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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

鉱石種を育てよう

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新たな問題発生

「……なぜこうなった」

崩壊した、愛する農園を呆然と見つめるリン。植えていた作物はほぼ全滅といえるだろう。まさに惨状というにふさわしい。

「そら、お嬢がヒトの話きかんからや」

「というか、なぜあの材料で植物栄養剤ができると思ったのかしら?理解に苦しむわ」

集めた素材で植物栄養剤を作ろうと思ったら、何をベース素材にすべきか。メルは頭を悩ませるが、何を使ったところで植物栄養剤は出来そうもない。

「そこがお嬢のスゴいとこやな!あっしはこうなるとほぼ確信しとったわ」

胸を張って断言する蚊トンボに、背後から冷たい視線が突き刺さる。振りかえるとフェイルクラウトがじっとりと蚊トンボとメルを睨んでいた。

「わかっていたなら止めてやれよ、妖精ども」

「あら、勇者様。お言葉ですけど止めたわよ?」

「メルのいう通りや。何度か言うたで、素材にするもんおかしいて。まあ、レシピの全てを知ってたわけやないけどな!」

「主はヒトの話はまったく聞いてないからな」

オルトがもう諦めた、といえばメロウズがクスクスと笑う。

「やりたいことにたいして一途だよねえ。盲目っていうか。一度こう、と思い込むと絶対曲げないよね」

「母上はご自分の技術力に自信がおありなのだ。まっしぐらに突き進む母上はとても可愛らしい」

微笑ましげにリンを見つめるグリーと、肩を竦めて仕方がないなあ、と笑うメロウズ。

「いやいやいや、ちょっと待て!」

「そうだ、そこは微笑ましく見守るところじゃないだろう!」

ラティスとスレイが思わず突っ込むが、グリーには意味が分からない。常識?ナニソレ、美味しいの?という彼にしてみれば、農園が崩壊しようが、街が潰れようが、リンがやりたいのであれば、それでいいのだ。

メロウズはそこまででもない。
しかしながら人間は好きだが、リンの方が興味深いので、特に止めはしない。人間の街はいくらでもあるし、一つや二つ、潰れようが大してキニシナイのだ。

「くっ、とにかく失敗したものは仕方がない!何で失敗したのかな?これをこっちの素材に変えてみたらどうだろう?」

ブツブツと、お手製レシピを見ながら呟くリン。何となく後ろからのぞきこんだ蚊トンボが「げっ」と蛙が潰れたような声をあげる。

「ちょい待てや、お嬢!そもそもベースが間違っとるわ!何でそんな物騒なモンベース素材にしとんねん!」

「そこの妖精さん?参考までに聞きたいんだけど、リンは一体何をベースにしているのかしら?」

蚊トンボの叫びに、敏感に反応したのはアリスだった。そろそろパターンが分かってきた彼女。ろくでも無さそうだから聞きたくはないが、聞いておかないと後悔しそうだな、という思いが顔にありありと出ている。

「聞きたいんか?」

振り返った蚊トンボの顔は、ちょっと青ざめていて、すでに聞いたことを後悔したアリスだったが、仕方なく頷く。

「ベース素材はなんと!」

ひっぱりつつ、ドヤ顔でサムズアップする蚊トンボ。アリス以外の面々も一歩後ずさる。

「爆弾大亀の鱗とボムの実や!」

「「バクハツ素材ばっかりじゃねえか(ないか!)」」

全員の声が見事にハモった瞬間だった。




周囲の必死の説得により、マイレシピをアレンジしての植物栄養剤作りを断念したリン。非常に残念です。

「ん?そう言えば鉱石種はどうなったっけ?」

畑は巨大クレーターとバクハツの余波でほぼ崩壊したが、鉱石種は少し離れた所に植えていたため、被害を受けていない可能性が高い。

もしかしたら無事かも!と浮き浮き行ってみた。

「……」

「あー、繊細な植物やったんやなあ」

「ちょっと届いちゃったのねえ」

蚊トンボとメルが言葉少なに慰めるが、じっと一点を凝視するリンはまったく聞いていない。

遅れて駆けつけてきた他の面々は目の前の惨状と、微動だにしないリンを交互に見て、かける言葉もない、といった感じだ。

リンの目の前にある小さな囲い。その中に鉱石種を三つ、植えていた。リンの魔力からして、妖精と竜の力も利用すれば三つくらいはいけるとふんでいたのだ。

事実、三つとも芽を出して順調に育っていた。フェリクスや遊びに来ていたアリスなんかは「常識って、常識って……」とブツブツ呟きながら口をパクパクさせていたが。生育方法をメイスンに聞こうとも思っていたが、うまく芽を出して、育っていたのでまあいいか、と。

つい先日までは、五センチ程に育っていた、鉱石種。

今、目の前のソレはクリフくらいの背丈がある。それだけならいいだろう。バクハツの時に含まれていた大量の魔力(元の植物栄養剤にリンの魔力が大量に入っていたから)を吸収して巨大化したのだと。ある意味、順調に育った!といっても過言ではなかった、はずだ。

その植物には、マンゴーのような実がついていた。その実が地面に落ち、あっという間に次の実がつく。そしてむくむく育ったと思ったら、またぼとっと落ちた。

落ちた実は、液体化し、異臭を撒き散らしながら土に染み込み、少しずつ範囲を広げていく。液体が染み込んだ土は腐った卵のような異臭を放っていて、鼻が曲がりそうだ。しかも、三つあった鉱石種全てが同じようになっている。このままの勢いなら、恐らく四日もあれば、農園全体が汚染されてしまうだろう。

「ちょっとリン!ぼんやりしている場合じゃないわ!早くなんとかしないと!」

「あ、うん。なんとか……ってどうすればいい?こんな植物見たことないよ!」

「う、そうね。私も見たことも聞いたこともないわね」

人間たちは互いに顔を見合わせ、人外に視線を送る。

「あっしも見たことないなあ」

「私もないわね。これでもしばらく女王様付きだったこともあって、植物には、自信があったのだけど」

鉱石種のことは、妖精にもわからないことだらけだ、と蚊トンボとメルが困ったように顔を見合わせる。

「そうだな、我も聞いたこともないな。……メロウズ?グリー?」

オルトも首を捻っていると、メロウズとグリー、それにフェイルクラウトが何やらアイコンタクトを取っている。

「母上、汚染は私と妖精ども、それに竜一体で抑えましょう」

「グリー?」

「フム、いけるのか?魔王」

「私を誰だと思っている、ブラックドラゴンよ。今だ力弱く範囲も狭いゆえ、この程度は抑えよう。……母上を頼むぞ」

「了解した。精製陣は任せた」

まあ、適任だな、とメロウズが頷く。

「そこの勇者もコレが何か知っているようだな?」

「一度見たことがある。あとの時は国一つ消滅した」

「ほう、よくその程度で収まったな。ソナタが知っていると言うことはそこまで大昔というわけでもなかろうに」

「ああ、八年くらいまえだ。ミーズグリーベという小さいが緑豊かな美しい国だった。俺の故郷だ」

フェイルクラウトが、痛みをこらえるような顔でリンを見た。

「あのときもこんな風に鉱石種が暴走したんだ」








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