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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

植物栄養剤を作ろう

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植物栄養剤が出来た?

迷宮から一転、青空の下。

メロウズやオルトに連絡して、一回王都に転移した彼らを、直ぐに再転移。あっという間に農園へと帰ってきた。

「帰ってきた!」

無表情ながら、両手を広げてくるくる回るリン。出迎えた農園の下僕……もとい、住人たちは、ご機嫌なリンと彼女に抱えられているボロ雑巾のようになったグリーを見比べて、複雑な顔をしている。一体何があったのか、聞きたいけど、精神衛生上あえて聞くようなマネはしない、といったところ。

世の中には知らなくてもいいことがあるのです。

ちなみにヴィクターは家の中からコッソリ覗いて、囁くような声で「お帰りなさい」と言っていたのだが、あまりに小さすぎるのと、隠れているせいで、誰にも気づいてもらえなかった。

それはともかく。

リンに続いて、約一名を除いて、どことなく、疲れた顔の同行者たちも無事、帰還。

ちなみに、グリーとセキという二大魔王がじゃれあいという名の、本気戦闘を繰り広げているあいだ、リンが魔道具を使って三重に展開していた結界に守られていた彼ら。

「付いていった意味、あったかしら」

遠い眼をしてアリスが言えば、ラティスが慰めるように彼女の肩を叩く。

「迷宮に入れた時点で、一緒にいく必要はなくなったな」

「護衛対象の娘に守られるなんて情けない!」

「そうだな、スレイ。俺たちはAランクになってからちょっと怠けすぎていたかもな」

「ねえ、ラティス。私たちこのままだといつか大ケガするかも知れないわね。少し鍛え直すべきかしら?」

アリスの言葉に思い思いに頷く。マナカはそんな仲間たちを頼もしげに見ながら、ふふふと笑う。

「鍛え直すのはいいことだと思うわ~。でも私たちはいい方よ?ほら、彼なんて……」

マナカの視線の先には、肩を落として、どんより沈んだフェイルクラウトがいた。

「生気が無いわね」

「覇気もないな」

アリスとラティスがうなずきあう。

無理もないだろう。仮にも勇者たるものが何もできず、ただ小さな子供に守られているだけなど。しかも、今まで当然のように信じていた常識もくつがえされてしまったのだ。正気を保てているだけ、すごいことだとアリスたちは思うのだ。

「一番の問題はアレだけどね~」

ため息とともにマナカが呟くと、【吹き抜ける風】の面々は顔を見合せる。

「アレはもう病気だな」

スレイが諦め顔で言えば、ラティスも肩を竦めて頷く。

「悪いヤツじゃないんだがな」

「悪気がないぶんたちが悪いわよ?幼馴染みでなかったら、とっくに見捨てているわ」

「そうね~。彼はいつかあの好奇心で身を滅ぼすわね~」

彼らの呆れたような視線の先には、パーティー随一の火力要員、シオンがいた。攻撃魔法をこよなく愛する攻撃特化の彼は、知識を求めることにも貪欲だ。マーヴェントを訪れれば、魔法と同じくらい大好きな幼女のことも頭から抜け落ち、地下図書館に向かうくらいには。

いま、シオンの瞳は爛々と輝き、顔は満面の笑顔である。

彼の目の前には迷宮で採取してきた珍しい物品が大量に並べられている。同行者の中で唯一、浮かれた気分で帰還した男なのだ。

どうやって採取したかといえば、じゃれあいもどきの本気戦闘の隙を見て、リンが設置した結界から飛び出ては採取して危なくなったら結界内に舞い戻る、ということを繰り返していたのだ。

目の前に見知らぬ珍品があるのに、諦めるなどということはシオンには出来なかったのだ。リンの結界が外からの外敵の進入は不可能だが、印を持っているものなら出入り自由という高度な結界だったことが幸だったのか、災いだったのか。

少なくとも、シオンにとっては幸いであり、おそらく、パーティーにとっては災いであるだろう。パーティーの面々は嫌な予感がひしひしとする、と同時にため息をついて、顔を見合せるのだった。

「あれ~、みんな湿気た顔してどうしたの?」

ひとしきり外の空気を堪能して、ようやく同行者たちの微妙な空気に気づいたリン。

「ねえねえ、まだ時間ある?」

何やら期待に満ちた眼でリンが全員にたずねる。

「?そうね、私たちは一応あと三日、【火炎宮】攻略のために空けてあるわ」

子供好きだが、話しかけるのは苦手なムダにこわもてラティスに代わって、アリスが微笑む。

「俺はあと五日時間が空けてある。まさかこんなに早く迷宮での素材集めが終わるとは思わなかったからな」

なんとも言えない、というような微妙な顔で、フェイルクラウトが呟くように言う。常識って何だろう、と遠い眼をしていたのが哀れを誘う。

「そ、そう?でも時間あるならよかった!早速植物栄養剤作るから、成果を見ていってよ!」

リンの言葉に彼らは顔を見合せる。ナゼか蚊トンボとメル、オルト、メロウズといった人外の面々がずざっと音をたてて後ずさる。何気にグリーも珍しくリンの手から逃げ出した。

そんな彼らの反応にリンは「なんか傷つくなあ」と肩を竦めただけだが、人間たちは気が気ではない。世の中、大抵のことには動じず対処できる実力と知識のある彼らのこの反応。何が起こるというのか。想像もつかない。

だがしかし。

今さら逃げ出すことも出来ない。リンの眼が、一人も逃がすものかと言っている。

「別に逃げる必要なくない?バッチリ完璧な植物栄養剤作るだけだし!」

言われて見れば、そうかも?人間たちは首を傾げながらも一応納得する。

「それってすぐできるの?」

アリスが聞けばリンはうなずいてシステムブックを取り出すとアイテムインベントリから携帯用調合器具を取り出す。

「変わったアイテムボックスだな」

フェイルクラウトに言われて、人前では隠していたことをすっかり忘れていたリン。だがしかし、彼らが今さらリンをどうこうしようと思う筈もないと一人納得。

「内緒ね?」

一応そう言うと、苦笑しつつもうなずいてくれたので、まあいいか、とあっさり流してしまうことにした。【吹き抜ける風】やフェイルクラウトにしてみれば、今さらリンに内緒事の一つ、二つ増えたところでたいした問題ではないのだ。

なぜなら、この農園とリンに内緒事しかないからだ!

秘密が大量にあるのに、もっとも気を付けなくてはならないリンは割りと迂闊だ、とリン以外の全員が知っている。だからこそ、守らなくてはと思うヒトの良い彼らなのだった。






そうこうしているうちに、植物栄養剤が出来ました。

蛍光グリーンの粘った感じの液体?が蚊トンボがすっぽり入れるくらいの大きさの瓶に、溢れんばかりに入っている。

物凄くイヤな予感しかしない。早速試すと言うリンからできる限り距離をとってみる。こういうときは遠くから見守るのがいいのです。

リンは、そんな彼らに首を傾げながらも、コレから立派に育つであろう野菜の種を蒔いた畑に少量ずつ振りかけていく。

全部なくなると、満足げに頷く。

「これであとは野菜が出来るのを待つばかりだ!きっとスッゴく立派な野菜が……」

遠巻きに見ていたみんなのもとにかけていって、特に何事も起こらなかった、と安堵していた彼らに今後の野菜計画を説明しようとしていたところで、それは起こった。

どっかーん!

大きな爆発音。もうもうと立ち込める刺激臭のある煙り。

メロウズとオルトが咄嗟に張った結界で、人々には怪我一つなかった。

だが、土煙が晴れたあとの農園は悲惨だった。

植物栄養剤をまいたところには巨大なクレーター。当然周辺の野菜は全滅。養蜂は少し離れたところだったから無事だったが、家は爆発の余波で半壊。出発前にリンが念のためにと渡した結界石で、家のなかにいたのに傷一つなく、無事だったヴィクターはしかし、泡を吹いて気絶している。

「……なにコレ、どう言うこと?」

後には予想通りだと頷く人外となぜ植物栄養剤が爆発するんだと頭を抱える人間たち。予想外の事態にただただ呆然と佇むリンがいた。





迷宮都市マーヴェントの地下図書館に行けるようになった!
虫魔属のお店が利用できるようになった!
セキと知り合いになった!
植物栄養剤が出来た!
農園が半壊した!












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