目撃!日本列島「心をつなぐ“千本ノック”〜盲目の夫婦の日々〜」 2015.08.02


目の不自由な人たちの野球グランドソフトボール。
選手たちはボールの転がる音を頼りにプレーします。
(球審)ファウルボール!このスポーツ守備がとっても難しいんです。
音からボールの行方を追いますが…。
一歩遅かった。
簡単には捕れません。
そんな中堅実な守備で注目されているベテラン選手がいます。
脇坂清さん66歳です。
脇坂さんを支えてきたのは同じく全盲の妻美津江さんのノックです。
週に1回26年間続けてきました。
よっしゃ〜。
今夫婦の目標は10年ぶりの全国大会への出場です。
盲目の2人がノックに懸ける思いとは何か。
夫婦の日々を見つめました。
先客がおるわ。
お〜いおはよう。
おはようございます。
奈良県の視覚障害者によるグランドソフトボールのチームです。
最年長の脇坂清さん。
20年以上レギュラーを務めています。
チームの目標は6月の近畿大会に優勝し全国大会へ出場する事です。
試合は1チーム10人でプレーします。
そのうちピッチャーなど4人以上は全盲の選手というルールです。
オッケー!全盲の選手はボールをつかむ事ができれば送球しなくてもアウト。
選手は音を頼りにボールの行方を予測します。
(ボールが弾む音)バウンドする音からボールのスピードも読み取る必要があるんです。
この時はスピードがつかめず守備が遅れてしまいました。
この難しい守備で高い実力を見せてきたのが清さんです。
ポジションは野球で言うとセンター。
エラーが長打につながる重要な場所です。
よっしゃ〜来た。
オッケー。
清さんは音から方向とスピードを正確に判断。
いち早くボールの正面に入る事ができるのです。
体力のある若手にもまねのできない守備力が持ち味です。
清さんが暮らすのは奈良県中部の大淀町です。
(清)よう凝ってるわ肩がほんまに。
幼い時に視力を失った清さん。
マッサージ業を営んでいます。
手温かくなってきた。
まだ生きてる証拠や。
まだ生きとんな。
あれしたら最後は死ななしゃあないもんな。
妻の美津江さんは専業主婦です。
自分で思う守備力…。
守備がうまくなりたいと言う夫のために26年間ノックを続けてきました。
週に1度2人は1時間半かけて練習に向かいます。
実は美津江さんが失明したのは9年前。
それ以来外を一人で歩くのが難しくいつも清さんと一緒です。
よし俺下りた。
グラウンドに着いてまず確かめるのは排水溝の位置です。
どちらに向かってノックするのか確認するのです。
(美津江)大丈夫やで。
左右へボールを打ち分ける美津江さん。
よっしゃ。
それそれでええ。
清さんは妻とのノックでボールとの距離感を磨いてきました。
ノックは毎回120本2時間に及びます。
ええでええで。
その調子や。
ノックの数に合わせて時折冗談も交えます。
2人が結婚したのは34年前。
当時妻の美津江さんは弱視でしたがまだ目は見えていました。
清さんがグランドソフトボールを始めた時「ボールが怖くてうまく捕れない」と言うのを聞いて助けたいと考えたといいます。
週に1度のノックを続けるうちに清さんは徐々に力をつけていきました。
そしてノックを始めて3年後。
清さんは障害者の全国大会にレギュラーとして出場したのです。
そんな2人の姿を間近で見ていた人がいます。
お邪魔します。
今は結婚して離れて暮らす息子の吉博さんです。
「はいおばあちゃんどうぞ。
母の日です」って。
はい。
どうぞは?どうぞは?よかったな。
よかったよかった。
どうぞって。
(子ども)どうぞ。
ありがとう。
(清)賢い賢い。
バンザ〜イ。
フフフ。
子どもの頃2人が努力を重ね全国大会にまで出場した事を誇りに思っていたといいます。
しかし状況は一変します。
9年前美津江さんの白内障が悪化し失明。
外に出るのが怖くなり家に籠もりきりになりました。
3か月がたった時「グラウンドに行ってみないか」と声をかけた清さん。
気分転換になればと美津江さんはグラウンドに向かいました。
ボールを地面に置いてノックをしようとしましたが…しかしこの失敗がきっかけで美津江さんの心に変化が起きます。
1週間後再びグラウンドに向かった美津江さん。
左手にボールを持ちボールの位置が分かった状態で打てばうまくいくのではと考えました。
この時の事を清さんは今も鮮明に覚えています。
いくで。
(清)よっしゃ。
自信を取り戻した美津江さん。
毎週のノックを再開し外出もできるようになりました。
夫とのノックのために日々の体力作りにも励んでいます。
目標とする全国大会の予選に向けて清さんはチーム全体での練習に参加しました。
オーライ。
あら?どこ行った?今。
わきの下。
遅い。
何でやろう?人一倍耳がよくそれを守備に生かしてきた清さん。
実は最近年とともにボールの音が聞こえにくい時もあって守りに影響が出ていました。
チーム練習から2日後。
音への感覚を高めようと新たな練習を始める事にしました。
試合を想定しふだんより距離を取ります。
この辺からいくわ。
遠くから来るボールの音に慣れようというのです。
よっしゃ…あら〜っ。
よっしゃ。
オーライ。
この日も2時間練習を続けました。
よっしゃ。
そうそう。
全国大会の予選の日がやって来ました。
おはようございます。
おはようございます。
美津江さんおはようございます。
おはようございます。
美津江さんも息子の吉博さんとやって来ました。
どうやろう?
(アナウンス)「8番ライトショート脇坂清。
ユニフォームナンバー5全盲」。
イエ〜イ!
(拍手)礼!しゃ〜す!しゃ〜す!1回戦を勝って迎えた準決勝。
相手は大阪府のチームです。
ゴーゴーゴ!キャッチャーが手をたたくのは投球の合図。
これを基に選手は守備態勢をとります。
ゴーゴーゴ!合図に合わせて一球ごとに腰を低くする清さん。
地面に耳を近づけ少しでも音が聞こえるようにします。
オッケー。
よっしゃ〜!ゴーゴーゴ!よっしゃ〜!オッケー。
(拍手)およそ1時間半の試合。
打球は飛んできませんでしたが清さんは集中して守りました。
それでは礼!しゃ〜す!しゃ〜す!更に勝ち進んで決勝戦。
この試合も清さんは集中力を切らしません。
打球の飛ぶ方向を常にカバーします。
オッケーナイスバッティング!お疲れさまでした!
(アナウンス)「ご覧のようにただいまの試合は…」。
しかし10年ぶりの全国大会には手が届きませんでした。
(清)これな首からぶら下げるようなってんねん。
よかったやん。
6月半ば。
グラウンドにはいつものように2人だけで練習する夫婦の姿がありました。
はい。
オッケー。
よっしゃ。
ろくろっ首や。
オーライ。
(清)よっしゃ。
オッケー。
逆境を乗り越えて深めてきた絆。
よっしゃ。
これからいこうか。
(美津江)いこう。
夫婦はこれからもノックと共に歩んでいきます。
8月5日はこの夏2回目の「土用丑の日」。
2015/08/02(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「心をつなぐ“千本ノック”〜盲目の夫婦の日々〜」[字]

目の不自由な人がボールの転がる音だけを頼りにプレーする野球。堅い守備で知られる全盲のベテラン選手を支えるのは、同じく全盲の妻の“千本ノック”だ。夫婦の姿を追う。

詳細情報
番組内容
目の不自由な人たちがボールの転がる音だけを頼りにプレーする野球、グランドソフトボール。音からボールの方向をつかみ、打ったり、守ったりする、難しいスポーツだ。この世界で、堅い守備が注目され、20年以上、奈良県チームのレギュラーを務める脇坂清さん(66)。めざましい活躍の陰には、同じく全盲の妻、美津江さん(62)の“千本ノック”があった。10年ぶりの全国大会出場を目指す夫と、支える妻。夫婦の絆を描く。
出演者
【語り】三倉佳奈

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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サンプリングレート : 48kHz

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