ドラマチック関西「はばたけ!ウッティー 2015.08.01


(鳴き声)おっ頑張れ!殻を必死で破り生まれ出ようとする鳥のヒナ。
すごいな…。
出た!出た!出た!出た!ようこそ!去年6月。
京都・宇治で人工ふ化によってウミウが誕生した瞬間です。
(鳴き声)日本で初めて。
世界でも極めて珍しい出来事でした。
ウッティーと名付けられたこのウミウ。
ある宿命を背負って育てられていく事になります。
(舟をたたく音)ホ〜ウ。
さあ前来い!さあ行け!それは鵜飼いの鵜としてデビューを果たす事。
かがり火のもと川に潜り俊敏な動きで魚を捕らえる鵜飼いの鵜。
鵜を操る鵜匠との深い信頼関係が求められます。
ウッティーをヒナから育てた鵜匠の澤木万理子さん。
ウッティーにも一人前の鵜飼いの鵜になってほしいと二人三脚の訓練を続けています。
しかし次々と試練が立ちはだかります。
野生の本能が鈍っているため水を恐れなかなかうまく泳ぐ事ができません。
ほかの鵜からいじめられ群れに溶け込む事もできないのです。
(鳴き声)ウッティーは鵜飼いの鵜としてはばたく事ができるのか。
鳥と人との絆を見つめた1年間の記録です。
京都市の南隣にある宇治市です。
歴史的な神社仏閣が数多くあり宇治茶の産地としても知られています。
・「ハッピーバースデートゥユーハッピーバースデートゥユー」先月。
一風変わった誕生パーティーが開かれていました。
・「ハッピーバースデートゥユー」ウッティーお誕生日おめでとう!おいしいおいしい。
愛きょうを振りまくこの日の主役はちょうど1歳になったウミウのウッティー。
おお〜!お〜!体長は65センチと普通のウミウより随分小柄。
胸から喉元にかけて生えた若鳥特有の白い羽毛が特徴です。
連れていかれるし嫌か。
鵜を操る鵜匠の澤木万理子さん。
この夏ウッティーを鵜飼いの鵜としてデビューさせるためトレーニングの真っ最中です。
当初全く魚を取る事ができなかったウッティー。
だいぶ上達してきました。
10か月に及ぶ訓練の成果です。
ホ〜ウ。
夏の風物詩宇治川の鵜飼い。
水に潜り鋭い口ばしで魚を捕らえる鵜の習性を利用した伝統漁法です。
平安時代には既に始まっていたとされ今は毎年6月から9月まで行われています。
宇治川の鵜飼いには3人の鵜匠がいます。
澤木さんの後輩でもう一人の女性鵜匠江洋子さん。
2人の師匠松坂善勝さんです。
この道50年のベテランで今は舟を操る船頭を引き受け2人を支えています。
日本で3人目の女性鵜匠としてこの世界に飛び込んできた澤木さん。
ホ〜ウ。
学生時代目にした鵜飼いの光景が忘れられず一旦就職した会社を辞め14年前松坂さんに弟子入りしました。
今宇治では11羽の鵜が飼育されています。
実はこの鵜たちウミウと呼ばれる野生の鵜。
ロシアや朝鮮半島日本の沿岸部に生息するウミウを捕獲しここで育てているのです。
人間への警戒心が強く攻撃的な野生のウミウ。
ところがウッティーは違います。
(鳴き声)顔を近づけてもつつく事はありません。
ヒナから育てた澤木さんを本当の親だと思っているのです。
(鳴き声)立派な若鳥へと成長したウッティー。
澤木さんと幾たびもの試練に立ち向かってきた1年間でした。
澤木さんたちが鵜小屋の中でその卵を見つけたのは去年6月。
人が飼育する中ではめったに繁殖行動をとらないウミウが偶然産み落としたものでした。
その卵を必死に温め続けて27日目。
お〜!すごい!すごい!もうちょっと!頑張れ!頑張れ!あっ出た!頑張れ!あっ出た!出た出た!ようこそ。
かわいい。
(拍手)こうして生まれたのがウッティーでした。
日本で初めて人工ふ化によって誕生したというヒナです。
しかしウミウをヒナから育てた記録はどこにもありません。
室温を何度にすればよいか餌は何をどれだけ与えればよいのか。
試行錯誤が続く中ウッティーは何度も生死の境をさまよいました。
澤木さんたちは片ときも目を離さず泊まり込みでウッティーの世話を続けました。
ふ化から16日後。
ウッティーの体に重大な異変が見つかります。
左足が折れ曲がりなかなか力が入らないようでした。
足の発達に必要な栄養が十分とれていない事が原因でした。
左右の足のバランスが崩れなかなか立つ事ができません。
そこで両足をテープで固定し左足の矯正を続けたのです。
久しぶりにテープをほどいてみると…。
ウッティーは初めて自分の足で立ち上がりました。
おケツも上がっとる。
お尻も上がってるだいぶ…。
観光協会の建物の中でウッティーは澤木さんたちに囲まれすくすくと育っていきました。
去年9月。
生後2か月になったウッティーを澤木さんはこの日初めて外に連れ出しました。
野生の鵜は生後2か月で親から自立し餌を取るようになるといわれています。
川に入ればウッティーも野生の本能を取り戻すかもしれないと澤木さんは考えたのです。
しかし戸惑うウッティー。
澤木さんウッティーを誘いますが…。
大好物のアジを投げても川には入ってくれません。
餌は人の手からもらうものだと思い込んでいるのです。
思ってもみなかった反応でした。
どうしたら野生の本能を取り戻してくれるのか。
澤木さんは毎日のようにウッティーを川に連れていき間近で景色を眺めさせました。
更にたらいに生きた魚を入れて水に慣れさせる訓練も続けました。
(澤木)お〜頑張れ。
そしてこの日。
ウッティーの様子がこれまでとは少し違います。
あでも見てる見てる。
見てる見てる。
お〜!入ったわあ入った入った…。
初めて自分から川に入りました。
泳ぐだけではなく潜るそぶりも。
水の中で泳ぐ姿を見届けた澤木さん。
ウッティーを鵜飼いの鵜として育てる事に決めました。
9月半ば。
いよいよ鵜飼いの鵜になるための訓練が始まりました。
まずウッティーを専用の小屋で暮らすようにさせ人のいる環境から離します。
次にウッティーを待ち受けていたのはかなり難しい課題でした。
鵜飼いの鵜が群れで暮らしている鵜小屋にやって来た澤木さん。
宇治川の鵜飼いでは鵜は6羽で一緒に行動し魚を取ります。
人の手によって育てられたウッティーを野生の鵜たちになじませる必要があるのです。
ほ〜ら。
ほかの鵜たちと一緒に川で魚を取る訓練です。
でもウッティーは…?ほかの鵜に近づこうとせず逃げ出してしまいます。
早よ。
ほらほら…入ろう。
ウッティー魚ほら。
ほかの鵜がいなければご覧のとおり。
もう一回近づけてみると…。
上がったらあかん。
避難場所は澤木さんの懐。
いくよ。
ほう!はい取ってき。
よし。
日本で初めて人工ふ化によって生まれたウッティー。
前例のない挑戦が続いていました。
そうですそうです。
6月ごろにな。
そうです。
もうねヒナではなく若鳥。
今年3月。
鵜飼いの鵜になるための訓練が続いていました。
澤木さんたちの目標は鵜小屋の中でウッティーが一日中暮らせるようになる事でした。
しかしいまだにウッティーはほかの鵜と長時間一緒に過ごす事ができません。
そこでこの日ほかの鵜を一旦外に出して空になった鵜小屋にウッティーを入れる事にしました。
あんたには新しいおうちやな。
もともとウミウは縄張り意識が強く新しく群れに入ってきた鵜を排除する傾向が強いといいます。
先に小屋に入れておく事でウッティーが縄張りを確保しやすくなるようにしたのです。
1時間後。
澤木さんたちはほかの鵜を小屋に入れました。
(鳴き声)しかし止まり木から小屋の隅へと追いやられてしまうウッティー。
先輩たちと一緒に餌を食べる事もできません。
結局ウッティーを外に連れ出す事にしました。
その後もウッティーが鵜小屋で過ごす時間を少しずつ長くしていた澤木さん。
日課のトレーニングに連れ出そうと扉を開けると…。
ウッティーおいで。
ウッティー。
うれしいな。
うれしいな。
うれしいな。
澤木さんはこの日ある決意を胸に秘めていました。
ウッティーを一晩中鵜小屋の中で過ごさせようというのです。
ところがウッティーはなぜか魚を取ろうとはしません。
もしかしたらほかの鵜と過ごすストレスのせいかもしれない。
澤木さんの決意は揺らぎ始めます。
師匠の松坂さんに相談します。
結局この日もウッティーはほかの鵜と寝起きを共にする事はできませんでした。
今年の鵜飼いまであと3か月と迫っていました。
鵜たちは繁殖期を迎えます。
ただでさえ縄張り意識の強い鵜が一層攻撃的になる時期です。
鵜小屋を掃除していた澤木さん。
その時でした。
ウッティー!ウッティーウッティーウッティー!お前は…もう。
餌を与えても水槽からすぐに飛び出してしまいます。
更に…。
ウッティーは先輩たちにくちばしでつつかれてしまいます。
不安を募らせていく澤木さん。
それでも日中の間だけはウッティーを鵜小屋に置き続ける事にしました。
1週間後の昼下がり。
自分専用の小屋の中にウッティーの姿がありました。
いじめられるウッティーを見かねて澤木さんが鵜小屋から戻したのです。
ウッティーを鵜飼いの鵜として自立させたい。
その一方で守らなくてはいけない。
2つの思いの間で揺れ動いていた澤木さん。
鵜匠になったばかりの頃鵜との向き合い方を決定づける事になる忘れられない出来事がありました。
澤木さんを長年見守り続けてきた師匠の松坂善勝さん。
鵜とどのように向き合ったらよいのか。
一つの信念がありました。
鵜に対して厳しくし過ぎずかといって甘やかし過ぎず付かず離れずで寄り添う。
澤木さんとウッティーはまだ本当の鵜匠と鵜の関係になりきれていないのではないか。
松坂さんはそう感じていました。
ウッティーの訓練を終えたこの日の夜。
ウッティーの力を信じろ。
松坂さんは澤木さんを後押ししました。
改めてウッティーとの向き合い方を自分に問い直した澤木さん。
この日鵜の小屋を小さな柵で仕切る作業をしていました。
新たに捕獲したばかりの野生のウミウ2羽とウッティーを一緒に入れるのです。
新たな鵜は小柄でウッティーとそれほど変わりません。
狭い空間に3羽の鵜を入れる事でウッティーがほかの鵜と競い合うような状況を作り出したのです。
お〜ウッティー。
柵の中にウッティーを入れた瞬間3羽は暴れだしました。
思わずウッティーに声をかける澤木さん。
しかし…。
小屋の外から見守る事にしました。
何度も水槽から上がろうとするウッティー。
自分の居場所を見つけようともがきます。
澤木さんはウッティーを信じて立ち去りました。
もがき続けて20分。
ウッティーは誇らしげに立っていました。
その1週間後。
はいいくよいくよいくよ。
ほかの鵜になじんでいたウッティー。
一晩中鵜小屋の中で過ごす事ができるようになっていました。
6月17日。
宇治川の鵜飼いの開幕です。
ホ〜ウ。
ホ〜ウ。
澤木さんの掛け声に鼓舞されて次々に魚を取る鵜たち。
ウッティーはその様子を舟べりで見守っていました。
動く舟と並んで泳ぐのはまだ難しいと判断した澤木さん。
ウッティーを8月後半にデビューさせる事にしています。
今ウッティーは最後の訓練に励んでいます。
動く舟と平行に泳ぎながら魚を取る練習です。
ウッティーほら。
日本初人間の手によって卵から育てられたウミウのウッティー。
鵜飼いの鵜を目指して澤木さんとの熱い夏が続きます。
2015/08/01(土) 10:05〜10:50
NHK総合1・神戸
ドラマチック関西「はばたけ!ウッティー」[字]

日本で初めて人工ふ化によってウミウが宇治で誕生した。母親代わりとなって育てるのは女性鵜匠。言葉がなくとも心を通わせる、人と鳥の絆を1年間に渡って記録した物語。

詳細情報
番組内容
日本で初めて人工ふ化によってウミウが宇治で誕生した。その名も「ウッティ−」。女性鵜匠の澤木万理子さんが母親代わりとなって育ててきた。鵜飼いの鵜に育てようと去年秋から懸命の訓練が始まった。野生の勘が鈍り、甘えん坊に育ってきた若鳥をどう自立させ立派な鵜へと成長させていくのか。叱咤激励の日々が続く。「親と子」から「鵜匠と鵜」の関係へ。言葉がなくとも心を通わせる、人と鳥の絆を1年間に渡って記録した物語。
出演者
【出演】岩槻里子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – 健康・医療

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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