は〜いおうどんでございます。
福島県のとある場所に去年小さな食堂がオープンしました。
お説教したり冗談を言ったりにぎやかにもてなすのは地元のお母さんたちです。
食堂の名は「おだかのひるごはん」。
実はここ福島第一原発から16キロの距離にある南相馬市小高区。
今も日中しか立ち入る事が許されません。
その小高の住民に大きな転機が訪れようとしています。
来年4月避難指示が解除される予定。
町への帰還が認められるというのです。
しかしなかなか進まない除染。
荒れ果てた自宅。
本当にふるさとに帰れるのか住民の気持ちは揺れ動いています。
そうした中この夏地域の伝統行事が開かれました。
「相馬野馬追」。
多くの住民がいっときだけふるさとに戻ってきました。
「この町で一緒に暮らそうね」。
食堂のお母さんたちは懸命に声をかけます。
福島のちょっと世話好きなお母さんたちの物語です。
おはようございます。
朝7時半。
「おだかのひるごはん」の店長渡邊靜子さんの一日が始まります。
地元では親しみを込めて「しずちゃん」って呼ばれています。
しずちゃんは週に4回小高の隣町にある仮設住宅から食堂に通っています。
10分ほど走ると福島第一原発から20キロ圏内小高区に入ります。
ここ小高にはかつては1万3,000人が暮らしていました。
朝見かけるのはほとんどが除染や復興工事を行う作業員です。
お店があるのは住宅街の一角。
もともとここは地元で人気のラーメン店でした。
震災後隣町に移ったため無料で借りています。
スタッフは全部で4人。
ちょっとおっちょこちょいで愛されキャラのいくちゃん。
すかさずフォローしたのはひろちゃん。
いつも冷静沈着頼りにされてます。
メインの調理を担当するのはちーちゃん。
震災前は病院食を作る仕事をしていて味付けには自信があります。
とはいえみんな地元の普通の主婦たち。
水曜日を除く平日の4日間家事の合間に駆けつけてお店を切り盛りしています。
メニューは主に日替わり定食。
でもまだレパートリーは7種類。
これから増やしたいそうですよ。
それでも料理に注いだ愛情が売りなんだとか。
例えばこれは山クラゲの煮物。
しずちゃんが義理の母に教えてもらったおふくろの味です。
飲食店の経験はなくても家庭料理ならプロフェッショナル。
確かに!お米が立ってる。
午前11時さあいよいよ開店です。
あれれごめんごめんごめん。
ごめんなさい。
はいいらっしゃいませ。
まずやって来たのは除染や復興工事に携わる作業員たち。
接客はしずちゃんの役目。
看板娘なんですね〜。
注文を受けて腕を振るうのはちーちゃん。
アツアツでおいしそう!こちらが本日の日替わり豚の生姜焼き定食700円。
ボリューム満点ですね!30席ほどある店内はすぐ満席に。
そろってお代わりをした2人。
福島市から2時間かけて働きに来ているんだって。
こちらの3人は除染で出た土の仮置き場で働いています。
なんだごめん。
ごめんね。
去年暮れにオープンして8か月。
この店のファンもたくさんできたみたい。
(渡邊)ありがとうございました。
作業員たちの波が落ち着くのは12時半を過ぎたころ。
入れ代わるようにやって来るのは震災前この町に暮らしていた住民たち。
来年春の避難解除に向けて自宅の片づけをしに通ってきます。
こちらは仮設住宅から自宅に花を見に来たという元ご近所さん同士。
閉店の2時ぎりぎりに駆け込んできたのは?今年4月に再開した小高病院の先生。
週1回神奈川から通っています。
でも医師は一人だけ。
ゆっくり休憩する時間はないそうです。
僅か15分で食事を済ませます。
この日のお客は53人。
4升あったごはんは完売です。
片づけを終え店を出るのは午後4時を過ぎたころ。
仮設住宅に戻る前しずちゃんはある場所に立ち寄ります。
小高にある自宅です。
ようやく除染作業が始まっていました。
花に水をあげたりするんだけど。
震災前は夫と2人暮らし。
でも息子の家族や近所の人がしょっちゅう遊びに来てにぎやかでした。
来年避難指示が解除されたらいち早く生活できるようにと手入れを続けています。
「もう一度この町でみんなと楽しく暮らしたい」。
その思いを込めて始めたのが食堂でした。
町の人が顔を合わせ昔のようににぎやかに過ごせば帰りたいと思う人も出てくるのでは。
そんなしずちゃんと思いを同じくする人もいます。
いらっしゃいませ。
小高で旅館を営みきっぷのいい女将として知られています。
仲間を連れて頻繁に食堂に通ってきます。
小林さんは町への立ち入りが可能になった直後から旅館の修繕を続けています。
海水浴に来た観光客や出張に来たビジネスマンを真心を込めた手料理でもてなしたいと祖母が始めた旅館。
その思いを胸に小林さんは夫と兄夫婦と共に宿を受け継いできました。
震災後兄夫婦は福島市に避難。
夫は放射線量の測定という新たな仕事に追われています。
「祖母の代からの常連客がいる旅館を絶やしたくない」。
その一心で小林さんは再建を進めてきました。
仕入れなどを考えると周りの店が開いていないと旅館経営は大変です。
それでも自分が先駆けとなって町を元気にしたい。
しずちゃんたちも食堂でできる事を探していました。
それは新たなメニュー作り。
お客さんからの要望もありました。
レパートリーが増えれば多くの人が立ち寄るきっかけにもなります。
新たなメニューの候補は親子丼。
味付けは昆布だしにするか?白だしにするか?試作を繰り返します。
いや簡単だからって…。
「おだかのひるごはん」には食材を提供してくれる強力な助っとがいます。
小高でいち早く農業を再開したベテラン農家です。
毎日仮設住宅から自分の田畑に通っています。
その一角には「おだかのひるごはん」の看板。
しずちゃんたちから地元の食材を使いたいと言われ専用の畑を作っています。
できた野菜は役場で放射線量を測り国の基準値以下のものを提供しています。
根本さんからタマネギが食べ頃だと連絡を受けたしずちゃんたち。
向かったのは食堂専用の畑。
…ってしずちゃん勝手にいいの?実は「好きな時に好きなだけ持っていっていいよ」と根本さんから言われていたんです。
すると今度は自宅用にと物色を始めました。
ゲット〜!大根ゲット!ちょっとしずちゃん大胆すぎるのでは?翌日親子丼お披露目の日です。
取れたてのタマネギをたっぷり使います。
味付けにうるさいちーちゃんは開店ギリギリまでチェックします。
さあどうぞいらっしゃい!ところが…。
開店から30分が過ぎてもお客は一向に現れません。
雨だと除染作業は中止となり客足が極端に遠のいてしまうのです。
…とそこに最初のお客さん。
どうぞ空いてるお席でおやすみ下さい。
オープン当初からの常連佐藤宏さん。
口が悪いもののいつも正直に感想を言ってくれます。
「おだかのひるごはん」初登場親子丼です。
みんな反応が気になります。
そうなの。
うまい?うん。
アハハハハハ…。
そうそうそう。
ごちそうさまでした。
ありがとうございました。
評判は上々。
よかったね!
(渡邊)ありがとうございました。
ありがとうございます!ところで口の悪い常連の佐藤さん。
実は小高での今後の身の振り方に悩みを抱えていました。
佐藤さんが働いているのは小高の農業を復活させようと立ち上がった住民の組織。
海水や放射能を浴びた農地の改良を進めています。
佐藤さんは現場のまとめ役として農家の要望を国や県に伝えるのが仕事です。
佐藤さんは今隣町の仮設住宅に一人で暮らしています。
小高で一緒に住んでいた妻と娘夫婦は千葉県の成田市に避難しました。
福島に残りたいという母のために仮設住宅に入居した佐藤さん。
その母は去年亡くなりました。
娘夫婦も成田に家を建て始めています。
今は小高に通っている佐藤さん。
しかしこの先町に腰を落ち着けるかどうかまだ決めかねています。
県外に避難している住民たちの心も揺れ動いています。
いらっしゃいませ!この日古くからの知り合いがやって来ました。
いらっしゃいませ。
しずちゃんの夫と同級生で今は沖縄県の宮古島に避難しています。
震災後初めて小高に戻ってきました。
あの時着のみ着のままで町を追われた鎌田さん。
2か月後宮古島で被災者を受け入れていると聞き向かいました。
食堂の事はテレビで知り立ち寄ったのだといいます。
今回自宅に戻ったのは家の除染とゴミの撤去が行われるという市からの知らせが来たからでした。
こんにちは。
どうも。
久しぶりに帰った家はとても住める状態ではありませんでした。
鎌田さんは小高の病院で看護師として働きながら2人の子供をこの家で育てました。
妻とは10年前に離婚。
子供たちはそれぞれ仕事に就き町を離れています。
鎌田さんは小高での未来を思い描く事ができないでいました。
はいはい。
電話は宮古島から。
避難した当初から世話を焼いてくれている同年代の飲み友達です。
福島に戻った鎌田さんを心配して様子を聞いてきました。
そう。
うん。
あれから4年半。
新しい生活に愛着を感じるようになるには十分すぎる時間です。
小高の夕暮れ。
街灯だけが町を照らします。
一人でも多くの人に町に戻ってきてほしいと願うしずちゃんたち。
その大きなチャンスが近づいてきました。
「相馬野馬追」です。
地元の人たちが騎馬武者姿で活躍する伝統行事。
1,000年にわたって受け継がれ誰もが誇りにしています。
この時ばかりは小高に戻ってくる人も。
食堂に足を運んでくれるといいですね〜。
離れて暮らしていてもふるさとを思う気持ちは同じ。
しずちゃんはそう信じています。
しずちゃんと夫の誠一さんは震災後県内各地を7回移りようやく小高に近い仮設住宅に入りました。
避難中最もつらかったのは家族がバラバラになってしまった事。
息子は仕事で茨城の日立へ。
息子の妻と上の孫は隣町の仮設。
しずちゃん夫婦は下の孫を連れて別の仮設に入らざるをえませんでした。
大切な人やふるさとから引き離された生活。
去年南相馬市が行ったアンケートによると「避難指示が解除されれば小高に戻る」と答えた人は3割もいませんでした。
でも心の奥ではみんな帰りたいと思っているはず。
しずちゃんは悩んでいる人の背中を押したいと思っています。
沖縄の宮古島からやって来た鎌田さんが小高を離れる日です。
4日間隣町から自宅に通いひとまず片づけを終えました。
未定だな。
ゴミの回収に来た作業員が見送ります。
どうぞお気を付けて。
町を離れる前最後は「おだかのひるごはん」に立ち寄ろうと考えていました。
食堂の駐車場で鎌田さんを呼び止める声が…。
お茶飲んでいって下さい。
子供が同級生だったのが縁で親しくしていた豊田さんでした。
彼女も家の片づけでたまたま戻ってきていました。
(豊田)うん…だな。
懐かしい人との再会に思わず本音が漏れます。
ごめんください。
いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!どうぞ。
はいどうぞ。
いらっしゃいませ!日替わり定食は売り切れ。
でも急きょ有り合わせで作ってくれました。
はいどうぞ。
おふくろの味をかみしめます。
はいすいません。
うん。
はいはい。
だよね。
ありがとうございます!じゃあどうもありがとうございました。
(渡邊)ありがとうございます。
失礼します。
(渡邊)ありがとうございました。
じゃあねどうもね。
7月末。
しずちゃんたちが待ちわびていた伝統行事「相馬野馬追」がやってきました。
3日間に及ぶ祭りの最終日はここ小高が舞台です。
全国各地に避難していた住民たちが久しぶりに戻ってきました。
食堂でもたくさんのお客を迎えようとカレーライスを準備中。
でもこの忙しいさなかしずちゃんの姿が見えませんが…。
こんなところに!しずちゃん踊り手として祭りを盛り上げようとしていました。
踊りを終え大急ぎで開店前の食堂に駆けつけます。
暑い暑い。
すいませんお世話さま!お疲れさまです!祭りでは「野馬懸」と呼ばれる神事が始まりました。
素手で馬を捕まえ小高神社に奉納します。
みんな避難先から駆けつけた小高の人たちです。
集まったのは1,600人。
そしてお昼どき。
店には初めての行列が!はいいらっしゃいませ!大丈夫ですよ。
大丈夫です。
どうぞどうぞ。
カレーは瞬く間に売れていきます。
食堂は小高の人たちの懐かしい顔でいっぱいになりました。
あ〜。
そうですか。
ごめんなさいね。
相席でいいですか。
「昔に戻ったみたい」。
はいチーズ。
ありがとね〜。
ありがとうございます。
この日用意した100食のカレーはほぼ完売。
開店以来の大盛況でした。
(渡邊)いらっしゃいませ!ああどうもいらっしゃいませ。
いつもありがとうございます。
皆さん小高に行く事があったら食堂をのぞいてみませんか?ちょっと世話好きなお母さんたちがあったかご飯で待ってま〜す!ふるさとへの帰還に揺れている人。
新天地での生活を選んだ人。
さまざまな思いを抱えたお客さんを笑顔と元気で包み込む小高の食堂。
あの温かい定食にはふるさとの希望でありたいと願うお母さんたちの真心が込められているんですね。
さて8月で夏本番を迎えています。
どこかに出かけようという方も大勢いらっしゃると思います。
東北に出かけてみてはいかがですか?地元のイケメン男子たちが紹介する旅プラン紹介しましょう。
牡鹿半島は海が一番かなとは思います。
イワシとかアジの群れがグワッなってたのは結構圧巻だったりとか日本でもほんとに面白いダイビングポイントじゃないのかな。
徐々にすてきな海が戻ってると思うので是非遊びに来てもらえたらなと思います。
石巻で新鮮な魚を食べた事ない人は是非石巻に来て食べてほしいです。
おいで東北弘前っていえばりんごしかねぇなはんで。
りんご!りんご尽くしの今日は一日!ついてこいへ!ここはりんご公園だ。
すんげぇきれいな景色見せてあげるよ。
見てこのりんごと岩木山。
心がさじゃわめいてまって津軽の人間はみんなこの岩木山好きなんだよ。
本物のりんご以外にもいろんなりんご目にする事あるんだよ。
いく撮れたな。
今日はいく撮れた。
乾杯!まんずいくてまいね。
ほら見てみ。
いわきを360度見渡せる大パノラマだ!まずはこれだ!シュークリームでけぇべ?ここ好間地区にはなジャンボメニューがたくさんあんだぞ。
いっぱい食ってはらくっちぃ〜!これが大プールだ!その中でもお薦めが巨大スライダーだ!お客さんが驚いてる顔とか見るとこっちがワクワクするんでお客さんを喜ばす事を第一に考えてます。
僕たちのファイヤーナイフダンスを見に来て下さい。
おいで東北東北の夏祭りと合わせて訪れるのもよし!紹介したイケメン男子を訪ねるのもよし!是非東北においで下さい。
詳しくはホームページをご覧下さい。
では被災した地域で暮らす方々の今の思い。
宮城県女川町の皆さんです。
私たちは女川で宿泊業をしています。
津波で元の旅館は全壊しましたが昨年高台に再オープンできました。
個人差はありますが女川は少しずつ前進しています。
女川町の新田仮設の自治会長をしています。
重い糖尿病を持っていますが住民の皆さんの期待に応えるために今年4月から引き受けました。
女川金華山航路観光船の船長をしています。
震災で仕事のできなかった時期もありましたが2年前から船の運航を再開する事ができました。
パワースポット金華山の御利益もあり震災後今は2人の子供を授かる事ができました。
この子たちには女川でこれから伸び伸びと育ってほしいと思います。
生字幕放送でお伝えします2015/08/02(日) 10:20〜11:08
NHK総合1・神戸
明日へ−支えあおう− 花は咲くあなたに咲く▽母さん食堂営業中!〜福島県南相馬市[字]
日中の立ち入りしか許されない、福島県南相馬市小高区に小さな食堂がある。切り盛りするのは地元の元気なお母さんたち。食堂での交流を通して、故郷再生への情熱を描く。
詳細情報
番組内容
福島県南相馬市小高区。日中の立ち入りしか許されないこの町に、去年オープンした食堂がある。その名も「おだかのひるごはん」。店は、自宅の修復に来た住民、除染や復旧工事の作業員でごった返す。切り盛りするのは、地元の4人の主婦たちだ。彼女たちを突き動かしたのは、活気あふれる故郷を取り戻したいという思い。7月末には伝統行事、相馬野馬追で多くの住民も一時帰省する。食堂での交流を通して、故郷再生への情熱を描く。
出演者
【キャスター】畠山智之,【語り】天野ひろゆき
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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