（カッキー）五島良枝さんと五島百合子さんは互いを許し合う協調の道を選ばず相手をノックアウトするまで戦う道を選択しました。
よって今日ここに徹底的な嫁姑戦争を開始します。
（良枝）こんな出来損ないな嫁見たことない！
（百合子）お母さんみたいに自己中なお姑さんなんてガラパゴス。
絶滅危惧種です。
（良枝）アハハ！
（カッキー）
ああ。
このお嫁さんとお姑さんはなぜこんな事態に？
話をこんなにこじらせてしまったのは…
何を隠そうこのお店東京は台東区谷中にある純喫茶昭和堂のオーナー通称癒し屋キリコこと有村霧子さんなのでした
時間ですよ。
始まるよ。
そう。
五島百合子さんが訪ねてきたのはおとといのことでした
（百合子）《あのう》
（富子）《いらっしゃいませ》
（富子）《何差し上げましょう？》
（百合子）《こちら幻味堂さんですよね？》
（富子）《はい。
創業１２０年》《谷中の猫まんじゅうといえば幻味堂》
（百合子）《あのう。
昭和堂っていう喫茶店はどこでしょうか？》
（清助）《それならこの前の道を突き当たって右に曲がれば看板出てるから。
僕がご案内いたしましょう》《こちらです》
（富子）《こら。
清助！》《これ幸いとサボるんじゃない》
（清助）《いや。
だってそろそろコーヒータイムだしさ》
（富子）《うちは和菓子屋だよ》・
（清助）《えっ？》・
（富子）《３時のおやつには日本茶が一番》・
（清助）《いやいや。
だってね》《いいじゃないたまには…》・
（百合子）《大丈夫ですから》《すいません。
分かりました。
ありがとうございます》
（富子）《あっ。
猫まんじゅう。
うーん》・
（百合子）《すいません》
（カッキー）《いらっしゃいませ》
（百合子）《あのう。
私昨日お電話した五島百合子と申しますが》
（カッキー）《お待ちしておりました。
どうぞこちらへ》
（百合子）《あっ…》
（カッキー）《どうぞ》
（百合子）《あっ…》
（カッキー）《ご注文は？》
（百合子）《あのう。
実は私義理の母と…》
（カッキー）《いえ。
あのう》《飲み物のご注文を》
（百合子）《すいません。
えっと》
（百合子）《昭和堂ブレンド頂こうかしら》
（カッキー）《かしこまりました》
（百合子）《あのう》《癒し屋のキリコさんってあなたなの？》
（カッキー）《いえ。
私はここの従業員です》《キリコさんは…》
（キリコ）《フフフ》
（カッキー）《おいしくなぁれ。
おいしくなぁれ》
（カッキー）《お待たせしました》
（百合子）《おいしい》
（カッキー）《ありがとうございます》
（敦也）《よう》《相談の依頼人っていうのはあんたかい？》
（百合子）《はい》
（敦也）《だろうな》《世の中の悩み事を全部引き受けちまったような複雑怪奇な顔してるもんな。
ハハハ》・
（ドアの開く音）・
（清助）《ああ。
どうも…》《さっきはどうもね。
はい。
これ自慢の猫まんじゅう》《ほら。
猫耳付いてるでしょ？はい。
食べて食べて》
（百合子）《ああ…》
（清助）《遠慮いらないから》《うちのはね何とねコーヒーにも合うんだよ》
（清助）《はい。
お近づきの…》
（敦也）《バーカ》《悩めるご婦人に食欲なんてあるわけねえだろ》《よう。
ここのコーヒーイケんだろ？》
（百合子）《はい》
（敦也）《店長のカッキー》《あの女がな有名な虹の岬の喫茶店のママに習ったってコーヒーなんだ》《そこいらのお前まんじゅうとはな格が違わぁ》
（清助）《そんな言い方ねえだろ》
（敦也）《カッキーが雇われるまではキリコがコーヒー入れてたんだがなこれがまたひでえ代物でさ》
（清助）《ひでえ。
ハハハ》
（敦也）《まあんなことはともかくまるっと弱音を吐いていただきましょうかね》
（百合子）《弱音？》
（敦也）《そう》《弱音。
悩み事。
厄介事。
相談事》
（百合子）《あのう。
あなた方何なんです？》《私は癒し屋のキリコさんにご相談をと》《あのう。
あなたがキリコさんなんですよね？》《ちょっとすいませんけどキリコさん？》《私あなたの評判聞いてぐるっと東京縦断してわざわざこちらに伺ったんですけど》《ねえ。
キリコさん》
（キリコ）《んもう。
何よ？》《「何よ？」って。
あなた癒し屋さんなんですよね？》
（キリコ）《あのね。
言っときますけど…》
（キリコ）《私癒し屋なんかじゃないんですけど》
（百合子）《えっ？だってお店の前に癒しＣＡＦＥって》《弱音聞いてほしいんだったらそこの神様にでもお願いしたら？》
（百合子）《神様？これが神様？》
（清助）《そうなんです》《人の弱音や悩みを聞いて適切にアドバイスしてくださるありがたい神様なんです》
（敦也）《先客万来。
家内安全》《交通安全。
受験就職結婚祈願。
健康促進。
ピンコロ促進》《ぴんぴん生きてころっと死ねるってやつな》《ともかく何でも聞き届けてくださる神様だ》《南無阿弥陀仏。
南無妙法蓮華経》
（敦也・清助）《アーメン》
（百合子）《ああ…》《ええ。
すぐには信じられないでしょうけど》
（百合子）《あのう。
あなたたちはいったい…》
（清助）《まあ癒し屋のスタッフっちゅうか悩める人を支援するボランティアっちゅうか》《どうぞどうぞ》
（敦也）《単なるのぞき見》《物見高いやじ馬かもな》
（敦也・清助）《ハハハ！》《あら。
もうお帰りになるの？何しに来たのかしらね？》《わざわざぐるりと東京縦断してこのままじゃ人生の貴重な一日が無駄になっちゃうんじゃないの？》《あのね。
もしかしたらあなたが神様に吐いた弱音を私たちがたまたま聞いてるかもしれないし聞いてたら何とかしてあげたいななんておせっかい焼きたくなるかもしれないじゃない》《人生にとってそういう偶然というか必然というか巡り合いというか巡り合わせってのがとっても大切だと思うのよね》《ああ。
急にしゃべったんで口が疲れちゃった》
（百合子）《あのう。
どういうことですか？》《えーとですね。
あのう。
私たちはみんなこの神様のアシスタントみたいなものなんです》
（百合子）《はあ。
神様のアシスタント？》
（カッキー）《そうですか。
お気の毒に。
７年前におしゅうとさんが》《ご主人が半年前に亡くなってしまわれたんですね？》
（鈴の音）
（百合子）《父が亡くなってからずっと頼りにしてきた一人息子を病気で亡くし母は身も心も急激に弱ってしまって》
（良枝）《ホントにいい嫁ね》
（百合子）《アハハ》
（百合子）《最初は母と娘の奈緒美との女３人で仲良く暮らしていこうって固い固い約束をしていたんです》
（百合子）《ところが…》
（良枝）《百合子さん！こんな高いもの…》
（百合子）《いざ女３人で暮らし始めたら…》《角。
角よ》
（百合子）《掃除が下手だの娘にいい服着せろだの洗濯物の畳み方がなっちゃないだの味噌汁は減塩にしろだの》《口答え！》
（百合子）《とにかくもう年がら年中うるさいんです》《飲み忘れがないようにとお薬を仕分けしたら「私はまだぼけちゃいない！」って大声で怒鳴られるし》《最近は娘の受験にまで口を出し始めて》《あのね。
私は母と結婚したわけじゃない》《主人と結婚したんです》《要するにお姑さんにつらく当たられてるってわけですよね？》
（百合子）《そう。
私が働いて家計を支えようとしたら大した稼ぎにもならないんだから父が立てた工場を売ってお金にすればいいだなんて。
そうそう。
おとといもね…》《ちょっと待った》《百合子さんの気持ちすっごくよく分かるわ》《私聞いてないようでちゃんと聞いてたのよね》《フフッ。
偉いでしょ？》《あなたそんな意地悪ばあさんの横暴に耐えて耐えて本当によく我慢してたのね》《うんうん。
とっても偉いと思うわ》《ねえ。
百合子さん。
その工場の土地ってどれぐらいの広さがあるのかしら？》《さあ？２００坪くらいかしら》《２００坪》
（敦也）《まあ確かにそんだけの土地を売れば働かなくても食べていけるわな》
（百合子）《それはそうかもしれませんけど。
でも…》《でもあなたはとっても真面目な人だから不労所得で暮らしていくことに抵抗があるんでしょ？》《それにさ母親がしっかりと働いて生計を立てている姿をきちんと娘さんに見せたい》《そういうことなんでしょ？》
（百合子）《えっ？まあはい》《ああ！あっ。
あっ。
あんたの背後霊もそう言っとる》
（百合子）《えっ？背後霊？》
（敦也）《そう。
背後霊》《すなわちあんたの守護神。
しかもその守護神は…》《ああ！やっぱりあんたの亡くなった旦那さんだ》《ああ》《あの人が私の守護神？》《あなた。
私たちを守っていてくださるのね？》《ねえ。
入道さん》
（敦也）《あっ？》《背後霊が見えるあなたに聞くんだけど意地悪なお姑さんに悪霊がついてるなんてことないかしら？》
（敦也）《アハハ。
ないな》《私はね》《私はどうにもそんな気がするのよ》《ねえ。
入道さんもそう思うでしょう？》《思うわよね？悪霊がついてるって》
（敦也）《ついとる》《だよね？》
（敦也）《確かに意地悪ばばあには悪霊がついとる》《ここはやっぱり百合子さんのために悪霊退治しなくちゃね》
（敦也）《ああー！悪霊退散！悪霊退散！》
（清助）《そのさ悪霊なんているのかいないのか知らないけどそんなに意地悪ばあさんと一緒にいるのが嫌だったら娘連れてさっさと家出てきゃいいんじゃないの？》《チッ》
（百合子）《もちろんそれは私も何度も考えたんです。
だけど娘が子供のころからずっと一緒に暮らしてきたおばあちゃんを一人にするなんて絶対にできないって泣くんです》《それに私もあの家を出るとなると何だか夫を裏切るような気がして》《うんうん。
それもよく分かるわ》
（ブレーキ音）
（涼）《死ぬな生きろよ。
生きたら死ぬな》《そうね》《こうして悩みを聞いてしまった以上むげにはできないわね。
ねっ？カッキー》
（カッキー）《うん？》《今回の相談》《むくつけき野郎どもは大して役に立ちそうもないからカッキー。
あんたが知恵出しなさい》《えっ？えっ？でもいつもはキリコさんが…》《私は独り身だし家庭ってもんよく知らないから》
（敦也）《おいおい。
カッキーだって独り者じゃねえかよ》《まあそうなんだけどね。
いいからいいから》《さあカッキー》
（カッキー）《そうですね》《じゃあ取りあえず私たちがお姑さんにお会いして大人の話し合いをしてみてそれで仲直りできたら一番ですよね？》《でもその前にさ大人の良識っていうのも大切だと思うのよね》《ねえ。
ちょっとこっちいらして》《あのね。
百合子さんね。
過去におさい銭をケチったせいでとんでもない罰に当たった人がいるらしいのよ》《今回の件はあなたの人生にとって大きな転機になるかもしれない大切な大切な分かれ道でしょ？だから念のために余裕を持った額を奉納した方がいいと思うの》
（百合子）《えっ？今おさい銭を？》《もちろんよ。
誰でも神社でお願い事をするときには先におさい銭を奉納するでしょ？》
（百合子）《はあ》《ほら》《みんなのあなたを思う気持ちが一つになっているうちにしっかりと奉納しなくっちゃ》《そうそう。
たっぷりの気持ちを込めて》《あなたのたった一度きりの人生の大切な分岐点に娘さんの将来のことも考えて奉納することがとっても大事なの。
ねえ。
分かるでしょ？》《分かるわよね？》
ああ。
キリコさんって果たして天使なのか？悪魔なのか？
（カッキー）《えっ？自殺しかけてた？何でまた死のうとなんか？》《何で？どうしたの？》《自分がカワイイからっしょ》《あんたは今自分のことしか見えてない》《自分のことしか考えてない》《フフッ。
なんちゃってね。
お嬢ちゃん。
お名前は？》《お嬢。
名前！》
（奈緒美）《五島奈緒美》《五島？五島奈緒美？》《カッキー。
地下室のベッド用意してあげて》
（カッキー）《えっ？》《こんな夜って家に帰りづらいもんだよ》《だよね？》
（カッキー）《じゃあこっちいらっしゃい》《涼君ってさ天性の人ったらしなんじゃないの？》
（涼）《えっ？》《御利益御利益》
彼は上山涼君。
２４歳
バイク便をやりながら癒し屋のスタッフでもある青年です
その翌日。
私と和菓子屋の小出清助さん
密教だの黒魔術だのが大好きな入道こと卓球場経営者の都幾川敦也さんの３人はお姑さん五島良枝さんを訪ね百合子さんと仲良く暮らしてほしいと切々とお願いしたのですが…
（良枝）《私は当然のことを言ってるまでです》《何事にもきちんとしない百合子さんが悪い》《もう。
それもよりによってあなたたちみたいな怪しげな連中に仲裁を頼むとは。
何を考えてる嫁なんでしょう？》
（カッキー）《あのう。
私たちそんなに怪しげですか？》
（良枝）《怪しい。
危ない！》
（カッキー）《えっ？》
（良枝）《新手のお母さん助けて詐欺かしら？》《ああ。
物騒な世の中ね。
こういうときは庶民の味方１１０番》
（カッキー）《えっ？いや…》
（敦也）《わしらがこんなに低姿勢にものを頼んどるんに人の好意が分からんご仁じゃな。
やっぱりあんたには悪霊がついとるよ。
悪霊退散！悪霊退散！》《悪霊退散》《こら！何が悪霊じゃい》《こうなったら庶民の味方１１０番》
事態は収拾に向かうばかりか嫁姑の仲はいっそう冷え込み一触即発状態になってしまったのです
・
（ドアの開く音）
（カッキー）《いらっしゃいませ》
（百合子）《あんなに…。
あんなにお願いしておさい銭奮発したのにひどい。
ひどいです》《あなたたちがうちに来たせいで余計ぐじゃぐじゃになっちゃった》《ゆうべ娘も友達んち泊まるってメールよこしたまま帰ってこなかったし》《あら。
百合子さん》《どうしたの？そんな怖い顔して》《大きな声出しちゃって》
（百合子）《だって。
だって》《全部計算どおりだから大丈夫よ》
（百合子）《えっ？》
（カッキー）《計算どおり？》《今回はと…。
やっぱりこれかな？》
（・『夢の中へ』）《・「探しものは何ですか？」》《ねえ百合子さん。
無事に願い事が解決した暁には神様にきちんとお礼参り忘れずにね》《よし。
あしたから一気に嫁姑の全面戦争に突入するぞ》《フフフ。
楽しみだね》楽しみだね。
楽しみだね。
2015/08/03(月) 13:25〜13:55
関西テレビ１
[新]癒し屋キリコの約束 ＃０１[字][デ]【遼河はるひＶＳ泉ピン子！】
喫茶店店主で裏稼業“癒し屋”のキリコ（遼河はるひ）をある主婦が訪ねて来る。姑・良枝（泉ピン子）との不仲に悩んでいるらしいがキリコは癒すどころか嫁姑戦争を煽り…。
詳細情報
番組内容
東京の下町・谷中にある喫茶店『純喫茶 昭和堂』。店はひっそりとしてどこか時代に取り残されたよう。奥には神棚がまつられており、賽銭箱も置かれている。オーナーのキリコ（遼河はるひ）は店長のカッキーこと柿崎照美（前田亜季）に店を任せ、ロッキングチェアをきぃこきぃこと揺らしながら漫画を読みふけるばかり。
そんなキリコだが、実は「癒し屋のキリコ」と呼ばれ、訪ねてきた客が抱える問題を鮮やかに解決していた。
番組内容２
カッキーに加え、バイク便配達をする上山涼（戸塚祥太）、和菓子屋『銘菓 幻味堂』亭主の小出清助（長谷川朝晴）、卓球場のオーナーで通称・入道こと都幾川敦也（小林正寛）がキリコの協力者だ。お金が大好物のキリコは悩める者が現れるたび、お悩みをスッキリ解消させるかわりに、店内の賽銭箱に大金をガッポリ“奉納”させていた！
ある日、五島百合子（西牟田恵）という女性が『昭和堂』にやって来る。
番組内容３
百合子は義母・良枝（泉ピン子）との不仲に悩んでいて…。
出演者
有村霧子：遼河はるひ
柿崎照美：前田亜季
上山 涼：戸塚祥太（Ａ．Ｂ．Ｃ−Ｚ）
小出清助：長谷川朝晴
都幾川敦也：小林正寛
キララ：中山来未
本城 栞：吉原茉依香
小笠原千香：月船さらら ほか
スタッフ
【原作】
森沢明夫『癒し屋キリコの約束』（幻冬舎文庫）
【脚本】
佐伯俊道
【演出】
星田良子
【プロデュース】
市野直親（東海テレビ）
高橋萬彦（共同テレビ）
【音楽】
森英治
【主題歌】
「Ｔｈａｎｋ Ｙｏｕ Ｆｏｒ Ｔｈｅ Ｍｕｓｉｃ」ラストヒロイン（中山来未）（ソニー・ミュージックエンタテインメント）
【制作・著作】
共同テレビ
【制作】
東海テレビ
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