(鍵の開く音)
(女の悲鳴)
(パトカーのサイレン)
(マンションの住人)ご苦労さまです。
ああおっかないね。
風邪で寝てたら突然ドアの鍵開けて人が…。
(警官)ピッキングですね。
(原田直子)ピッキングされない?
(原田信吾)これだと1分もたないって。
お父さんこの鍵取り替えてくれない?ねえお父さん。
先行くよ。
しょうがないわね。
聴こえてんの?
(西村与平)高いんだろ?でも突然空き巣が入ってきたら危ないわよ。
危ないのは分かるが…こっちは金がないしそっちでやってもらいたいね。
マンション買って一銭もない。
あぁ鍵はどこだよ?ほんとに…。
え〜と?昨日これ持って出かけたでしょ?この中探してみて。
あ入れたかね?・「鍵はいずこ〜鍵はいずこ〜」西川さん?西川さん…。
(患者)ねえ主人がね「早く死ね」って言うのよ。
はいはい少し待っててね。
西川さん…。
西村ですけど。
私西川。
私だろ?西川さん?ねえもう1時間も待ってんですがね。
ごめんなさい西村さんあと少しね。
あのねえ。
あなた私の御飯になにか入れてませんか?私いつもお腹が痛いのよ!あなたでしょ!おばあちゃん。
この方はご主人ではないのよ。
あなた!私を殺すつもりでしょ!
(看護師)駄目ですよ。
あっちへ行きましょう。
ああ…。
(看護師)帰るの?西村さん。
《間もなく妻が逝ってから15年になります。
あの老女の言葉が胸にこたえました》いいお天気だねえ。
こんなお天気の日にねフアーっと眠るようにねお前の傍へいけたらね…。
もう15年経つ…。
私がお前を殺めたのか…。
私が…。
《3月10日に間違いはありません。
戦争を越して来た私にはあの日は東京大空襲でこの辺一帯が焼け野原になりました…。
確かにこの人はその寒い朝突然私の暮らしているマンションに引っ越して来ました…》坂本絵里:あそこです。
お願いしま〜す。
はい。
あこれはいいです《春が来たころ中庭の花畑にあの娘が持ってきた男物のスリッパの片方が落ちていました。
その場所は3階の娘の部屋の真下ですから娘が放り投げたに違いありません。
失恋のショックで仕事を辞めたらしい。
家の近くでよく出会いました》あ…あなた…《男が大嫌いになったらしく娘はいつも不信と猜疑心の目で男を見ました。
世界中の男が死んでしまえば…というようにも見えました》ああ…《ただ私には笑顔を向けた事がありました》すみません。
ありがとうございます。
かわいい犬だね。
あの…内緒にしてくださいね。
ペット禁止だから私青酸カリ持ってるの。
あこんにちは…。
どうも。
お芝居の稽古に熱が入ってましたね。
あええそうなの。
今度はストーカーの役なの。
捨てられた恋人に付きまとって青酸カリで殺すの。
みんな驚いたみたい。
あこの間はありがとうございました。
モモね前にも逃げたことがあるの。
時々暴走族がいて危ないのあの辺は。
あの犬はモモっていうのかい?そう。
私の命よ。
命ねえ。
私は犬になりたいよハハ…。
いや冗談だよ。
年寄りは平気で冗談を言うんだ。
悪かったな。
いいえ…。
(中村吉郎)ああ…いや。
きょうもバスで無料の東京観光かね?墓参りだよ。
君もね天気のいい日には墓参りでもしたら?遊んでいないで。
ハハハきょうの娘はモチ肌だったよ。
秋田の娘でね…。
私はねこの方と人生を語っとるんだよ。
もっと哲学的なんだ。
へえ〜これは美人だ。
あんたも東北だね。
北の美人はキリっとしてるからすぐ分かるよ。
仙台かね?中村さん年寄りだからって…恥を知りなさい恥を。
スタイルがいいねえ。
あんたねいい年して見苦しいからやめなさい。
ねえ?どうせあの世へ行くんだ。
だから何をしてもいいとは…。
女と男しかいないの世の中には。
神様がそうこしらえたんだよ。
だから自分のかい性で遊ぶ。
いいじゃないか。
みっともないよ。
一遍さんみたいにねてめえの欲しいものは捨てて捨てて…。
誰だい一遍さんて…?坊主ですよ。
「捨て聖」と呼ばれた偉い人ですよ。
そうかい。
じゃ西村さんもあのマンションも捨てて年金も要らないと捨ててさ素っ裸で放浪したらどうなの?
(静枝)西村さん食べてみて〜。
行商のオバチャンがいい大根売りに来たの。
そうかい。
いや〜スペシャルメニューで悪いね。
別にうらやましくないね。
あっさっきの若い娘なら悔しいけどさ。
ふっ色ボケしてんじゃないのかね。
うんうまい!あ〜よかった。
おいしいとすごく喜んでくれるから。
どうせなら別のスペシャルメニューをご馳走してもらったら。
(鍋島)ジジイ…うるせえぞ!女のことばっかり喋ってんじゃねえよ!鍋島さんご機嫌よく飲んでくださってるんだから…。
帰ろうか…。
なにをビクビクしてんじゃ。
冗談じゃないよ。
俺は帰るよ。
金は明日払うから。
自分で食ったのは自分で払いなさいよ。
俺は小遣い2万円しかないからな。
あんたは金あるんだから。
だからさビールと…突出しのタタミイワシ代を…。
ありがとうございました。
中村さんの分はツケとくわ。
あいつはねアパートや借家をクサルほど持ってるの。
なのに金冷えして腹下したとか冗談じゃないよね。
まああんなケチもいないよ。
老人会の祝儀や不祝儀の時いい顔したことがないよ。
いやになるよ。
うんいい大根だ。
うんうん…。
(小夜子)遅くなってごめん。
何やってんだ。
ごめんなさい。
あの人たち普通の人じゃないね。
空き巣の常習犯ですって。
以前刑事がそう言ってた。
空き巣…?ええ。
でも今は堅気…。
真面目になったそうですから。
なあコップがねえよ。
はいはい。
コップだよ。
すみませんね。
さあ帰ろう。
幾らかね?950円です。
ああ。
いつも安くしてもらって悪いね…。
大根は?泥棒さんに付けとくわ。
フフフじゃこれ。
(管理人)なんだ西村さん。
階が違うよここは3階。
そうですよ。
あなたは何階へ?え?いやいいんですよ。
(玄関のチャイム)こんばんは。
(チャイム)
(チャイム)はい…。
あ…使いなさい。
ハンドバッグだ。
何でですか?バスで会っただろ。
いっぺんでファンになったよ。
見てるだけで若返るね。
時々お茶でもつきあってもらえないかな。
(鍵を掛ける音)
(玄関のチャイム)坂本さん…。
私はねきょうバスでお会いした者で5階に住んでる西村という者ですが…。
あ…。
あのおじいちゃんね。
今バスで一緒だった派手なおじいちゃんがブランド物のバッグをプレゼントしたいって来たの。
何…?一緒?いや違いますよ。
彼と友達ではありませんから。
同じマンションにいるというつきあいだけで…。
そうですか。
で…?路傍の花ですが…。
多分部屋に花を飾る気にもなれないのではと思いましてね。
時々花をご覧になるといいですよ。
結構です。
あっ。
ごめんなさい。
ありがとう。
どうぞ…。
私は…西村というもんです。
西村与平と申します。
西村さんですか?いやちょっとね心配になったもんですから。
さっきバスの中でおっしゃった事ですけどね。
劇薬を持ってるとか…?いやいやほんとに年寄りってのはね忘れたり時々思い出したり頭がもうろうとしててね。
劇薬持ってるんですか?あれは…嘘よ。
…お花ありがとう。
若い時にはいろんな事があるもんですよね。
恋をしたり失恋したりねうれしい時や悲しい事や。
それでも生きていかなきゃならない。
私の好きな詩にこんなのがあります。
「まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき前にさしたる花櫛の花ある君と思いけり。
やさしく白き手をのべて林檎をわれにあたえしは薄紅の秋の実に人こい初めしはじめなり」
(直子)お父さん。
ちょっと食事してくる。
帰りは10時過ぎだけど。
ねえお父さん。
近ごろ病院に行ってる?行ったけど混んでるから帰ってきたんだよう。
言われることは分かってる。
変形性脊椎症。
それに高血圧。
診てもらわないなら腰が痛いとか言わないでね。
ただね全身が気味が悪いほどしびれるんだよ。
だから診てもらいなさいって…。
うるさいわよ朝から晩まで痛いのしびれるだのと…。
あの校長から電話があったら生徒の家に行ったと…。
ひとり問題児がいるんです。
じゃあね。
やっ…。
おかしいなあ。
確かに鍵はこれに入れたはずだが…。
寒いなあ…。
いつまで食事をしてんだよ。
親をほっといて…。
あ〜っ。
いやあ〜…なあ。
(チャイム)中村さん…西村です。
ねえきのうの敵はきょうの友って…。
あぁ?中村さん!中村さん!中村…!?あ…。
もしもし・こちらはねこちらはね駅前の…3年前に新しく建ったマンションですよ。
名前ですか?ええ駅前…あ私の名前…西村…西村与平です。
それカタカナで書けば!ヨヘエって…。
「落ちついて」って言われても…人が刺されたんですよ。
(直子)亡くなったの中村さん?
(刑事)ええ出血性ショック死でした。
(頭山刑事)できれば話を伺いたいんですが。
眠ってるんです。
血圧も高いし。
我々が現場に着いた時もうろうとしてて中から犯人らしき男が出て来たと…。
・直子出てくれないか。
・校長かもしれない。
・はい原田です。
・え?横山君?ちょっと待ってね。
横山って子。
ああ先生だ。
どうした?こんなに夜遅く。
悩んでる?何を…?
(相楽刑事)おじいちゃん起きてませんかねえ。
お待ちください。
あお父さん起きてたの?あのね。
トイレへ…。
失礼!えっ?何ですか!おじいちゃん犯人見たかい?まあこのフローリングの床は背骨が痛いねえ。
ちっとばかり曲がってるから痛くて眠れやしねえ。
畳を敷けってうるさいんですよ。
このマンションはね私が買った。
私のもんだよ。
なのにこんな狭い洋間に押し込めてね。
いや婿はね中学の先生してんだよ。
人にものを教えるという人間がねえ私をこんな所に押し込めてよく平気でいられると思うよ。
警察の方に愚痴を言ってもしかたないでしょう!直子…電話代わるなよ。
生徒の人生相談に乗るほど給料もらってないよ。
これは婿です。
私は女の子だけで…。
そんな愚痴はいいからね。
ほらトイレでしょう?トイレへ…?うん。
(直子)鍵を無くすから…。
どこへ無くしたのよ。
付け替えなきゃならないわ。
お金はお父さんが払うのよ。
奥さん一人娘ですか?三女です。
長女は北海道の旅館に嫁いでて次女は5年前にオーストラリアに移住しましてね。
直子しか頼れないのに愚痴ばっかりで。
年寄りは愚痴るか威張るかどっちかですよ。
ところでお義父さん仕事は何を…?新聞記者だったそうです。
ほう…。
子会社へ行って定年になり今は好きなことを…。
それで犯人のことですが…。
犯人?何の犯人…?中村さんを殺した人間のことです。
うむ…中村さんねえ気の毒でかわいそうです。
あの人はお金持ちだから何の不自由もなかったけど私なんか今ねあんな目に遭ったらね…。
お父さん犯人を見たかどうかって聞いてるのよ。
ああ見たよ。
顔は見たの?顔はなあ…帽子かぶってサングラスをしてマスクしてたねえ。
だけど心当たりはね…。
まさかなあ…?もう空き巣はやめたと言ってたからなあ。
(直子)空き巣…?
(急ブレーキの音)鍋島さん警察ですが。
鍋島さ〜ん!警察ですが!
(相楽)鍋島さんは?知らないわ。
知らない?失礼!令状は?居ないって言ったでしょ!やめてよ!
(刑事)いたぞ!鍋島!鍋島!動くんじゃないぞ!おい回れ!
(小夜子)やめて!お前殺ったな?何をだよ!痛かったら体操したりお風呂に入ったりね。
そんなことしてみることですね。
いや〜薬いただけませんか?あの…気のせいかどうにも息苦しくなるんですよ。
困ったわねぇ。
血圧が高いんだから薬はやたら飲まない方が…。
老化現象だから我慢しなくちゃ。
1時間待ってこれでおしまいですかな?終わりですよ。
次の方。
(子供たちの遊ぶ声)「石走る垂水の上のさわらびの萌え出ずる春…」いいな万葉集は…。
いやあ…もう夏かな?ちっとボケたかな…。
お父さんボケたんじゃないの!冷たい顔でよくあんな事言えるもんだ…。
ねえこの家売って新しいマンションで同居しましょう要するに俺の金が目当てなんだな。
まあ人の一生なんてね似たり寄ったりだ…。
大きくなりゃはいさよならだ。
お花…ありがとうございました。
野の花でごめんね。
貧者の一灯でハハハ。
えっ?貧しくて蘭やバラが贈れないから…そういう意味だよ。
あぁ…。
はい。
よしいいから…大丈夫だよ。
この前はごめんなさい。
よく分からないけど涙がとまらなくなって…。
そうか…。
食べる…?お花のお礼。
アーン。
ありがとう。
おいしい?じゃ私行くわ。
モモ…。
もう行くのかい?さっき中村さんの事いろいろ聴かれたの。
私と中村さんが何かあったんでは…って。
大嫌い。
・「煙も見えず雲もなく…」・「風も起こらず…」忘れてるよこれ…。
聞こえるよ。
ありがとう。
(男)青酸カリを持ってるってそれは脅迫じゃないか!?あんた誰…?西村さんですか?ああ…石垣さんですか?ええ。
すみません。
ご足労をかけまして…。
コーヒーかジュースでも…?いやコーヒーはやめました。
トイレが近くなるしジュースは飲みません。
あなたが坂本さんの…おお…もっと陰気な方かと…。
そうですか。
その…結婚の相手を振ったの?ええ。
他にも好きな方がいたので…。
ギリギリまで迷って断りました。
仕方ないと思いません?結婚は一生の事…後悔したくなかった。
そうですか…。
で…婚約したんですか?その相手と…。
ええ…振られました。
遅れまして。
安心できる方のようですから。
石垣史郎さん…ね。
私は西村…。
後で…。
…与平です。
名刺はありませんけど…。
今恋人はいないんでしょう?ええ…振られました。
坂本さんが一日中電話をしてきて…。
私「結婚詐欺」って言われて…。
そんなこと…。
人の噂も75日ってね。
通り過ぎてしまえば…。
…はあそういうもんですかね。
復縁する気はないの?あなたは好男子だし彼女だって美人だしね。
夢中になって一生懸命の女性はいいもんです。
「劇薬を持っている」と脅す人と一緒に暮らせます?劇薬…それ本当ですか?本当です。
彼女は嘘の言えない人ですから。
う〜ん。
《ああいやな記憶だ。
忘れていたのに…》・
(静枝)いらっしゃい。
直子に聞いたの?ええ。
ここに寄るかも…と伺って…。
あの私…あのベンチに…。
ケータイだろ?…はい。
はい。
ありがとうございます。
よう!話は済んだかい。
いやまだです。
そうかいならこっちの話が先だ!鍋島さんお茶くらい飲ませてあげて。
きょうもお茶?きょうくらいはビールにする?アルコールは一滴も駄目なんだ。
お茶でいいよ。
ああ…石垣さんに会ったよ。
えっ!?なかなか好青年だ。
あれなら大概の女は夢中になる。
・
(静枝)いい竹の子が入ったの。
竹の子か刺身にして食うか!…じいさん!・
(静枝)乱暴はよして…。
ジジイ!俺を人殺しにするつもりか!!やめて!一発殴らせろ!気がすまねえ!!
(頭山)待った!待った!!
(相楽)西村さん大丈夫ですか?
(頭山)鍋島さんあんたが犯人でないと分かったんだからそうカリカリすんなよ。
(鍋島)俺は空き巣専門だ!強盗はやらん!!もう真面目に働いてるんだ!!
(頭山)分かった。
でも暴力はいかんよ暴力は…。
(頭山)じゃあ…。
ありがとうございました。
あいつらじいさんを尾行してたんだ。
俺はアリバイがあるからな尾行がつくはずがないさ。
ヘヘ…じいさん容疑者だぜ!ハハハ…ハハ。
まあ何でも言ってくれ。
ああ…痛てて。
足がしびれて…。
腰痛にはハトムギとかドクダミが効くわ。
煎じて飲んだり汁を風呂に入れて入ると効くわ。
後は腹式呼吸して体操を…。
詳しいね。
だって私元看護師なの。
そうか。
おじいちゃん今から私の家で食事しない?お幾らですか?竹の子の分入れてお二人で2000円です。
高いね。
きょうは…。
いつもはマケてるのよ。
オゴるよ。
きょうは。
私がオゴってあげる!竹の子俺がもらうか。
350円。
向こうからもらったろ!老人でも男ねえ。
若い娘がいいのね。
俺は女将ぐらいが好きだな。
鍋島さん言いにくいんだけど…ちょっと出入りをお断りしたいの…。
…ごめんなさいね。
鍵かけとけよ。
この鍵じゃ駄目だな。
戸締まりをして次の日に店に来たら店中のものが無くなっているかも…。
お…おビール?そ…それともお酒?ああ…ブランデーくださいよ。
それも最高級のやつを…。
(犬の鳴き声)モモ…ただいま!いい子にしてた?御飯の支度の間抱っこしてて…。
絶対にかまないから。
昔スピッツを飼っててよく娘らと散歩したよ。
そうなんだ。
おじいちゃん奥様は?もう14年になるかね。
…病気でね。
14年…。
まだお若かったでしょうね?話したくなさそう。
人間は辛い話はしないでいつもきれいなものを見ることだ…。
そうかもしれないけど…時に…悪魔になりたくなるのよ。
人間って…。
悪魔ねぇ…。
看護師はクレゾールの匂いがするんだって。
いや…いい匂いだよ。
クリームを付けてるからよ。
「クレゾールの匂いがする」と呟いただけで私…看護師やめたそれに「郊外の川の近くのマンションがいい」と言われ…。
「川の匂いがするしモモが散歩できる」と…。
私ここを必死に見つけたわ。
家具も「二人の生活には新しい方が気持いいね。
僕も生活を改め私と新生活を…」と言うから私東京中を回って家具を見つけたのよ。
高かったろう。
まだローンが残ってるわ。
…それに車も。
車って…?ここって駅から遠いでしょ?「車があると便利だね」って車の頭金も出して…。
それに「親が来た時に新しいスーツも」と言うから高いブランドのスーツも…。
高いって?18万円。
へえ〜!それでもバーゲンよ。
本当は30万円。
おお〜。
なのに「悪い!突然その気がなくなった」だって。
私死のうかと思ったわ。
結婚詐欺みたいじゃない?でも彼に尽くして幸せだったし嬉しかったんだろ?そう思ってサッパリすることだ。
できないわ。
死ぬとか青酸カリとかおだやかでないこと言わないで新しい人を探すんだよ。
できない。
ちょっと待ってて。
少し飲む?いや酒は全然駄目。
それ高級なブランデーだろ。
ここに青酸カリが入ってるんだ。
そんなものすぐに捨てなさいッ!!アッ…アアア…。
嘘よ!おじいちゃん。
びっくりした?ごめんね。
悪い冗談だよ!!おじいちゃんも飲んでハイ…おいしいから…。
(直子)3階の坂本さんとこに!?
(相楽)ええ。
坂本さんとはどんなご関係?どんなって…ただの知り合いと思います。
(チャイム)西村です。
・は〜い。
(直子)こんばんは。
・
(与平のハミング)お父さん!!
(直子)あまり親切にすると調子にのって毎日来るわよ。
私は全然…いいおじいちゃんですね。
変な噂がたつと困らない?…嫁入り前でしょう。
そんなんじゃないわ。
・
(与平のハミング)お父さん!・
(与平のハミング)いい加減にして!信吾さんは学校の先生よ。
分かる!?学校の先生!!哀れな歌だ…。
おじいちゃん頼みがあるの。
あしたから2〜3日モモの面倒をみて?ええ?部屋の合い鍵を預けるわ。
1日1回見に来て餌とかトイレの始末をしてほしいの。
あの子は年だから一人で置くのは心配で…。
ペットホテルに預けるのはかわいそうだし。
ああいいとも。
どこへ行くの?ひとりで旅行したいの。
今までの自分とキッパリ別れて出直すため…。
いいよ。
私は暇だし喜んでやってあげるよ。
安心して行ってらっしゃい。
嬉しい!私ね友達が1人もいないの。
だから今の私の友達はおじいちゃんだけね。
2泊して3日目の午後には戻ります。
ねえ…気に入ればずっと居てもいいわよ。
少しそうさせてもらうかもね。
…でも娘に怒られるだろうな。
よそ様へ勝手に上がり込んでね。
おじいちゃんたら実の娘なのにすごく怖がって…。
お願いします。
モモの食事が3時。
で…ペットシートを取り替えて…。
え〜と。
モモをベランダに出して日光浴。
モモをベランダに出して散歩する。
メモしておくわ。
変な気を起こすなよ。
一つしかない命だからね。
大丈夫よ。
じゃあお願いします。
(管理人)遺体が帰って来てね自治会で葬式を出そうと…。
中村さんあれだけ羽ぶりがいいから大金持ちかと思ったら葬儀代もないし子供らも「20年前家を捨てた父は知らない」なんて。
全く人生なんか…さよならだけが人生なんてね。
その点西村さんは幸せ!そうかねえ。
(管理人)鍵忘れないでね。
いい娘さんだね。
パキパキして…。
父も昔随分悪いことしたのよ。
今は虫も殺さない顔してるけど。
悪いことって何を…?…したでしょう!!お母さんを随分泣かせたわよ!へえ〜。
そうなの。
ハハ…仕事仕事。
(激しい雷鳴)
(与平の娘たちの泣き声)直子:お父さんがママを殺したのよ!!
(かすみ)な〜に。
どうしたの?母さんによく似ててびっくりしたよ!そうなの…。
年とともに似てきちゃった。
札幌から来たのか。
15年目なのでみんなでお墓参りに…。
梓姉さんもオーストラリアから…。
ああ…。
梓もわざわざ来るのか?お父さんの今後の事を話したいと思って…。
私はここで暮らすからね。
まあその話は後でしましょう。
お父さん老けたわね…。
半ボケよ。
私大変なのよ…姉さん。
《ああ…びっくりした。
信子が出て来たかと思った。
どうせ俺が老けたとかボケたとか何年で寝たきりになるとかその時の介護はどうするとか好き勝手に言ってるんだろう。
どれだけ苦労して育てたのか彼らは少しも考えない》じゃあ行って来ます。
モモお願いします。
トイレ用のペットシートはキッチン。
ドッグフードは流しの下。
餌は1回午後3時。
分かってる。
する事があってうれしいよ。
じゃあ行って来ます。
餌は午後3時。
水を取り替えて…。
モモとベランダに出て日光浴。
マーケットで買い物をする。
(梓)お父さん!お久しぶり。
おお…久しぶりだな。
ご苦労様。
わざわざオーストラリアから。
私は一人…。
主人は忙しいし子供らは学校。
(かすみ)あら…狭いベランダねえ。
私の家だとこの建物の広さよ。
(直子)少し言い過ぎよ。
(かすみ)ここ幾らしたの?
(直子)5000万円…。
ね…お父さん。
全部私の貯金と退職金だ。
(直子)いいじゃない7年も私と主人と一緒に暮らせて…。
感謝してほしいね。
私を狭い六畳に押し込めて…。
(直子)ほらこれだ。
ならひとりで暮らせば…誰か雇って。
誰が私みたいに尽くしてくれる?娘だからかゆいところに手が…。
かゆくてたまらないよ。
心がね…。
(直子)だから姉さんらと相談するの!
(かすみ)札幌は寒いし。
(梓)外国は肉ばっかりよ。
うるさいね!何でも話したらいい。
ここは私の家だ!
(店員)2点で392円になります。
・
(中谷刑事)ちょっと伺います。
あなた坂本絵里さんですね。
(木村刑事)郡山の実家のメッキ工場から「青酸カリが盗まれた」と警察に届け出があり…。
知らないわ。
先月実家に戻りましたよね。
ええ…。
あなた…殺された中村さんと同じマンションですよね。
…中村さんは刃物で刺されたのでは…。
8時ごろ中村さんがパチンコの景品のバックを持ち3階に上がったのが監視カメラに映って…。
あなたの所へ行ったんですよね?そうよ。
友達になってくれって…断ったわ!失礼します。
・
(留守番電話の声)ただいま留守に…。
まだ来てないのかな?鍵がない。
どういうわけだ?すみません。
この辺に鍵が落ちてなかった…?黄色いリボンが付いてる…。
(店員)鍵ですか?落ちていませんでしたよ。
あ…そう…。
そうかモモの御飯は午後の3時か。
ドッグフードは流しの下にあると…。
…うん。
分かった。
坂本絵里は青酸カリを盗んだ確率が高いですね。
でも中村老人は刃物の傷でのショック死だぞ。
でもあの老人に刺せますかね?…かえり血も浴びてないし…。
だが動機はある。
自分のマドンナにちょっかい出されそれで腹を立てて。
よく老人ホームで女のことで殺し合いの喧嘩になるだろ。
・
(相楽)どこかへ行きますよ。
(小鳥のさえずり)ああ3時にモモの食事か。
ベランダに出して散歩する。
ペットシートを取り替える。
いや〜過ぎちゃったよ。
よ〜し…。
(工場のサイレン)・
(外国人)ココ…サカナツレル?さあ…どうかねえ。
昔昔…ロングロングタイムアゴーね。
魚…メニィメニィフィッシュいました。
こう…クロールバタフライ…。
中村さん!ウインドがね少し寒いから…帰る!イエ…ドコ。
ニアですよ。
私帰るから!イッショニイク。
…やめて!!・
(相楽)やめろ!!
(頭山)待て待て待て!!お前だな!中村さんの家に入ったのは!!おじいさん大丈夫…!?はあ…大丈夫です。
3時にモモの御飯。
それからベランダに出して散歩か…。
(モモの鳴く声)3時にはモモの飯か…。
モモお腹すいたろ?ごめんなさいね。
お水も飲みたかったろ?ごめんなさい。
絵里ちゃんごめんね。
犯人が捕まってホッとしたわ。
多分空き巣が居直って殺したと思ってたんで暗い道の1人歩きが怖くて…。
中村さん生活が派手だったので狙われたんでしょう。
おじいちゃんは?今寝てますが伝えておきますから。
お帰りなさい。
(信吾)ご苦労さまです。
犯人の逮捕ニュースで見ました。
刑事さんの顔も映ってましたよ。
あんまり不細工なんでびっくりしました。
お父さん…。
どこ行くの?ちょっと小腹がすいたんで。
「はる美」行くの?大丈夫?お小遣いはあるの?まだ1万円がちょっと残っとる。
どちらですか?送りますよ。
いや結構…。
ご遠慮なく。
パトカーで飲みに行くのもオツですよ。
大丈夫ですよ。
ナイフ?あった?よかった!どこに?
(中谷)自供どおり第2徳田橋の下の川底です。
マル害の血液もついてたんで。
了解しました。
お陰でいい仕事ができてました。
感謝します。
西村さんパトカーは初めてですか?昔から何度も乗ったよ。
いや乗せられたね。
俺は昔拳闘やっててね。
ならしたもんさ。
さあどうぞ!ああ何か怖いね。
新聞記者でしたよね?拝読しましたよ。
自分で書いた記事なんて持ってないでしょ?差し上げます。
あとでゆっくり読みましょう。
3階の坂本絵里さん…。
え?青酸カリ所持の可能性があります。
注意してください。
(原田)車出します。
いらっしゃい。
いつからこんなメニュー出すようになったの?いつもと同じよ。
大根の煮たのあるけどおいしいわよ。
もらうよ。
肉ジャガもいい味が出てるぜ。
鍋島さんおビールなら言ってくださいね。
私が出しますから…。
いいじゃないの。
ここは俺の店のようなもんだ。
この方ね鍵かけてあっても勝手に入ってくるのよ。
怖いわまったく。
あのねすみませんけどお願いがあるんですが…。
なんだい言ってみな。
あの…鍵をなくしてね部屋に入れなくなっちゃって。
ああそうかい。
私の部屋じゃないんですがね。
友達に犬の餌やりを頼まれたんですがね。
どこへいったか鍵がない。
鍵がない?ペット禁止のマンションなので頼める人がないもんですからね。
それは普通の鍵かい?普通?ピッキングが流行してて鍵を取り替えてる家が多いでしょ?普通の鍵です。
分かりました。
ビールを飲んでから…ハイ。
お願いします。
引き受けてもいいけどまだ早いですよ。
10時ごろがいいんですよ。
あらあら大根まだだったわね。
鍋島さん?はい。
あのねこれ些少ですがお礼の気持でね…。
いえいえ。
人助けですから。
そうですか助かります。
直子お父さんお寿司食べるかな?ううん。
もう済ませてるのいつものお店で。
じゃお茶は私が…。
さ〜っ食べよう。
おいしそう…。
お父さんお茶が入りましたよ。
ここに置きますからね。
熱いから気をつけてね。
(テレビの音声)
(直子/梓)かんぱ〜い!お父さんしばらく見ないうちに急に老けたね。
去年ぐらいからひどいのよ。
お母さん亡くしてから元気ないもの。
お父さんが優しくなかったからよ。
病気の時は夫の愛情が一番だから。
(梓)女いたんでしょ?
(直子)新聞社の社長秘書してた…え〜と桜田さん。
(梓)違う確か花の名前よ梅田さん。
橘さん…。
そうそう橘…よく覚えてたわね。
右近の桜左近の橘って覚えたのよ。
それは左近の桜右近の橘よ。
あら逆だった?橘さんっていた。
確かに。
3時半の女よ。
(梓/直子)そうそうそう。
毎日午前3時半になると電話が鳴って…。
「社長秘書の橘でございますおはようございます」…嫌だ。
幽霊みたいな声だった。
毎日だものでもお父さんもひどかった。
「うるさい!文句あるなら死ね。
お互い大人同士納得づくで楽しんだ。
ただそれだけの事だ」。
若いころのお父さんわがままで気が強かった。
電話で話がつかず「出かける」ってお父さんをそれを止めるお母さんともめて…。
(梓)一晩中眠れなかった。
(テレビの音声)お母さんいつも静かに笑ってたけど橘さんの事が終わったあたりからひどくなったよね。
「離婚してくれ」から始まって家出やウツで困ったわね。
急にお母さんが死んだのはまるでお父さんに復讐したみたい。
心臓発作が起きた時ニトロが近くになかったのよね。
私たちも出かけてたしね。
それを思うとやっぱり…。
お母さんをあそこまで精神的に追い込んだのはお父さんよ。
昔の男は横暴でわがまますぐに暴力を振るう。
私はノーサンキューね。
ああいう男は。
お父さんお母さんに優しくなかったもんね。
でももう15年経って時代も変わったし時効ね。
お父さんこれからこのまま?私はね北海道に来てもらってもいいけどやはり寒いでしょ。
外国住まいは年とってから大変よ。
お父さん大丈夫ですか?
(直子)どこ行くの?囲碁の会だよ。
(直子)女の子と五目並べでもするの?行ってくるよ。
(直子)鍵は?鍵持ちましたか?持ってる。
気をつけてね。
ねえお父さんどこ行ったのよ。
多分3階よ。
ガールフレンドがいるのよ。
嫌だ…。
まだやってんの!?10時ピッタリですね。
いいマンションだな。
高かったろ?いいやそれほどでも…。
じいさん意外と金回りがいいんじゃないのかえ?始めるか。
(鍵の開く音)ああ…。
やあ〜ありがとうございました。
よかった。
どうなることかと思ってた。
安心しました。
おおモモか?モモっていうのか。
腹すいたか?今飯こしらえてやる。
え〜と餌の次はペットシートペットシートね…。
じいさん何やってんだい?あのペットシート…。
ペットシート?犬の糞紙…砂場というか…。
そんなことより水と餌がありゃ死なねえよ。
ちょっと待ちなよ。
あの…。
うん?これね…。
いやあの…。
本当にお礼の気持ですから…。
なんだこら?これが礼だってか?じいさんよ。
法律に触れることやらしといてこんなはした金で済ます気か?高くつく仕事なんだよ。
そんなつもりじゃなくただね…。
金がないとは言わせないよ。
こんな贅沢なマンションに住んでるんだ。
あ。
うん。
そうだな…。
現金で50万円いただくか。
警察なんかに言うなよ。
警察?嫌だろ?あんたの家族に迷惑かかるのは俺も嫌だ。
だから50万円出せよ。
明日までに作って払います。
ちゃんとはる美に持って行きますから。
あこれ?いらねえよ。
分かればいいんだよ。
ご勘弁ください。
しかし何もない部屋だなシケてやがる!宝石もねえしクズばっかりだ。
やめてください!ただじゃねえか。
いいから…。
盗むなんてことやめてください!お〜っ…いい酒があんじゃないか。
あ〜っ…。
これを頂いていくわ。
前金の代わりだ。
いいだろう?じいさん。
じゃなあばよ。
俺はどうすればいいんだよ。
50万円なんてないしあるのは定期預金だけだ。
それだって直子の許可がなければ…。
直子をまた怒らせることになる。
ああなんてバカなことしたんだ。
またそれ以上に言ってくるに違いねえ。
バカだった。
俺はバカだった。
ああ〜っ。
うわっ!ボケたなあ…。
ああ〜。
失礼します。
何でもないよ。
何してんの!?何この鍵?まさかお父さん合い鍵もらってるの?違うんだ!電話…この部屋の女の人じゃないの?・絵里です。
・モモは元気でしょうか?お世話を頼んでごめんなさい。
ちょっと気になったので…。
おじいちゃんは心配ないけど押し入れのレミー・マルタン…劇薬が入ってるの。
絶対飲んじゃダメよ。
絶対…。
劇薬の入ったレミー・マルタンって?どこ行くのよ?レミー・マルタンは?空き巣が持っていったんだ。
お父さん!いいから!何やってんのお父さん!いいから!何よどこ行くのお父さん!鍋島さ〜ん!鍋島さんは!?あなた誰?西村与平の娘です。
鍋島さん…。
西村さんに頼まれてマンションの鍵とか何とか…。
レミー・マルタンを盗んだんです。
レミー・マルタン…。
その中に青酸カリが!えっ!そのお酒の中に青酸カリが入ってるんです。
その部屋の人が自殺するために入れたらしいの。
早くしないと飲んでしまったら…!どこへ?110番…。
ダメです。
やめてください!だって警察に!主人教員なんです。
もし公になったらクビになります。
父が空き巣に頼んで他人の部屋の鍵開けるなんて…。
お願いですから。
でもどうやって捜すのよ!?パジャマに着替えて。
興奮しないで血圧上がるから。
直子が行ったから大丈夫だからね。
警察へ行くんだよ。
お義父さん警察はダメですよ。
鍋島が死んだらどうするんだ!?へへへっ!へへ〜っ!ここよ。
よかったホラ!「日の出アパート」聞いたことあったから。
(ノック)鍋島さんいる?いないわ。
あの人ケータイ持ってない?持ってないわ。
今電話はあったけど。
お金が儲かったからレミー・マルタンで祝杯あげるんだって。
どこで飲むんだって?知らないわ。
ああいい香りだ。
いい香りだ。
いい酒っていうのはいい香りだぜ。
(信吾)お義父さん僕が一緒じゃダメですか?もともと私から始まったことだから。
何か電話あった?ないよ。
じゃ一緒に警察行きましょ。
ひとりで大丈夫だ。
こんなにフラフラしてて。
大丈夫だ。
私が行こうか?私なら夫の仕事にも支障ないから…。
みんなで行こう!大丈夫だ!!怒らなくたっていいじゃないよ!
(パトカーのサイレン)鍋島さんか!?鍋島だったよな…確かに…幻じゃないよ。
ああ…生きててよかったな。
ありがとう。
あの空き巣ね。
うん。
近所の事務所に入って社長室で800万円の現金に大喜びしてレミーを飲もうとした時に警備員に見つかって飲まなかったんだって。
危機一髪よ。
レミーは?警備員との格闘で割れたって。
そう警察が来たのか…。
ええ。
じゃ私も事情聴かれるな。
大したことないわよ。
坂本さんに悪いことしたな。
青酸カリのことで警察に呼ばれるなんて。
警察そのこと知らないわ。
だってレミー割れたもの。
でもはる美の女将は知ってるだろう?はる美の女将さん?黙ってようって。
鍋島のことにはかかわりたくないって。
ああ…そうかね。
ねえ直子…お父さん本当に3階のあの娘に参ってんのかしらね。
私や信吾がお父さんにそんなに冷たくしたかしら。
寂しかったんでしょう。
お父さんきょうはお母さんの命日よ。
ああ。
悪い男だね。
お前が死んでしまうとね。
ああした生涯とは一体何だったのかと考える時がある。
かわいそうなことをした。
年とったわね本当に…。
私が信子を殺したんだよ。
(直子)ああまた始まった。
一生そうして自分を責めたらいいのよ。
もう分かったから。
昔あれだけ女道楽したんだから気が済むまで「ごめんなさい」と言ってなさい。
お母さん笑ってるわ。
バカな人ねって…。
それにしてもきょうで15年…時効ですよ。
(直子)何言ってんのよ時効だなんて。
・ただいま!
(モモのほえ声)モモただいま。
おじいちゃん大変お世話になりました。
お帰りなさい。
元気そうでよかったね。
すっかり元気になった。
お寺など回って楽しかった。
ちょっと待ってお茶いれる。
お茶はいいの。
腰がね…。
大丈夫?じゃドクダミ持ってって。
はいドクダミ。
それと京都のお土産。
いいよ。
私は絵里さんの役に立てばと思っただけだ。
レミー・マルタン捨てたよ!捨ててくれたんだ。
まあ人間はどっちみちあの世へ行くんだからね。
急ぐことはない。
ああ恋をしなさい恋を…。
ラブね…。
私おじいちゃんのこと好きよ。
本当よ。
私はね絵里ちゃんの役に立ちたかっただけだ。
おじいちゃんありがとう。
これはお漬物と八ツ橋。
せっかくだから食べてみて。
ありがとう。
ああうれしいね。
よかった。
そう…鍵を返さないと…。
いいのおじいちゃん。
持ってて…。
え?そう。
「私事になるがつい最近家内を亡くした。
私と34歳30歳18歳になる3人の娘が残された。
『去年今年貫く棒の如きもの』という高浜虚子の俳句があるが初夏の妻の死から年が改まったこの春まで貫く棒などどこにもなく私は…私と3人の娘はただただ茫然自失の状態で日を過ごした。
妻はウツ病のまま死んだ。
私が殺したと私は喚き娘たちも父親の罪だとなじった。
冬を越し春になった。
桜が咲き始めたころ庭で娘たちの騒ぐ声が聞こえるので庭に出ると1匹のカエルがいた。
青緑色の大きなカエルがうららかな春の日を浴びて妻の好きだった桜の木の下にギョロリとした目をむいて座っていたのである。
ママが来たのよと娘らが言った時私の髪がそうけだった。
そうだねこれは妻なのだ妻が来たのだと私も思った。
お父さんは今まで一度もママを愛しているとか言ったことがない。
一度たりとも好きだとか大切にしているとか愛していると聞いたことがない。
一度くらい愛してると言ってあげて。
このカエルはきっとママだから…。
そう言われた。
私はカエルを手のひらに乗せた。
愛していると言った。
娘たちは泣いた。
もう一度言った。
愛している。
すると桜の花が風もないのに花をまき散らした。
絢爛たる景色であった。
カエルは私の手のひらの上で短く嬉しそうにケケっと鳴いた。
その日から娘たちは私を許した様子だった。
私事恐縮至極」カエルが出たわね。
カエル?これお父さんの記事のコピーポケットに入ってた。
そんなことあったかね。
カエルがね…。
庭にカエルが出た時があったでしょ?う〜ん。
そんなことがあったっけね…。
あ〜ん。
おいしい?お父さんこの部屋に畳敷こうか?いいね。
ああ全く幾つになっても…バカな男だ。
(昔の歌を口ずさむ与平)2015/08/03(月) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「小池真理子サスペンス・鍵老人」[字]
自殺願望の娘と孤独な老人に迫る恐怖!ピッキング多発マンション殺人事件…。
詳細情報
番組内容
妻に先立たれた老人・西村与平は、彼が所有するマンションに、三女の直子とその夫で教員の原田信吾の三人で暮らしていた。ある日、与平が亡妻の墓参りに向かうバスに乗っていると、同じマンションに住む若い娘・坂本絵里が、何度も携帯電話をかけたり切ったりしている姿を目にする。
番組内容続き
絵里は失恋のショックで会社を辞めてしまったらしく、与平とは今までもマンションの近くでよく会っており、そんな彼女を与平はかねてから気にしていたのだ。すると突然、青酸カリを持っていると携帯で話す絵里の声が聞こえてきた…。
出演者
西村与平…森繁久彌
坂本絵里…牧瀬里穂
長女・かすみ…岩井友見
次女・梓…和泉ちぬ
三女・直子…五十嵐めぐみ
鍋島…石倉三郎
静枝…水野久美
中村吉郎…田口計 ほか
原作脚本
【原作】小池真理子
【脚本】竹山洋
監督・演出
【監督】小林俊一
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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