今回の先輩は東京・練馬で生まれたこの方。
(是枝裕和)45年も前ですからね。
この町で8歳まで過ごしました。
絵の具工場だけしか残ってないんだ。
記憶には。
何か坂道に…。
うそ?本当だ。
ああ記憶って本当に曖昧だね。
何か取材ですか?あっすいません。
通りすがりなんですけどあの〜この工場昔からここに?ありますよ。
懐かしくて。
小学校通う時に通る度にドブに毎日赤だったり青だったり絵の具の色がついた水が流れててそれを毎朝見るのが楽しくて。
朝だか帰りだか。
是枝さんは町の中の「分からない」事を探しては答えを発見するのが大好きな少年でした。
45年ぶりに訪れた北町小学校での授業。
こんにちは〜!こんにちは。
その「分からない」の発見が今回のテーマのようです。
こんにちは〜。
(一同)こんにちは。
これ始まってんの?ハハハ。
僕の名前は…。
是枝裕和といいます。
映画の監督をしています。
来年公開する映画は主演は綾瀬はるかさんが。
お〜。
いいなあ。
いいだろう。
ハハハ。
95年に映画監督としてデビューした是枝さん。
はいカット。
どこにでもある家族の日常を丁寧に見つめ多くの作品を生み出し海外でも高い評価を受けています。
どんな事をしてもらうかというと今回のテーマはねクエスチョンマーク。
是枝さん黒板に書いたのはクエスチョンマーク。
分からない。
これは何だか分からない。
何の色か分かんない。
何の音か分かんない。
何に使うのか分かんない。
そういう分からないものをこの教室で発表してもらいたい。
監督一体何をするつもりなんでしょう?じゃあ前に出てきて書いてみて下さい。
お願いします。
それぞれ探してきたクエスチョンを思い思い書いていきます。
「ろくぼく」って何だろう?どれからいこうかな。
「小バエの大発生」。
え〜っとうちの家に最近すげえ小バエがいるんですよ。
ハハハ!何で出てくるのか知りたいね。
「全ての物は何から出来ているのか」。
誰?誰?なぜこんな疑問を持ったんですか?あの〜例えば…種は何からできてるのか。
いい質問だな。
で今回は…。
是枝さんが手にしたのはビデオカメラ。
ふだん見てるつもりでいる風景聞いてるつもりでいる音がきっとカメラを持って撮る事で実はふだんあんまり見てなかったなとかふだんあんまり聞いてなかったなって事に気付くと思うんだよね。
そういう特徴があると思うのね。
カメラって。
このカメラを使って取材に出かけます。
初めてのカメラにみんな興味津々。
発見するテーマを決め撮影。
自分たちで編集し最後は作品にして上映するのが目標です。
最初に決まったのはこのチーム。
町でたくさん見かける黒ネコ。
どうして多いのかその訳を探ろうと取材開始。
あっいい感じ。
いよいよカメラを持って出発。
まずは黒ネコ探しから始めます。
あっいた!黒じゃないね。
いました。
ああ黒じゃないね。
多いと思っていた黒いネコが意外と見つかりません。
何か町探検みたいになってきちゃったじゃん。
ねえインタビューしよう。
すいません。
北町小学校の6年1組なんですけど黒ネコを探してて。
分かりました。
ありがとうございました。
いいえどういたしまして。
教えてもらった方に行ってみると…。
いた。
あっいた。
かわいい。
かわいかったっていうのが伝わるものにしてもいいけどそれだけにならないようにね。
はい。
取材した事をまとめて人に伝える時に「こんな事が分かったよ」っていうのが今日ネコに出会ってない人にも分かるように。
いつもの通学路を歩いていた時何かに気付きました。
これネコ用じゃない?ここにもあるよ。
道の端に置かれたネコ用の水。
撮ってる?それ。
撮ってます。
野良猫の不妊手術を推進するポスター。
どんどん増えていくから。
野良猫強いから。
だから多分不妊手術してる。
殺しまではいかないけど。
野良猫の保護に取り組む人の存在が浮かび上がりました。
おっいいの見っけたね。
いつもは見えないものが見えてきたみたい。
カメラを通して広がるもう一つの世界。
それは是枝さんが作品を撮る中で最も大事にしてきた事。
是枝さんが初めての作品を撮ったのは26歳の頃。
たった一人でビデオカメラを持ち3年間長野県の小学校を取材しました。
一頭の子牛とそれを飼う子どもたちを記録したドキュメンタリーです。
飼いたいんだけどやっぱり布川さんたちに…。
カメラを通して子どもたちを見つめ続ける。
これが是枝さんのまなざしの原点となりました。
みんなさ「何でカメラが要るの?」って言うじゃない。
カメラを持つと間接的になるって思うでしょ?普通は。
見た方がいいと思うじゃない?だけど実は逆だったりするから。
それはふだん見てるようで全く見てないっていう。
見てないし聞いてないものをカメラとかマイクってものを通す事によって初めて見るんだよね。
で初めて聞くっていう。
それはとても大事な事だと思う。
4班のクエスチョンは…町の神社の中の富士塚にある猿の石仏が一体何を見ているのかを探ります。
じゃあ富士山と何の関わりがある?着いてから回す?はい。
何か今肩がこうなってるけど大丈夫かな?大丈夫です。
ぼけてる。
ちゃんと撮れてるかな?富士塚は昔富士山にお参りに行けない人のために作られたもの。
猿は富士山を見ているのかも。
ではこれが三合目になります。
その近くには俺たちが調べているどこかを向いてる猿とおじぎをしている猿です。
今から映そうと思います。
この先…。
木が2つに建物があって…。
ちょっと絵が地味です。
町の歴史に詳しい人に聞いてみる事にしました。
さあこれはどこを見てると思う?
(男子)俺らは富士山って予想したんですが。
そうだよね。
でもこれは作った人に聞いてみなきゃ分からないんだけどももう大昔の人だから。
江戸時代に作られた富士塚。
本当の事は分かっていないのだそう。
でも一つ興味深い事が聞けました。
富士山というのは昔の暦の申の日にふっと現れたってそういわれているので猿が神のお使いとして信じられるようになってこういった富士塚にも猿の石の彫刻ですよねそういったものが置かれるようになりました。
(男子)ありがとうございました。
話を聞き終わったその時…。
・イエ〜イ!うわっ!ハロー!ハロー!撮影中別の班に遭遇。
さよなら!行っちゃった!元気いっぱいの彼らが追うのは謎の木の正体です。
クラスメートの女の子が引っ越してきた時新築の家の中になぜか置いてあった木の物体。
一体これは何なのでしょう。
みんなで考えたのは町の工事関係の会社に片っ端から聞いて回るという作戦。
取材交渉も自分たちで行います。
「課外授業ようこそ先輩」という番組で今授業をやっていまして。
2時ごろにそちらにお伺いしてもよろしいでしょうか。
OK?OK?ありがとうございました。
どうだった?あ〜緊張した〜。
ああやって電話を知らない人にかけるだけでもドキドキでしょ?いい社会経験なんじゃない?なおかつこれから取材に行ってカメラ回すなんてそんなドキドキする事を…。
さあカメラを持って町に出よう。
そこには初めての体験がいっぱいあるんです。
いらっしゃい。
こんにちは。
これは何かなって。
…と思って持ってきました。
これはでもペン立てですよね。
ベテランの大工さんも来てくれました。
分からないなこれな。
私はこれ…片足で押さえながらやったと思う。
刃の切れ具合を見たと思う。
ドリルの刃です。
大工さんが言うにはこれはドリルの切れ具合を確かめるために使ったもの。
ありがとうございました。
難しい事やってんだね。
じゃあちょっと…もっとずっとおじさんになる人が言うんだけども研究してみて。
昔…ギンヤンマって知ってる?トンボ。
知ってます。
ギンヤンマがねオスもメスも夕方になるとそんなにどうしているのっていうほど飛んでくるのよ。
突然大工さんからの逆質問。
大人にも分からない事がいっぱいあるみたい。
でオスを捕まえるんだけどね。
ところが…。
ここから合流した是枝さん。
研究してくんないかな?はい。
頑張ります。
(一同)ありがとうございました。
フフッさてさて本題に戻って工事関係の人たちのいろんな証言を集めます。
大きいのはマッキーとかじゃない?
(男子)ありがとうございました。
これは一体何なんだろう?謎は深まるばかりです。
2日間かけて分からない事を取材した子どもたち。
水かかるけど。
ここが田柄川の最初です。
カメラがもう一つの目になって新しい発見が生まれていきます。
こまさん?学校に戻ったら撮ってきた映像を編集します。
ああもう分かんない。
何かさこんなにいっぱい撮っててさテレビとかってさどんだけ切り捨てられてんだろうって思う。
田柄川の最初です。
上映会が始まります。
フフ…。
謎の木の正体を追った作品。
あのあとも町を走り回り11人もの職人さんにインタビュー。
最後はこんな取材で締めくくりました。
これ鉛筆立てだと思います。
よく…。
こういう材料が半端もんでね。
ペン刺しなんですよ。
よく一つぐらいは作るんです。
これ多分使った材料余った材料でこんなふうに作ったんじゃないかなと僕は思うけど。
富士塚の猿について取材した4班。
猿の見ている先を映した映像に是枝さんも驚きました。
あのカットがある事で昔の…こういうふうにあそこにアパートが建つ前はどんな風景だったんだろうなっていう昔はどんなだったんだろうっていうのを見た人が想像できるんじゃないかなと思って。
そういう意味でもすごくいいカットだなと思いました。
あっいた。
黒ネコの謎から野良猫を保護する取り組みを知った5班。
最後にその活動を行う女性に話を聞きに行きました。
なぜ黒ネコが多いのかその最初の謎も。
北町の場合は大きな商店街もあるので黒ネコって昔から黒字になるっていうふうにいわれてお商売されてる方には人気があったのね。
だから昔からもしかしたら地域でかわいがられてたのかもしれません。
そして…。
(女性)片耳をパチッと三角の桜の花びらの形に切るっていうのは練馬区のルールなんですね。
(子どもたち)本当だ。
切れてる。
去勢手術を済ませた野良猫には印がついている事を知りました。
映像を見返すとこれまで撮影した野良猫の中に耳の切れたネコがいた事を発見。
また一つ知らなかった世界に触れたのです。
耳が切れてます。
5つの班全てに新しい発見がありました。
カメラを持っていくとそれまで見てたつもりになってた風景を実は見てなかったなって事に気付くっていうのが一番大きな経験だと思います。
発見だと思います。
今回ので言うとやっぱり耳の欠けているネコって多分ふだんこの周りにたくさんいるはずなんだよね。
だけどさっき見た時にみんな驚いたでしょ?きっと「あっネコだ」と思ったけど耳までは見てなかった。
皆さんが作ったみんなの仲間が作った作品によって見え方を変える力をこういうドキュメンタリーの作品ってのは持ってます。
そういう作品が作れたというのはすごくすばらしい事だと思います。
カメラを持ってる事によって初めてその人と出会えてお話が聞けたりするっていう事が今でもありますからとても使い方によってはすてきな道具だと思いますのでまた何かチャンスがあったらもっと上手に使えるようになって下さい。
じゃあ僕の授業は以上です。
お疲れさまでした。
(一同)ありがとうございました。
ありがとうございました。
また分からないものを見つけてみたいです。
撮影とかズームしたりしてちょっと面白かったです。
いろんな方向から考えられたり見たりできるようになりました。
世界は分からない事であふれているから面白い。
カメラを通して日常の中の特別な風景を見つけた子どもたち。
明日は何を発見するのでしょうか。
はいチーズ。
前回高橋みなみさんといっしょに考えてきた…2015/07/31(金) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩「カメラを通して世界と出会おう〜映画監督 是枝裕和〜」[解][字]
是枝裕和映画監督の授業のテーマは、「カメラを通して世界を発見する」。子ども達は「知りたいこと、分からないこと」を知る道具としてのカメラを持って、取材に出た。
詳細情報
番組内容
カンヌ特別審査員賞を受賞し、国内外で大きな注目を集めている是枝裕和監督(52)。彼は小学校3年生の頃、近所の水の色が毎日変わる不思議に出会い、その謎が解ける喜びを味わった。身のまわりにはたくさんの「分からない」ことがある。その謎にカメラを向けてみたらと是枝は子どもたちにカメラを渡した。撮影を始めると、意外なことが起きた。カメラで観察すると、普段見えなかったことが発見されてきたのだ。
出演者
【出演】映画監督…是枝裕和,【語り】樹木希林
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – その他
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:23990(0x5DB6)