでたっても着かへんやないか」。
「せやなせやな」。

(笑い)「清やん…清やん…」。
「うるさいなほんまに。
おら幽霊怖ないけどお前の声が気色悪いお前の声が。
何やっちゅうねん」。
「清やん寒い事ない?」。
「え?」。
「寒い事ない?」。
「何を言うてんねや。
真夏やで。
そらな夜中やさかい昼間よりひんやりするけどそんなお前寒…」。
「お〜。
そういやどことのう背筋がぞ〜っ…」。
「するでしょ〜!?するでしょ!?え…えらいすんまへんけどわいか…帰らしてもらうわ」。
「何で?」。
「『何で』てわいなあの…へ…塀見ただけでブルブルッとなってるやろ?もう中入ったら幽霊見る前に『ブルッあ〜』となってしまうと思うて。
えらいすまんけど帰らしてもらう」。
「何言うてんねやお前。
『行く』て言うたやろ?」。
「言うた言うた言うた言いました〜。
わい怖がりやでわいは。
最前おやっさんの話聞いてる時からもうあかん。
しょんべんちびりそうでした。
ほんまはちょっとちびりかけてたんです。
わい独り者やろ?ああしてな怖い話聞いたあと一人でよう寝んさかい皆でいてた方がええと思たけどあかんあきません。
えらいすまんけど帰らして」。
「ほんまにもう。
お前『行く』と言うた…」。
「言うたけども〜。
あ〜あ〜」。
「何を言うとんのやお前は。
ええ?構へん構へん構へん構へん?帰れ根性なし!ほんまにもう。
お前な明日から道で会うても友達てな顔すなよ。
お前らみたいな根性なしが友達仲間におると思たらな情けないわほんまにもう。
帰れ!去ね!」。
「いやすんません。
えらいすんません。
友達仲間省かれんのはつらいけど命には代えられへんので。
先帰らしてもらいます。
あの〜友達仲間省かれるけど道で会うても知らん顔せんといてね。
『竹やん』とか『こんにちは』とかそういう事は言うてな。
えらいすんません。
えらいすんません。
帰らして…」。
「あ〜待て待て待て待て。
帰んねやったら気ぃ付けて去ねや」。
(笑い)
(笑い)「ん…ん…ん…何で?」。
「『何で』てそやがな。
幽霊はなにも井戸の中だけから出るとは限らんで。
それに大勢よりも一人の方が出やすい」。
(笑い)「お前来しな竹藪通ってきたな」。
「あのお地蔵さんのある昼間でもじめじめしてるあの竹藪か?あのじめじめしたあの竹…」。
「ああ。
あの竹藪だけはなるべく通らんようには帰られへんなあ。
帰り」。
「行く〜!行く」。
「黙ってついてこい」。
「あ〜怖〜!あ〜怖〜!」。
「何を踊ってんねやお前は」。
「怖いさかいちょっとでも陽気にしてようと思て」。
「んなあほな事を」。
ワーワー言いながら皆が井戸の端までやって参りまして今か今かと待っておりますと時刻は丑三つでございますな。
井戸ん中から青い陰火が一つボ〜ッと飛んだかと思いますとそれへ指してお菊さんの幽霊がズ〜ッ。
「恨めしや〜。
鉄山殿」。
「わ〜出た出た出た出た。
逃げたらいかん逃げたらいかん」。
「1枚2枚」。
「数えだした。
間違わんと…お…指折ってや指折ってや」。
「3枚4枚5枚」。
「あ〜逃げる用意逃げる用意」。
「6枚7枚」。
「そ〜れ逃げえ!痛い痛い!こら竹!上乗ってくんな!」。
「あ〜怖〜!あ〜怖〜!あ〜怖〜!こんな怖いの生まれて初めて。
明日の晩も行こ」。
「何を言うてんねやお前。
怖かったら行かなんだらええ…」。
「いや今逃げしなにちらっと振り返ったらお菊さん別嬪やった〜。
あんな別嬪見た事ない。
明日の晩も行こ」。
おもろい男でございましてね明くる日も行くその次も行く。
7枚で逃げて帰ってきたら何ともないというのでもうこれもう噂が噂を呼びまして姫路だけではございません。
神戸大阪もう東京それからニューヨークフランスイギリス…。
もうシャーロットちゃんが修学旅行で来る訳でございますから。
もう大変な人気になりましてねもう井戸側なんか全席指定でございまして大入り満員。
今日と変わらん訳でございますね。
お客さんを当て込んでいろんな店が出ましてね。
たこ焼きいか焼き明石焼き…粉もんばっかりでございます。
こっちにはお菊さんグッズのショップが出ましてねお菊さん羊羹お菊さん最中お菊さんね…こういうこのバッジまで出まして。
お菊さんの写真集DVDまで出まして。
「アイアムゴースト井戸からの叫び」いろんなもんございましてね。
「あ〜らえらい人でんなあ。
わて初めて」。
「あっあんた初めてですか?私ね年間パス持ってまんねん」。
「そ…そんな人いてますか。
年間パス出てますか」。
「ええ。
けどねちょっと今日は出が遅いんと違いますか?」。
「何を言いてなはんねや。
あんたこんだけねお客さんが来てまんねんで。
『今日はどの着物にしようかしら?お化粧はどうしようか?』と迷ってまんねや」。
「ほんまですかいな?そのうちに出ます?」。
「ああ出ます出ます」。
皆が待っておりますとね時刻でございます。
井戸ん中から青い陰火が一つボ〜ッと飛んだかと思いますとそれへ指してお菊さんの幽霊がそれへ指してズ〜ッ。
「待ってました!」。
「お菊さ〜ん!」。
「日本一!」。
「あ〜お越しやす」。
幽霊愛想します。
「今日もええ声頼んまっせ!」。
「う〜んよろしおます。
あ〜んう〜ん。
恨めしやあ〜う〜ん。
鉄山…」。
「だいぶ芸が臭いんと違いますか?芸が。
しっかりやっとくんなはれ」。
「分かりました。
1枚2枚…ゴホンゴホンゴホン」。
「お菊さんどうしました?」。
「えらいすんまへん。
風邪ひいてまんの」。
「幽霊風邪ひきますか?」。
「3枚4枚5枚6枚7枚…」。
「そ…そ〜れ逃げ!押したらあかん押したらあかん!前も人も詰まってまんね」。
「9枚10枚11枚」。
「ちょ…ちょっと待ってもらえます?今『11枚』て声がしませんでしたか?」。
「12枚13枚14枚」。
「間違いおまへん。
『14枚』て言いました。
怖い事おまへん。
戻りまひょ戻りまひょ」。
「15枚16枚17枚18枚」。
「皆さんのお怒りはごもっとも。
私が代弁して言わしてもらいます。
こらお菊ほんまにいい加減にせえよ。
お前『9枚が恨めしい』これが売り物やろ!ぎょうさん皿の数読んで。
ちょっと商売勉強せえ!」。
「ポンポンポンポン言いなはんなほんまにもう!あても皿屋敷のお菊です。
ちゃ〜んと分かってますわ」。
「どうです?この反抗的な態度」。
(笑い)「何で分かってて18枚も皿の数読んだんや?」。
「へえ2日分読んどいて明日の晩は…ゴホン休ましてもらいます」。
(笑い)
(拍手)いやお疲れさまでした。
ね。
すごい楽しかったです。
面白かったでしょ?先生ほんとに。
今のが林家染二さんの「皿屋敷」でございました。
いかがでした?もうすばらしかったです。
お菊さんの所作というか繊細な動作にもう引き込まれました〜。
彼はやっぱりね歌舞伎が大好きなんですお芝居が。
ああそうですか。
もう自分ではね落語界の中村橋之助言うてまんねん。
あ!でも我々は中村橋之下言うて…。
え!舞踊とかもされておられる?大好き。
やっぱりそうですか。
師匠のね染丸さんがお好きですからどうしてもそういうのを素養として持ってはるんですよ。
お菊のこの出てくるところといい何かちょっと鳥肌も立ってすごく感激しました。
それで終わっときゃ前半でやっときゃ怖いね結構な話なんです。
後半に急にあほらしなんのもこれも落語でございます。
もうすごく楽しかったです。
浪曲にもありますな「皿屋敷」というのね。
はいあります。
向こうはもうちゃんとした怖い怪談というか悲しい怪談ですがね。
また違いますけども。
やっぱりラストの最後になってああいうあほらしなんのがやっぱり落語の魅力で。
これ浪曲には最後に節という強い武器がありますねや。
ね。
だからそういう武器を今日は使って頂こうという事で今日の「上方落語の会」を聴いて後で上方落語についての節をひとつ披露して頂けますか?じゃちょっと即興で先生。
たった一人で高座に座り老若男女を演じ分けお客様方を世界へといざなう楽しい笑いの物語上方落語永遠にありがとうございます。
やりました。
大丈夫でしょうか?これ毎週やりまひょかね。
おもろいでこれ。
ありがとうございます。
というところで本日の「上方落語の会」…。
ちょうど時間となりました。
お別れ致します。
さよなら。
さよなら。
2015/07/31(金) 15:16〜16:00
NHK総合1・神戸
上方落語の会 ▽「道具屋」桂歌之助、「皿屋敷」林家染二[字]

▽「道具屋」桂歌之助、「皿屋敷」林家染二▽第352回NHK上方落語の会(27年5月7日)から▽ゲスト:菊地まどか▽ご案内:小佐田定雄(落語作家)

詳細情報
番組内容
第352回NHK上方落語の会から、桂歌之助の「道具屋」と林家染二の「皿屋敷」の二席をお届けする。▽道具屋:無職の遊び人が、親戚のつてで初めて商売をすることに。おじの副業である古道具屋を始めるが全く売れなくて…。▽皿屋敷:姫路の車屋敷の井戸から女の幽霊が出ると評判になる。幽霊のお菊さんが皿の数を読むと言うので毎晩野次馬が集まるが…。▽ゲスト:菊地まどか(浪曲師)、ご案内:小佐田定雄(落語作家)
出演者
【出演】桂歌之助,林家染二,【ゲスト】菊地まどか,【案内】小佐田定雄
キーワード1
落語
キーワード2
漫才

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – トークバラエティ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

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