(テーマ音楽)戦争で亡くなった兵士市民の声なき声を遺書を手がかりに掘り起こし後世に語り継ごうと多くの著作を残しました。
遺族と共に激戦地を訪れるなど戦後を生き抜いた家族の心にも寄り添い続けました。
辺見じゅんさんは昭和14年富山県の水橋町に生まれます。
父親は角川源義。
後に角川書店を興した俳人です。
辺見さんはこの父親のもとで伸び伸びと育ち文学を志します。
昭和33年早稲田大学文学部を卒業後日本各地を歩き昔語りや民話を採集して次々に作品を発表していきます。
ある時思いがけず戦艦大和の乗組員の遺族と出会いました。
「田んぼはいかがですか?」。
戦艦大和は昭和20年沖縄への特攻作戦で沈みました。
辺見さんは3年余りかけて元乗組員や遺族を取材し大和の誕生から最後までを描く「男たちの大和」を執筆しました。
大和で戦死した…未亡人の愛子さんと知り合った辺見さんは肌身離さず大切にしていたという遺書に心を打たれます。
「我なき後は我に少しばかりの義理立てを致しあたら幸福を逃す忽れ」。
遺書に込められた思いに引き付けられた辺見さんは兵士たちの遺書を集め記録に残そうと取り組みます。
昭和62年に「昭和の遺書」続いて「収容所から来た遺書」を発表しました。
「収容所から来た遺書」は満鉄の職員で戦後シベリアに抑留された山本幡男さんを描いたノンフィクションです。
山本さんは収容所での厳しい労働に耐えながら俳句の会などを開いて仲間の心の支えになります。
しかし昭和29年日本への帰国を目前にして病死。
亡くなる直前に家族に宛てて遺書を残しました。
当時書いたものを日本へ持ち帰る事は厳しく禁じられていました。
山本さんの仲間はおよそ4,500字にもなる遺書を繰り返し繰り返し読んで記憶し帰国後家族に届けたのです。
子どもたちに宛てた遺書です。
「君たちはどんなつらい日があろうとも光輝ある日本民族の一人として生まれた事を感謝する事を忘れてはならぬ。
日本民族こそは将来東洋西洋の文化を融合する唯一の媒介者。
東洋の優れたる道義の文化人道主義をもって世界文化再建に寄与しうる唯一の民族である。
この歴史的使命を片ときも忘れてはならぬ。
君らが立派に成長してゆくであろう事を思いつつ私は満足して死んでゆく。
どうか健康に幸福に生きてくれ。
長生きしておくれ」。
戦地で倒れた人の言葉にこだわり残された家族に寄り添い続けた辺見じゅんさん。
過酷な運命の中でも人間らしく生きようとした人々を見つめた72年の生涯でした。
2015/08/01(土) 05:40〜05:50
NHK総合1・神戸
NHK映像ファイル あの人に会いたい「辺見じゅん(歌人・作家)」[字]
歌人で作家の辺見じゅん。「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」「昭和の遺書」などで戦没兵士の思いを遺書を手掛かりに描いた。戦没者が残した言葉へのこだわりが語られる。
詳細情報
番組内容
歌人で作家の辺見じゅん。戦没兵士やその遺族の思いを、手紙やはがきに託された遺書を手掛かりに描き続けた。昭和33年早稲田大学を卒業。小説や民俗学的な作品、ノンフィクションを発表していく。昭和58年「男たちの大和」を発表し翌年新田次郎賞を受賞。平成元年には「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を著し、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。戦没者が残していった言葉への思いが語られる。
出演者
【出演】歌人・作家…辺見じゅん,【語り】鈴木奈穂子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
情報/ワイドショー – 芸能・ワイドショー
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