その人の姿は野菜畑にありました。
裸足で歩き回り足もとの土をいきなりがぶり!そして野菜も…。
この人物農家なのか?それとも…。
実は彼こそ今回の主人公フランス料理のシェフ萩春朋さん39歳。
食材のメーンは自ら味見したその日いちばんおいしい野菜。
その風味と鮮度を最大限に生かす調理法を心がけています。
採れたての野菜を引き立てる斬新な盛り付け。
店のコンセプトはお客はなんと1日1組限定。
新しい料理を生み出すためにこんな調理法も駆使。
お客も身を乗り出さずにはいられません。
朴訥さとは対照的な桁外れのこだわり。
唯一無二の味の世界に迫ります。
福島県南部に位置するいわき市。
その自然豊かな高台に萩さんのレストランはあります。
殺風景なまでにがらんとしたキッチン。
食材らしきものは一切見当たりません。
とどこかへ出かける萩さん。
訪ねたのは一軒の農家。
野菜お願いします。
なるほどここで食材を調達しようというんですね。
そのまま畑へと入り手にとったのはトマト。
うんうまい。
いつもどおりガブリと味見。
ここは20年以上にわたって農薬や化学肥料を使っていない畑です。
と今度は裸足になって土に足を突っ込んでいます。
いったいこれは…。
土の湿度を確認しているというのです。
そして砂漠状態の場所のトマトを味見。
水分が少ないため割れてしまったトマト。
しかしその分糖度は高いのです。
形じゃなくて味なんですよね。
絶対割れたのなんか出荷されないじゃないですか。
全然味違うんですよね。
これこそ畑に来なければ手に入らないその日いちばんおいしい野菜です。
続けて萩さん別の農家の畑へ。
ここでもやっぱり裸足に。
こちらは日本ではまだ珍しい外国産の野菜の栽培を手がけています。
昨日まで雨降ってたからこんなに水が入ってるんですよ。
みずみずしいですね。
でもみずみずしいってことは味は薄まってるんですよ。
これであれば焼いたほうがうまいですよね。
さまざまな野菜を味見しながら頭に思い描いているのは今夜のメニュー。
いったいどんな料理になるのでしょう?はいもしもしおはようございます。
おはようございます白石さん。
どうもです。
おくいもちょっと掘ってみますかね。
うん。
おくいも?初めて聞く名前です。
どんな野菜なのか?もう近くですか?あそこの赤い人です。
この赤いつなぎを着た人がおくいもを栽培しているここでももちろん裸足になっておくいもの畑へ。
思いっ切り?おもしろいね。
いもがこの中に残ってるんで。
あとはひたすらここ掘れワンワン状態で…。
ホントだ。
ここに。
へぇ〜。
幻のいもとも言われるいわきの在来種おくいも。
萩さんが頼み込んで栽培してもらっています。
長年の自然農法で育まれたおいしい土。
まぁ俺から言わせてもらえば萩さんも変態ですけどね…。
すごい今を大事にするんですけど未来これからのことも考えてる人。
大収穫。
料理人と農家が手を携えいわきの伝統野菜を未来へ引き継ごうとしているのです。
こうして何軒もの農家を回っているうちに夕方になりました。
店に戻ってきた萩さん。
まずは集めてきた野菜をできるだけ風味を落とさないように洗います。
1組のお客のためだけに萩さんが8時間かけて集めた食材。
今日いちばんおいしいこの野菜が1万5,000円のフルコースに生まれ変わるのです。
萩さんいったいどんな料理を作るのでしょう?いらっしゃいませ。
よろしくお願いします。
本日のお客はご夫婦。
これ生木葉ファームの野菜なんですけど花つきズッキーニで…。
これから食べてもらう食材の説明から始めるのが萩さんの流儀。
全部いわきで僕が数時間前に全部採ってきたやつ。
お客に見せた野菜をオープンキッチンでどんな料理に仕上げていくのか?サービスを手伝ってくれるのは萩さんのお母さん。
今日は不定期で来ている見習いの鈴木さんも厨房に立っています。
まず萩さんが用意したのは黄色いジュレ。
その正体は…。
実はこれトマトをミキサーにかけこして旨みだけを取り出したいわばトマトのエキス。
これに畑で採ってきたあのバジルを根っこごとさします。
自分が惚れた土の味をお客にも知ってほしいという萩さんならではのこだわり。
そして完成したのが萩さんが畑で思いついた料理。
培養液に見たてたトマトのエキスからまるでバジルが芽を出したような愛らしい前菜。
見た目にはまったくトマトの気配はありませんが…。
お客の反応をダイレクトに受け止められるのはオープンキッチンなればこそ。
更にこんな提案も。
池端さんガスパチョ…。
お客が興味を抱いていた料理を思い出し即興で対応。
今日いちばんおいしい野菜を自由自在に仕上げていくのです。
2組いたら4人5人6人と整理つかなくなるんですよね。
1組であればそれが可能なんです。
トマトやキュウリなどの夏野菜で作る冷製野菜スープガスパチョ。
生のトマトが甘みを添えます。
味の濃いナスとピーマンはグリルに。
淡泊な花ズッキーニは油で揚げます。
それぞれ野菜の旨みを最高に引き出した形で加えていくのです。
味のアクセントはヒイカとカキ。
魚介や肉を主役ではなく野菜の引き立て役に使うのが萩流フレンチ。
仕上げにふりかけるのは凍らせて粉末状にした野菜スープ。
常温熱々冷え冷え。
温度差の演出です。
この日のお客のためだけに作られた何とも贅沢なガスパチョ。
今日いちばんおいしいトマトの魅力を堪能できます。
次に登場したのはあのおくいも。
見た目はジャガイモと変わりませんがデンプン質の多さがケタ違い。
ペースト状にするとこんなにネバネバ。
ところが食感はさらり。
それを際立たせるため万願寺唐辛子と合わせました。
実はこの日農家の方が持ってきてくれたものがあるのです。
生きたままの天然鮎。
近くの川で釣ってきたといいます。
とびきり新鮮なこの鮎を焼き上げ…。
おくいものペーストの上にのせます。
これで完成かと思いきや何かを燃やし始めた萩さん。
藁を焼いた煙を鮎の皿に流し込んでいます。
見慣れぬ調理法に思わず席を立ち身をのり出したお客さん。
趣向を凝らした逸品です。
お〜!おっ魚が…。
あれれ?鮎が!いちばんの見せ場が…。
逃げちゃった。
ごめんなさい。
さて口に運ぶと…。
奇抜に見えて実はかすかな土の香りを料理にプラスした藁の煙。
土の風味が加わることで鮎が骨太な味になり味の濃いおくいもとよく合うというのです。
これも野菜を引き立てる萩流の技。
今日いちばんおいしい野菜を使ってあなただけのために作り上げたのは合わせて7皿でした。
また食べに来ます。
ぜひありがとうございます。
ありがとうございます。
おやすみなさい。
1日1組のために食材を集め腕を振るう萩さん。
しかし以前は違っていました。
いわきで生まれ育った萩さん。
高校生のとき日本にフランス料理を紹介した辻静雄さんの本に出会い感動。
フランスに留学。
現地の一流レストランなどでも修業しました。
帰国後ふるさといわきに戻り二十歳そこそこで自分の店を持ちました。
海のものを仕入れて新鮮なものを出せば誰もが喜んでたんです。
それでお金も取れたんです。
意外と簡単だったんです。
経営は順調。
数年後には従業員十数名を抱え1日200人ものお客が来るいわきでも有数の人気店になっていました。
事業拡大を考えていたとき思いもよらぬ事態が起きたのです。
東日本大震災です。
あの日それまで豊富にあった魚介が一切市場から消えました。
おのずと地元の野菜に目を向けることになった萩さん。
震災後さまざまな場所で料理を教えている萩さん。
本日の会場は佐藤さんの農場。
風評被害を乗り越えるためには少しでも多くの人に地元野菜の魅力を伝えることが大切。
福島県の海の塩をかけます。
これだけで調味料いらないです。
福島の牛乳…。
入れます。
生クリームいらないです。
素材がうまいんで。
冷たいジャガイモのスープヴィシソワーズ。
その上に焼いたナスとホタテをトッピング。
仕上げにオリーブオイルをひとたらし。
ピーマンとパプリカで彩りを演出します。
新鮮な野菜があれば自宅でもこんなにオシャレな料理が作れるという萩さんのメッセージ。
もちろん味も…。
震災以降炊き出しや料理教室などを通して地元の農家と親しくなっていった萩さん。
今では家族の一員のように昼食をごちそうになるまでの関係に。
こんなの売ってないですからね。
お店で買ったのは生でなんか食べられない…。
農家の食卓にあがるのはついさっき摘み取ったばかりの今日いちばんおいしい野菜。
この味を伝えることはできないか。
そして手間ひまかけてでもその魅力を最大限に引き出したい。
そこで1日1組の営業にしたのです。
決意の証しとして店名は「HAGIフランス料理店」に。
すると世界から熱いまなざしが…。
フランス大統領官邸の厨房に招かれオランド大統領に料理を提供。
生産者との取り組みを評価されある日の午後。
この方どこかでお見かけしたなと思ったらなぜか黒いコックコートを着ています。
そして2人してキッチンに。
実は白石さん萩さんに料理を習いに来たのです。
そうそう。
もうちょっと離れて…。
離れたほうがいい。
自ら手塩にかけた食材で作る料理ですが…。
正直。
こちらもやはり自分の畑で採れたネギ。
根っこも含めてオーブンで焼き上げます。
あららら…ネギは真っ黒焦げですが…。
出来上がったのはその名も…。
ザクッとしたじゃがいもの食感を活かし畑の土をイメージしたネギとその根っこをあしらいました。
野菜のことと料理のこと。
互いに学び合う2人の絆のひと皿です。
この日HAGIフランス料理店では何やら改装工事が進められていました。
これいったい何のためなのか?この日HAGIフランス料理店では改装工事が進められていました。
店の一角を改装。
完成した秘密基地がこちら。
何やら見慣れない機械がたくさん置かれています。
ここでいったい何を始めるというのでしょう?取り出したのは色とりどりのベリー。
農家の依頼でジャムを作っているのです。
狙いはベリーの鮮やかな色を残すこと。
試行錯誤の末にたどりついたのは85℃という温度。
この温度で加熱すればベリーの酵素を壊さず鮮やかな色を保てるというのです。
そうここは農産物の加工品を作る実験室なのです。
完成したジャムがこちら。
どうです?この鮮烈な色。
私のところ来たってないですよフフフ!農家の可能性を広げるために努力は厭わない萩さん。
なんとラベルの製作まで担当。
ちょっと調べて…。
生産者がいて自分の店がある。
謙虚にしかししたたかにいわきの食材の未来を見つめているのです。
更に今料理ジャンルの壁を超えていわきの食材をアピールするイベントも企画中。
海がダメになって食材が限定的になった地域って福島県だけですよ。
その中にいる料理人が自分の街をおいしい街にしたいって言って悪いことないじゃないですか。
地元の普通の人普通の料理人たちがそれぞれが発信していけば絶対おいしい街になると思うんですね。
あの日から大きく変わった料理人としての生き方。
ふるさといわきをこよなく愛する萩春朋さんを応援します。
2015/08/01(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード【萩春朋/フレンチシェフ】[字]
2014年に農林水産省が認める「料理マスターズ」にも選ばれた新進気鋭のフレンチシェフ・萩春朋に密着。
詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
福島県いわき市の丘の上にある「1日1組」にこだわった小さなレストラン『Hagiフランス料理店』オーナーシェフ・萩春朋。
フランスのオランド大統領に料理を振る舞った経験を持ち、2014年には農林水産省が認める「料理マスターズ」に選ばれた新進気鋭のフレンチシェフだ。
皿の上に畑の味を再現するため情熱を燃やす姿に密着する。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「サンライズジャーニー」GLIM SPANKY
(ユニバーサル ミュージック)
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
情報/ワイドショー – グルメ・料理
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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