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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

植物栄養剤を作ろう

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火炎宮②

ヒトガタだし、言葉が話せるし、話せばわかりあえるんじゃないか。

そう、思っていた時期がありました。

リンは遠い眼をしてまたもや現実逃避していた。







怒っているイーフリートを眼前にしたときはもうダメだと、死んだな、と思ったモノだが。足元で死にかけているサラマンダーにすぐ気がついたこと、癒す術を持っていたことで、イーフリートの怒りを和らげることができたため、ほっと一息。

「フム、やるな、娘。まさか精霊の傷を癒せるとはな。フェリエル、大丈夫か」

渋い声で、イーフリートが言葉を発する。かなりの巨体で、威圧感バリバリだが、精霊に向ける瞳は随分と柔らかで、優しげだ。

「うう、死ぬかと思いましたよう」

サラマンダーがぽんっとコミカルな音をたてて変化する。

見た目はまさに小人。可愛いらしいツインテールの真っ赤な髪。大きくて、くるくる動く深紅の瞳には、イーフリートに対する信頼と親愛が見てとれる。着ているのは何故か金魚の柄の浴衣。足には編み上げブーツ。ミスマッチにもほどがある。

「でも精霊を癒せるなんてスゴいですよう。助かりましたよう」

ニコニコ笑って礼を言ってくれる。こちらこそ、踏んでゴメン?結局何が起こったんだかよくわかっていないが。

「娘、【呼ばれた】か」

「は?」

「そうですよう!きっと【シュート】で落ちてきたんですよう。ビックリしましたよう!」

小人なサラマンダーが大きく手を動かして驚きを表現する。お持ち帰りしたい程の可愛らしさである。……持って帰ったらダメかな?代わりに蚊トンボ進呈するけど。不穏な空気を感じたのか、サラマンダーがずざっと音がしそうな勢いで後ずさる。

「なんか怖いですよう。変なこと考えてますよう」

サラマンダーの言葉に、イーフリートがじろりとリンを睨むが気にしない。先程と違って、まったく殺気が感じられないからだ。

「それより【呼び出し】ってなんのこと?」

それに引っ掛かったトラップのことも気になる。彼らは詳しいことを知っているようなので、聞いておかなくては。きっと、【吹き抜ける風】の皆も、フェイルクラウトも、帰ってきたかもしれないグリーも心配しているだろう。

グリーに至っては、最悪全員を殺ってしまうかも。マズイ。非常にマズイ。

「ふむ、【呼び出し】ならば送らねばならないな」

「そうですよう!きっとお待ちかねですよう」

リンの疑問には答えることなく、イーフリートとサラマンダーの間で話がどんどん進んでいっているのは気のせいではあるまい。このままだと、すごく嫌な予感がする。

「いやいやいや、話聞こうよ。って言うか、とりあえず、疑問に答えてよ」

「【シュート】は利用できそうですかあ?」

「無理だな。利用ポイントが足りぬ」

「ええ~困りますよう」

「あれは利用ポイントがかなり高いからな。一度利用出来ただけでも人間にしてはまずまずであろう。来訪者でなければ一度の利用すら難しいぞ」

「そうですねえ」

「【シュート】よりは遅いが、特急便を使うしかあるまい」

「特急便ですかあ、では、配達屋に頼んできますよう」

「うむ」

いやいやいや、うむ、じゃないよね?意味わかんないよね?切実に説明求む!というリンの訴えは、当然の如く無視された。明らかに聞く気がない。二人(?)とも然り気無くリンから眼を逸らしている。

おかしい、とリンが頭を抱えたのも無理はあるまい。言葉は通じるはずなのに、まったく会話が成り立たないのだから。

それでも、サラマンダーがいなくなった隙に話しかけるべく、口を開こうとしたのだが、なんと!あっという間にサラマンダーが帰ってきた。

「バッチリですよう。今は暇らしいですよう。直ぐに特急便用意出来るって言ってましたよう」

にこやかにイーフリートに報告する小人……もといサラマンダー。そんなことどうでもいいから、まず疑問に答えて欲しい。ついでに、素材の採取場所を教えて欲しいですね!むしろ疑問とかもうどうでもいいから、素材くれ。情報だけでもいいから!ついでに、安全な帰り道も教えてくれると助かるなあ、とリンは思うのだが、世の中、そんなに上手くいくはずもなく。

サラマンダーの言葉が終わらないうちに、何かがリンを囲う。

「はち?」

それは、スズメバチに似た羽虫だった。百匹以上はいるだろうか。リンの回りをぐるぐる飛んでいる。逃げる暇もなかった。

いやどっからわいてでた?

「ぐーんとひとっとび!グリーン宅配便へご依頼ありがとうございます!では、責任持ってお荷物お預かり致します!」

子供の声が聞こえたと思ったら、視界が暗転し、気が付くと、だだっ広い空間に立っていた。

そして、眼前には言い争いをしているグリーとラフレシアもどき。

そして、冒頭に戻る。

どうしてこうなった?




部屋には、リン、【吹き抜ける風】メンバー、フェイルクラウト、グリー、ラフレシアもどきがいた。

「説明してもらおうかな、グリー」

そのリンの言葉に、グリーとラフレシアもどきがビクッと肩を揺らす。

グリーは元の大きさに戻っており、ラフレシアもどきは巨大な花の中央に三、四歳くらいの男の子の胴体から上がちょこんと生えている。中々どうしてシュールな光景である。

「母上、知り合いのセキです」

「あ、ボク、セキと言います。この迷宮の管理責任者です。初めまして」

すごく嫌そうに、グリーがラフレシアもどきを紹介してきたと思ったら、何故か、ラフレシアもどきにやたらと丁寧に挨拶されました。

「その、コイツがどうしても母上に会いたいと言って……」

「そうなんです。噂のグリーの母君がボクの迷宮に来てくれると聞いて、どうしてもお会いしたくて!でもグリーに邪魔されて中々【呼び出し】出来なくて」

ちゃんとグリーに話を通そうと思ったのが間違いだった、とにこやかに笑うセキ。その笑顔はまさに天使。毒々しいラフレシアのような花と金髪に蒼い瞳の天使のような幼児の合体。視界の暴力とは、このことだろう。

ところで、セキの台詞のどこから突っ込んだらいいのか?リンは頭痛のしてきた頭を抱えて、大きなため息をついただった。

そんなリンを見つめる【吹き抜ける風】とフェイルクラウトの瞳には悟りと諦観とリンに対する同情が浮かんでいる。

もう何があっても驚かない、そんな心の声が聞こえた気がしたリンだった。


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