毎日、満員電車で会社に向かう。
そんな働き方、変えたいと思ったことはありませんか?今、会社に行かない働き方が急速に広がっています。
自宅で最先端の製品開発を行うエンジニア。
お疲れさまです。
自宅から、全国に散らばる部下を束ねる管理職。
仕事が終わって15分後には子どもたちとお風呂の中です。
子育て世代から定年退職後のシニア世代まで。
日本の働き方が変わる在宅勤務の革命に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
働くというと毎朝オフィスに通勤して同僚や上司と顔をつき合わせてというのがまだまだ一般的なイメージですが在宅勤務の進化によって働く場所、そして時間にとらわれない新たな働き方が次々と登場しています。
子育て中で外で長時間働けない女性たちによる自宅での研究開発。
全国にいる部下を束ね、自宅から第一線の仕事をする管理職。
地方にいながら、都会にある企業の仕事をする人たち。
こうした柔軟な働き方は少子高齢化で働き手の数が減り続ける中で極めて重要だと見られています。
働く場所や時間にとらわれないこのテレワークという働き方が広がれば子育て中や介護中の人定年退職後のシニア世代などさまざまな事情を抱える人々にも戦力になってもらいやすくなると考えられています。
さらに、雇用の場が少なく人口減少に悩む地方にとっても地域経済を活性化する大きな鍵と見られています。
通信環境の充実やパソコンなどの性能の向上といったIT技術の進歩がテレワークを可能にしています。
実際に在宅勤務などを導入した大手IT企業ではご覧のように残業時間、移動にかかる旅費交通費が削減できたことに加え社員の満足度や1人当たりの売り上げなど生産性が大幅に上がったという結果が出ています。
多様で柔軟な働き方を選択できる社会への期待が大きい一方で会社の制度としてテレワークを実施している企業は僅か1.7%。
多くの企業が踏み出せないでいる理由は一体何か。
どうすれば克服できるのか。
初めに、在宅勤務の最前線をご覧いただきます。
大阪市の中心部にある家電製品などの開発に携わる企業です。
オフィスには社長以下2人しかいません。
開発の最前線を担うのは在宅勤務の女性たちです。
よろしくお願いいたします。
夫と2人の娘と暮らす菅本陽子さんです。
菅本さんが開発に取り組んでいるのは電子部品の熱効率を計測するソフトウエアです。
菅本さんは発注元の企業から製品の設計情報をネットで受け取り自宅で効率性や安全性を解析。
結果を発注元に返しています。
パソコンの性能が向上しインターネットで大容量データを簡単にやり取りできるようになったことで自宅でも可能になったのです。
菅本さんは大学院を卒業したあと大手電機メーカーの研究開発部門に勤務しました。
しかし、仕事の都合で夫と離れて暮らしていた菅本さん。
子どもが欲しいと、28歳のとき会社を辞めることにしました。
再就職後前よりも給料は減りましたが最先端の研究に関われることにやりがいを感じています。
この会社は菅本さんのように高いスキルを持ちながら一度は仕事を諦めた女性たちに支えられています。
設立から10年大手電機メーカーなどからの発注も増え、成長を続けています。
地方で在宅勤務をしながら管理職として第一線で活躍している人もいます。
新潟県で暮らす植木和樹さんです。
実は、都内のIT企業の部長です。
植木さんのチームはインターネットを通じて企業のサーバーの運用・管理を行っています。
本社に出社するのは月に1度。
ふだん、部下とのやり取りはテレビ会議で行います。
チームのメンバーも愛知県や北海道などさまざまな場所で在宅勤務しています。
部下は全部で15人。
直接、顔を合わすことがほとんどないため頼りにしているのがチャットと呼ばれる社員専用の掲示板です。
何気ない雑談を交わすことで一体感が生まれるといいます。
かつては全国展開するIT企業で働いていた植木さん。
単身赴任が続いたため家族のいる新潟でできる仕事を探したのです。
今の会社に転職して2年。
仕事を終えるとすぐに息子たちとお風呂に入るのが日課となりました。
いただきます。
植木さんが勤める会社には地方での在宅勤務を希望する人が次々入社しています。
人材不足が深刻なIT業界にあってこの3年間で社員は倍増。
優秀な人材を獲得できたことで売り上げは2.6倍になりました。
全国どこでも働ける在宅勤務。
地方自治体も注目しています。
その一つ、松山市です。
在宅で働きたいという女性たちと企業を結び付ける取り組みを始めています。
在宅勤務は企業誘致に頼ってきた地方自治体の在り方を変えるものとして急速に広まっています。
これまでは地方で仕事を増やそうとすると工場や事業所を誘致するのが一般的でした。
しかし、在宅勤務ならば都市部から直接仕事を受注。
住民からの新たな税収も期待できます。
松山市は人材サービスの会社と提携。
在宅でできる仕事を紹介する専用のホームページも新設しました。
さらに、仕事を発注する企業には金額の10%を助成しています。
これまでに首都圏を中心に150社以上から発注がありました。
今夜のゲストはIT企業、サイボウズの社長で総務省ワーク・ライフ・バランスを推進するプロジェクトの外部アドバイザーを務めていらっしゃいます青野慶久さんです。
このテレワーク、在宅勤務という選択肢が提示されれば自分はもっと生き生きと働けるかもしれないあるいは雇用をもっと作り出せるかもしれないというポテンシャル高いですね。
高いですね。
なんかみんな、楽しそうにやってましたね。
広がればと思います。
ポテンシャルの高さですけれどもやっぱり眠った人材を掘り起こせる可能性ってどう見てらっしゃいますか?
そうですね、先ほどのIT企業なんかは、もうIT業界は今、人手不足の流れが来てるんですけど本当、先ほどみたいに働き方を柔軟にしていけば人も集まる業績も上がる、これがなんか明確になってきたかなっていうのはなんかこの1年、実感してます。
攻めの戦略だとおっしゃってる社長さんいらっしゃいましたけどそんな実感ですか?
ブラック企業っていう非常にいやらしいことばがはやって、2013年に流行語大賞取ったんですね。
それぐらいから、去年ぐらいからもう、そのブラックっていう印象がついてしまうと人が集まらないと。
とにかくホワイトにしていかないと働き方を、多様化を認めていかないともう人、集まらないぞと。
なんか経営者の意識もそっちに向かってる気がします。
むしろ実際に導入したところでは冒頭で紹介したんですけどもやっぱり働いている人たちの満足度が高まったっていう顕著な数字も出てるんですよね。
分かりやすいですよね。
本当、人の満足っていろんな形がありますけれども通勤電車で、なんか汗かきながら特に夏なんかね、大変な中通勤することを思ったら満足度はずいぶん上がると思います。
ただ、制度として会社で実施しているところっていうのはまだ1.7%。
少ないですよね。
なぜだと思います?どんなことが障害になってるんでしょうか?
いくつかあると思うんですけど経営者の立場からしますとやっぱり、リスクはあると思うんですね。
じゃあ、在宅で働いたときにこの人、本当に働くのかなと。
なんか、さぼりやしないかなとかもしくは、なんかこうセキュリティー上、なんか問題が出てくるんじゃないかなとかいろいろ、もやもやすることがあって、それを日本の経営者はそういう働き方をせずにどっちかっていうと出社してくることで認められて昇進してきた、そういう人が経営者に多いですから、やっぱりここのリスクと、あとこの在宅のよさの理解の低さみたいなものここがまだ導入の低さにつながってるんじゃないかと思います。
やっぱり、いろんな働き方をする、中には会社に出勤してくる人がいたり在宅で働いている人がいるっていうと、これ人材を管理するうえでの相当な難しさっていうのがあるんではないかと思うんですけども。
そうですね。
逆に、昔の昭和の大企業って長時間労働当たり前でしかも男性が当たり前で朝9時に全員来るし夜も残業してくれるしなんか無理を言っても転勤もしてくれるみたいなこういう人、中心ですからマネジメント、楽ですよね。
もうとにかく、なんか目標に向かってゴーだみたいな目標に届かなければみんな、夜まで頑張れみたいなねそういうマネジメントだったと思うんですけどももうさすがに、このやり方ではもう業績もついてこないですしむしろ人が辞めていって先ほどみたいにいい会社が出てきてますから転職してしまうと。
そうすると、一人一人のニーズをやっぱり把握しながらそれを満たしてあげるようなマネジメントをしないとちょっと会社の継続性にも難しさが出てくるとそんな時代になってきてる気がします。
だから女性もずっと働き続けられるとか介護している社員がいたらその人も働き続けられるようにするとか、いろんな人がいる。
労働力減ってますから特に女性は、私はターゲットとしては非常にいいと思うんですよね。
女性が結婚しても子どもが出来ても気持ちよく働き続けられる環境であればこの人手不足の時代でも労働力確保できると。
逆に、これができないと辞めざるをえないと。
介護になれば、その人をもうリリースするしかないとそんなリスクが出てきているように思います。
今、図で出てきてますけどいろんな人たちが交じり合った組織のほうが競争力も高いといわれますよね。
そうですね。
さすがに金太郎あめ的な働き方で、やっぱ新しい発想が出てこないですよね。
例えば、お菓子を作っていますとスーパーでお菓子選びをしたこともない、なんかもう長時間労働当たり前の男性しかいないのに、なかなかニーズを理解して支持出すことは難しいですよね。
やっぱいろんな人がいていろんな意見を出すからこそなんか現代の多様なニーズが拾えるんじゃないかと思います。
そういった大きなメリットがあるわけですけれども今、企業が導入しない理由として特に多いのが、こちらご覧いただきたいんですけれどもうちの企業には在宅でできる仕事がない、あるいは家で働くとさぼっているんではないかそして情報管理に不安があるなどといった声です。
こうした課題をさまざまな課題を工夫で乗り越えようと模索する企業をご覧いただきましょう。
打ち合わせや対面での業務が多い会社でどうすれば在宅勤務ができるのか。
社員およそ1200人結婚情報誌などを発行する情報サービス会社です。
在宅勤務によって業務を効率化できないかとことしから思い切った取り組みを行っています。
一定期間チーム全員が会社に来るのは週に2日だけと決めたのです。
取り引き先を回り雑誌の紙面やホームページの企画を担当する大崎理恵子さんです。
以前、育児のために在宅勤務を利用したことがありますがほかのメンバーとのコミュニケーションの難しさが壁となっていました。
今回、大崎さんのチームではメンバーが互いの状況を把握することを最優先にしました。
全員が1日のスケジュールを共有。
外回りの営業の予定など情報を細かく伝えます。
はい、ゼクシィ、大崎です。
取り引き先からの急な問い合わせがあってもほかのメンバーの状況を確認しすぐにテレビ会議などで対応できます。
お疲れさまです。
営業を終えたあとはそのまま出先で資料を作成しテレビ会議にも参加。
職場と行き来する時間を、大幅に削減することができました。
これまでに参加した社員は300人。
その6割が、より効率的に仕事ができるようになったとしています。
在宅勤務導入のもう一つの壁は働いている時間を把握しにくいことです。
都内にあるインターネット通販関連の会社です。
在宅のスタッフがちゃんと仕事をしているのか。
逆に働き過ぎていないか実態が見えにくいといいます。
そこで、この会社は新たなシステムを導入しました。
熊本県の自宅で働くこちらの女性。
通販サイトの制作を行っています。
仕事を中断するときは退席をクリック。
ひろとしはちゃんとやって、これ。
まだプリントあるよ。
じゃあ、終わったら声かけてね。
席に戻ったら着席をクリック。
仕事を再開します。
突然の雨で洗濯物を取り込むときもこのボタンを押します。
これによって、東京の本社では実際に働いた時間を確認することができます。
青い部分が着席中の時間。
働いた時間が一目で分かります。
さらに、仕事中のパソコン画面が定期的に保存され上司が見ることができます。
今のリポートでやってみたら全員の生産性が上がったという結果が出たというところもありますしそして、本当に仕事をしてるのかどうかというのはさまざまなツールも生まれていることも分かりました。
でも、どうなんでしょう在宅をやっていると、自分は疎外感がないんだろうかとか情報セキュリティーの問題というのもやっぱり心配ですよね。
どうやってこれ克服していくんですか?
そうですね。
結構やってみると、いろいろおもしろいことがあってその管理者の人は在宅の人が働いているかどうか心配だし、在宅の人はちゃんと見てもらってるんだろうかとか逆に緊張感があったりとかなので、こういうのは出てくるたびに課題設定してやっていくしかないと思うんですよ。
先ほどのビデオの例だと私、今から開店しますみたいなこと書いて私今から働きますよと、だから話かけてくださいねみたいなああいうの、ひと言書くだけでも実は遠隔でも、あっ、あの人今からパソコンに向かって頑張るんだわ、みたいな想像もできたりしてぐっと距離が縮まると。
全部の企業がそうする必要はないんですけどなんか問題があれば一個一個個別に対処していくと。
こんなサイクルに入れるのが成功のこつじゃないかなと思います。
サイボウズでは時間もそして働く場所も自由という企業でいらっしゃるんですけど一番気になるのは、在宅で働いている人、そして毎日会社に来ている人、いろんな方いらっしゃいますけどどうやって評価を公平にするのか。
会社の人たちに、自分は公平に見てもらっているということを納得させるのか。
どんな苦労がありましたか?
これやってるとですね本当難しくて毎日在宅する人もいますし週1回だけ在宅する人もいますし時間をシフトさせて働く人もいますし、もう社員どうしを比較させるというのが相当難しくなってきます。
私たちが行き着いた答えとしては公平じゃなくてもいいやと。
公平じゃなくていい?
そうですね。
社員どうしを比較して給与テーブルに位置づけるみたいなことをやめようと。
この人はこういう人だから大体転職したらいくらぐらいですよねと市場性って呼んでるんですけどその市場性に任せて給与を決めていくと。
それに納得して残ってもらえるかどうかその社員どうしで同じようなルールで比較することはやらないとそれが私たちが行き着いた結論ではあります。
以前はきちっと給与テーブルランク付けとかあったわけですよね?
やってましたね。
日本の大企業と同じような仕組みを入れてたんですけどももう今は廃止しましたね。
ですから、あの人が休んでいるから私の仕事が増えたというようなクレームもあったわけですよね。
最初はママさんだけ優遇されてみたいな話もあったんですけど、じゃあ残ったあなたはどんな働き方をしたいんですか?何を報酬として得たいんです?とお金ですか?それとも人入れて仕事を減らしてほしいですか?そういうのを一個一個聞きながら対処していくと。
そうすると、その人のやりがいモチベーションも上がっていく。
本当、個別。
先ほどの図にありましたけれども一人一人全くブロックの形が違うので個別が大事だとそう思います。
一人一人にきっちりと向き合う、それが鍵ですね。
2015/08/03(月) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「もう会社には通わない〜在宅勤務“革命”〜」[字]
在宅勤務に「革命」が起きている。管理職以下プロジェクト全員在宅で働く会社や元技術者ママを集めて研究開発を行う会社など、育児介護中の人材を生かす新たな動きを伝える
詳細情報
番組内容
【ゲスト】サイボウズ社長…青野慶久,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】サイボウズ社長…青野慶久,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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