(日出)ねずみを退治して下さい。
兄上様のためにも。
美和…見届けてくれ。
人気のセレクトショップが集まる…このお店には全国各地のセンスの良い小物や日用品が並びます。
今一番売れているのが実はごはん茶碗。
独特の形で人々の心をわしづかみにしているんだとか。
(客)普通お茶碗って平べったくて丸いからね。
日本昔話みたいにさ
(笑い声)こういうやつ出来るんじゃない。
一般的なものより縦長で深めの形。
これがきょうのイッピン。
長崎県で生まれた「波佐見焼」です。
使い勝手の良さも人気の理由。
2年前から波佐見焼の茶碗を愛用しているというお宅。
わんぱく盛りのお子さんが使っても安心なんだそう。
安定しているのは高台という茶碗の底が大きめに作られているため。
多くの人に使ってもらうため徹底して実用性を追求するのが波佐見焼の特徴なんです。
そして今スタイリッシュな器も続々と誕生しています。
彫刻のような美しさをたたえた白磁のカップ。
こちらは色の取り合わせを楽しむ遊び心に満ちた器です。
きょうはスマートで便利な「庶民の器」波佐見焼の魅力に迫ります。
長崎県の中央部に位置する波佐見町。
400年間磁器をを作り続け今も和食器の生産量は全国3位。
窯元の数は90。
働く人のおよそ4割が焼き物作りに携わっています。
なんか器だけで料理の雰囲気もすごい変わるのでかわいい器とかあったらすごい見たいですね。
人気のご飯茶碗を作っている窯元を訪ねました。
こちらですよね人気の。
形が特徴的なこの茶碗。
製造を始めたのは4年前ですが波佐見焼の伝統から生まれたものなんだそうです。
くらわんか碗?実はこれ「くらわんか碗」という波佐見焼を象徴する器を復活させたものなんです。
江戸時代「酒くらわんか飯くらわんか」の掛け声とともに船の上から食べ物を売る行商人がいました。
そこで使われていたのがくらわんか碗。
安定していて使いやすい。
庶民向けの磁器で波佐見はその代表的な産地でした。
この器を現代の食卓に合うよう改良したのです。
基本的にこのスタイル。
厚みを2.6ミリと昔のくらわんか碗より1ミリ削りました。
持ち比べると…。
あっ!あもう断然…高台も薄くすることで指が引っかかりやすくしました。
現代によみがえったくらわんか碗。
使いやすい絶妙な厚みはどのように生まれるんでしょうか。
波佐見町では質の高い器を量産するための分業制が発達しています。
廣田さんの会社をはじめ窯元の多くは絵付けと焼き上げは行いますが生地作りは専門の工房で行います。
内山さんくらわんか碗を作る生地職人を訪ねました。
こんにちは。
はじめまして。
こんにちは。
はじめまして。
生地作り40年のスペシャリストです。
まず仕事に欠かせない道具を見せていただきますが。
これを回して作るんですよね。
そこにあったのは何やら丸いものが付いた機械。
丸いお碗状のものなら何でも作れる優れものです。
初めに石を砕いて作った粘土を用意。
そして茶碗1個分の大きさに切り分けて…。
石こうの型に置きます。
ローラーマシーンにセットすると…。
お〜速い速い速い。
こうして見ていったらできていくわけですよ。
1日何個ぐらいになります平均?お〜。
たった一人で1日3,000個。
いったいどうしたらそんなに作ることができるんでしょうか。
石こうの型の中はこのようにお茶碗の形になっています。
型から出すとお茶碗ができている仕組みです。
生地は焼くと1ミリほど縮むことを計算に入れて3.5ミリの厚さになるよう作られています。
コテという鉄の部分が回転しながら粘土を型の側面にギュッと押しつけます。
ろくろで成形する何倍もの力を均等に加えられるのでより薄くて丈夫な器を作ることができるんです。
これがみんな一種類なんですよ。
あ〜器の形の。
ホントだ書いてある。
これスープって書いてある。
佐藤さんはなんと1,000種類ものコテを使い分けるんだそうです。
ローラーマシーンを自在に扱えるようになるのに少なくとも10年はかかると言います。
特に難しいのは…。
はい。
角度。
こう後ろにしたらこっちが薄くなるんです。
ポイントは型に対するコテの当て方。
コテの角度によって型との隙間の幅が異なってきますがこの幅が器の厚みになります。
理想の厚みにするためにはその日の粘土の状態を見極めなければいけません。
粘土が固ければコテを立てて強く押し当てるように。
やわらかければその逆にします。
佐藤さんは0.1度単位で調整を重ね毎日1時間かけて的確なコテの角度を探り当てるのです。
そして1日に3,000個作り上げるのを可能にするのが身のこなし。
佐藤さん見ないでやってるんですけど…コテが下りてくるまで僅か4秒。
コテが上がった瞬間に型を取り出し次をセット。
そして次の型を準備。
流れるような動きです。
これもそうですがここに置いてね。
そうです全部ここで。
そうそう。
このタイミングですね。
佐藤さんが疲れちゃいますね腰が。
動かないってことですもんね。
常に体を動かして休むことのない佐藤さん。
機械のリズムに合わせ全身で器を作る。
これが1日3,000個の秘密でした。
乾燥させたら仕上げの作業。
ここは手作業です。
指の感覚を頼りにふちの部分を滑らかにしていきます。
これ丸まって…。
あっ確かにツルツルと。
ちょっとした感じで見ると分かるけど。
だってご飯食べるときにこうやってやりたいですもんね。
さらに表面を整えたら生地は完成です。
へぇ〜。
そして生地は廣田さんの工場に運ばれ絵付けを施されます。
あっちでやっているのはありますね2種類。
絵付けは徹底した分業で行われます。
まるを描く人はまるだけを専門に描きしかも同じまるでも色によって異なる職人が担当するんです。
なぜそこまで細かく分業されてるんですか?あぁ。
結構専門専門で…この徹底した分業制は各職人の技を磨き質の高い製品を量産するため。
そして機械では出せない手作業のぬくもりをもたらすためでもありました。
最後に1日7,000個を焼く巨大な窯に入れます。
こうして完成。
よみがえったくらわんか碗には幾人ものスペシャリストの技が結集していました。
波佐見焼の歴史は江戸時代初期磁器作りに欠かせない良質な石が採掘されたことに始まります。
初めは高価な磁器を生産していたんです。
ところが近年江戸時代から明治にかけて使われた窯跡から数百万点の器が出土しました。
ほとんどが簡素な絵付けの食器。
波佐見は江戸時代半ばに日用品の大量生産に方針を変更したのです。
その精神は今も受け継がれています。
町の物産館を訪れるとたくさんの種類が作られていることに驚かされます。
そして現代のライフスタイルに合わせたモダンな器も続々と登場しています。
今女性を中心に大人気の波佐見焼があると聞きカフェを訪ねました。
それがこちら。
へぇ〜。
気持ちいいですね。
ふっくらとしたカップは透けるほどの薄さ。
軽くて手になじむんです。
白磁の美しさが際立つこの器はどう作られるんでしょうか。
職人歴40年の…新たな波佐見焼を生みだしたいと考案しました。
これまで作ったのは30種類以上。
これまっすぐきれいですね。
ぴ〜って。
柔らかな曲線切れのある直線。
どれも真崎さんがカンナをふるって生み出しました。
ひとつのこれがいろんな表情を見せてくれてますよねカンナによって。
400年前から使っている道具カンナがあったわけですね。
ひとつの形なんだけども…削る前の器生地職人が機械で成型した物を仕入れています。
ここに自ら手を加え一点ものの輝きを持つ器にしていくのです。
ねぇまぁちょっと恥ずかしいですからね。
いつもひとりで作業されているんですか?もちろん。
ここ座っていいですか?いいですよ。
刃の形状がさまざまに異なる30種類のカンナ。
模様によって使い分けます。
下書きもせずいきなりカンナを当てると…。
あっ。
(削る音)みるみるうちに器が。
美しく形を変えていきます。
気持ちいいです。
なんだろうシューってきれい。
ひとつのカップを削るのに僅か1分。
真崎さんは1日に150の器を作ります。
重要なのは強度を保つことのできるギリギリの厚みにすること。
削る前と後の器の断面を比較すると一番薄い所は1.8ミリ。
これ以上削ると焼いた時に割れてしまうんだそう。
内山さんもカンナ削りに挑戦することに。
こう持ちながら。
はい。
私こわごわやってるのが分かりますね細いですもん。
ところが削ることに集中するあまり…。
(割れる音)あ!あぁ…。
器を持つ手に力が入りすぎました。
そもそも焼入れ前の生地はやわらかく扱いが難しいんです。
比べると内山さんのは欠けているばかりか削り跡が乱れています。
一方真崎さんは削る幅も深さも見事に一定です。
では真崎さんはどうやって削っているんでしょうか。
よく見ると真崎さんは1か所を削るのに3回カンナを重ねます。
1回目は軽めに削って土の状態を見極め2回目で幅を決めます。
そして3回目で深さを調整していたのです。
正確でリズミカルな削りが美しい器を生みます。
真崎さんの技は多彩です。
先がL字型のカンナでは正方形を。
刃先の鋭いカンナでは波形の模様を作り出しています。
こちらは1か所2回の削りです。
高度な技が駆使される器ですが値段は1,000円台。
そこに波佐見焼職人としての思いが込められています。
手彫りの新しい波佐見焼。
そこにも伝統の精神が脈々と受け継がれていました。
目を奪われる鮮やかな色。
これもれっきとした波佐見焼の磁器。
5年前に発売されて以来人気沸騰中で全国500以上の店で扱われているんです。
かわいいですねぇ。
かわいい。
色は全部で9種類。
きれいに重ねればインテリアのようにも使える波佐見焼です。
こんにちは。
こんにちは。
よろしくお願いします。
お願いします。
焼き物問屋の跡取り。
あのマグカップを企画したのは23歳の時でした。
並べててかわいいですね。
(馬場)そうですね。
同じ形で重なるならば…目指したのは若者がコレクションしたくなる器。
そのためそれぞれの色に徹底的にこだわりました。
そうすることで使い手が楽しんで器を選ぶことができると考えたのです。
しかし馬場さんは職人ではありません。
窯元にイメージを伝え作ってもらわなければなりません。
馬場さんに器作りを依頼されたのが福田友和さん。
職人歴40年。
色使いに定評のある窯元です。
しかし求められたのは従来の波佐見焼にない色ばかりでした。
どうやって彼のアレに応えるか結局釉薬作りから始めなければなりませんでした。
鉱物や顔料の調合次第で焼き上がりの発色は変わります。
何度も試しては馬場さんの求める色をひとつひとつ作っていきました。
ところがいざ焼いてみると馬場さんからのダメ出しが。
僅かな色ムラが気に入らないというのです。
釉薬が溶けてたまることでできるムラ。
通常なら焼き物の味わいとされますが新しい器では醜いものでした。
窯は一度に1,000個を焼く大型のもの。
中心と端では火の当たり具合が異なります。
そのため釉薬の溶け具合に差が出てしまうのです。
溶け具合は色によっても異なります。
色をどこに置けば色むらが出ないのか。
福田さんは3か月間試行錯誤を重ねました。
結局比較的釉薬が溶けにくい緑や白は外側に。
逆に溶けやすいオレンジや茶色を内側に置きました。
こうすると9割以上の確率で理想的な色となったのです。
こうして「完成!」と思ったらもうひとつ問題がありました。
こちらも馬場さんからダメ出しが出たカップですがふちの部分にご注目。
このムラは釉薬の塗り方から生じたものです。
通常どおりスピードを重視し手で釉薬がけをすると指が触れた部分がムラになってしまいます。
そこで福田さんは特製のハサミを考案。
器に触れる部分を最小限にすることで問題を解決しました。
諦めなかったんですね。
諦めなかったですね。
楽しいっていうより苦労のほうが多かったですか?そうですねでも今だとやっぱり若き起業家の情熱と熟練職人の意地が生んだ波佐見焼のイッピンです。
効率的に生産して人々に手軽でいいものを届けること。
江戸時代に生まれた潔いまでのもの作りの精神が今も確かに息づいていました。
2015/08/02(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「スマートに便利に いつだって庶民的〜長崎 波佐見焼〜」[字]
大人気の長崎・波佐見焼。江戸時代から続くスマートで便利な“庶民の器”だ。御飯を山盛りにしたくなる茶わん、インテリアのようなカラフル・マグカップを内山理名が探る。
詳細情報
番組内容
ついに登場!今、大人気の長崎・波佐見焼。江戸時代から続くスマートで便利な“庶民の器”だ。思わず御飯を山盛りにしたくなる茶わんは“くらわんか碗(わん)”という波佐見焼の伝統を象徴する器を現代によみがえらせたもの。また、女性に人気の美しい手彫りのカップは、カンナで極限まで薄く削っているため、軽くて触り心地が抜群。さらに今、全国で注目されるインテリアのようなカラフル・マグカップを女優・内山理名が徹底取材
出演者
【リポーター】内山理名,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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