したためです。
先月24日に始まったトルコ軍による過激派組織ISイスラミックステートへの空爆。
強大な軍事力を誇るトルコの本格参戦でISの封じ込めは一気に進むかと思いきや。
トルコ各地で市民が一斉にデモ。
お隣のイラクでもデモ。
どういうこと?こんばんは。
これでわかった!世界のいまです。
今夜のゲストは春香クリスティーンさんです。
よろしくお願いします。
最近のニュース、トルコがついにISを空爆したというニュースがありました。
ヨーロッパのニュースを見ているとトップニュースで連日やっているのでかなり気になります。
時間割りですが1時間目を見ていきます。
ISに対して対決姿勢を鮮明にしたわけですが、それだけではとどまらなかったようなんです。
きっかけは先月20日。
トルコ南部のシリアの国境に近い町で起きた爆弾テロでした。
過激派組織ISに襲われたシリアにある町の復興支援を訴える集会。
そこでテロは起きました。
32人が死亡し100人ほどがけがをしました。
トルコ政府はISとつながりのある20歳の男による犯行と断定。
そして。
テロの4日後、初めてISの拠点に空爆を行いました。
トルコ政府は国民の平穏を乱すことは許さない。
テロ組織がトルコに損害を与えるなら10倍の報復を行うと強気の姿勢を示しました。
トルコはISの拠点だけでなくISと対決している別の民族の戦闘拠点までも空爆。
さらにトルコ軍はシリア北部のトルコとの国境沿いにある拠点にも戦車で砲撃を加えたとみられています。
しかし、こうしたトルコの動きに市民は猛反発しています。
トルコ軍がISを攻撃するのは分かるんですが、なんでISと対立しているほかの民族まで攻撃するのか分かりません。
これはある事情があるんです。
そこから詳しく聞いていきましょう。
きょうの先生はこの人です。
帰ってきた男国際部、西河デスク。
エジプトに駐在しアラブの春からISまで深く取材。
複雑な中東を分かりやすく教えます。
国際部の西河デスクです。
お願いします。
番組は2回目の出演です。
よく見るとかわいい顔をしていますね。
シップに似ているとも言われます。
ISが攻撃するのは分かるけれど、一緒に戦っていたはずの民族をなぜ攻撃するんでしょうか。
今回のポイントはトルコ軍が攻撃をしたのがクルド人の拠点だったという点です。
確かクルド人ってトルコと平和協定を結んだんじゃなかったでしたっけ。
ヨーソロー。
いいところを突いてくるな。
西河デスク、ここは俺が説明しよう。
そもそもクルドっていうのはトルコやシリア、イラクにまたがって住む勇ましい山岳民族なんだ。
願いは自分たちの国を持つことだ。
そしたら、周りの国からは目の敵にされちゃったんだ。
イラクのフセイン政権は、クルド人を差別したり、大虐殺したり。
トルコのエルドアン政権もクルド人の武装勢力を攻撃。
人権を大事にする欧米は、いいかげんにしなさーいって。
そしたら、ヨーロッパの仲間にも入りたかったトルコは、クルドとの和平もアリかなってところまではいったのさ。
のはずが。
やっぱし、この隙にクルドを攻撃しちゃえってことになったんじゃないかー?たぶん。
Mr.シップ、いい線いっていますが、少し大ざっぱですね。
詳しく見ていきましょう。
今回の軍事作戦なんですが、トルコ政府としては公式にはこう言っています。
テロとの戦いであると言っています。
これに対してシリア政府やクルド人は、ISとの戦いを名目にクルド人を攻撃しているだけだと批判しているんです。
実はトルコのエルドアン大統領にとってはクルド人の勢力を弱めたいという理由があるんです。
どういうことですか。
クルド人はトルコの人口の大体10%程度なんですが、最近、トルコ国内で急速に存在感を高めているんです。
ことし6月に行われた総選挙。
エルドアン大統領が強権的な支配を強めているといった理由でクルド系の政党が国民の不満の受け皿となって大躍進したんです。
このときの集会の様子です。
結果として与党は大幅に議席を減らしたんです。
そのためにエルドアン大統領としてはこのままでは政権を維持していくのにクルド人というのが脅かす存在になるのではという危機感があったんだと思います。
ただ、今回ポイントになるのはIS。
ISの勢力がここまで拡大しなければトルコが攻撃に踏み切ることはできなかったと思います。
なんで踏み切ることができなかったんですか。
それは欧米の目というのがあるんです。
トルコは欧米諸国にとってある意味怖い存在で特に人道的な面では厳しい目が注がれてきたんです。
怖い存在とはどういうことですか。
そこには歴史と深い関係があるんです。
トルコは15世紀にオスマントルコ帝国というのが東ローマ帝国を滅ぼしてここにあった首都を陥落させて、ヨーロッパから恐れられてきたんです。
千里子さん、ここはどこでしょう。
飛んでイスタンブールでしょ。
正解です。
当時はコンスタンチノープルと呼ばれていたんです。
トルコ軍というのはイメージは、イスラムの象徴する旗を掲げて退却することなく、ひたすら突き進んでいくという勇猛果敢なイメージがあります。
このために現代のヨーロッパ人にとって潜在的な警戒心が根強く残っているんです。
春香さんはスイスご出身ということですが、トルコに対してどのようなイメージをお持ちですか。
チューリヒにはトルコ人が多いイメージでしたがしゃべり方は若干、怖いイメージがありました。
ただ同級生にもトルコ人の女の子がいてそれでイメージががらっと変わりました。
わりと熱いイメージです。
日本の方が持っているイメージとは少し違うと思います。
私もトルコに20回以上行ったんですがそのときに感じたことはトルコの人たちは非常に親日的なんです。
町なかを歩いていて日本人と分かるとお茶を飲んでいけといってみんな気軽におっしゃって何度も招いてもらった記憶があります。
私も行ったことがあるんですが、街行く人たちが親日的でした。
それでも警戒感があるということなんですか。
国家としてのトルコというのがヨーロッパ諸国から警戒されているというのは事実でヨーロッパ諸国としてはトルコがクルド人に対して非人道的な扱いをしないよう以前から和平を進めていたんです。
トルコ側としても経済発展するためには、EUに入りたいというふうに強く希望していたので結果として、おととしクルド人の武装組織との間で和平に応じたんです。
当時、トルコとしては人道的ですよというのをアピールしたかったんだと思うんです。
だったら今回もクルド人と和平をうまくやってそうすると欧米から怒られちゃうんじゃないですか。
今回の攻撃はトルコにとっていえば千載一遇のチャンスと言える状況になっているんです。
こちらは28日に開かれたNATO北大西洋条約機構の会議です。
ここでトルコへの全面的な支持が決まりました。
ISを攻撃していいよと全面的にいっているんですね。
欧米側から見ても欧米は攻撃を積極的に支持したわけではないんです。
あくまで黙認する形です。
今までクルド人の人に対して和平をしなさいと言っていたのに急に黙認に、なんでなったんですか。
欧米側の姿勢の背景にあるのがISです。
アメリカもヨーロッパ諸国もそれほどまでにISとの戦いに苦しんでいるという表れです。
以前もイラクやアフガニスタンといった戦争を経験して疲れ切っているんです。
これ以上、戦争をやりたくないと苦しんでいるんです。
今、ISに対して各国は断固として立ち向かう姿勢を示しているんですが実際の戦いが、どうなっているかというと欧米は及び腰だという批判も受けているんです。
そこに出てくるのがトルコです。
つまり対IS作戦の最前線に位置している。
さらに強い軍事力を持っている。
そのトルコがこれまでは掛け声だけだったんですが大きな一歩を踏み出してきています。
ほかの国が腰が引けてISとの直接対決に乗り出してくれたんです。
となると欧米としては少々のことは目をつむるしかない。
クルド人はたまったもんじゃないですね。
巻き込まれていますよね。
エルドアン大統領は自分の大統領選のためにやっているということですか。
欧米としてはこのようなことをやっても文句が言えない状況になっているんです。
こういった欧米の姿勢というのはいわば、完全にダブルスタンダードといえると思います。
自分の政権が危ないからって和平を進めていた相手をいきなり攻撃に変えるというのは納得がいきません。
ただトルコにとってクルド人というのは特別な存在なんです。
クルド人の武装組織はトルコ国内で1984年から武装闘争を掲げてテロを繰り返してきたんです。
政府とも激しく対立してきました。
この30年間で4万人以上が犠牲になったといわれています。
クルド人は被害者ばかりじゃないんですね。
心配なのはクルド人の反発ということです。
この攻撃を黙って受け入れるクルド人ばかりではありません。
今回クルド和平が絶望的になったことでテロなどの危険性は増しているんです。
さっき入ってきたニュースでもトルコ東部で治安部隊の施設で爆発があった。
兵士2人死亡、22人がけがということで詳しいことはまだ分かっていないんですがクルド人の武装組織による報復なのではないかと言われています。
そもそもトルコというのは、数年前までは治安も安定していて、周りの国とも非常に仲よくて経済的にもつながりがあってトルコは中東全体の安定の鍵を握る国といわれてきました。
しかし、そのトルコにとってシリアで起きた内戦が転機になったんです。
そこでアサド政権と激しく対立をするようになりました。
そこにISが出てきます。
そして今回この攻撃でクルドへの攻撃に乗り出したということでエルドアン政権は一気に複数の敵と向き合わなくてはならなくなりました。
鍵となるトルコが混乱するようなことになれば地域全体の大きな不安定要因になりますのでトルコ情勢はこれからますます目が離せないと思います。
時間が来たようです。
トルコの空爆について西河デスクでした。
ありがとうございました。
トルコ、クルド人の民族紛争を見てきましたが世界ではさまざまな場所でこうしたことが起きていてそれぞれの民族が自分たちの国をほしいと訴えているわけなんです。
その中である思いが届いて国が誕生したところがあるんです。
2008年バルカン半島にあるコソボです。
7年半ほど前に独立をしました。
コソボの首都、プリシュティナ。
中心部にはアメリカ・クリントン元大統領の像が。
独立に向けて支援してくれたアメリカをたたえているそうです。
かつてセルビアの一部だったコソボ。
1990年代後半、民族紛争に突入しました。
きっかけは人口の9割を占めるアルバニア系住民が独立したいと言ったことでした。
セルビアは、それは許さないと弾圧したんです。
コソボ側についた欧米諸国は軍事介入に踏み切りました。
そして2008年。
コソボは独立を宣言しました。
しかし独立から7年たっても。
コソボとセルビアというのは対立がずっと続いているんです。
2年ほど前に両政府が一応関係を改善しようということで合意はしているんですが、現状はなかなか厳しいものがあるということです。
そうした中で唯一、文化面では交流の動きが出てきているんです。
今回、両国の若者が1つの劇に挑戦したんです。
それがこちら。
沙翁で融和をと書いてあります。
千里子さん、分かりますか。
歌舞伎役者の方かと思いました。
物語の作者です。
対立する2つの家族の若者が恋に落ちる物語ロミオとジュリエット。
ロミオ側を演じるのは、コソボの役者。
ジュリエット側をセルビアの役者が演じます。
舞台には対立する両国関係の現実が盛り込まれています。
セルビア語とコソボのことば、アルバニア語。
それぞれの言語を押しつけ合って一触即発の事態に陥るのです。
コソボ側から参加した俳優のバリョークさん。
ロミオの友人役です。
紛争が起きたときは15歳。
多くの友人がセルビア軍に殺害されました。
融和を目指して企画された舞台ですが、当初、両国の俳優の間に交流はありませんでした。
紛争の記憶が生々しく残っているからです。
本番まで3か月間。
顔を突き合わせて舞台を作り上げていくうちに距離は縮まっていきました。
稽古のあとにはカフェに行くようになりました。
バリョークさんは片言のセルビア語で会話します。
コソボでの初公演の日を迎えました。
そしてラストシーン。
ロミオとジュリエットの死によって両家は争いの愚かさに気付きます。
ここでコソボに取材した佐々記者と中継がつながっています。
佐々さん、こうした交流の動きが出てきていますけれども、いい兆しが見えてきたといっていいんでしょうか。
はい。
私もすばらしい取り組みだと思って取材したんですが今回のこの演劇、観客は100人程度の小さな舞台で行われていまして、ほんの僅かな兆しの1つです。
コソボでは今も双方の住民の間でいざこざが絶えず国際部隊が警戒にあたっている状況です。
双方の基本的な立場に変わりがない以上、関係改善への道のりはまだ相当遠いと感じます。
やっぱり若い人がこうやって立ち上がっていくって大切なことですよね。
はい、そのとおりだと思います。
これまでなかなか触れ合う機会がなかった若者たちが直接ことばを交わし、相手のことを理解しようとするそのことこそが将来につながるのではないかと感じました。
こうした活動に関わる若者たちが増えていくことでコソボとセルビアの関係が少しずつ変わっていくそう信じたいと思います。
佐々さん、ありがとうございました。
千里子さんも同じ表現者として共感することはあるんですか。
ただ単にお互い嫌い合うではなくて、交流がもっと盛んになっていけば平和になりますよね。
3時間目にまいりましょう。
ヨーロッパの移民問題についてです。
イギリスとフランスの間にトンネルがあるんですがアフリカや中東からの不法移民が先週の2日間だけで3500人も殺到したんです。
何があったんでしょうか。
ドーバー海峡を望むフランスの港町カレー。
最近、頻繁に目撃されるのは。
フェンスを乗り越えて線路を歩く人。
トラックの屋根に乗って中に潜り込む人。
アフリカや中東からの不法移民です。
海底トンネルを通る鉄道やトラックで、50キロ先にあるイギリスに渡ろうとしています。
英語が通じて不法移民でも働けるといううわさを聞きつけて集まっているのです。
しかし、渡航できるのはまれで中にはトラックにひかれるなどして死亡するケースも出ています。
それでも、フランス側ではアフリカなどから来たおよそ3000人がテント生活をしながらイギリスに渡る機会をうかがっています。
イギリス行きは5回目の挑戦というこの男性は、家族を残して2か月かけてやって来ました。
エリトリアからスーダン、スーダンからリビア、リビアからイタリア、そしてフランスに来たんだ。
EU加盟の多くの国では人の行き来が自由なため次々と不法移民が北上。
あまりの数の多さにフランスの警察官もお手上げです。
一方、移民が急増しているイギリスでは、EUからの離脱を主張する声も上がるなど国民の不満が高まっています。
イギリスは、不法移民を捜索する犬の数を増やすなど国境管理の対策強化を決めました。
しかし、不法移民の流入を防ぐ根本的な解決策は見つかっていません。
2015/08/02(日) 18:10〜18:42
NHK総合1・神戸
これでわかった!世界のいま▽トルコ軍がIS封じ込め・クルド拠点にも同時空爆の謎[字]
トルコが過激派組織ISの封じ込めに参戦。一方で、ISを攻撃しているクルド人武装組織の拠点も攻撃した。和平交渉を進めてきたクルド人をなぜ攻撃したか、その謎に迫る。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】春香クリスティーン,【キャスター】坂下千里子,井上裕貴
出演者
【ゲスト】春香クリスティーン,【キャスター】坂下千里子,井上裕貴
ジャンル :
ニュース/報道 – 定時・総合
ニュース/報道 – 海外・国際
ニュース/報道 – 解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 1/0モード(シングルモノ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:26696(0x6848)