情熱のシーラ(8)「祖国のために」 2015.08.02


(ロザリンダ)ピーターがもうすぐモロッコに来るのよ。
(シーラ)ピーターって誰?フッ。
誰ってシーラ。
私の夫。
大変なことにならない?
(ベイグベデル)こんにちは。
ピーター・フォックスさんではありませんか。
あなたはめったにない特別なお客様です。
(マーカス)お母さんがスペインを出た。
ホント?じきモロッコに着く。
一体どういうこと?ピーターに言われたのよ。
私とジョニーもインドへ戻れって。
(バスケス)新聞記者のローガンの事で気になる事がある。
あの男は信用できん。
(パロマレス)何かあると?
(バスケス)そもそもいろいろと嗅ぎ回っているのが気に入らない。
ドイツ人はロザリンダをベイグベデルから引き離したい。
彼女が悪影響を与えると思ってるから。
そのドイツ人の名前はブラウン。
奥さんを知ってるわ。
じゃあ全てその紙切れに懸かってるの?ロザリンダの人生も何もかも。
何か口実を見つけて家に入り金庫を見られないかな。
手形を盗むの?時間はかかるだろうけど。
2時間もブラウンさんを引き止めるなんて無理よ。
やるしかない。
ほかに方法はないんだ。

(置き時計の時報)
(シーラ・キローガ)ジャミーラ!ジャミーラ。
(ジャミーラ)はい。
お願いがあるんだけど。
はい。
ケーキ屋さんへ行っていちばんおいしそうなお菓子を買ってきて。
でティーポットを2つ用意して。
分かりました。
ブラウン夫人が仮縫いに来るから来たらすぐお茶とお菓子を出して。
熱いお茶よ。
飲むのに時間がかかるように。
分かった?任せてください。
できるだけ引き止めておきたいの。
いい?分かりました。
じゃお願い。
さあ。

(マーカス・ローガン)警察だ。

(呼び鈴の音)ブラウンさんお待ちしてました。
お掛けください。
お茶はいかがです?
(ブラウン夫人)いいえ結構。
やらなきゃならないことが山ほどあるの。
仮縫いの用意はできてる?ええもちろん。
でも今日はすごくおいしいお菓子があるんです。
ジャミーラ!ジャミーラお願い。
ああよかった。
まあホント。
とってもおいしそう!ウッ。
ウーン!すごくおいしい。
でしょう?ウーン。
ウフフフッ。
ウーッ!熱い!ヤケドしそう。
そんなに熱いですか?ジャミーラ何度言ったら分かるの。
すみません。
じゃ冷めるまで雑誌でもご覧になっててください。
どうぞ。
ありがとう。
ホントどうもすみません。
すぐ戻ります。
まだ最初の仮縫いですから少しくらい緩く感じたとしても大丈夫です。
必要なところは直しますので。
(ブラウン夫人)すごいわ!娘の結婚式で神経質になってるから太ったと思ってたの。
なのにピッタリ。
ええ。
それでも少し調整が必要かと…。
ウソみたい。
相当直してもらわなきゃいけないと思ってたから。
ここのところすごく食べてたの。
サイズが上がってもおかしくないくらい。
ハァ…。
まだかかりそう?ええしばらくは…。
少し休みますか?そうじゃなくてどうしてそんなにかかるのか分からないの。
サイズはピッタリなのに。
それは娘さんの結婚式ですから完璧にと。
もう完璧よホント。
とにかく用事がたくさんあって急いでうちに戻らないといけないの。
ハァ…ハァ…。
よければお直しする間お茶でも。
いいえ結構。
もう2杯も頂いたわ。
本当にすぐ帰らないと。
待ち針を取ってきます。
そのままお待ちいただけますか?急いでね。
(足音)ハァ…ハァ…。
(ドローレス・キローガ)どうしたの?ハァ…困ったことが…。
えっ?ゆうべ私が縫ってたドレスがあるでしょう?ええ。
そのお客さんが今来てて。
彼女をなるべく引き止めておかなきゃいけないの。
引き止めるってなぜ?話すと長くなるから…。
まずいことに関わってるの?ハァ…大丈夫。
でも母さんはなるべく知らないほうがいい。
ちょっと落ち着いて。
だってどうしていいか…。
もう帰るって言うの。
それを引き止める口実を思いつかない。
ハァ…。
ここに引き止めておきたいのね。
ええ。
私に話をさせて。

(鐘の音)ブラウンさん。
母を紹介します。
ドローレスです。
母もマドリードで仕立てをしてました。
はじめまして。
もう着替えていいかしら?ええ仮縫いは終わりました。
ただ…。
何ですか?いえ大したことじゃありません。
ちょっとした提案です。
でも大変お急ぎなんですよね?どうぞ言ってください。
襟回りです。
おかしいですか?いえ。
今のままでもすてきです。
ただちょっと…。
細かいことです。
よろしいですか?見てシーラ。
ん?ほんの数cm…。
うん。
分かるでしょう?ええ。
更に鎖骨が美しく見えますよ。
フム。
でもお時間がないんですよね?あと少しなら大丈夫です。
ああよかった。
じゃお直しします。
アァ…私鎖骨がとてもきれいなのよ。
みんなに言われるの。
アハッ本当に。
シーラ巻き尺を持ってきて。
ええ。
裾も少し上げてくださる?足首もとてもきれいだって主人が言うの。

(扉を閉める音)
(物音)
(ブラウン氏)おい!待て!
(銃声)
(ブラウン氏)待て!止まれ!
(若者)ブラウン様から奥様に言づてが。
どうぞ。
(若者)奥様すみません。
ご主人がすぐうちに帰るようにと。
何かあったの?詳しくは伺ってませんがお宅に泥棒が入ったようです。
すぐ行くわ。
お手伝いします。
泥棒は捕まったんですか?それは分かりません。
ハァ…。
(呼び鈴の音)
(ジャミーラ)ローガンさんお入りください。
ありがとう。
ああよかった…。
アァ…。
ハァ…。
ハァ…。
フム。
大丈夫?ああ安心して。
旅券と手形を持ってきた。
ホント?ほら。
アァ…。
ウフフッ。
アッ…。
ありがとう。
ウフッ。
捕まるところだったんでしょ?ホントあなたに申し訳なくて…。
そんなふうに思わないで。
でも…。
ん?それより針と糸をもらっていい?もちろん。
フッ。
これでいい?ほら笑って。
全てうまくいったんだから。
フッフフッ。
フッ。
(ドアマン)捕まえようとしたときに殴られました。
(バスケス署長)金髪で背が高く立派な男でしたか?はい。
なるほど。
この人?ええそうです。
この男です。
ありがとうございます。
大変助かりました。
金めのものは何もなくなってないんですね。
ええ金庫にあった書類だけです。

(せきばらい)
(ロザリンダ・フォックス)シーラ。
ああ…散らかっててごめんなさい。
荷造りしないといけないんだけどなかなかやる気になれなくて。
荷造りなんか必要ないわ。
ええ。
いつもなら自分でやらなくていいんだけど。
ピーターのせいで使用人がみんな辞めてしまって。
あなたはもうどこへも行かなくていいの。
どういうこと?これを。
何なの?ピーターの約束手形と旅券よ。
ハッ…。
一体どうやって手に入れたの?ねえ。
それは知らないほうがいい。
ああ…。
過ぎたことはどうだっていいの。
大事なのはこれからのこと。
これさえあればピーターは何も言えない。
それどころかもうあなたの言いなり。
ウフッ。
ありがとう!ありがとう!ウフフッ。
ウフフフッ。
アー!
(2人の笑い声)あなたは恩人よ。
本当にありがとう!ああ!ここに居られるのよ。
信じられない。
ホント信じられない。
夢みたい。

(ノック)
(ベルボーイ)あの…お邪魔をしてすみません。
でもおっしゃいましたよね。
もし警察が来たら知らせてほしいと。
その…。
来たのか?どうもああ…。
署長さんが表に車をとめました。
ありがとう。
ありがとうございます。
(ドアを閉める音)すまない。
マーカス・ローガンさんの部屋は?
(フロント)はいローガンさんなら…。
(パロマレス警部)署長!ローガンさん。
ちょっとお話が。
ローガンさん!
(パロマレス)逃げるな!
(バスケス)止まりなさい。
待て!ローガン。
止まるんだ!ローガン止まれ!ウッ。

(悲鳴)ごめん悪かった。

(カバンを落とす音)
(飛び降りる音)
(手すりをたたく音)ウハッ…ウン。
ウン。

(ピーター・フォックス)荷造りが終わったようだな。
お友達のベイグベデルにお別れはしたのか?フッ…それは私の荷物じゃない。
あなたのよ。
私がお別れしなきゃいけないのはあなただけ。
何を言ってる。
旅券よ。
どうやってこれを…。
これも必要よね。
ドイツ人に借金があるんでしょう?それからいい知らせと悪い知らせがある。
いい知らせはあなたの約束手形が消えたこと。
で…悪い知らせは私に借りができた。
だからどうやって手に入れた…。
そんなことはどうだっていい。
もしまたここに現れたら手形をドイツ人に返すから。
さすがは君だな。
見事なお手並みだ。
使用人が戻ったから荷物を運ぶの手伝ってもらって。
フフン。
さよなら。
私工房を手伝おうかと思うんだけど。
そう!針に糸を通したくなって。
うれしいわ母さん。
(少年)すみませんこれを。
ねえ待って!まあ…。
(手紙)「なるべく急いでメディナへ来てくれ。
あのシルクのスカーフを買った店へ。
誰にも知られないように」。
シーラ。
アァ…。
市場には1人で行けるわ。
本当に?大丈夫。
シーラ。
あの夫人を引き止めておきたかった理由は聞かないけど気をつけてね。
母さんがいて助かった。
お前が大丈夫だったら私は大丈夫。
(キスの音)さあ行きなさい。

(クラクション)
(バスケス)こんにちはキローガさん。
こんにちは署長。
何か用事でもあるんですか?いえ別に。
急いでるようでしたが。
いいえ買い物に行くだけです。
何でしょうか?
(車のドアの開閉音)マーカス・ローガンが宿泊先のホテルを出たんです。
彼が今どこにいるか知りませんか?いいえ。
知りません。
残念ですが。
本当ですか?あなたたちは友人なのかと。
知り合いです。
でも居場所は知りません。
何かありました?ローガンは指名手配されています。
どうして?フン。
詳しいことは話せません。
もしローガンから何か連絡があったら真っ先に警察へ知らせてください。
いいですね。
もちろんです。
ああよかったら送りましょうか?いえ結構です。
頭をすっきりさせたいので歩いていきます。
マーカス。
行こう。
呼び出して悪かった。
工房には行けないから。
分かってる。
バスケス署長に聞いたわ。
指名手配されてるって。
モロッコを離れないと。
じゃなぜまだ居るの?君にさよならを言いたかった。
私たちまた会える?何も約束はできない。
新たな戦争が起きたら僕はどこへ行くことになるか…。
またいつか僕らの歩む道が交わるといいけど。
ハァ…。
そうね…。
じゃあそのうち恋人のためにドレスが必要になったらいつでも頼みに来て。
キスして。

(ミシンの音)・
(ため息)大丈夫?うん。
ちょっとぼんやりしちゃった。
(足音)
(フェリックス)ラジオつけて。
どうしたの?聴けば分かるよ。
(足音)
(ラジオアナウンサー)「フランコ総統司令部より本日の公式戦況ニュースを全国民にお伝えします」。
(アナウンサー)「1939年4月1日。
開戦から3年。
共産主義の共和国軍は本日捕虜となり武装解除された。
これにより国民軍は…この戦いの最終目的を果たした。
戦争は終わった。
1939年4月1日ブルゴスにて。
勝利の年。
総司令官フランコ総統」。
ハァ…やっとだ。
待ちかねたよ。
終わったのね。
さあ街へ出て祝おう。
フェリックス待って。
私は行けない。
仕事があるから。
ちょっと…それじゃ駄目だって。
戦争が終わったのに。
そんな日でさえミシンから離れられないのか?ちょっと気晴らししてきたら?私1人でできるから。
本当?行こう。

(鐘の音)
(男1)スペイン万歳!
(男2)フランコ総統万歳!
(一同)万歳!みんなどうかしちゃったみたい。
(男3)スペイン万歳!これからどうなるの?ジブラルタル海峡をまた客船が行き来するようになるって。
ああ列車も。
またマドリードまで走るようになる。
どうした!?うれしくないの?ええ。
もちろんうれしいわよ。
そのスカーフ久しぶりだね。
そう?あの新聞記者を吹っ切れたってことかな?吹っ切るも何も…。
君がそう言うなら。
ほら。
じゃ行こう。
ベルモットおごる。
ねえ。
あとでうちでやりましょ。
ちょっとカンデラリアの顔を見てくる。
(エルミニア)サグラリオ早くグラス持ってきて。
(フアニート)今日は僕も飲んでいいのかな?ええ特別な日だから。
ねえフランコ総統にはモロッコ人の護衛がいるのよ。
(ベニータ)まあ本当なの?
(カンデラリア)ラジオ聴いた?だから来たの。
ああバカ騒ぎが終わった。
マリア様のおかげでもう兄弟で殺し合わずに済む。
とりあえず今はね。
みんなの様子は?そりゃまあみんな内戦が終わって喜んでるけど喜び方にはふたとおりあるね。
ええ。
誰が来たと思う?
(エルミニア)あら!こんにちは。
(サグラリオ)まあシーラ。
いらっしゃい。
フアニート。
シーラに1杯あげないと。
ああ待って。
今日は一生忘れられない日になったわ。
ついに私たちの祈りが聞き入れられた。
ありがとう。
(サグラリオ)スペイン万歳!フランコ総統万歳!
(エルミニアベニータ)万歳!
(サグラリオ)万歳!
(鐘の音)
(セールスマン)失礼。
お別れの挨拶を…。
スペインに戻るんですか?いいえ。
スペインから逃げてベネズエラかどこか平和に暮らせる場所へ行きます。
(鐘の音)お世話になりました。
皆さんお元気で。
(ベニータ)だけどどうして今になって行くの?もう全て終わったのに。
とんでもない。
これは始まりです。
(エルミニア)引き止めることない。
敵が逃げるって言ってるんだから。
母さんやめてよ。
お黙り!新しいスペインに共産主義者の居場所はないわ。
いつの日かこの戦争が何かの役に立つことを祈ります。
さようなら皆さん。
あんなどうしようもない国誰が治めようと知ったこっちゃない。
ここはあんたのうちだよ。
いつでも帰っておいで。
いいね。
さみしくなるよカンデラリア。
皆さんのこと忘れません。
さようならお元気で。
マドリードはどうなるの?
(ドローレス)どうなるのかしらね。
これからどうする?帰りたい?よく分からない。
母さんは?私はここでいい。
(呼び鈴の音)だったら決まりね。
ここに残りましょう。
ウフフッ。
ウフフフフッ。
ロザリンダ!シーラ!
(2人)ウーン!ごめんなさいね。
ずっと連絡しなくて。
内戦が終わってからバタバタで…。
新内閣を作るからみんなもう大変なの。
特にフアン・ルイスはね。
でしょうね。
お母様お会いできて光栄です。
こちらこそ。
じゃごゆっくり。
ハァ…実はとても大事な話があるの。
なに?ハッ…。
まだ公にされてないんだけど数週間後には発表されると思う。
でも…絶対秘密にするって約束して。
ええもちろん。
フランコはフアン・ルイスを外務大臣に任命すると決めたらしいの。
大臣?ハッすごいでしょう?フアン・ルイスのように有能で感性豊かな人が選ばれるなんてすばらしいと思う。
じゃ彼はマドリードへ行くのね。
あなたは?一緒に行くの?もちろん。
シーラ悲しまないで。
私だってここに居たいけど彼とは離れられない。
分かってる。
だけどすごく寂しくなるわ。
私も。
でも考えないようにしましょ。
まだ何週間かはここに居るし。
このテトゥアンで何年も語りぐさになるような最高のお別れ会を開くから。
アハッ。
ウフフッ。
(バンドの演奏)そんな顔しないで。
お願いだから。
パーティーだってことは分かってるよ。
でも気分は葬式だ。
だから黒いタイにした。
ウフッ。
大げさね。
(バンドの演奏)ロザリンダ無しでもやっていける。
うん。
しょうがない。
でも彼女の居ないテトゥアンなんて…。
僕は寂しいよ。
私だって。
そうだね。
(フアン・ルイス・ベイグベデル)私たちの人生はこれでがらりと変わることになるよ。
ええ分かってる。
ここでは幸せだった。
ウン。
全てを投げ出してこのままでいたければまだ間に合うかもしれない。
運はいつも私たちの味方だった。
ウフン。
また試してみる?やってみよう。
アハッ。
じゃあもし黒の石が出たら前へ進む。
でももし白が出たら任命を辞退してテトゥアンに残る。
そうできたらいいけど無理だと分かってるでしょう?スペインにはあなたが必要なの。
私の国にもね。
それに何があろうと私たちの愛は決して変わらない。
約束できる?ウフン約束する。
ウン。
さあお客様があなたを待ってる。
君は来ないの?すぐ行くわ。
ウン。

(バンドの演奏)
(拍手)ようこそ。
こんにちは。
(招待客)どうも。
(バンドの演奏)ようこそ。
どうも。
こんにちは。
(バンドの演奏)
(拍手)
(バンドの演奏)ようこそお越しくださいました。
お世話になった友人にお別れを言いたくて今日このような会を開きました。
一緒にテトゥアンの魅力を堪能しましょう。

(拍手)
(足音)ロザリンダ。
ハッシーラ。
アッ…。
大丈夫?お酒を飲むとすぐ感傷的になってしまって…。
これ以上私に飲ませないでね。
ここでは幸せだった。
フェリックスは今日黒のネクタイ。
お母様が亡くなった?ウフッ。
いいえ。
ならうれしいだろうけど。
黒いタイはこのパーティーがお葬式みたいに思えるからだって。
ああ…。
もう…優しいのね。
彼に会った途端2人で泣き出してしまいそう。
ぜひ渡したい物があるの。
えっ?つまらないものよ。
ねえいい?これで私を思い出して。
ボタン付けが必要になって私がそばに居ない時。
ああ…。
ああ…すてき。
これからもあなたがそばに居て縫い物全部引き受けてくれたほうがいいけど。
すごくうれしい。
(キスの音)ハァ…。
私も渡すものがある。
一緒に来て。
これ全部置いていくの?残念だけど全部は持っていけないから。
このじゅうたんも持っていかないの?とてもすてきなのに。
そうなの。
まだ迷ってて…。
何?開けてみて。
ハァ…。
ウン。
ハァ…このドレス…。
急いで作ったから1日しかもたないって言ったわよね。
写真ならいつまでももつわ。
でも…ウッ。
フッ。
もらって。
このドレスで友達だと証明してくれた。
今度は私が泣きそうだわ。
絶対に駄目。
フフッ。
マドリードに会いに来るって約束して。
いい?これで私から解放されると思わないでね。
毎週手紙を書くから。

(足音)・
(ジャミーラ)セニョリータセニョリータ!セニョリータ。
ロザリンダ様からお手紙です。
アァ…ありがとう。
(呼び鈴の音)
(ノック)
(扉を開ける音)新しい手紙。
ウイスキー取ってくる。
まだお昼の12時よ。
だったら…ジンにしとく?ウッフッ。
間違いない。
彼女は絶対社交の才能を生まれ持ってる。
もちろん。
イギリス人なのにイギリスを信じない政府の大臣の愛人なんだ。
普通は爪はじきだろうにパーティーに招かれてるんだから。
そんなにうまくいってるのかしら?だって今ベイグベデルは…。
政府内で疎まれてるって書いてあるね。
彼を推したセラーノでさえ今は彼を嫌ってるって。
フランコはドイツ軍に内戦の借りがある。
だから政府内にイギリスびいきが1人でもいたら困るんだ。
彼を追い出す?大丈夫だって。
ベイグベデルなら何とかして地位を守る。
(扉を開ける音)・
(フェリックスの鼻歌)何が大丈夫なの?・
(フェリックス)えっ?今に追い出されるわ。
何のこと?ベイグベデルよ。
チャーチル首相に任命されたイギリス大使と親しくなったんですって。
サミュエル・ホア?そう。
その人と最近堂々と会ってるみたい。
でもなんでそんな破滅を招くようなこと…。
フッ。
ベイグベデルも根性あるね。
フランコを挑発してるんだ。
ドイツの戦争に介入しないよう助言しても誰も聞かないから。
スペインがドイツの戦争に?誰も止められなきゃそうなるね。
セニョリータ。
電報です。
ありがとうジャミーラ。

(電報)「タンジールでパーティーを。
9月1日午後7時新しいディーンズ・バーで。
マドリードの友より」。
(店内に流れる音楽)
(足音)ウーン。
パーティーに遅刻したわね。
キスしてくれないの?ウッフッ。
シーラ!
(キスの音)ああ…元気だった?ええとても。
どんなに会いたかったか。
突然で驚いたわ。
ここに居ることを人に知られたくなくて。
聞きたいことがたくさんある。
フアン・ルイスはどう?坊やは?元気よ。
それであなたは?元気?元気なの?ええ。
そう?ウーン。
アァ…。
シーラ。
あなたに仕事を紹介したいの。
ウフッ。
仕事はもうあるわ。
アハッ。
分かってる。
今と同じことをしてほしいの。
マドリードで。
マドリード?私はここでいいわ。
工房だって順調だし母さんもとても満足してる。
これはあなたの話。
テトゥアンの工房を閉める必要はないのよ。
この仕事は一時的なものにすぎない。
全てが終わったら戻ってこられるわ。
終わったらって何が?アァ…戦争。
フアン・ルイスはスペインが巻き込まれないためにあらゆる手を尽くしてきた。
でもそれも難しくなる一方。
だからなるべくスペインがドイツから圧力を受けないよう私たちもできるかぎりのことをしたいの。
スペインが争いに干渉しなければイギリスが勝つ可能性が高まるから。
それでどうして私が?イギリスの秘密情報機関に協力してくれる人を探してるのよ。
マドリード中に秘密の協力者が欲しいの。
ふだんは政治や外交と縁もゆかりもない普通の人だけど情報入手や観察ができて権力者の世界に入り込める人が。
スパイをするってこと?ウフッ。
落ち着いてちょうだい。
まあ…政府への小さな抵抗ってとこかしら。
ウン。
あなたのような人が必要なの。
ハァ…。
シルクの紐が無くなりそうだって言った?アラカマ夫人が仮縫いは木曜か金曜でって。
マドリードで…イギリスのためにドイツの情報を集めてほしいって。
スパイをしてくれと言われた。
工房を構えてナチの夫人たちを客にしてくれと。
でなんて答えたの?断ったわ。
母さんとここに居たいって。
でも考え直すよう言われた。
スペインがまた戦争をしないため?そうね。
イギリスはスペインに立ち入ってほしくないのよ。
ドイツと手を組んでほしくもないしそれがみんなのためだと。
アァ…。
助言が欲しい?ええ。
フーッ。
行きなさい。
手伝うの。
協力するのよ。
ハァ…。
スペインはもう戦争なんてできない。
そんな力は残ってない。
ハァ…ハァ…。
シーラ。
お前は戦争を知らない。
機関銃の音や迫撃砲の爆音で目を覚ましたことないでしょ?虫の湧いた豆を食べたことも。
おびえる人の目を見たこともない。
ハァ…イギリス人が活動するのはイギリスのため。
でもそれがスペインのためになるなら大歓迎よ。
私なら引き受ける。
できるかぎり協力する。
母さんを1人にはしたくない。
私だってまた離れるのはつらい。
でもやらなくちゃ。
マドリードに帰るの。
私はここで工房の切り盛り。
で全てが終わったらまた考えればいい。
あとは自分で決めなさい。
前の旅券はどうしますか?
(ヒルガース)破棄してください。
今からあなたの名前はアリーシュ・アゴリウクです。
条件が2つあります。
何です?マドリードの上流社会から一歩も出ないこと。
イギリス国籍の人物とは誰であろうと絶対に接触しないことです。
あなたの工房に客が来なければこれまでの指示も計画も意味がありません。
その客の獲得はあなたに懸かっています。
(エルザ)エルザ・ブルックマンです。
はじめまして。
あなたはマドリードできっと成功するわ。
(マルティーナ)エバ・ブラウンはブルックマンさんの家にいます。
緊急事態といいますと?
(ヒルガース)脅迫されたり強要されたり身の危険がある時です。
そんなことが?2015/08/02(日) 23:00〜23:52
NHK総合1・神戸
情熱のシーラ(8)「祖国のために」[二][字][デ]

お針子から名スパイへ!時代に翻弄されながらもたくましく生きた女性を描く魅惑のスペインミステリー。シーラは、ロザリンダから思いがけない事を頼まれ困惑する。

詳細情報
番組内容
シーラとマーカスは、ロザリンダがモロッコに残れるよう、夫の借金の約束手形を盗むことを計画する。シーラはドイツ人の客ブラウン夫人を訪ね、金庫の場所と型を確認する。それを聞いたマーカスは盗みに入るが、金庫を開けるには2時間はかかる。その間、シーラはドレスの新調に来た夫人を工房に引き留めておかなければならない。彼女は必死で夫人を引き留めるが…。そのロザリンダが驚くべき話をシーラに切り出す。
出演者
【出演】アドリアーナ・ウガルテ…渋谷はるか,ピーター・ビベス…川島得愛,ハンナ・ニュー…小島幸子,エルビラ・ミンゲス…藤生聖子,フランセスク・ガリード…大塚芳忠,カルロス・サントス…中村大樹ほか
原作・脚本
【原作】マリーア・ドゥエニャス,【脚本】スサーナ・ロペス,アルベルト・グロンドーナ
監督・演出
【演出】イニャキ・ペニャフィエル
制作
〜スペイン A BOOMERANG TV PRODUCTION FOR ATRESMEDIA制作〜

ジャンル :
ドラマ – 海外ドラマ
趣味/教育 – 会話・語学

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
スペイン語
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:26725(0x6865)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: