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異世界とチートな農園主 作者:浅野明

植物栄養剤を作ろう

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地下図書館と迷宮の入口1

おかしい。
中々図書館に入れない。
「ひっさしぶり~♪」

地下図書館に足を踏み入れたとたん、そう陽気に挨拶してくれたのは、ゴスロリ服を着た少女だった。

階段を降りた先には扉があり、扉を開けると大きめの部屋になっていた。部屋は縫いぐるみや編みぐるみ、ファンシーな小物類で溢れている。

その部屋の中央にたっていたのが、冒頭のゴスロリ少女なのだ。

リンに、というよりは、リンに抱かれているグリーに飛び付いてきた少女の前に、グリーが即座に結界を展開。

冷めた目で、結界にぶつかって床に落下した少女を見るグリー。

少女はしかし、めげることなく笑顔で立ち上がる。

「久しぶりだねえ、我が心の友よ!しばらく会わない間にちっこくなったね。まあ、ボクはキニシナイよ!外見なんて些細な問題はね!」

両手を広げ、さあ、胸に飛び込んでおいで、という少女に高威力の攻撃呪文を叩き込んだグリーに容赦というものはない。二人がどういう関係なのか、ちょっと気になるリンである。

高威力の攻撃呪文をくらった少女は、しかしまったくの無傷である。この頑丈さ、間違いなく真祖だ。彼女がこの地下図書館の司書なのだろう。リンはてっきり男性だと思っていたのだが。

ポニーテールにされた、美しい漆黒の髪。血のような真っ赤な瞳。瞳と同じくらい赤い唇。歳は十五、六くらいか。美人というよりは、可愛らしいといった顔立ち。その瞳はグリーしか見ていない。

「女の子?」

リンが首を傾げると、ギロリと睨まれた。グリーとそれ以外のヒトを見る目が違いすぎる。はっきりいってグリー以外は彼女にとってゴミのようなモノなのだろう。

「失敬な。どこをどう見たら女に見えるのさ!ボクは男だよ!」

どこからどう見ても少女にしかみえない彼は、見間違えるなんてあり得ないとばかりに首をふる。

見間違えられたくないなら、ゴスロリ服とそれに伴うフリフリスカートをやめれば良いのに、と思ったのはリンだけではあるまい。

「ん?キミ来訪者だね。グリーと一緒ってことは昔彼が話してた母君か。じゃあ、赦してあげるよ」

ものすごい上から目線である。だが、少しだけリンを見る目に温度が宿る。彼にいったい何を話したのか、非常に気になるリンだったが、とりあえず置いておく。

「まあ、いいや。中に入りたいんだろ?入って良いよ」

あっさりそう言うと、彼は司書室?の奥にあった重厚な扉に向かって指を鳴らした。音もなく、扉が開く。

「ここに来るヤツの用って言えばそれしかないからね。それともグリー、ボクにわざわざ会いに来てくれたの?」

「そんなわけがない」

にこやかに訊ねてくる吸血鬼に、グリーが素っ気なく返す。そうだよね~、と吸血鬼も笑って肩を竦めた。

中に入れるならなんでもいいや、と静観していたリンがふと気付く。

「あれ?魔核がいるんじゃなかったっけ?」

他のメンバーがあっけにとられているなか、リンだけがまともに司書と話していることに、司書の彼とグリーだけが気付いていた。

「良いんだ。魔核をもらうのは結局それを手に入れられるだけの実力があるってこと。キミもグリーもそんなものなくても実力は充分だからね。キミ達が居れば同行者の安全は保証されたも同然だ。だから入って良いよ。ってこと。ボクとしては中で死人が出るのは困るんだ」

本当は死人が出る心配さえなければ、勝手に入ってもらっていいんだけど、という。

「何で実力以上の場所に入りたいんだろ。こっちが面倒でかなわないよ」

人間って意味が分からない、とバカにしたように言う彼は、本当にどうでも良さげに言う。

「ふうん?」

なんだかよく分からないが、ただで入れるのだからよしとしよう。

実力があれば良いなら、なぜ同じ人でも入る度に魔核を要求されるのか疑問だったリンだ。

後で聞いたところによると、毎回魔核を要求するのは、「人間の顔なんていちいち覚えたりするわけないだろ?バカじゃないの?」ということらしい。




「じゃあ、入館する?」

まだ予想外の事態にまったくついていけていないメンバーに、リンが問う。が、意外なところからストップが入った。

「母上、肝心の話がまだです」

「へ?」

マヌケな返事になってしまったのは、仕方があるまい。リンは本当になんのことかわからなかった。他のメンバーも同様だ。

「迷宮【火炎宮】への地図と鍵、それに人間が一人、なかに入っている。同行者の連れだ。拾っていくから場所を教えてくれ」

そういえば、迷宮への入り口もこの地下図書館にあるんだった、と今更ながらに思い出した。それにシオンのことも。完全に忘れ去っていた。【吹き抜ける風】とフェイルクラウトもすっかり忘れていたらしい。いったいなんのためにここに来たのか。

「あ」

ポン、と手を叩く一同。ようやく、本来の目的を思い出した。グリーが冷たい目でリン以外を見るが、彼らの名誉のためにいっておこう。フェイルクラウトはもとより、幼女愛好家であっても【吹き抜ける風】とて優秀な冒険者である。

通常、地下へ下りてくると、この司書室で無言で魔核の受け渡しがあり、合格すれば勝手に奥の扉が開く。

間違っても真祖の吸血鬼である彼に、笑顔で出迎えなどされるハズもなく、会話など夢のまた夢。そもそも、話をしたいという人間もまず、いない。

今回のような事態には、遭遇することがあり得ない。

だが、何時までも呆けていてもダメだろう。彼らは思い思いの方法で気合いを入れ直した。

「【火炎宮】?良いけど、わざわざここから?」

人間って分かんない、と肩を竦めた。空中から一枚の紙を取りだし、リンに渡す。


「これ持っていれば迷わずたどり着けるよ。あとこれ」

と言って渡された紙に書いてあったのは、現在地と線が何本か、それと目的地、くらいだけの子供の落書きのような。

もうひとつは、手のひらサイズの黒くて四角いモノ。シオンに近づいたら音が鳴るらしい。

「今、入館者は一人だけだから。これでいいかな?」

「ああ」

グリーは小さく頷いて、リン達を扉の奥に誘導する。

人々がこの地下図書館を【魔導師の楽園】または【騎士殺し】と呼んでいることをこのときのリンは知るよしもない。



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