朝敵となった長州を征討するため幕府諸藩の軍が集結。
長州藩では椋梨藤太が復帰し幕府に徹底謝罪の上恭順する道を選んだ。
さっさと歩け。
そして椋梨らによる粛清が始まった。
(椋梨)高杉晋作桂小五郎の両名を捜し出し必ず捕らえよ!
(一同)はっ!
(銀姫)嫌じゃ!
(潮)姫…。
新しく元徳様にはべる女どもとなぜ私が機嫌よう御萩など作らねばならぬ!御萩作りはお家安泰を願う奥の大切な儀式にございます!ならば…お前!
(美和)はっ…。
そもそも奥に女中が増えたのはお前のせいじゃ。
御萩ならお前が作れ。
御萩作り。
お世継ぎ誕生を願う奥の年中行事である。
(都美姫)気分がすぐれぬ?
(潮)はい…。
気分などと言うておる時か。
姫こそ世継ぎをなさねばならぬ身ではないか。
私はもう7年も待っておるのじゃぞ。
それは銀姫様も重々ご承知でございますが…。
(都美姫)皆も心せよ。
今こそ子孫繁栄を祈願ししかと御萩を作るのじゃ!よいか?こうです。
こう。
そなた…めっぽう手際がよいの。
はっ。
いかがでございますか?
(元徳)これは姫の御萩ではない。
これを作ったのは誰じゃ?
(園山)誰じゃ!申し訳ございません!姫様のご気分がすぐれぬとの事で代わりに私が!
(元徳)うまい。
はっ?はっ?はっ?このようにうまい御萩を食べたのは初めてじゃ。
これは姫には作れぬ。
姫の腕ならよう存じておる。
お待ち下さりませ!ただいまお取り次ぎを!顔を見て見舞いを言うだけじゃ。
まことに恐れ多き事なれど姫様におかれましてはおつむりが痛くどうしても起き上がれぬと…。
そうか。
どう思う?はっ。
仮病であろう。
御萩美味であったぞ。
じゃが私はまずい御萩も好きなんじゃ。
いたわってやってくれ。
(障子が開く音)元徳様ただいま戻られてございます。
そうか…。
(伊之助)存じませぬ。
どこまで幕府の機嫌をとれば気が済むのか!兄松島を獄に投じたんが気に入らんようじゃ。
獄に投じられた者は皆長州のために働いた者らにございます。
なればこちらも長州のため。
幕府恭順を阻む者は一人として許す訳にはいかぬ。
高杉の居所を知るんなら速やかに申せ。
存じませぬ。
失礼致す。
小田村から目を離すな。
我らの政を転覆させんとの兆しあらば遠慮なく召し捕れ。
はっ!
(中川)それと高杉ですが。
10月27日姿を見せるやもしれませぬ。
10月27日…。
吉田松陰の命日です。
高杉はその日欠かさず墓に参るんじゃとか。
なるほど。
師の前で討ち取るもまた一興。
兄上が取り調べを?高杉様の行方を捜して椋梨様が躍起になっておられるのです。
先日園山様のところへも心当たりがないかと。
椋梨様のお力は今や並ぶ者もございませぬ。
高杉様を見つけ次第斬れと。
(テーマ音楽)・「愚かなる吾れのことをも」・「友とめづ人はわがとも友と」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「吾れをも」・「友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「燃ゆ」「雅様。
高杉さんに危険が迫っております。
もし居所をご存じなら急ぎ高杉さんにお伝え下さい。
決して…決して萩には姿を見せぬよう」。
使いを出す訳にはいかぬ。
なぜでございますか?園山様より固く禁じられておる。
奥勤めの間もない者は里心がつくゆえ。
急ぎの手紙でございます!何とぞ!ならぬ。
(美鶴)私でお役に立てますか?美鶴様…。
奥勤めに入られた事それとのう伺っておりました。
ずっと案じておりました。
私を?嫌われてもしかたありませんね。
ご無礼致しました。
ああ。
お使いならじき許されますよ。
椋梨は今高杉晋作様に関わる者を見張っているのです。
では私も見張られていると?それも10月27日までの事。
27?ほんの罪滅ぼしの独り言。
お聞き流し下さいませ。
10月27日…。
(銀姫の笑い声)参りました。
次の相手は誰じゃ?勝ったら望みのものをとらせるぞ。
おそれながら私に。
ぜひ。
(香澄)控えよ!御次風情がずうずうしい。
ぜひ!
(銀姫)わきまえよ。
雑巾がけでもしておれ。
さあ始めるぞ!
(銀姫)何が望みじゃ?姫様!何か言いたい事があるのであろう?高杉様が椋梨様にお命を狙われております。
恐らくは10月27日…兄松陰の命日に。
何としても危険をお伝えし命を助けたいんです!お力をお貸し下さい!私はお前が嫌いじゃ。
懸命になれば思いは必ず通じると信じておる。
私は…。
(銀姫)奥とはそのような場所ではない!ここはただお家のため一人でも多くの子をもうけ育てる。
そういう場所じゃ。
諦めよ。
姫様!子のない私はここでは人ではない。
この中にいる限り我らには誰ひとり救う事はできぬ。
(小忠太)何べん言うたら分かるんじゃ。
晋作ならここにはおらん。
(品川)うそをつかれますな!ご城下で見かけた者がおります。
いつの事じゃ?
(靖)いつでもよい!晋作殿に天誅を下すまで我らここを一歩も動きませぬ。
晋作は裏切り者か。
攘夷に懸けた仲間を捨て異国との講和に走りました。
いい加減になさいませ。
あれをご覧なさいませ。
誰じゃ!椋梨様のご配下です。
椋梨?椋梨じゃと?ここで騒ぎ立てれば面倒はむしろあなた方に降りかかると思いますが。
小田村様が投獄されました。
兄上が?小田村殿。
(鞠)小田村様に謀反の兆しありと。
椋梨様のなされようは容赦なく高杉様の捜索も日に日に厳しさを増していると。
美和殿もお気を付けて。
鞠様。
なぜ私にそのような…。
通じておられるとおっしゃっていました。
下関へ向かう道で。
たとえ離れていても高杉様や皆様はお仲間なのだと。
回想高杉さんたちとはず〜っと共に過ごしてきましたから。
羊羹?せんだって御萩をこしらえました折元徳様より大層お褒めのお言葉を頂きました。
ああ…そうであったな。
ですが元徳様は銀姫様がお作りになられたものを召し上がりたいと。
ここは姫様の手で新しき菓子などを作ってさしあげれば…。
(潮)お前がそれを指南致すと申すか?僭越ながらお力になれればと。
確かに船橋屋の羊羹は江戸暮らしの頃より元徳様の好物であった。
好物なればなおの事。
お話も弾みご夫婦の仲もなお一層深まりましょう。
遠からずお世継ぎも。
よくぞ申した!姫。
ここが勝負時でございますぞ。
何としても姫の手で極上の菓子を作られ元徳様にお召し上がり頂くのです。
姫様ご生誕の時より守り役として務めてまいりましたこの潮の今生の願いどうぞお聞き届け下さいますよう何とぞ。
何とぞ!お前潮を抱き込んだか。
なぜそこまで…。
兄を失い夫を失い兄を慕う大勢の者を亡くしてきました。
これ以上誰も死なせとうないんです。
亡き夫と共に歩んできた方たちのお命をお守りしたいのです。
気に食わぬ。
気に食わぬ。
気に食わぬぞ。
姫様しっかり力を入れて下さい。
ここで手を抜いてはあんが焦げてしまいます。
分かっておる!
(志乃)寒天は大きさをそろえて煮溶かします。
このように。
美和。
「ふね」とはこのようなものでよいのか?十分でございます。
この中にあんを流し込みます。
いかがでございますか?うん!皆もなめてみよ!ほら!ほら!おいしゅうございます!甘うございます。
(銀姫)ほら!お前も誰かに食べさせたのか?兄が好物でした。
一度だけ夫となった者にも食べてもらおうとこしらえた事があるのですがケンカを致しまして。
食べさせ損ねたか。
なんと間の悪い。
食べたら何と申したでしょうね…。
浮かぬ顔してどうなされました?高杉を取り逃した。
城下で見かけた者がおるというに。
案じなされますな。
危うきを知れば必ず動き出す者がございます。
その先を探ればよいのです。
うん?例えば…。
松陰の妹とか。
そして10月27日となった。
御前様間もなくおいでになるとの事です。
では参るぞ。
はっ。
(銀姫)赤子が生まれた家臣の祝いの品にと思い立ちまして。
御前様にぜひお味見をと。
いかがでございましょう?美味じゃ。
姫がこれほどのものを作るとは。
ありがとう存じます。
心得のある女中に指南を受けまして。
喜べ。
御前様よりお褒めを賜ったぞ。
恐悦至極に存じます。
(都美姫)またお前か。
この者に褒美などとらせとう存じますがいかがでございましょう?褒美。
どのような?申してみよ。
おそれながら今日は兄の命日でございますれば同じものを兄の墓前に供えたいと存じます。
(都美姫)吉田殿の命日か。
銀姫様。
それはいささか褒美が過ぎるのでは。
お願い致します!相分かった。
許す。
ありがとう存じます。
(梅太郎)これは…。
寅が喜びます。
(亀)でもどねぇしたんでしょう?文さんがわざわざ。
(滝)いくら寅の好物とはいえお城の中からこのような…。
御用じゃ!御用じゃ!な…何です?高杉晋作はおらぬか!はっ?奥の部屋にはおりませぬ!屋根裏にもおりませぬ。
あの…これは一体…。
その中にもしや密書が!はっ?
(百合之助)密書?ええい貸せ!どうでもよろしゅうございますがわらじぐらいお脱ぎ下さいませ!あ…あの…羊羹はこちらへお返し願…。
やはり高杉は墓に。
寅の墓ですか?それでしたらこれから私が…。
どこじゃ!高杉は一体どこにおるんじゃ!?生きちょったか。
(晋作)なじみの端唄の師匠の家に。
今朝これが届きました。
10月27日椋梨がわしを狙って捜索をかけると。
美和がお前に?赤子が生まれた祝いにと銀姫様より羊羹を賜ったそうです。
回想
(銀姫)赤子が生まれた家臣の祝いの品にと思い立ちまして。
(晋作)その箱の中に。
銀姫様の…。
それは誰にも手が出せん。
はかったな美和。
どうです?そこからの眺めは。
久坂が死んでわしは決して迷わぬと決めました。
しかしいささか参っちょります。
藩から狙われ攘夷を唱えた仲間からも追われ…。
わしは一体何をなすべきか…。
椋梨に惑わされ大事なものを見失うてはいかん。
大事なもの。
幕府は遠からず崩れ落ちる。
そのあとこの日本を誰が率いる?我らじゃ。
我らの手で徳川の世に幕を引く。
長州の手で…。
そして雄藩を結び日本を動かす!面白い。
日本を狂わせよと。
今ここにわしらがおるんは皆の思い抱え事をなすためじゃ。
(晋作)父上…。
なぜここが…。
そちらの道には追っ手がおる。
こちらを行け。
すべてお見通しなんですね父上は。
私の隠れがも立ち寄る先も。
時々思う。
なぜこのような時世にお前の父であったかと。
それもまた宿命であったのかの。
誇りに思うておりまする。
父上を。
代々続く高杉の家を立派に守ってこられた。
(小忠太)それも今日限りじゃ。
お前とは縁を切る。
どこへでも行け。
行け。
昨日祝いの品を届けた家より礼が参った。
奥方より「主は無事でございます」と。
まことでございますか。
さすがに私の名の入った品は誰もあらためなかったようじゃの。
ありがとうございました。
私はお前が嫌いじゃ。
一人では何もできぬくせに潮を丸め込み部屋中の者を巻き込みあげく私の名を使って。
あっ。
何じゃ?羊羹…。
そういえば元徳様の分…。
忘れておった。
(2人の笑い声)姫様のお話をする元徳様は楽しそうでございました。
どうじゃ?おきれいでございます。
間もなく元徳様お渡りにございます。
そうか。
(女中)元徳様のお成りにございます。
姫様?姫様!姫様!姫様!姫様!美和!美和!姫様を!はい!はい!姫様!どうした?早うお話がしたくて。
姫らしい。
まことに姫らしい。
(2人の笑い声)
旦那様。
信じてもいいですか?まだ希望はあると
そのころ萩を脱した高杉は追っ手を逃れ更に西へ下ろうとしていた。
お前か…。
高杉さんを討つんはもうわししかおらん。
みんな死んだ。
久坂さんも入江さんも寺島さんも…。
なぜ攘夷を捨てた?仲間を裏切った!?まだそねな事言うちょるんか。
たあ〜!うう〜!やあ〜!お前には斬れん。
侮んな!斬れん!わしもお前は斬れん。
わしらが斬り合わんにゃならん長州は間違うとる。
行け!早う!俺は久坂も稔麿も入江も寺島も誰の事も忘れたりはせん。
必ず戻る。
それまで生きちょけ。
奥に政を邪魔立てした者がおると?高杉と桂の事か。
その高杉がどういう手だてか萩から逃れた由にございます。
奥の者が手を貸したと申すか。
捕らえるための策を漏らした者がおるやもと。
奥の者が疑われるとは心外の極み。
これは口が過ぎました。
…が御前様の目の届かぬところで砦に綻びがあるやもしれず。
老婆心ながら。
(都美姫)では知らぬと申すのだな。
身に覚えはありませぬ。
しかし現に高杉は追っ手を逃れ萩からも脱したという。
(日出)申し訳ございませぬ!私がお役目を怠ったばかりに…。
どういう事じゃ!その場で羊羹の包みをあらためておりましたら…。
違います!もともと包みの中には何も。
まさか美和殿に限ってそのような事を致すとは。
(園山)鞠!奥勤めにて守るよう言われた事を申してみよ!「奥向きの事は何事によらず外へ漏らしてはならぬ」。
(都美姫)その戒めを破った者を捨て置く訳にはいかぬ。
お前は奥より下がるがよい。
御前様。
(銀姫)お待ち下さいませ!勝手に暇に出されては困ります。
(都美姫)姫…。
美和は私の女中でございます!この者は奥のしきたりを破り表の政を阻もうとした。
御前様。
子ができました。
ん?えっ…。
無事おのこがお生まれになればお世継ぎにございます。
世継ぎ…。
これから先は人手がいります。
私は江戸育ちゆえ萩育ちの者がいると心強うございます。
つまらぬ事でお世継ぎ誕生に障る事がございませぬよう平にお願いする次第にございます!姫様…。
(都美姫)御萩か…。
子孫繁栄の祈りが効いたようじゃ。
奥のしきたりとはまことありがたきものじゃ。
おのこであればよいがの。
姫様まことに…。
よい。
礼を言うのは恐らく私の方じゃ。
そなたどのような思いも貫けば外を動かすとまことに思うか?おそれながら。
奥とはそのような場所かと。
はっ。
相変わらずふてぶてしいおなごじゃ。
私はこれから戦わねばならぬ。
この子の母として。
お力になりとう存じます。
できるか?お前に。
必ずや。
さて…次の一手をどう致すか。
椋梨の影は美和のすぐ近くに迫っていた。
(寿)あの人を私たちのもとへ!どうか!
(日出)ねずみを退治して下さい。
兄上様のためにも。
美和…見届けてくれ。
銀姫は一時この地に滞在しました。
20人ほどの女中たちが銀姫に仕えておりその中に美和もいました。
9歳で毛利敬親の養女となり15歳の時元徳と結婚した銀姫。
夫婦の仲もよく銀姫の出産の際には元徳はこの山口大神宮で安産祈願を行ったといいます
銀姫は後にこのころの思い出として元徳の帰りが毎晩深夜になっていた事や昼夜を問わず鉄砲の音が響いていた事などを語っています
その後日本赤十字社の要職を務めるなど慈善活動や婦人教育などに尽力した銀姫は明治大正と日本の変遷を見続けていくのです
2015/08/01(土) 13:05〜13:50
NHK総合1・神戸
花燃ゆ(30)「お世継ぎ騒動!」[解][字][デ][再]
長州藩の重臣・椋梨藤太(内藤剛志)が高杉晋作(高良健吾)の命を狙っていることを知った美和(井上真央)。得意の菓子作りを利用して危険を晋作に伝えようと試みるが…。
詳細情報
番組内容
長州藩の重臣・椋梨藤太(内藤剛志)が高杉晋作(高良健吾)の行方を追っていることを奥御殿で知った美和(井上真央)。危険を晋作に伝えたいと思うが、うまくいかない。そこで次期藩主・毛利元徳(三浦貴大)と正室・銀姫(田中麗奈)の仲を取り持つため、銀姫にようかん作りを指南することを申し出る。果たして美和は同じ品物を杉家に届ける許しをもらい、包みに手紙をしのばせようとするが、杉家に突然、役人が乗り込んできて…
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,高良健吾,北大路欣也,原田泰造,久保田磨希,大野拓朗,音尾琢真,北見敏之,内藤剛志,檀ふみ,長塚京三,黒島結菜,田中麗奈,三浦貴大,石橋杏奈,江口のりこ,高橋由美子ほか
原作・脚本
【脚本】宮村優子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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