滋賀県長浜市余呉町
ここに全国の食通たちがこぞってやって来る名店があります
ご当地ならではの自然の恵みと伝統の技がもたらす唯一無二の料理
そこに一切の妥協はありません
そんな店主の思いを受け継ぐため厨房を手伝うのは若き長女
調理はもちろん食材探しから仕込みまで毎日が勉強の連続です
今回は滋賀伝統の郷土食を極める父とその技を継承するため奮闘する娘の夢のカタチ
日本一大きな湖として知られる琵琶湖の北側に広がる余呉湖
この穏やかな湖のほとりに知る人ぞ知る美食の宿があります
白地にきりりと墨文字で描かれた「徳山鮓」の文字
温かな木目に包まれた店内では日本古来の鮨の原点・熟鮨をはじめとする郷土色豊かな発酵料理の数々が
さらに鮎やうなぎ・すっぽんといった川や湖の恵み山菜にジビエなど山の恵み自然豊かなご当地ならではの食材を四季折々楽しむことができるんです
そんな料理とお酒を心ゆくまで堪能してもらうため僅かながら備えられているのが宿泊用に整えられた清潔な部屋と目の前に広がる余呉湖を臨む露天風呂
今や予約困難な和製オーベルジュとなっています
大将召し上がって…
こちらが店主の徳山浩明さん
料理の腕はもちろんのことその気さくな人柄も人気の秘密です
早朝5時朝日に輝く余呉湖の上に徳山さんの姿がありました
徳山鮓の食材はすべて地元で取れる旬の恵み
この日は産卵を間近に控えまるまると太ったうなぎを水揚げしました
さてどのように料理するんでしょうか?
肉厚の身に串を打ち自家製のタレでじっくりと焼き上げられた天然うなぎはその大きさを実感してもらうため丸ごと1匹を豪快に盛り付け!
香ばしい皮と脂の乗ったふくよかな白身は天然ならではの味わいです
つい先ほど捕れたばかりの天然鮎は新鮮なうちに手早く調理
鮮度が命の鮎の刺身は産地でしか食べられないごちそうです
川や湖だけでなく緑豊かな山もまた食材の宝庫
この時季生い茂る山菜は薄く衣を付けて天ぷらに
軽く塩をして頂くと山の風味がいっぱいに広がります
さらにもう1つの名物が山の猟師から直接仕入れるジビエの数々
鹿肉を甘辛く炊き上げたゴマあえはごはんのともに酒のさかなにぴったり
ほかにもカモやイノシシ関西では珍しい熊肉の料理など四季折々その時季に取れた自然の恵みを組み合わせここでしか食べられないコースを提供しているんです
この地にこだわりこの地に根ざした料理を作る徳山さんはここで民宿を営む両親のもと生まれ育ちました
高校卒業後は料理人を志し京都の割烹で修業
京料理の板前として活躍しますが12年前実家の民宿を継ぐことになり故郷へ
帰ってきた当初は京料理をすると決めていました
そんな徳山さんを発酵食の世界へと導いたのが小泉武夫さん
農学博士で発酵学の権威として知られる小泉さんが滋賀県余呉町に発酵食の研究所を設立し足しげく通う中ある時徳山さんの店を訪れたのです
そこで余呉に伝わるすばらしい発酵食の歴史に改めて気付かされた徳山さんは小泉さんが語る発酵のセオリーに従いなれずし作りに挑戦!
試行錯誤の末にようやく完成したものを発酵の師である小泉さんへ届けました
この出会いをきっかけに徳山さんの人生は発酵料理一筋へと変化していきました
だから小泉さんが僕をこの道にね導いてくれたみたいなもんですから感謝してますよ
そんな徳山鮓の看板ともいえるなれずしを仕込む季節がやって来ました
ほかでは醸せないおいしさの秘密はニゴロブナの下処理にあり!
徳山さんが最も神経を使うポイントです
内臓だけはほんとにきっちり抜かないとダメな…だからこの中には卵だけしかないおなかの中には入ってないです一番重要なとこですねこの掃除が
丁寧に内臓を取り除き卵だけを残して漬け込まれたなれずしは独特の臭みもなくあめ色に熟成した卵の風味も手伝いまさに上質なチーズのごとき味わい
こうした既成概念を覆す数々の発酵料理が評判を集めいつしか多くのお客さんが遠方から訪れる名店となりました
なぜ人々は発酵料理に魅せられるのか…
その答えは日本料理の歴史にあると徳山さんは言います
和食というのはしょうゆ・みそ全部発酵料理なんですよね
発酵の奥深さに気付いた徳山さんはその可能性を追求するべくあらゆる食材を発酵させます
食べ方にも工夫を加え独自の視点でうまみの出会いを探求
酸味の強い鯖ずしにさらに酸味を合わせるのも徳山流
トマトソースを合わせることで不思議な甘みが生まれました
(浩明)鯖にトマトそれにさらなるチーズを加えてでその3つを食べる鯖でもなれずしにしてるからこれがまた非常に合う
四季ごとにみずからの足で食材を求め発酵にも余念がない徳山さんは1年中猫の手も借りたい状況
そこに去年の冬帰ってきたのが長女の舞さん
4年半の料亭修業を経て実家を手伝う決意をしました
料理人の娘として幼い頃から働く両親の背を見て育った舞さん
高校卒業と同時に父と同じ料理人の道を志し京都で本格的な京料理を学び帰ってきました
まさに親孝行を絵に描いたような舞さんですが実は彼女も郷土の発酵料理をする気はありませんでした
家のお手伝いを学校から帰ってきてずっとやってたんですけどそのお手伝いっていう言葉も嫌で田舎っていうのと何もないっていうのが一番嫌で早く家から出たかったっていうのが第一です
18歳で憧れの京都へ出ることがかなった舞さん
その修業先は西花見小路の静かな通りに位置する割烹・園川上
築100年あまりの町家を改装した店内ではその日仕入れた食材とお客さんの要望をもとに作り上げられる一期一会の京料理を楽しむことができます
その特徴は繊細な味付けと洗練された美しい盛りつけ
しかし華やかな料理とは裏腹に厨房は男だらけの縦社会でした
ここで4年半もの厳しい修業に耐え抜いた舞さん
その当時の様子を店主の加藤さんはこう語ります
性格っていったら男の子に負けないぐらい勝ち気があるというかそういう女の子でしたですねご実家が料理屋だったから普通の子と違って必死に覚えたいというかしつこいぐらいに「教えてください」というところはありましたですね
こうして憧れの京都で経験を積んだ舞さんがなぜあれほど嫌がっていた故郷へ戻る決意をしたのか?
尊敬する父の仕事をみずからのものにしようと精進する舞さん
そんな姿に徳山さんも期待をかけています
舞も帰ってきて何分ね仕事意外のもの…食材を取りに行くとかそういう作業も入ってくるので
(浩明)育てがいがあるかなという感じで教えてあげようかなと
春夏秋冬四季の巡りに合わせて行動する徳山さん
この日は車を飛ばして山へと向かいます
この日のお目当ては徳山鮓の料理に欠かせない山椒
日当たりや熟れ具合を見極めひと粒ひと粒丁寧に手積みします
時間を見つけては山へ川へ旬の食材を探しに出かける徳山さん
次に向かったのは余呉湖に流れる清流
ここで解禁を迎えたばかりの鮎を入手するべく専属の鮎釣り名人のもとを訪ねました
実家に帰って半年あまりの舞さんにとってはすべてが初めての経験
季節になると当たり前のように厨房にあった山菜も早朝山深い場所まで摘み取りに行かなければなりません
山に分け入り1時間ほど歩いたところに見つけたのは山菜の楽園
(舞)山菜も初めて見るものが多いんですけどもこういった山菜はこういう場所にあるものだとか初めて知っていくので私にとってはすごく大切な経験の1つにもなりますしやはり実家に帰ってくるとこういった山菜を使ってどういったものが作れるかというお料理も増えていきますしそれが一番楽しいです今は
そんな舞さんがこの夏徳山鮓の看板であるなれずしの仕込みに挑戦
この時季お店で提供する1年分の量を一気に仕込んでしまうのです
収穫されたばかりの新鮮なフナはウロコを1枚残らず丁寧に取り除きます
いつにも増して厳しい口調の徳山さん
そら真剣になりますよねただ作ればいいっていうわけじゃなくてやっぱりおいしく…
下処理を終えたフナは一斉に天日干し
それが終わればいよいよ本漬けの作業にかかります
ここからは発酵を研究した徳山さんが編み出した秘密の技法
その一挙手一投足を頭に刻み込むように舞さんは片時も目を離しません
なれずし専用に炊かれたごはんをフナに詰めたるの中へ並べます
適量を入れたところで仕上げに隙間ができないよう上からごはんを敷き詰めれば仕込みは完了
発酵料理人としてはまだ半人前の舞さんですが徳山鮓での存在は着実に大きくなってきています
月に一度は来店するというなじみのお客さんは…
お料理の盛りつけのしかたは変わったかな…
園川上で学んだ盛りつけの技をここで生かしたいと考えた舞さん
徳山鮓の定番メニュー・しめさばの盛りつけを金型を使って新たなものに進化させました
以前は平面的だったしめさばの盛りつけが舞さんの手によって目にも楽しいひと皿に
夏の定番である鮎の塩焼きも以前は同一色でまとめられていましたが手長エビを揚げた赤をアクセントに加えることで彩りをプラス
舞さんの盛りつけにより新たな進化を遂げていたのです
長女・舞さんが徳山鮓に帰ったことから来春料理人として修業に出る予定の弟・敬介くんも厨房で作業を手伝うようになりました
こうして父である徳山さんのもと家族が一致団結
配膳と接客を一手に引き受け徳山さんと共にこの店を盛り上げてきた母・純子さんの思いは?
みずからの腕一本一代で築き上げた徳山鮓
徳山さんの今後の展望は?
家族でねお客さんをおもてなしできるのが一番理想なんですけどねそれをするだけじゃねまだまだ努力しますまだまだ進化し続けないとお客さんに申し訳ないなという気でやってます
夕飯の準備に追われる舞さんのもとへ徳山さんがやって来ました
来てもらうからどうしよう…
(浩明)何か新しいメニューで自分がこうやったっていうやつを1回ちょっと考えてみ分かりましたはい
徳山さんは舞さんの師匠である園川上の加藤さんを招きその成長ぶりを見定めてもらおうと考えたのです
どのようなおもてなしで師匠を迎えるか?
突然の父からの提案に舞さんは戸惑いを隠しきれません
いやパニックですハハハ…えーっとそうですねそうですねと…とりあえずもうあの…ど…どうしようハハハ…
加藤さんの来店まで残された時間は1週間
おもてなしのメニューを考えるためこの日舞さんは熱心に何やらノートに書き留めていました
今余呉で取れる食材を書き込んでおりますこちらは私が修業時分に書いていたその月の献立になりますこちらの食材と覚えてきた京料理を組み合わせてお料理を考えていこうと思っております成長を見てもらう分にあたって緊張でいっぱいですね
メインの食材には琵琶湖の固有種であるビワマスを選んだ舞さん
お世話になった加藤さんのために今ある知識をフル稼働させておもてなしのひと品を考えます
初夏のビワマスは上品な脂を蓄えトロのような舌触りが特徴
果たして舞さんはどのように調理するのでしょうか?
今からビワマスに合うソースを作ろうと思ってるんですけどもこの材料は鮒鮨の中にある卵なんですけども
ふなずしの卵とはあめ色になった粒状の部分
これでソースを作るというのですが…
これと今考えているのがリコッタチーズおうちが発酵系の食材を使ってるのでやはり発酵で勝負していこうかなと
さらにふなずしの発酵を促すために敷き詰めたごはん・飯ソースを追加
発酵の三重奏で勝負をかけます
生魚に発酵ソースをかけて食べるっていうのが今までなかったのでちょっと新しく考えていこうかなと
早速できあがったソースを父・徳山さんに味見してもらいました
こんなのができましたこんなのハハハハ…70点はい
徳山さんの評価は70点!
酸味が利きすぎているという指摘を受けました
残された時間はあと僅か!
師匠をもてなすためのひと品は果たして完成するのでしょうか?
徳山鮓で父の技を継承する長女・舞さん
彼女が4年半もの間お世話になった園川上の店主である加藤さんが徳山鮓へやって来ました
ありがとう忙しい中来てもらっていやとんでもないですほんとに立派になられて心がうきうきというかなんかこう涙が出そうでちょっと押し殺してますけど心臓が破裂しそうです
早速厨房に入りおもてなしの料理を作り始めた舞さん
父に酸味が強すぎると指摘されたソースはどのように変化したのでしょうか?
お世話になった師匠をもてなす心尽くしのひと品
果たして加藤さんの反応は?
(加藤)おおっ
(舞)お魚がビワマスと下にございますのが一生懸命考えて作った発酵ソースになります
(加藤)発酵ソース
(舞)はい
(加藤)うん!これは何が入ってるんですか?
(舞)こちらはふなずしの飯とふなの卵そしてハチミツそれでもまだ足りないってことで組み合わせたのが実山椒です
指摘された酸味を抑えるために舞さんが使った食材は余呉で採れた天然ハチミツ
香りのアクセントには山で摘み取った実山椒
ほのかな苦味が味を引き締めてくれました
やっぱりこの実山椒がすごくアクセントになって非常にこのソース…よく合います成長したなありがとうございます
(加藤)姿が見れますありがとうございます
みずからが考案した新たな発酵料理で師匠のおもてなしを終えた舞さん
徳山鮓の未来を背負う二代目としての夢のツヅキは?
両親が築き上げてきた徳山鮓の跡取りとして私の覚えてきた京料理を組み合わせていってまたちょっと変わった徳山鮓を進化させていけたらなと思ってます
徳山鮓の食材はすべて地元で取れる旬の恵み
自然豊かなご当地ならではの食材を
四季折々楽しむことができます
2015/08/01(土) 11:00〜11:30
ABCテレビ1
LIFE〜夢のカタチ〜[字]/「滋賀の名店 天然ウナギと発酵料理」語り佐々木蔵之介
人生はいろんな夢でできている…夢追う人の輝く瞬間を描きます。今回は「滋賀の名店で天然ウナギと発酵料理!23歳女料理人に密着!!」です。
詳細情報
◇番組内容
滋賀・余呉湖の畔にある「徳山鮓」は全国のグルメ達が訪れる名店。店主の徳山浩明さんは鮒寿司をはじめとする発酵料理の達人。滋賀の伝統料理を次代に伝えようとしています。そんな中、長女の舞さんが京都での料亭修行を終え「徳山鮓」に帰ってきました。父娘の料理に向かうひたむきな姿を追います。
◇ナレーション
佐々木蔵之介
◇おしらせ
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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